〔第１条～第１５９条〕未入力
○第２篇
○第１巻 財産の区別
○第１章及び第２章 不動産及び動産
第１６０条 性質に因りて動産たる或る物品は法律上に定めたる所によりこれを不動産の種類中に含入すべし（フランス民法第５２７条）
第１６１条 永く分離せざる用方を以って建造物に附着せしめその一部を為す動産は壁又は薄壁の如く法律上に定めたる所に因り不動産と為すべし（フランス民法第５２３条ないし５２６条）
第１６２条 田畑の耕作に用うる獣類並に農具はその土地に属する不動産と為すべからず然れどもこれをその用法に因りての不動産とみなすことを得べし（１７５２年６月１６日１７５９年５月１３日及び１８３１年１１月２２日のデンマーク官令）
或る場合に因り特別の契約を以って此等の物品の性質を定むること有り但し書入質の権に関する時のみに在りとす（フランス民法第５２４条）
第１６３条 船舶はこれを動産とみなす然れども不動産売買のために定めたる規則と法式とに循わずしてこれを売払うことを得ず（フランス民法第５３１条○フランス商法第１９条及び次条）
然りと雖も茲に注目すべきこと有り即ちその法式は同時に船の国籍を証定するに用立つ是なり（１７５６年７月３０日のデンマーク官令第７節、第５条、第７条、１８０３年５月４日の官令第９節、１８１４年３月２２日の官令第１００節、１８１０年２月８日の官令第１節、第３節、１８１２年１０月１７日の司法卿の公文第５節、１８２５年３月５日及び１８３１年１１月８日の同公文○ステンフェルド氏の附註）
第１６４条 未だ摘取せざる樹果は天然上たると法律上たるとを問わず総て不動産の一部たるべし（フランス民法第５２０条）
第１６５条 藁及び刈草の収取物又は糞料は土地と殊別にこれを差押うるを禁ず又もし土と共にこれを差押えたる時はその物件の属する土地と殊別にこれを糶売するを得ず（１８４３年５月２４日の貼紙及び１８３３年３月９日の官令）
第１６６条 故に書入質の権を有する債主は地上に生じたる草木の収取物及び未だ摘取せざる樹果並に土地及び家屋の借賃及び入額に付きその権利を行うことを得べし（フランス訴訟法第６８２条と相異なり）
第１６７条 契約の性質又は無期の年金の性質に付いては唯特別の法則に依りてのみこれを規定せり（フランス民法第５３０条と相異なり）
第１６８条 負債者の財産を抵償として差押うる塲合においてはその差押の原由たる動産のその負債を償うに足らざることの確定せざる前に不動産を差押うることを得ず（デンマーク法律第３条、第１７条、第２２条、第５条、第６条、第７条、第１６条、第４条、第９条、第２条、第６３条及び第６４条○フランス民法第２２０６条及び第２２０７条と相異なり）
○第３章 財産とこれを所有する者との関係
第１６９条 地中、森林中或は原野中に埋蔵したる金銀又はその他の金属たるとを問わず発見したる財貨はこれを〔ダンヲター〕と称する者にして総て王の所属たり但し往古の貨幣又はその他古稀の宝物たる物品を発見したる者はその代価を要求するの権利有りとす（１７５２年８月７日の貼紙及び１８３７年３月２２日の官令○デンマーク法律第５条、第９条、第３条○フランス民法第７１６条と相異なり）
右の条件に関する原則はフランス民法に定めたる原則と大同小異なりとす
○第２巻 財産所有の権
第１７０条 フランス民法第５４４条及び第５４５条に同じ
○第１章 財産より生ずる物に付き主に因り従を併する権
第１７１条 フランス民法第５４９条及び５５０条の如し（デンマーク法律第５条、第４条及び１８１３年３月９日の官令）
○第２章 財産に附加し且つ合同したる物件に付き主に因り従を併する権
デンマークの法律はこの章に記したる権に付きフランス民法の如く明瞭なる規則を包含せず畢竟此条件たるや夥多の塲合においてこれを公平の正道に歸ずればなり然りと雖もこの条件に付き孤立したる２３の条款無きに非ず因りてこれをこの章の正文中に掲記せり（ステンフエルド氏の附註）
第１７２条 取戻の求を受くべき土地に造営を為したる所有者はその取戻の求を受けし時その造営を破解するの権を有しあるいは予め評価を為さしめその造営の価を己に償わしむるの権を有すべし（デンマーク法律第５条、第３条、第２条、第６条、第４条及び１７７１年１月１４日の官令第８節、１８２７年１月１４日の官令第１０節及び１８３３年４月１７日の官令第６節○フランス民法第２１７５条と相異なり）
第１７３条 土地の所有者に非ざる者、家屋の借主の保有の如く、仮の保有のみを有する所の他人の土地に造営を為したる時はその造営を所有者に渡してその償を得べき旨を要求するの権無く唯その造営を破壊しあるいはこれを転移するの権有りとす（デンマーク法律第６条、第１５条、第１７条、１７８７年６月８日の官令第５節○フランス民法第５５５条）
第１７４条 フランス民法第５５４条に同じ
第１７５条 他人の土地に種子を蒔きあるいは樹木を植附けたる者その権利を証定すること能わざる時はその労力及びその種子あるいはその植附の費用を失うべし然れどもその所為の全く己れの過誤に出でしことを正実に神に誓う時はその土地の所有者よりその物品の費用を算還せざるを得ず但しその労力の費用はこれを算還せざる者とす（デンマーク法律第６条、第５条、第１４条○フランス民法第２１０２条第３条と相異なり）
この規則は現今実際上においては決して緊要の者に非ず畢竟此は土地の所有者の間に、或る共通財産法の行われし昔時の田野の州に関係を有する者たり然れども現今に在っては既にこの共通財産法は決して成立せざる者と為れり（ステンフェルド氏の附註）
第１７６条 フランス民法第５５８条に同じ
第１７７条 浸満あるいは退涸の如き水勢の働きに因りて偶然土地に変更を生じ土地の一部を為すもために所有権を変更すること無し（デンマーク法律第５条、第１６条、第４２条）故に損害を受けたる一方の者はその失うたる地を取還すべきの求を為すを得ず而して他の一方の者もまた同様たり（フランス民法第５５６条）
第１７８条 動産に付き主に因り従を併する権はこれを規定するがための明瞭の規定無きを以ってこの第２章に定めたる原則に因てこれを統理せり
○第３巻 入額所得の権
他人の所有したる物件の入額を所得と為すの権は無限の変化に属せり因てこの規則を掲載するは勢能はざるに非ずと雖も責めては曠日彌久且つ困難の事業たるべし故に入額所得権に関する事項に付いては総規則の成立せざると云うも敢えて不可なる無かるべし
第１７９条 フランス民法第５７９条に同じ
第１８０条 物件の賃貸と入額所得権とを区別するに適法なる明瞭の規則無きが故に土地の賃貸契約を入額所得権とみなし而して入額所得権を統理する規則を土地の賃貸契約に適用するを得べし
第１８１条 入額所得権は政府又は邑に属する財産の入額所得権を有する官吏及び就中｢ベチフヒシイアリー」の名称を以って儈徒に関する時の如く法律上にてこれを生ずること有り
第１８２条 入額所得権はまた契約に因て生ずること有り然る時はその契約に入額所有者の権理を定むる者とす
最も通常の契約中に行うべき原則は特別の法律においてこれを規定せり
最も通常の契約のために規定したる適法の規則有らざる時は約束に因てこれを補うことを得べし
第１８３条 入額所得権は永期に限制すべき者に非ずして１人又は数人の生涯のためにもまたこれを限制すること有り加之入額所得権は財産相続に因て相続人中の定りたる系に歸するを得べし然れども相続権を有したる系の断絶する時は滅尽する者とす（フランス民法第５７９条）
第１８４条 入額所得者に附与したる権は入額所得者のその権を有する所の物件より生ずる利益及びその他の入額上んに推拡しあるいはこれと分離するを得而して動産又は不動産に付きこれを生ずることを得べし（フランス民法第５８０条）
第１８５条 入額所得権の動産のみに関する時は仮の契約に因て生ずることを得べし但しその契約は物件を保有と為すを得せしむるに在り而して又謝禮あるいは無償の名義を以ってこれを生ずること有り（デンマーク法律第５条、第８条）
入額所得権を統理する原則は即ちデンマーク法律第８巻第５章に定めたるが如くこの書の賃貸及び「コムモダー」(耗尽せざる物の賃貸を云う)の巻中にこれを記載せり
第１８６条 不動産に付き生ずる入額所得権にして入額所得権者の利益と為る所の入額を生ずべき性質たる入額所得権の中にて土地の賃貸の契約は最重要の者たり何となればその地位を定むる表は更に特種の者たればなり
賃貸に関する第８巻第３款を参観すべし
第１８７条 入額所得権は啻に契約を為し且つこれを公然裁判所において公読したるに因り生ずるのみに非ずしてなお財産を仮に己れの保有と為すこともまた緊要なりとす（永期賃貸の契約に関する１７９５年１２月４日の官令及び賃貸契約に関する１８３１年９月２５日の官令）
第１８８条 入額所得者の賃貸に付いての如く財産所有権又は書入質の権(賃貸の第８巻第２巻及び第３款を参観すべし即ちその契約に関する諸規則は入額所得権えお統理すべし)を得たる第３の人の間に争訟の起りし塲合において期限の法律に循じて通常の者たる時は入額所得者の権利を優れりとす然れども賃貸契約又は入額所得権の期限の永くして通常の者に非ざる時はこれと異なり但し賃貸契約又は入額所得権の契約を裁判所において適法の式を用い定時限に簿冊に登記し且つこれを公布したる時は格別なりとす（同上）
○第４巻 土地の義務
デンマーク国においては土地の義務に付き決して明瞭の規則有ること無し是れ畢竟その事件に付き裁判所は公平の規則のみを循奉すと看ればなり
第１８９条 起原の推知し難き●時より他の不動産の利益に属する一の不動産に設けたる通路はこれを阻塞するを禁ず（デンマーク法律第３条、第１３条）
第１９０条 隣地の池水は水車を運転せしむるがためこれを使用するを許す（デンマーク法律第３条、第１１条、第１条）
第１９１条 フランス民法第６４０条の如し（１８４４年７月２９日の官令）
第１９２条 何人たるを問わず証書に因り及び期満得免の権に因って土地の義務を得べし（フランス民法第６９０条及び第６９１条）
第１９３条 家屋に接する土地の所有者に非ざれば門、●又は隣地を直視すべき●を造ることを得ず（デンマーク法律第３条、第１３条○フランス民法第６７５条及び次条と相異なり）
第１９４条 何人に限らず水流に権利を有する者はその沿地の上位を有したる者に対してその水流を緊要の広さ及び深さに保存し且つその流通ずる部分において水流を清潔にすべき旨を要求することを得べし（１８４６年８月２９日のデンマーク官令○フランス民法第６４４条ないし第６４６条と相異なり）
第１９５条 各所有者は己れの土地を流通する水を使用することを得べし但しその使用を為すに因り第３の人の得たる権利を害しあるいは政府よりその使用取戻の求を為す時は格別なりとす（フランス民法第６４４条）
第１９６条 若し一の所有者他の所有者の土地に水路を開くべき水流を更に己れの土地に設けんと欲する時は行政官はその他の所有者が強て開かしめざるを得ざるや否やを判定し且つその償としてその他の所有者払うべき額を定むべし（フランス民法第６４３条と相異なり）
甚だ良巧なるこの規則は土地の浸潤を容易にし及びその売価を増加し且つその入額を増多すべし
第１９７条 山林中にその大木は一の所有者に属し且つ雑●を伐り及び？秣草を刈るの権は他の所有者に属する時は大木の所有者より相当の償を払いその雑●を伐り及び秣草を刈るの権を己れに有することを得べし（１８０５年７月２７日のデンマーク官令）
○第３篇
○第１巻 財産相続
クリスチアン法律の第５条、第２条においては財産相続及び分派の事を記し及び第３条、第４条においては贈遺の事を記す然れども１８４５年５月２１日の官令を以ってその条件に関する法律の諸規則に重大なる更改を加へたり(ステンフェルド氏の附註)
○第１章 財産相続を始むる事及び相続人財産を所得と為す事
第１９８条 財産相続は人の死去に因りてこれを始むべし（フランス民法第７１８条）
第１９９条 若し互いに財産相続を為すべきもの数人同時に死去しその中何人か先に死去したる乎ち鑑定することあたわざる時はその各財産相続人はその死去の際その死者の各個に属せし所の財産を相続して最後に死去せし者の相続すべき財産にさらに関係すること無かるべし（デンマーク法律第５条、第２５条第３条○仏民法第７２０条と相異なり）
第２００条 法律を以って規定したる系中に当然の財産相続人無く而して若し死者その財産を人に譲与せさりし時のその遺留財産は之ち官に徴収すべし（フランス民法第７２３条及び第７６８条）
第２０１条 財産分派の管理人の関渉無くして己の相続権を行うを、得べき丁年にして且つその地に在る相続人は遺物に付きての負債及び諸費を償はざるを得ず但しその相続人更に財産相続を為す者くる時は遺物に附属したる総ての利益を所得と為すことを得べし（フランス民法第７２４条）
○ 第２章 財産相続を為すに必要なる諸件
第２０２条 財産相続を為さんとするにはその財産相続を始める時或は現存し或は懐胎したることを必要とす（デンマーク法律第５条、第２条、第４０条○１８２８年６月４日の官令○フランス民法第７２５条）
第２０３条 外国人は１の要件無くしてデンマーク人なるその血属親の財産を相続することを得べし（フランス民法第７２６条）
第２０４条 財産を相続せしむべきその人を残害し又はその当然の相続人を残害せし者は財産相続を為すべからず但しこの終の場合においてはその死者の他の相続人、財産相続を為すべし（デンマーク法律第５条、第２条、第７４条○フランス民法第７２７条）而して財産相続を為すの禁を受けし者の子は父の過咎の責に任ぜざるを以ってその父の受くべき財産相続より除去せらる、こと無かるべし（フランス民法第７３０条）
第２０５条 財産相続人は自身に財産相続を為すことを肯せずしてこれをその子に譲与することを得べし（１８４５年５月２１日のデンマーク官令第１４節○フランス民法第７８７条と相違なり）
○ 第３章 財産相続を為すの順序
第２０６条 総て財産相続は宗系の権利又は婚姻の権利に因手これを為すべし（フランス民法第７３１条と相異なり）
第２０７条 財産相続を為すの順序は専ら系に因りこれを規定す而して級は親族の長と諸系の血統の親疎に基づく者とす（フランス民法第７３３条）
第２０８条 財産相続を為すの順序は左に掲列するが如し
第１ 卑属親の系
第２ 父及び母或は父母中の１死去したる時はその子と生存したる父母中の１或は父母共に死去したる場合においてはその子
第３ 祖父母及びその卑属親
第４ 曾祖父母及びその卑属親
第５ 曾祖父母以上の祖先及びその卑属親
財産相続を為す両性男女は各自に平等の部分を相続すべし（フランス民法第７２３条）
第２０９条 但し死者の卑属親、財産相続を為す時は女子は唯男子の相続すべき部分の半を相続すべし（フランス民法第７４５条と相異なり）然りと雖も父母は公明なる処置を以って法律に循いその女子と相続すべき部分を増多することを得べし但しその部分は決して男子の相続すべき部分より超過すべからず（フランス民法９３３条）
第２１０条 尊属親及び傍系親の相続すべき遺留財産は総てこれを２個の部分と為しその一部は本宗の親に属し他、の一部は外属の親に属す（フランス民法第７４６条及び第７５０条）
第２１１条 代て相続を為すの権は相続財産を為す総ての順序に依りこれを行うことを得べし（フランス民法第７４０条及び次条と相異なり）
第２１２条 遺留財産は常に同族の人員中において族に因てこれを分派し又は各自平等にこれを分派すべし（フランス民法７４３条）
第２１３条 死者の子及びその他の卑属親は死者の当然の相続人たり故に総てその他の相続人よりも先得の権を有する者とす（フランス民法７４５条）
第２１４条 子孫無くして死去したる者の父母なお生存したる時はその父母当然の相続なりとす（フランス民法第７４６条）
第２１５条 父或は母の既に死去せし時は生存したる父母中の１その財産の半を相続し父母の異同を問わず既に死去せし父或は母の兄弟又は姉妹たる卑属親、その半を相続すべし但しその兄弟又は姉妹中の一人既に死去せし場合においてはその子、その部分を相続する者とす（フランス民法７４９条）
第２１６条 父母既に死去せし時はその子及び死者の兄弟並に姉妹、その遺留財産を相続すべし（フランス民法７５０条）
第２１７条 子皆父母を同くする時は各自平等にその財産を分派すべし若し然らずして父母を異にする時は各その実父母の相続べき部分を相続すべし而してその中父母を同くする者はその父母の財産を相続すべし（フランス民法７５２条）
第２１８条 死者の兄弟又は姉妹の既に死去せし時はその子はその父母に代て財産相続を為すべし（フランス民法７４２条）若し死者、子孫無く、兄弟、姉妹無く、またこの等の者と卑属親無き時はその祖父母、財産相続を為すべし但しこの場合においては父の父母、財産の半を相続し及び母の父母、他の半を相続し又その半をこの等の者の間に平等に分派すべし（フランス民法７５３条）
第２１９条 尊属親中の一人死去せし場合においてはその子及びその他の卑属親は自己の権を以って父母の受くべき財産相続に関する規則に循いその財産相続を為すべし
第２２０条 父方又は母方の血属親中の一人、子孫無く死去せし時はその死去せし者の尊属親又はその尊属親の子、その部分を相続すべし但し卑属親の在らざる時は他方の者、その財産を相続すべし（フランス民法７４９条）
第２２１条 死者の尊属親の既に死去したる場合においてはその祖父母財産相続を為すべし若し祖父母の既に在らざる時は曾祖父母と順次に遡て財産相続を為すべし
○ 第４章 規則外の財産相続及び死者の配偶者の権
○第１款 私生の子
第２２２条 父母その子の出産の前、寺院において婚姻の公告を為すに因り又は婚姻の充許を受くるに因り又は「ブレートル」より寺院において婚姻式を行うの訟求を為すに因て公然結婚すべきの意見を陳述したる乎又はこの等の諸式を執行し随即に父に死去せし乎若くはその意望に関せざる原由に因り死に至る迄結婚を果たさざる時は法律上において私生の子にその父の親族の財産を相続するの権を与う（１８４５年５月２１日のデンマーク官令第９節○フランス民法第７４６条と相異なり〕
第２２３条 裁判所において公読を為したるに因り父より法律に従い私生の子を我子なりと認めたる時はこれを認める証書中にその子の権利を規定したる乎又はその権利をすこしも確定せらる乎ち知るを要す而して若しこれを規定したる場合においてその子はその父より贈与せられたる遺物即ち適出の子の受くべき半を決して超過す可からざる所の部分を得て満足せらるを得ず若又その証書中にすこしも財産相続に付きての処置をなさざりし時はその子は適出の子受くべき部分の半を相続すべし若又適出の子の在らざる場合においてはその財産の全部を相続すべし（フランス民法第７５６条）
第２２４条 私生の子の卑属親もまたその父の血属親の遺物を相続すべし但し唯々適出の子の受くべき部分の半を相続する者とす（フランス民法第７５６条第２節と相異なり）
第２２５条 母及び母の血属親の遺留財産は私生の子を我子のりと認める証書を裁判所において公読せざりし時と雖も適出の子と私生の子の間に平等にこれを分派すべし
第２２６条 我子なりと認められざる私生の子の遺留財産はその母及びその母の血属親これを相続すべし而してその父及びその血属親もまた適出の子たる時の如く、その遺留財産の一部を相続すべし（フランス民法第７６５条及び第７６６条と相異なり）
第２２７条 右に記したる規則は姦通の罪を犯したる父母の遺留財産を相続するを得ざる所の姦通の子に適用すべからず凡そ法律上においては斯くの如き子にはその養料と教育の費用とを給与するに過ぎざる者とす（フランス民法第７６２条）
デンマークの法律はすこしも乱倫の子に関する規則を含有せず然りと雖も法学士は乱倫の子は恰も私生の子の如くその母の遺留財産を相続することを得但し決して父より乱倫の子を我子なりと認めることを得ざる者と思考せり（ステンフェルド氏の附註）
○第２款 死者の配偶者の権
第２２８条 法律上より生じたる財産の共通は反対の契約又は約束無きにおいては夫婦の間に成立すべし但し然る時より、生存したる配偶者は所有の権利を以ってその共通財産の半を受け及び死者の財産を相続すべき他の人の受くべき部分に等き部分を法律に因り所有の権利を以って受くることを得べし但し入額所有権には非ざるなり又夫婦より投出したる金額は共通財産の一部たるを以って婚姻の契約書中特別例外と約束有るに非らざれば負債の精算を為すの際、これを取戻すことを得ず（フランス民法第１４００条）
第２２９条 死者その財産を相続せしむべき級の血属親を遺したる時はその者の部分は兄弟中一人の受くべき部分を超過すべからず又或る場合においても遺留財産の４分の１より多かるべからず但し２３の卑属親又はその他の者に為したる恩恵はこの例外たるべし（フランス民 法第１９０４条と相異なり）
第２３０条 死去せし配偶者にその子孫無き時は生存したる配偶者、その遺留財産の３分１を相続すべし但し離婚を為したる時は夫婦の間にその相続権を止絶すべし又夫婦分居の裁判言渡を受けたる場合においてもまた之に同じ（フランス民法第２９９条及び第３００条と相異なり）
第２３１条 母の死去せし後、父はその子の丁年たると幼年たるとを問わずその子と必ずしも財産分派を為すに及ばず而してその父の再婚する時に至る迄はその分派を為さざることを得べし但し父、その子の一人と婚姻契約又は他の約束の訳に因り財産分派を為さざるを得ざる時は格別なりとす（フランス民法第８１５条と相異なり）
第２３２条 夫は遺嘱の証書に因りその遺物を永く共同すべきの利益をその婦に確めることを得べし若しその証書の在らざる時は婦は裁判所より当今共通財産を分派すざるの弁許を受く又は信用するに足るべき証書に因り自から財産を管理するがため充分の能力有るべき旨の証定する時はその夫の財産をその幼子と分派せざるの充許の得くることを得べし
第２３３条 婦より幼者の養育教育の費用を供すべき旨を当然の後見人又は信任するに足るべき人より証定する時は夫の他の婚姻より生れくる幼子に付き婦はまた右の充許を受くることを得べし
第２３４条 生存したる配偶者は死去せし配偶者の他の婚姻より生れたる幼者に関する所の事に付き同上の権利を附与せらるることを得べし若し幼者の丁年なる時はその幼者は財産分派を訟求することを得べし而して生存したる配偶者は幼者の自から好みて財産分派な抛棄するに非すればその分派を拒否することを得ず
第２３５条 生存したる配偶者、その相続したる財産を他の相続人と永く共同する時間、別に財産相続を為し又は別段の贈遺に因て死去せし配偶者の遺留財産と混同せざるの権利有り但し然る時は直にその財産分派の訴訟を為さざるべからず
第２３６条 生存したる配偶者の再婚を契約する時はその相続したる財産を他の相続人と永く共同するの権を失う但しこの場合と右に記したる理由とに因り財産分派を為すべき場合においてはその生存したる配偶者は裁判所において遺留財産の精算を為すに及ばす自から遺物に付きての貸金及び負債を指示すべし而してその与に分派を為すべき者、これを精密と認めるにおいては自分の評価を為さしむべし
○第５章及び第６章 財産相続を肯する事及び肯せざる事（デンマークの法律においては財産相続を肯する事及び肯せざる事に付きての規則をすこしも設けざるものとす（ステンフェルド氏の附註）財産分派の事、死者より甞て受けたる贈遺を返還する事及び財産相続人、その相続する財産の価に至る迄の外負債を償はざる特権の事
第２３７条 左の場合においては財産分派の公けの管理人自から遺留財産の分派を処分すべし
第１ 財産相続にんなお幼年なる時
第２ 財産相続人失踪してその利益を監守すべき名代人をもいざる時
第３ 死者政府の司計官たりし時（フランス民法８１９条）
第２３８条 生存したる配偶者遺留財産を永く共同する時においては前条の場合いのため例外の規定あり
第２３９条 若し死者の確乎異論す可からざる当然の相続人又は遺嘱に因て設定したる相続人を遺留せらりし時は相続人たるべき者は法律上に定めたる期限内に裁判所に出席せざるを得ず（１８２２年７月５日のデンマーク官令）
第２４０条 財産相続人の定期内に出席せざる時はその相続人は財産分派及び財産相続の管理人に対してその権利を失うべし然れども遺留財産を得たる相続人に対しては全くその権利を存有す但しこの場合においては失踪者と看做ざるべし
第２４１条 財産相続人、皆丁年なる時は必ずしも官吏の公務上の関渉を受くるに及ばず而してその相続人は別段の約定無く相続を肯することを得べし然りと雖もその相続人、遺留財産及びその評価を知り得ざる時はその相続すべき財産の価に至る迄の外、負債を償わざる特権を以ってその財産相続人を肯することを得べし（１７６８年４月８日のデンマーク官令）但しこの場合においては遺留財産の管理及び分派は法官自からこれを行う者とす（フランス民法第８１９条、第７７４条、第７９３条○フランス民法第１８０３条と相異なり）
第２４２条 その相続すべき財産の価に至る迄の外、負債を償わざる特権はその相続人のため、その相続して得べき財産の価に至る迄の外、財産相続につき担当すべき負債を払わざるの利益を生ずべし但し利息はこの限に在らず（フランス民法第８２０条と相異なり）
第２４３条 財産分派の管理人は法律上に定めたる期限内に遺留財産の債主を裁判所に召喚せざるを得ず
第２４４条 債主の権は債主のその証書を出さざるに因り期満免除と為るべき者たり（フランス民法第８２０条第２項と相異なり）
この期満免除は債主の、その証書を出すがため、新聞紙において債主に召喚を為せし日より３箇月たるべし又死者の外国に関係を有しその債主の外国に在る場合においては１年と６週間たるべし（１７８５年８月２６日の官令及び１８１９年６月２日の官令）
財産相続人の、失踪者たるに因りその与に財産相続を為すべき者に対して己の権利を請求するは１０５年の期限内たるべし（１８２２年４月２日の官令及び１８３９年７月１１日の官令○フランス民法第７８９条と相異なり）
第２４５条 丁年なる相続人の己に属する財産中より遺物に付きての負債を償わざるを得ざる場合は例外の者とす
第２４６条 財産分派の法式に関する諸規則は訴訟法中にこれを包含せり
○ 財産分派の事に関する訴訟法の抄略
総て各人の死去は裁判所において２１０４時間にこれを公告すべし若しこれを為さざれば１００「エキユウ」の罰金を受くべし（１７９２年７月２日の官令）
財産分派の処置を為すべき裁判官は直に死者の財産に封印を為さしむべし但し父母を同じくする子の父又は母の死去したる場合においてはこの限に在らず
封印は貼付せし日より３１０日の後に非ざればこれを解除すべからず而して財産の目録書（件マーク国においては「レジストラシヨン」と称する者）は直に財産相続人と債主の面前においてこれを作るべし
財産相続の目録書を作りし後は遺留財産は悉皆裁判所の管理に帰すべし而してその裁判所は不動産に関する件に付き財産相続人と債主の利益において処置を為すべき者とす但し動産は死者の配偶者たると相続人たるとを問わず生存したる者これを保有するに止るべし
財産相続の重大なる時は裁判所に代て財産を管理せしむるため、管理人１員を命ずべし而してその管財人はフランス国の如き贈遺者の職務を行う者とす（訴訟法第９７６条）コツパンハツグに於いは財産相続人と債主の意見を聴きし後、裁判所において管財人を命ずべし然れどもその他の都府においては只、債主に限り管財人を立てるの権を有す（１８０９年３月２１日及び１８１４年３月２２日の官令）
次に債主は遺留財産の全額、１００「エキユウ」を超過せざる時は裁判所に出席すべきの呼出を受くべし但しその期限は３箇月と定め外国人に付ては１年と６週間まりとす而して 動産及び不動産は一般にこれを糶売に付すべし（生存したる配偶者の再婚の場合に付きての財産相続の巻第４章を３観すべし）
関係各人は糶売の全額を受取るべき者１名を任ず但し通常管財人を以って之に充つ而してこの受取人は糶売の全額を裁判所に交付し裁判所その金額を預金役所に附託し以って利息を生ぜしむべし又裁判所はその管理する遺留財産のため１個の簿冊を備有すべし」
財産相続人中又は債主の間に争訟の起りたる場合においては分派裁判所においてこれを審理すべし又若しその争訟の他人に関渉する時は管財人の願に因りこれをその他人の住したる地の裁判所に訴出すべし
呼出の期限及び裁判所の判決の後、死者の家資分散を為したる有るに非ざれば遺留財産を部分に分ち次の順序に従いこれを債主に配分すべし
第１ 財産を分ちたる配偶者
第２ 書入質の権を得たる債主
第３ 通常の債主
第４ その他証書を有せざる債主
遺留財産管理の費用及び埋葬の費用は不動産上にも先取特権を有し又家賃、醫師、薬舗の謝金及び１年極めの僕婢の給料は動産上に先取特権を有し、又公の受取人の財産を以って担保されたる政府及び邑等の賃金及び後見人の財産を以って担保されたる治産禁を受けたる幼者の賃金は通常の賃金よりも先●の権を有する者とす
６箇月間遺留財産を管理したる裁判所は１２箇月中に各権利者を招集し財産分派の遅延の原由を告くべし
総て分派の手続き終りし時は精算表に循い財産を分派すべし但し債主はこれを類別しその余部分を各人に分派すべし
然れどもその分派を為す前、裁判所においては分派のため、呼出を受けたる関係各人の面前において財産管理人の計算書を製すべし而して、関係各人その分派に付き不服の伴有る時は３ 箇月内にこれを控訴することを得べし
次に財産分派の証書を作るべし
裁判所はその管理を任せられたる遺留財産１切に付きその上等官衙に明細書を出し且つその決算を淹滞せしめたる原由を申陳すべし而して州長は毎年決算の審査を為し裁判所に過失ある時は非常の罰金を科せしむべし（１８２４年４月３０日及び１８４０年１月８日の官令○ステンフエルド氏の附註）
第２４７条 財産分派の管理人、遺物を受取りし時は財産の目録書（アンレジストラシヨン）遺物の評価及びその精算に付き法律の規則に循て処置を為すべし（フランス民法第７９４条及び次条と相異なり）
第２４８条 確定の分派を終りし時、財産相続人中、幼者又は名代人を任ぜざる失踪者ある時は財産相続人は分派の所ため抄畧書を包含する１の分派の証書を作るべし然れども相続人皆丁年者なる時は各自に財産分派の証書を作ること自由たるべし（フランス民法第８１９条）
デンマークの法律においては丁年者なる相続人の遺留財産を保有と為すべき法式を指示するためすこしもその方法を規定せざる者とす（ステンフェルド氏の附註）
第２４９条 財産分派は関係各人等の随意の法式及び方法を以って行うことを得べし但し債主は法律上に定めたる方法に因り己の権利を行うべし
第２５０条 財産相続人は各、その得る所の財産の割合を以って財産相続に付き担当すべき負債を払うべし但し死者特別に債主に対してその相続人に連帯の義務を負わしめざりし時は格別なりとす（フランス民法第８７０条及び第８７３条と相異なり）
第２５１条 甞て死者より生存中の贈遺として得たる物件を財産相続の時に至り返還するは唯、卑属親の間にのみ行わるべき者とす（デンマーク法律第6章第2款○フランス民法第８４３条○フランス民法第８５７条と相異なり）
第２５２条 父よりその１子又は数子の利益のため費したる金額の嵩みたるもその教育の既に成就したる時はその遺留財産の中よりこれを差引くべし（フランス民法第８５１条及び第８５２条と相異なり）
第２５３条 右の金額を証定するには父の書類を以って足れりとす然りと雖も若しその消費したる金額の評価の過常なるか或は曖昧なるか或は景情に従い遺物の前貸を目的とせざりし時は財産分派の管理人、これを処分するの権を有すべし（フランス民法第８５０条）
第２５４条 子は常にその甞て得たる所の品物又は前借したる所の品物をその儘返還し或はその価額を算還するの権有り（フランス民法第８５８条）
第２５５条 若し財産分派の管理人が緊要なる証拠物を有せざる時は死者の血属親及び朋友にその証拠を尋問することを得べし而して死者の血属親及び朋友は己の知り得たる所の証拠をその財産分派の管理人に教えざるを得ざる者とす
第２５６条 若し前貸の金額、幼者の相続すべき遺留財産の部分を超過する時は幼者は決して遺留財産の一部をも要求することを得ず但し真に前貸の名義にて受取りたる金額はこれを返還するに及ばず（フランス民法第８４５条と相異なり）
第２５７条 返還は財産相続人中の一人より他の相続人にこれを為す可く（フランス民法第８５７条）死者の債主にこれを為すに及ばず
第２５８条 然りと雖も債主に対して奸曲を行い及び遺留財産に付き奸曲の処置を行いし時はなお債務を償却するあたわざることの著明なる人よりその財産の全部又は一部を贈遺として人に与えたる時のごとくその返還を要求することを得べし
第２５９条 父の死去せし後、母よりその１子又は数子に前貸したる金額はその子の相続すべき財産の部分中よりこれを差引くべし
第２６０条 共通財産管理人の分限を以って母の後夫より子に前貸を為したる時は前条と同く相続すべき財産の部分中より前貸の金額を差引くべし
第２６１条 遺物前貸の金額は父または母の財産相続の際、前貸を為したる子の既に死去したりし時はその相続人より自己の受くべき部分を差引きこれを返還すべし（フランス民法第８４３条）
遺物全体に関する事に付て１８４５年５月２１日の官令、デンマーク民法第５章、第２章、第４章、第８章、第９条及び第１０条及び第１４章、第４６条を３観すべし
○第２巻 生存中の贈遺の証書及び遺嘱の贈遺
デンマークの法律においては遺嘱の贈遺と贈遺「モルチノス、コウザー」との間に区別を設定し而して唯贈遺者の死去の後に至て贈遺その効を生ずべき時は互に同１の規則を適用すべし但し單に贈遺の契約の性質上より要する所の取捨を有する者とす
遺嘱者の権利を拡張したるクリスチヤン法律第５条、第４条及び１８４５年３月２１日の官令は該事項を統理する諸規則を包含せり（ステンフヱルド氏の附註）
第２６２条 凡そ１８歳の齢に達して精神の昏迷せざる各人の子又は卑属親を遺留せざる時は王の充許を要すること無く全く他人にその財産を贈与するの権有す（フランス民法第９１条）
第２６３条 夫婦中の１は法律に因り他の１に配布されたる適法の部分に反して他人にその財産を贈与することを得ず但し他の１より特許を得たる時は格別なりとす（フランス民法第１０９４条と相異なり）
第２６４条 直系の卑属親無き者は啻に女子の受くべき遺物の部分を男子の部分と同等に至る迄増多することを得ざるのみならずなお他人又は寺院、学校又は貧民のため贈与することを得ず（フランス民法第９１３条と相異なり）
第２６５条 「ゼルウデルブウデル」或る利益を所得と為す田夫の義は遺嘱を為すに付きての格別なる権利を有すべし但しその権利は１７６９年５月１３日、１８３７年１１月２２日及び１８４７年３月１７日の官令に因りて許与せられたる者とす
第２６６条 父その直接の相続人の利益のためにその財産の全部又は定めたる一部をその子の一人に贈与し、この子をしてその与に財産相続を為すの義務を負はしめたんとする時は司法卿にその旨を具申すべし而して司法卿はその贈与の諸相続人に利益と為り且つこの方法に因て各相続人が遺留財産の分派に因り配布されし部分を有することの確証有りし時はその充許を与うる者とす（フランス民法第１７１５条及び次条と相異なり）
第２６７条 土地の或る種類「サドガールド、セガール」の所有者はその卑属親の中にてその土地「サドガールド」を与うべき者のためその遺物の半を贈与するはその余額の４分の１より多かるべからず（１８４９年５月１１日のフランス法律に同じ）
第２６８条 父母は同く実益を確むるを目的としてその卑属親にその財産を贈与するの許を受くることを得べし（フランス民法第９１３条と相異なり）
第２６９条 故に父母はその子の、入額のみを所得と為してその元金はこれを譲渡すことを得ざる方法に因りその財産の全部又は一部を贈与することを得べし
第２７０条 封土、食邑又は「フ●デイ、コムミイ」の制度は向後禁止せられたり（建国法第９８条）
第２７１条 父母の遺物中にて法律上その子に貯留すべき全部又は一部をその子に得さしめたる所の遺嘱の贈遺と為すには必ず父母共にこれを承諾するを要す（フランス民法第９１３条と相異なり）
第２７２条 父はその身に属する財産を遺嘱の贈遺と為さんとするには右の承諾を必要なりとせず然れどもその財産の若し贈与中に包含したる時は必ず母の充許を受くるを要す
第２７３条 母は父の生存中右の如き贈遺を専行するを得ず但し父の死去の後母は１家の長としてこの権利を所有すべし
第２７４条 遺嘱贈遺の証書葉公証人１名或は証人２人の面前において公然の性質を帯びざる諸人これを作り遺嘱者之に姓名を手署すべし若し遺嘱者読むことを解せざる時は公証人或は証人の面前においてその遺留贈遺の証書を読聴かし而して明瞭にその次第を証書中に附記すべし但し年月日はこれを記するを要せず然れどもこれを記載するは他日の備虞たるべし（フランス民法第９７１条ないし第９７４条と相異なり）
第２７５条 若し遺嘱者急病又は危篤の場合において遺嘱の贈意を為す時は証書に因て遺嘱の贈遺を為すことを免るるを得べしこの場合においては証人２名の立会の上口演を以って遺嘱の贈遺を為すことをを得べし而してその証人は直に１の証書を製し之にその姓名を手著う可但しその証書は証人の面前において遺嘱者の口授したる贈与を包含する者とす
第２７６条 若し遺嘱者の死去せずして快復したる時及び遺嘱贈遺の証書のため規定したる法律上の方式に循い翌月内にその贈遺を再行せざる時はこの遺嘱の贈遺はこれを無効の者とみなすべし
然りと雖も不動産を贈与することに関する時１家内に不動産を保存せんがためには父はその遺物中に動産のみを有する時と同じ限制を受くるに及ばず（ステンフェルド氏の附註）
第２７７条 凡そ遺嘱贈遺の証書は後に記したる遺嘱贈遺の証書に因り或はその証書を破棄したるに因り或は遺嘱者その意を変更したるがためこれを取消すことを得べし但しこの終の場合においては決して公告を為すに及ばず又公証人の面前において証書を製するに及ばず（フランス民法第１０３５条）
第２７８条 遺嘱者の財産中にて別に指定したる品物の贈遺を受くる者は遺嘱者の負債を自から担当するに及ばず然りと雖も相続人の権利を有すること無かるべし（フランス民法第１０２４条）
遺嘱者の財産中にて別に指定せざる一部を受くる相続人は総ての権利を享有し而して死者の総ての責を充たすべし但し贈遺を受けたる者は死者の負債を償うに及ばずして相続人これを担当すべし（フランス民法第８７０条及び第８７１条）
第２７９条 遺嘱の贈遺と為したる所有物を通常方式２循い書入質と為したる時は贈遺を受けたる者はその物件の差留を除去せんことを要求し及びその贈遺の釈放を要求するの権有り但し書入質の権を有する債主及びその他の債主は財産相続人よりその償を受くべし（フランス民法第１０２０条と相異なり）
第２８０条 贈遺を受けたる者は法律上の公告「ブロクラマー」を為し終りたる後に非ざればその贈遺の利益を要求するを得ず但し死者の財産を了知するは唯この時に在りとす（フランス民法第１００４条と相異なり）
第２８１条 遺嘱者は王の充許を得るに非ざればその遺嘱の諸事を管理する者を任ずることを得ず而してその充許の有らざる時若し財産相続人の幼年なる時は財産分派の通常の管理人財産の分派を為すべし（フランス民法第１０２５条と相異なり）若し財産相続人丁年なる時は裁判所の関渉無く相共に財産相続を規定することを得べし（フランス民法第８１９条）
○第３巻 契約及び総て契約より生ずる責務
○第１章及び第２章 前加規則及び契約を法に適したる者と為すに必要なる条件
総て契約より生ずる責務を統理するデンマーク法律の原則はその重要の点に付てはフランス民法中に布告したる原則と同１なり但し人若しその原則中に加えたる改正取捨を知得せんと欲せば唯、特別の契約を研究するに在りとす（ステンフエルド氏の附註）
第２８２条 総て正実に取結びたる契約は丁年者、自由にその姓名を手著し且つ法律に背き及び人民の風儀を害すべき箇条を包せざる時はこれを執行するの義務有り（デンマーク法律第５条、第５１条及び第１条及び第２条○フランス民法第１１３３条）
第２８３条 法律上においては契約を適法の者と為し及び契約を結びたる双方の承諾を証定するに必要なる条件として発誓式を規定せず
第２８４条 然りと雖も特別なる２１０３の場合においては法律上において契約を書面に記すべきことを規定せり例之は船長雇入の契約、海上請合の契約、船舶借入に契約、会社の或る契約、船長とその乗組人の間の雇入の契約、船荷救助の契約及びその他の契約等是なり（デンマーク民法第４条、第１条、第２条、第６条、１８０７年７月１９日のデンマーク官令第１節、１７１７年４月２３日の官令第１５節及び１８３６年１２月２８日の官令第９節）
第２８５条 裁判所において公読すべき契約の適法の者たるがためにはこれを書面に記すべし
第２８６条 契約を結びたる者読書を解かざる場合においては（デンマーク法律第５条、第１条、第７条）証人２名を選任しその面前において証書を記すべし但しその証書はこれを本人に読聴かし然る後之に本人の印又は記号「ボメルク」を押加すべし
第２８７条 契約は一般にこれを証券紙に記すべし
第２８８条 幼者は契約を結ぶことを得ず但しその契約の幼者の利益と為り及びその対手者のみ義務を負うべき場合に於いは特別なりとす（フランス民法第１１２５条）
第２８９条 或る場合において幼者が丁年と偽り権利者を欺き法律に背く契約を結びくる時は未だ丁年に達せずと雖もその契約は適法の者たるを得るの妨害と為ること無し（フランス民法第１３０７条と相異なり）
第２９０条 管財人の管理を受けたる者は総てその管財人の許諾を得ずして契約を結び財産を売譲することを得ず（フランス民法第１１２４条）
第２９１条 婚嫁したる婦はその夫の許諾を得ずして契約を結ぶを得ず但し但し既に記載したる場合のその契約が共通財産の利益と為り及び至急を要したることの明瞭なる時は格別なりとす（フランス民法第１５３８条及び第２１７条）
第２９２条 右に記したる人の外、なお契約を結び金額を借り又は或る方法に因り物権を目的として己の財産を契約するを得ざる者有る而してこの等の者の中には「フレドフオーリンジユ」これを詳言すれば生涯、衣食及び及びその他生活に必要なる物品を得るがため己の現今所有し及び将来所有すべき総ての財産、物権を目的として他人に約束したる者有り（デンマーク民法第５条、第１条、第９条ないし第１２条）
第２９３条 家資分散、裁判の言渡又は義務を行わざるに因りて治産禁の公告を受けたる等の人はその権利者を害すべき契約を結ぶことを得ず而して裁判所において公然裁判を読聴かせたる時は裁判所において公正の和解証書を公読したるに等しき効有りとす（１７３８年１月１８日に貼紙１８０４年５月２５日の貼紙第５節１８２８年１２月３日の貼紙第７節、第５節、第３節、第１８節及び１８３９年１１月２７日のデンマーク官令○フランス民法第１１６７条○フランス商法第４４３条○フランス刑法第２９条）
○第３章及び第４章 契約の義務の効及び契約の義務の種類
第２９４条 フランス民法第１１５６条ないし第１１６０条に同じ
第２９５条 法律上に規定したる方式に循い製したる総ての契約書は契約者をしてその互に契約したる事を行わしむる者とす
第２９６条 然りと雖も財産所有の権、書入質の権及びその他の物権は契約書の力のみに因り契約者の１より他の１に転移する者に非ずしてその契約書にはなお特別の証書を添附せざるべからず即ちその証書たるや動産に就ては一般に契約の目的たる物権の保有を他の１に得さしむべきことを記載する者たる然れども若し物件を他の１に交付せざる中、意外の事に因りてその物件の滅尽せし時は結約者はその損失せし各自の部分を担当すべし（フランス民法第１３０２条及び第１３０３条と相異なり）
第２９７条 契約を履行せざる場合において損害を受けたる１の者はその契約を履行せざるに因り己の受けたる損害のため他の１に対しその償を要求することを得べし（フランス民法第１１４７条）
第２９８条 定れたる期限に償うべき金額を遅延したる時は損失の償を得べき訴を搆起せずと雖もその息銀を払うべきの裁判言渡有るに至てはこれを搆起する者たり但しこの息銀は和解委員の面前に出訴せし日より起算すべし（デンマーク法律第５条、第４条○フランス民法第１１５３条）
第２９９条 連帯の義務は特別なる各個の場合の性質に属し而して定りたる或る契約に就てのみこれを適用すべし決して一般に連帯の義務に就き適用すべき規則有ること無し（フランス民法第１１９７条及び次条と相異なり）
第３００条 分つべき義務及び分つ可からざる義務に就てもまた右に同じ（フランス民法第１２１７条と相異なり）
第３０１条 実際に現行する過代の約束とは契約の執行を保障するがためその契約の如く執行せざる場合においてはその償として或る過代を出だすべきことを定むる約束を云う（フランス民法第１２２６条）
この或る過代は時の景状に従て変換す而して裁判官のこれを定むる者たり
第３０２条 或る過代を出すべきの約束を以って政府と契約を結び義務を負いたる時、義務者が通常の義務と或る過代を出すべきの約束とを全く同時に履行せざるに因りその違背者即ち義務者を云うの動産及びその他の財産を差押えこれを法律上において売却すと雖も過代の額に充つるに足らざる時はその違背者を唯、●包と水とを給与する禁錮の刑に処すべし（１８３６年１１月１６日の官令）
第３０３条 或事を為すべきの義務又は為す可からざるの義務を裁判言渡に因り確定する時は裁判官はその事を充たすべき期限と一方即ち義務者の者の過代の性質を定むべし若しこの過代の罰金なる時は損害を受けたる１の者はその罰金の言渡を受けたる対手者の義務を全行するに至る迄これを拘獄せしむべきことを要求するの権有り然れども若しこの方法を為すを得ざる時は原告人はこの方法を中止し而して新たに訴訟を為すことを得べし（１８４２年４月６日のデンマーク官令○フランス民法第１１４２条フランス訴訟法第１２６条と相異なり）
第３０４条 若し裁判言渡において或事を為す可からざる旨を命ずる時は原告人は●誤裁判所に被告人を呼出すの権有り而して●誤裁判所の官吏は原告人の特別の願に因り原告人のその権利を行うがため総て立会を為さざるを得ず
第３０５条 負債の証書には利息及び賦還（年賦月賦等を云う）の払方を遅延したる時は負債の全額を償うべき刑の言渡を直に受くべき条款を記載すること少なからず（フランス民法第１１８０条と相異なり）
第３０６条 幼者の財産に関する時は義務を生ずべき証書に右の条款を記入すべし（１８２８年１月２５日に官令第１１節）
○ 第５章 義務の消散する事
デンマークの法律は契約に因りて生じたる関係に就てはフランス民法の規則の如く明瞭なる規則を包含せず
デンマークの法律はその章に記載したる事項に付てはフランス民法に因り確定されたる原則を採用せりけだしその原則はフランス民法に因り確定さらたる者のみならず一部は正理に基き又一部は特別の契約のためには法律に因て確定されたる規則に基きたる者なり（ステンフヱルド氏の附註）
第３０７条 随意の財産抛棄は家賃分散と異なる者たり何となれば仮令い義務者動産を保有すと雖も１時その義務を尽すことあたわざる時、財産分派の管理人が権利者に義務を尽し得るがため、その動産を自由に放擲する時財産抛棄を為すに由ればなり（デンマーク法律第１款第5節○フランス民法第１２６５条）
第３０８条 家賃分散とは義務者その義務を行うあたわざるがため財産分派の管理人之に干渉する時是なり而してその旨を公告す但し各債主のその権利の軽重を調査するは方にこの時に在りとす（フランス商法第４３７条）
第３０９条 随意の財産抛棄とは法律上権利者に与うる所の義務者の財産差押え加之義務者を禁錮するの権を全く財産分派の終るに至る迄中止し得るがため法律上において義務者に与うる所の恩恵を云う抑、この恩恵たるや、義務を尽すあたわざる場合においてこれを行う者たり（フランス民法第１２６８条）
第３１０条 義務者はその財産を抛棄すと雖もその抛棄したる財産の償に至る迄の外、義務の釈放を得べからず但し抛棄したる財産の償、その義務を全く尽すに足らざる時義務者後に他の財産を所得と為すこと有るにおいてはまたその財産を抛棄してその義務を全く尽すに至り始めてその抛棄を止むべし（１７０２年１０月２８日及び１７５７年１１月１８日のデンマーク官令○フランス民法第１２７０条末項）
第３１１条 随意の財産抛棄又は家賃分散を規定するがために財産分派の管理人之に干渉する時はその干渉の事を裁判所において公読し及び新聞紙上に掲載してこれを公衆に告知すべし（１８４１年４月１０日のデンマークの貼紙）
第３１２条 契約を取消すべき訴訟を為し始むるがためには１定の期限有ること無し但し或る場合においては特別に訴訟を為すこと無くして契約を取消すことを得可く又契約を結びたる１より契約の執行を裁判所に訟求する時は異存を述ることを得べし（フランス民法第３０４条と相異なり）
幼者又は後見を免れたる幼者の結びたる契約に就ては前の第２８８条及び次条に記載したる事項を３観すべし
第３１３条 契約を結ぶ者は総てその１の法律上に規定したる契約を結ぶべき権利を有したる乎又は監督人の許諾を得たる乎を確認せざるべからず但しこの監督人の許諾を得ることに就ては決して特別の法式を設定せざる者とす
第３１４条 総て管財人の管理を受くる者或は幼者に対して権利を得んとするにはこの等の者の契約を取結ぶがため法律上に規定したる権利を享有したるる称し又は有権者の許諾を得たれと申述したるの●にては足れりとせず（１８３９年４月１０日のデンマーク官令○フランス民法第１３０７条）
第３１５条 幼者又は管財人の管理を受けたる者の取結ぶ所の契約は総てその契約のため損害被らざる時と雖も決してその責を負はしめざる者とす（フランス民法第１３０５条と相異なり）
第３１６条 財産を売却すべき権利無き者は総て償を為すこと無くしてその売却したる財産を取戻すことを得べし（デンマーク法律第３条、第１０条○フランス民法第１１０８条）
第３１７条 幼者又は治産に禁を受けたる者に後見人又は管財人の立会無くして物品を渡したる時はその幼者の丁年に至りし時と雖もその物品の取戻を要求することを得ず斯の如きは仮令い幼者の承諾を得る時と雖もその前貸の金額は総て幼者を騙斯するの目的を以って渡せし者と思量すべし（１７５４年５月１４日のデンマーク官令○フランス民法第１３１２条と相異なり）
○ 第６章 義務の証及び義務を尽したるの証
第３１８条 契約を適法の者と為すには、公証人の面前において記したる証書又は特別の法式にに循て記したる証書或は單に姓名を手著したる私の証書あるを必要とせず然れども契約を証明するこの方法は証書の手記及び姓名の手著を誠実なりと確認するを以ってのため実際においては採用せらるる者とす
第３１９条 証書の手記又は姓名の手著に認めずと述る場合においてこれを述る者、誓を為すにおいてはその義務の釈放を得べし（デンマーク法律第５条、第１６条）但し誓を為すべきの求を受けし者のこれを肯せざる時は誓を為すべきの求を為したる者は乃ち訴訟審判の誓を為さざるべからず（フランス民法第１３５８条ないし第１３６１条及び第１３２２条）
第３２０条 或る場合に因り家内の簿冊又は書類はこれを記したる者のため証と為ることを得べし（フランス民法第１３３１条と相異なり）
第３２１条 裁判官の充許を受けて定式に循い記したる商買の簿冊は証と為ることを得べし但し義務者に対して更に他の証拠の成立せざる時又義務者が唯、誓を為すに因りその義務の釈放を得べき場合肯なり（フランス民法第１３２９条）
第３２２条 義務者の死去せし乎或はその他の原由に因り総て誓を為す」あたわざる場合においては商買は自から誓為して申陳したる事実を証明するの権あり（デンマーク法律第５条、第１４条、第４８条、第４９条及び第５０条、１８３２年６月１日のデンマーク官令）
第３２３条 右は専ら１より他の１に対し証書の正本を検●せんと要求するを得べき特別の場合なりとす
第３２４条 証書を公然読聴かせたる時は証書の正本を収票義務を得たる証書と共に書記官の職を行う官吏に交付するに非ざれば書入質の簿冊中これを塗抹することを得ず
第３２５条 証書の正本は義務の高を全く償う所の義務者に渡すべし（１７９８年２月９日の官令○フランス民法第１２８２条）
第３２６条 証書の正本は母銀の一部を償う毎にこれを示すべし而して権利者はその証書に受取る所の金高を記し別に之に就ての収票を与うべし即ちこの収票は姓名を手著したる者即ち権利者にその責を負わしむべき者たりと雖もこのを以って第３の人に対抗することを得ず然りと雖も利息の払方に至ては特別の●票に因り義務の釈放を得せしめ得る者たる時は決して右の権利者のみに責を負わしむべからず（フランス民法第１３３２条）
第３２７条 権利者対抗す可からざる意外の事に因り証書を失いし時は法律上の期限内にその証書を保有したる者はその所有権（即ち権利者の所有権）に就て権利者の権利を証明すべきことを新聞紙上に公布せしむるの充許を受くることを得べし然れども若し現出する者有らざる時は原告人（即ち権利者）は証書の失効を訴うることを得べし（１８２３年１０月７日のデンマーク官令○フランス民法第１３４８条第４項）
第３２８条 公債に就ては若し公債簿に登記されたる人名の変異したる時はその人は公債局の管理をを受けて利息の第１の払期限より３加月内に意外の事に因りその証書を失効したるの公告を為さざるべからず若しこれを為さざる時はその権利の執行を請求すと雖も受理せられざる者とす（１８４４年６月２１日のデンマーク官令）
第３２９条 義務の証書無しと雖も義務を肯せざる義務者に対して確実なる思料の成立ちたる時は職務上において義務者に誓を命ずべき乎否ざる乎を決定する裁判官の知識と推測とに委し思料せしむべし然るに若し義務者において誓を為すことを拒む時は義務を尽すべきの裁判言渡を受くべし（フランス民法第１３５３条及び第１３６１条）
第３３０条 契約を結ぶ各人は争訟の判決を訴訟審判の誓に帰せしむべき適当なる方法を契約することを得べし（デンマーク法律第１条、第１４条、第６条及び１８２３年１１月５日の官令○フランス民法第１３６０条）
○ 第４巻 契約無くして生ずる義務
第３３１条 フランス民法第１３８３条に同じ
第３３２条 父母は凡てその子の他人に損害を加えたる時と雖も己の怠慢又は過失に出でざる時はその損害の償を為すに及ばず（フランス民法第１３８４条と相異なり）
第３３３条 家長もまたその僕婢の他人に加えたる損害の償を為すに及ばず（デンマーク法律第３条、第１９条、第１条○フランス民法同上と相異なり）
第３３４条 獣類の所有者はその獣類の人に加えたる損害の償を為すべし（デンマーク法律第６条、第１０条、第３条）然りと雖も１個の人の飼養したる野獣の人に加えたる損害とその他の獣類の人に加えたる損害とにおいては自から差異の在る有り即ちその第１の場合においては獣類の所有者よりその獣類の人に加えたる損害を全く賠償し第２の場合においては時の景情に従い２１０３の更改を為すを得る者とす（フランス民法第１３８５条）
○ 第５巻 婚姻の契約書及び夫婦双方の権利
拿破崙法典中に詳記したる婚姻の契約書及び夫婦双方の権利の本義はデンマーク法律においては決して斯の如く特別、確実なる規則の目的とせず但し特別の場合においては法律上に規定したる財産共通の契約書に就ての総則と財産相続及び遺嘱の贈遺に就ての法律とに基づき判決する者とす
この等の事項に就ては既に詳記したるが故に今この章においては唯、一般の或る注目を附記するを以って足れりとす（ステンフエルド氏の附註）
第３３５条 婚姻の契約書は財産に関しては法律上に定めたる方法より他の方法に因て夫婦双方の権利を確定し及び婦の現今所有し又は将来所有すべき総ての財産に就き法律上夫に与うる所の権利を更改し又はこれを確実ならしむるを目的とす
第３３６条 婚姻の契約書は通常、結婚の前にこれを記すべし而して夫は凡そその婦と契約を結ぶに非ずしてその婦の父又は後見人とこれを結ぶ者とす又その契約書の法に適したることを確定するには一般に国王の制可ち受くるを必要とす但しその契約書は公然読聴かせし上に非ざれば第３の人に対しその効を有せず而してその契約書の制可を得るの後に至ては夫婦は最早これを取消し又は更改することを得ず（フランス民法第１３８７条、第１３９４条及び第１３９５条）
第３３７条 法律においては夫婦の間に財産共通の法を規定せず但し契約書に因て特にこれを約定したる時は格別なりとす（フランス民法第１３９３条）
第３３８条 夫の死去せし時、その負債は遺留財産を以って償還すべき者にしてその婦は己にこれを負担するに及ばず但し婦、その夫の明白なる遺嘱書又は特別の充許に因りその幼子と遺留財産を永く共同する時は格別なりとす
第３３９条 生存したる配偶者遺留財産を永く共同し而して直に権利者に負債を償はす又は負債の払期限に至り相当の保証人を立てずと雖も権利者は財産分派の管理人の干渉を要求するの権無し
第３４０条 「フヒデイ、コムミイ」訳義前に出づの条目に因り婦が不動産の所有権を保有する時はその夫は不動産の管理人にしてその入額は共通財産に属すべし但しその●有権は全く之に属せざる者とす
第３４１条 離婚の場合においては財産分派の管理人の指揮を受け、法律に規定したる方式に循い財産を分派すべし
第３４２条 夫婦は協議の上或る条目に循い和議の財産分派を承諾することを得但しこの際権利者の利益に必ず法律上に定めたる延期内に財産分派に干預して自己の権利を喪失せざるに在り
○第６巻 売買
○第１章 売買の本義及び法式
第３４３条 売買の契約書は唯、売主より買主に人権を与うるのみにして物件の真の所有権は特別の所為に因りこれを得せしむこれを詳言すれば動産に就てはこれを保有せすむるに因り又不動産に就ては裁判所において公読すべき者とす（フランス民法第１５８３条と相異なり）
第３４４条 特別の物件を売買し及び物件を１纏と為し又はこれを度量して売買する時は同上の規則に循うべし（フランス民法第１５８５条と相異なり）
第３４５条 売主と買主との間売買を為し了し而して買主より手附金を渡せし上は買主は物件を所有と為すべし故に手附金を渡したる者はその手附金を売主に全く抛与すと雖も最早自由にその契約を破棄するを得ず又手附金を受取りたる者もその手附金の２倍を返ずと雖も同く自由にその契約を破棄するを得ず（フランス民法第１５８３条、第１５９０条と相異なり）
第３４６条 法律上においては売主と買主との間に売買の費用を担当すべき者を確定せず但し唯、契約書にこれを記載すべし（フランス民法第１５９３条と相異なり）
○ 第２章及び第３章 売買を為すことを得べき人及び売却することを得べき物件
第３４７条 一般に契約を結ぶべき権利を有する者は何人に限らずまた売買を為すことを得べし（フランス民法第１５９４条）
第３４８条 然りと雖も或る特別法の定むる所に因れば人の或る身分上よりその権利の上に影響を及ぼす者有り即ち後見人官吏及びその他の或者は自から買入人と為すを得ず故に若しその買入人と、為る時はすこしもその効無かるべし（デンマーク法律第３条、第１７条、第２３条、第５条、第２条、第８２条、第３４条○フランス訴訟法第７１１条）
第３４９条 フランス民法第１５９８条に同じ
第３５０条 フランス民法第１６９０条に同じ（１８４５年３月２１日のデンマーク官令第１４節）
第３５１条 売買の契約を執行するの前にその売却したる物件全部の滅尽せし時はその契約の有効と無効とはその時の景情に循うべし然れども唯、その物件一部の滅尽したる時は買主の、その損失を負担すべき乎将た売主の、これを負担すべき乎は裁判官の判決に任ずべし而してこの等の場合と並に物件の唯、損壊したる場合とにおいては滅尽したる部分又は損壊したる部分は主たる部分なるや否やを区別すべし（フランス民法第１６０１条と相異なり）
○第４章及び第５章 売主の義務及び買主の義務
第３５２条 動産の引渡は保有と為さしむるに因りこれを行い及び不動産の引渡は所有の証書に用立つ所の公正の証書を交付するに因りこれを行う抑、その証書は「スタジヨイド」と名けたる者にして売主よりこれを引渡すべし而して売主は之にその証書の力に因て売買を為し了り及び引渡を行いしことを登記すべし但し交付したるその証書を第３の人に対抗せしめんとするには法律上に定めたる期限の終る前に裁判所においてこれを公読すべし（クリスチヤン法律第５条、第３条、第２８条）然る時は公読の日より有効の者たる可く加之この日附は期限内に公読せられざる他の旧き証書にも適用する者とす（フランス民法第１５８３条と相異なり）
第３５３条 所有の証書「スクジヨウド」は法律上に定規したる期限内に公読せずと雖ども法律の目よりこれを見る時はその有効たるを失うこと無し但し唯、この法式を履行せざるに因りその証書はこれを第３の人に対抗することを得ざる者とす（フランス民法第１６０５条ないし第１６０７条）
その証書の公読は不動産所在の州に在ては姓名を手著したる日より裁判所において第１又は第２の会議席にてこれを為すべし但し若しこの不動産の他州内に在る時は第３又は第４の会議席にてこれを為すべし（ステンフヱルド氏の附註）
第３５４条 ２個の証書「スクジヨウド」同１の日附にして同日に裁判所において公読せられたる時は互に同等の権を有してすこしも優劣先後の別有る無し故にその証書「スクジヨウド」は全く売買の契約書と異なる者たる抑、売買の契約書の公読たるや決して真の権利を附与する者に非ずして唯、売主がその以前の不動産を売譲し又は書入質と為すを得ざることを公衆に告知せしむるに用立つ者たり（フランス民法第２１８１条と相異なり）
売主より買主に対し為すべき保障はデンマーク法律第５条、第３条、第１１条及び第１２条並に第２９条第３２条及び第３１条中に確定せる而して売主は知り難き不●の箇所（フランス民法第１６４１条）又は土地の義務の如き不動産の負担する所の義務のために保護を為すの責有り
第３５５条 同１の土地又は田畝を２人の買主に売却する者は８週内に終の買主に同償の田畝又は土地を供せざるを得ず若し売主これを供することあたわざる時は先づ売却したる償を還し次に賠償の名義において評償人の評償に循い１箇年の入額を払はざるを得ず（デンマーク法律第５条、第３条）
買主の売主との間の特別の義務及び相互の義務は多くは契約の一般の規則に基かざるべからず何となればデンマーク国においてはこの事項に付き拿破崙法典の対照の章に記載したるが如く明亮確実なる条目の現存せざるに因ればなり（ステンフヱルド氏の附註）
第３５６条 若し買主が協議せし代金を払うをその義務を尽くささる時は売主が売却したる物件を引渡さずして己の義務を尽すことを拒む時は損害を受けたる１の者はその時の景情に循い売買の契約を取消し又は損失の償を得んことを訟求することを得べし（フランス民法第１６１０条及び第１６０１条）
○第６章 売買の契約を取消す事
第３５７条 物件買戻の権を約束する売買の諸要件は法律上より生ずる者に非ずして
売買の契約書中に記載せる条款に属する者たり而してその契約書の、第３の人に対し効有らしむるためには裁判所において公読したりしことを要す（フランス民法第１６５９条及び次条と相異なり）
第３５８条 法律は又１のため損失ある原由又は物件の実価と売却したる代金との間に不権衡有る原由のため売買の契約を取消すことに関する事項を規定せざる者とす（フランス民法第１６７４条及び次条と相異なり）
○糶売の事
糶売を為すに付き遵守すべき法式は財産差押及び財産相続と厳に結合する者なるが故に訴訟法と同時に論究せざるを得ず故に吾儕は唯、茲に單なる条目のみを掲載すべし（ステンフヱルド氏の附註）
第３５９条 共通財産を互に協議して分派するあたわざる時はこれを糶売と為すべし但し糶売に付ては官吏これを担任すべき者とす故に官吏は法律上に規定したる公告を監察し及びこれを新聞紙上に掲載しえ大に公衆をして競争普知せしむるを要す（フランス民法第６８６条）
この等の官吏は通常、都府においては予め命ぜられたる者とす但しその官吏の在らざる時は初審裁判所の裁判官その職務を行う者とす（ステンフヱルド氏の附註）
○ 第８章 義務を得べきの権利及びその他の権利を人に移す事
第３６０条 権利の譲渡はこれを渡す者とこれを譲受たる者との間に取結びたる契約に依てこれを行う者とす（フランス民法第１６８９条及び第１６９０条）
第３６１条 権利を譲受けたる者の身分、義務者に関係無きにおいては義務者の承諾を得るを必要とせず但し他人の不動産の入額所得権又は人の労力を要求する権利に関する時の如き義務者に関係ある場合においては義務者の承諾を得るを必要とす（フランス民法第１６９０条）
第３６２条 一般に義務を得べきの権利又はその他の権利の譲渡を為したる者はその譲渡の時に当り唯、その権利の現存することのみを保障す可く而してその義務者の義務を尽し得べきことを保障するに及ばず（フランス民法第１６９３条及び第１６９４条）
第３６３条 之に反して保証証書「スカデスロアー」に保証すべき旨を記入して権利を譲渡したる者は啻にその譲渡したる物件の現存することを保証するににならず又義務者の義務を尽し得べきことをも保証すべし（フランス民法第１６９５条）
第３６４条 保証したる譲渡を受けたる者は義務を尽さざる場合において義務を得べき権利の総ての償還を要求し及び息銀並に費用の払方を要求することを得べし但し商業の証票及び為替手形の如き義務を得べき権利の或る証書の譲渡しは例外の者にして他の親則に依循すべき者とす
○ 第７巻 交換の事
デンマーク法律の第３章第５節は同時に売買及び交換の事を論ず（ステンフヱルド氏の附註）
第３６５条 売買に適用すべき総ての規則及び総ての原則は交換及び「マージエスキフト」にもまた適用すべし但し第１の者は動産のためにし第２の者は不動産のためにす（フランス民法第１７０２条ないし第１７０７条）
第３６６条 ２個の不動産の間に交換の契約（マージエスフキフナコントリユクト）を執行する事は「マージエスフキフテブレウ」と名けたる２個の証書の交付に因てこれを行う而して「スクジヨウド」のために規定したる総ての規則はこの等の証書に適用する者とす
○ 第８巻 賃貸の契約
○第１章 総則
デンマーク民法第５章及び第８章、第５節は賃借、賃貸及び附託に付きての規則を包含す而して拿破崙法典第１章中に確定せられたる賃貸の格別なる数種類の間の区別はデンマーク民法中にもまたこれを採用せり（ステンフヱルド氏の附註）
第３６７条ないし第３８１条 フランス民法第１７０８条ないし第１７１２条に同じ
○ 第２章 物件の賃貸
○第１款及び第2款 家屋及び土地の賃貸契約に適用すべき規則
第３８２条 法律においては特別に家屋の賃貸契約のため契約書を用うべきことを命ずると雖も一般に何人たるを問わず書面又は口述を以って賃貸を為すことを得べし（フランス民法第１７１４条と相異なり）
第３８３条 契約書無き場合においては契約書中契約を確定するの責有る者より証拠規則に循い契約の証を立つべし
この場合において義務の釈放を得るは頗る困難にして唯誓を為すの１手段ある而己（１７５４年１０月２日のデンマーク官令○フランス民法第１７１５条）
第３８４条 法律においては契約書中に明条無き時家屋の借主がその借受けたる家屋を更に他人に貸与するの権利を有するや否やを掲記せず但し争訟の起きたる場合においてはその地の慣習と賃貸契約の本義とに従てこれを判決すべし（フランス民法第１７１７条と相異なり）
第３８５条 物件を賃貸したる時間に意外の事に因りその物件の滅尽して使用に適せざるに至り且つ借主が契約書に因て確かめられたる利益を失いに至ると雖もその償を為すに及ばず但し貸主は損害を受けたる物件を修理すべし若し之に反してその物件の全部又はその要部の滅尽したる時は当然賃貸の契約を取消すべし而して１より他の１に対しその償を為すに及ばず（フランス民法第１７２２条）且つ火災の場合においてもまた同様なりとす
デンマーク国においてはこの事項に付き拿破崙法典第１７３３条及び第１７３４条に因り確定せられたる原則に符号する規則有らざる者とす
第３８６条 物件の借主はその借受けたる時間自己の過失又は自己の怠慢に因り滅尽毀壊したる償を担当すべし（フランス民法第１７３２条）但し借主は契約に循い時と使用の当然の引続にして自己の過失に非ざる所の滅尽に付てはその責に任ぜざる者とす
第３８７条 その僕婢の所為に因て生じたる損害のための借主の責任は自己の家内の者に因て生じたる損害に付きての主人の責任に関する一般の規則に循いこれを判決すべし（フランス民法第１７３５条）
第３８８条 法律上においては賃貸を為し及び退去を告知するため１定の猶予期限を確定せじと雖も通常の猶予期限は６箇月とす又退去を告知するは１０２月又は６月の終末より３箇月前にこれを為すべし但し賃貸の契約書ある時は翌年５月１日のため６月２１０４日に退去を告知すべし而して土地の賃貸に関する時もまた同様なりとす（１７９９年６月１日、１８１３年４月２０日、１８３１年１１月２５日の官令）
又借主と借主との間にその他の契約を締結すること有り但し更に契約の現存せざる場合においては双方の者が通常の猶予期限に依循するの意たることを推測すべし（フランス民法第１７３６条）
第３８９条 賃貸契約書に退去を告知すべき要件を記入したる場合において退去すべきの求を為さざる間はなおその契約書は継続すべし若し借主場所を退去すること無く且つ借主より退去すべきの求を受けざる時は更に自から賃貸の契約を生じたりとしべし但しこの契約を止めしむるためには退去の告知を為すを要す（フランス民法第１７５９条）
通常の猶予期限を超過する期限に付き賃貸の契約を締結したる時は次の慣習期限より永かるべからず但しその期限は６箇月とす（フランス民法第１７５８条）
第３９０条 賃貸の契約は借家主の死去に因り決してこれを取消すべからず而してその相続人及びその遺産は責めて法律上の通常期限において賃貸に関する時は権利を享有し及びその義務を負担すべし（フランス民法第１７４２条）
第３９１条 賃貸の契約を永き期限に付て締結したる時、相続人はその契約を遵守すべきや否やを知るの問題に付ては疑団無きを得ず故に総ての場合において賃貸の契約書中に諸要件を詳記するの優れるに如かず（フランス民法第７２４条、第１１２２条）
第３９３条 第１ 未だ執行せざる契約に因り借家主に付与したる人権の、他の売買契約に因り第３の人に付与したる人権と相牴蝕する時は最旧の権利を以って新なる日附の権利より優れる者とす
第３９４条 第２ 然りと雖も若し終の借家主が誠実の意を以ってその契約を旧き契約の前に執行せしむる時は全く最初の借家主の人権は既得の権利に譲るべし（デンマーク民法第５章、第３章、第３１章に比較したる１７５４年１０月２０のデンマーク官令）
第３９５条 第３ 借家主の権利が賃貸したる物件の保有に因り物権と為りたる時はこの既得の物権は旧き日附に他の権利に優るは勿論不動産の権利にもまた優る者とす（デンマーク民法第５条、第８条、第１条、第３条）
第３９６条 然りと雖も賃貸契約の通常の期限を超過し或は借家主に法律上の期限より永き期限内に退去の求を為すの利益を保証する賃貸の契約は不動産の買主「スクジヨデール」に対抗するを得ず又書入質の書類に対し有効たることを得ず但し不動産を売却する前に裁判所においてこれを公読したる時は格別なりとす（１７９５年１２月４日、１８３１年１１月２５日のデンマーク官令○フランス民法第１７４３条）
第３９７条 法律においては決して借家主がその家屋内に家賃の払方を保証するに相当なる家具を備うべきことを要せざる者とす（フランス民法第１７５２条と相異なり）
第３９８条 法律の条目においては賃貸したる物件の修復及び保存を規定せず但しこの場合において採用すべき総ての方法に就ては特別に契約書の条款を以って規定すべし（フランス民法第１７５４条と相異なり）
○ 第３款 土地の賃貸契約
第３９９条 土地の賃貸契約は己に適用すべき部分においては一般に賃貸及び契約のため確定したる条目に循うべし
第４００条 賃貸契約書は総て格別の条目に付ては第３の人に対抗せしむるを得べきため裁判所において公読すべし而して物件を売却し又はこれを書入質と為すことに関する時若し賃貸契約書を公読せざりし時は借主は退去の求を受けし後、次の５月に至る迄続をその物件を享有することを得べし（１８３１年１１月２５日の官令○フランス民法第１７４３条と相異なり）
第４０１条 新規の買主に因て土地より退去せしめられたる借主は５月１日の期限前に退去するに及ばず但し退去の求を受けし後は反対の契約有るに非ざれば法律上の法式に循て退去すべし
第４０２条 ５年を超過する期限に付き相続地の入額所有権を保証する契約又は裁判言渡（但し１個人の生涯に付き取結べたる賃貸契約はこの例に在らず）は主たる不動産の一部を売却したる場合において法律の諸条目及び諸規則を総て遵奉せざりしにおいては有効の者たることを得ず（１８４７年４月２１日のデンマーク官令）
賦税及び課銀を払うための借主の義務に付き双方の契約者が更に約束せざりし場合においては或る特別なる決令の現存する有り（１８１８年４月１５日に官令○１８１５年２月５日及びその他の貼紙○ステンフヱルド氏の附註）
第４０３条 小地の賃貸に付きての獣類賃借の契約及び所謂「ノルタンデーラン」即ち●類の用に供する土地賃貸の契約は約定の条款無きにおいては賃貸契約の総則に因て処分すべし（フランス民法第１８００条）
土地の賃貸契約中に貴族の領地「サデガールド」に属するを以って「ボウ、ア、フエルム」と名つたる別種の者有り而してこの賃貸契約より生ざる審判上の効は借地人の事を論ずるデンマーク民法第５条、第１３条中に掲記せり
当時借地人の位置は頗る卑屈にして堅固ならざりしが故に政府は●、特令を出して、これを挽回し且つ借地人をして貴族に属従するの位置を自由ならしむるに汲々たりき故に１７８８年６月８日、１７９１年３月２５日、１７９９年１２月６日の官令及び１８３８年３月９日の官令はこの事項に付き最も効験有る条目を包含する者とす（ステンフエルド氏の附註）
第４０４条 領地を有する貴族（サデガールドセゼール）は総てその領地に属する土地を賃貸せざる●得ず何となればその貴族はこれを無耕に委ざるを得ず又これを主たる不動産の一般の耕作中に加入するを得ざればなり（１７８８年６月７日の官令○フランス民法第１８００条）
第４０５条 同上の条目は貴族の領地に属せざる「セルウ、ゼルガール」（土地の種類）にもまた適用すべき者とす但し借地人及びその妻の生涯に付き或は２３の或る場合においては一人又は数人の生涯に付き或は借地人及びその相続人のため５１０年より少なかる可からざる若干年に付き取結びたる賃貸契約の訳に非ざるば賃貸と為すことを得ず
貴族の領地に属する土地の賃貸契約「サデガールド」は借地人及びその寡婦の生涯の者とす而して借地人は一般に結約の際互に約定したる若干の金額を払い年々租を払う可くその他「ホウエリイ」と名つくる或る耕作を為すべし
法律においては借地人をその享有において数個の限制に属従せしむ●享有を妄にし又は契約に定款を履行せざる場合においては貴族はその場合の重きに従て賃貸契約を取消さしむるを得べし但しこの等の場合は特別に１８３８年３月９日の官令中に掲記せり而して貴族の悪弊に対し借地人を保護せんがためまた最も厳格なる法式を規定せり
新法の条目はあ総て借地人が田野人に固有の独立を失いて卑屈の境に沈淪せることを攻撃し大にその非を弁するに至れり
政府及び立法権は既に貴族の領地を自由の土地に変性せんとして頗る黽勉せしが時日を経るに従いその功空からずして進歩を得べきは更に疑い無かるべし又政府は耕作「ホウエリイ」の義務を廃止せんことを熱望して止まざりしが遂に堅●不抜の勉力に因てこの封建の慣習は数個の貴族領においては既に消滅するに至れり（ステンフエルド氏の附註）
第４０６条 享有を得るにおいては借地人は土地の模様書を記せしめ且つその地に備うる諸物件を評価人に因て評価せしむべし但し借地人は小補理を為し及びその地を懇切にに耕作するの義務有り（フランス民法第１７３０条、第１７３１条、第１７７７条と相異なり○フランス民法第１７２８条）
○ 第３章 人力の賃貸
第４０７条 １雇主が生涯１雇主の使役に服することを結約するは決して禁止する所に非ず而してこの契約は相互の義務を確定し及びその雇主が奴隷の待遇を受けざる限りは効有る者とす（フランス民法第１７８０条と相異なり）
デンマーク法律は拿破崙法典に符合する人力の賃貸に付き更に明条有る無し故にこの事項に関する契約は契約の原則と之に類似する条目とに依循すべし
○第９巻 会社の契約
第４０８条 会社は一般の財産に付きての会社或は特別に定めたる財産に付きての会社に分ち（フランス民法第１８３５条）又無名会社或は合名会社或は差金会社に分つ者とす（フランス商法第１９条）
第４０９条 無名会社とは決して会社の名前にて成立つこと無く金額の種々の投付に因て法律上の一人を組成し及び第３の人（即ち他人）に対してはその名代人に因り事務を行う所の者とす故にその社中の各人とは１の関係も成立つことを得ず又１の事務も取扱はるることを得ざる者にして唯、会社全体に関する者たり（フランス商法第２３条）
第４１０条 この等の会社は重もに運転すべき株式を以って設立したる者とす（フランス商法第３４条）
第４１１条 合名会社とは指名せられたる２３の社員が第３の人との審判上の関係に干与する所の会社を云う（フランス商法第２０条及び第２１条）
第４１２条 差金会社とは社中の者一人又は数人、義務を担当してその他の者は義務を担当するに及ばざる者にしてその利益に付ては己の部分を取り、その損失に付ては己の差加うべき金額に至る迄の外、義務を担当するに及ばざる所の金主を云う（フランス商法第２４条、第２６条）
この等の条目は若し諸社員が１の名称即ち合名の名称を用うる時はまた適用せらるる者とす
諸般の財産に付きての会社「ソシエタス、ユニウエルソリユム、ボノルユム」は一般の財産及び特別に定めたる財産に付きての会社と相異なる者とす（フランス民法第１８３５条）
第４１３条 諸般の財産に付きての会社とは社中の者現に所有し及び将来所有すべき財産の全部を共通する会社にして即ち意外の事に因りその財産に増減有るも総てこれを会社中に加入すべき者とす（フランス民法第１８３７条）
第４１４条 「クエクスチユウス、コウザー」会社とは諸般の利益を包含する者にして社員各自の努力より生ずる利益をもまた包含す但し財産相続に因り又は全く私に得べき所の財産はこの会社中に加入せざる者とす（フランス民法第１８３８条）
第４１５条 会社を組織せんとするには各社員が契約を取結びに付きての一般の能力を有し及び会社の目的たる商業を企つるため法律上１身に属する特別の充許を要するや否やを知るを要す（フランス民法第１８３９条）
第４１６条 数人の商人が共分会社を結びて唯１の店舗を有する時はその商人はその契約「フヒルマー」を新聞紙上に登記せしめ且つ之にその地の民生官の●印を受けべし（フランス民法第４８条）
第４１７条 会社が特別の権利を享有し就中他人に貯置せられたる特権を保有せんがためには国王に制可を受けんことを要す（１８１４年８月１８日の王の裁決）
第４１８条 社中相互の義務に付ては次の条目に依循すべし
第４１９条 総て合名会社においては多数は少数の説に反する決議を為すの権を有すべからず但し会社を結ぶ証書に明文ある時はこの限に在らず（フランス民法第１８５９条と相異なり）
第４２０条 この等の会社及びその他の事業においては各社員より支配の総ての所為を行うべき権を有する名代人１員を撰任して之に名代の証書を付与す故に名代人は各社員の承諾無くして事務を執行する者とす但しこの充許は名代証書に付きての一般の規則に依循すべし（フランス商法第２２条）
第４２１条 会社が無形人を組成する時は多数はその所為に関する総ての決議を為すの権有り但し行政官より１の監督人を任じたる時はその監督人は全権を帯びたる者とみなすべし
第４２２条 会社を結ぶ証書に社中各人の得べき利益とその担当すべき損失とに付き別にそのにその割合を定めたること無き時はその各人会社の資本中に加入したる額に准じてその割合を定むべし（フランス民法第１８５３条第１項）
第４２３条 会社中の一人相当の義務を負うこと無くして著しき割合を有し得るが如き社中の者が利益と損失の配分を定むるは決して禁止する所に非ず而して最良の割合と言前したるこの会社は有効の者とす（フランス民法第１８５５条と相異なり）
第４２４条 第３の人に対する社員の義務は次の規則の適用に循うべし
第４２５条 金銭に関する義務を合名会社の取結びたりし時はその義務は自身に義務を負担すべき各社員の取結びたる者とみなすべし即ち社員は総てその会社に差加たる金高の割合に循て会社の負債を連帯して担当すべきのみならずなお自己の総ての財産を以ってこれを担当すべし而して社中の１員も義務の分派に付き利益を享有すること無く又その他連帯の義務者の前以っての異論に付き利益を享有すること無し（フランス商法第２２条）
第４２６条 会社外に１社員の契約したる１身の負債は実益のその割合に付きその債主より請求せらるるを得べし然りと雖も会社を結ぶ証書中に１の条款を記入するを許す所の国王の充許を受くるを得べし但しその条款に依り１社員の受くべき利益の部分は会社に関せざる負債のため売却せらるるを得ず又抵償として差押えらるることを得ず〔１８１４年８月１８日の王の裁決○フランス民法第１６００条〕
第４２７条 １社員の死去し又は義務を行うあたわざる場合においてはその遺産は会社に関係有る者に非ず但しその遺産は唯、己の属する部分を払の責あるのみとす（フランス民法第１８６５条第３項）
第４２８条 唯、一人義務を担当すべき無名会社においては法律に循い会社のために取結びたる義務は会社自からこれを執行すべき者にして社員各自にこれを執行すべき者に非ず（フランス商法第２９条、第３２条、第３３条と相異なり）
第４２９条 社中の１員自己の負債を有する時若し株式を以って会社を組成したるにおいては債主はその負債者に属する部分を抵償として差押えしめ負債者の他の財産に付きての如く株式の価に付き義務を尽くさしむるの権を有すべし（フランス民法第１１６６条及びフランス商法第３５条）
第４３０条 会社は社員総ての意望に因て解散し又は社員一人その会社を退去せんと欲するに因て解散する者とす（フランス民法第１８６５条第５項○フランス商法第４６条と相異なり）
第４３１条 数人確定したる事業のため共に会社を結びたる時は会社はその事業の終成したるに因て終り又会社を結びし期限の満つるに因て終る者とす（フランス民法第１８６５条○フランス商法第４３条）
第４３２条 株式に因て設立したる会社に付てはその社中の一人死去するも更に影響を受くること無く死者の相続人又は新たに株式を買受けたる者と共に継続すべし又差金会社も同様に金主又は義務を担当すべき社員と共に継続すべし
第４３３条 全会社中において権利を有し並に義務を担当すべき１社員の死去したる場合においてはその相続人及び後に生存する社員は会社を解くべきの要求を為すことを得べし
第４３４条 然れども若し会社特別の者にして確定の事業に因り設立せられたる時は解散するを得ず而してその会社は財産相続人又は財産相続の計算のためその事業の終成するに至る迄これを継続すべし（フランス民法第１８６５条第２項○フランス商法第４８条）
第４３５条 例之は会社を組成する物件の損失又は会社自己の義務を行うあたわざるが如き会社の目的を達するあたわざる時はまた会社の解散を誘起することを得べし
第４３６条 社員間の財産分派に関する時は無形人を名代する全会社の元金は財産相続及び家資分散に関する条目に循て分派すべし又之に反して社員が会社の負うたる義務を連帯して各自に担当する所の会社においては互に分派すべき元金は社員の一般の財産より特別に孤立したる分派の所為の目的たることを得ず
この条目は２３の特別なる場合においてはこれを適用するに最も困難なる者とす
○ 第１０巻 賃貸
○第１章 耗尽せざる、物の賃借
第４３７条 耗尽せざる物の賃借とは契約したる期限の間貸主より借主の使用のため物件を引渡す所の契約を云う（フランス民法第１８７５条）但し除去したる物件は唯、借主の意望においてのみ返還せらるべき者なるに因りこの期限は一般に確定せざる者とす
第４３８条 借主の権利を確定するため契約を為さざりし時は借主は借受けたる物件をその性質に因て定められたる用法のため使用することを得べし（フランス民法第１８８０条）
第４３９条 借主その借受けたる物件を失うこと有るにおいては仮令い意外の事に因ると雖も総てその責に任ずべし（デンマーク民法第５条、第８条、第１条○フランス民法第１８８２条）
第４４０条 然りと雖も法律上に例外の場合２個有り乃を第１に借受けたる物件を滅尽せしめたりし意外の場合に因て借主もまた死亡したる所の場合（デンマーク民法第５条、第８条、第１条）次に貸主又はその名代人の指揮又は監察を受けて借受けたる物件の使用を為す時是なり（デンマーク民法第５条、第８条）
第４４１条 借主は自己の過失より生じたる損失に付ては仮令い軽微の事たりともその責に任ぜざるを得ず（フランス民法第１８８１条）
第４４２条 借主その借受けたる物件を当然の用法に使用し別に己の過失に非ずしてその物件の卑悪に至りし時は借主その責に任ずるに及ばず而してその借受けたる物件を使用するに付き必要なる費用はこれを出すべし（フランス民法第１８８４条及び第１８８６条）
○ 第２章及び第３章 耗尽すべき物の貸借及び息銀ある貸借」
商法の息銀の割合は１００に付き５及び６とし通常の事項においては１００に付き４とす（ステンフヱルド氏の附註）
第４４３条 耗尽すべき物の賃借及び金高の賃借より生ずる義務に付てはデンマーク法律の諸条款はフランス法律と同１なり
第４４４条 その他還債の期日、借りたる元資の息銀の割合（本章はデンマーク法律第８条、第５章、第１章及び第４章においては詳に掲記すと雖も今この第２章及び第３章においてはその要目を記載すべし）及び証券印紙の使用を定めたる非常の義務を得べき権利の証書に付ては特別確実なる条目の現存する有り但しこの等の証書は為替手形及びその他の者の如き数箇の名称を有する者とす
第４４５条 この等の非常の義務を得べき権利の証書に対して單なる数箇の証書有り是に由て或る権利は永き期限の間完償せられざるを得又は完償せられざるべき者とす但し息銀の契約を取結びたる時（是れ即ち一般の規則なり）はその地の慣習に因り定りたる猶予の期限及びなお特別に法律の明文に因り定りたる猶予の期限内に息銀の払方を実行すべし（デンマーク法律第５条、第１４条、第１条）
第４４６条 ２１０年を超過する期限に付て單なる賃借を契約しその期限の終る前に法律上に規定したる所為に因り証書を更改せざるし時或は貸主他の方法を以って義務者に対しその義務を更改せざりし時はその証書は適法たることを止むる者とす
第４４７条 又元資を以って不動産を購求して取戻すこと無き義務を契約することを得べし（フランス民法第１９０９条）
第４４８条 債主は一般に貸金の息銀を要求することを得ず但し負債者が特にその義務を執行せざりし時又は払方の特別なる保証に付て証書を記せざりし時又は義務者が遅滞「モーラー」に因りその義務を欠く時の如きは格別なりとす（フランス民法第１９０５条）
第４４９条 息銀は通常と非常との２種に区別す
通常の息銀は法律に因て定められたる者にして決して超過すべからず当今は１００に付き４と定む（フランス民法第１９０７条）
非常の息銀は契約上の名義たると損害の償の名義「プロー、モーラー」たるとを問わず為替手形等の如き或る義務に付ては法律に因て認められたる者とす
第４５０条 商事においては商人相互の取引のため１００に付き６の息銀の割合を許せり（１８０７年７月３日のフランス法律）
第４５１条 或る場合においては法律上の息銀よりも高き息銀の割合を用うるの充許を受くることを得べし但し例外の場合の外は１００に付き５を超過するを得ず（同上）
○第１１巻 附託の事及び双方相争う物を人に附託する事
附託及びその効に付ては唯、デンマークの法律に格別なる２３の事項を掲記すべし何となればこの所為の性質に係る拿破崙法典の原則はデンマーク法律中にもまた包含したればなり（ステンフエルド氏の附註）
○ 第１章 通常の附託
第４５２条 附託は書面を以ってこれを証すべきことを必要とせず（フランス民法第１９２３条と相異なり）
第４５３条 然りと雖も特権を有する所有者「セパラチスト」が附託を受けたる者の遺産中よりその貨幣を取戻さんと欲する時貨幣の附託は書面の証拠無くして要求せらるることを得ず
第４５４条 貨幣の附託は貨幣の賃借の如く看做されざるがためこれを封印を為したる皮に包みて交付することを必要とせず（１８２８年１２月３日の官令第４２節）
第４５５条 封印を為したる皮に包みたる金額を無名義にて交付したる時は賃借の名義を以って交付したりしことと推測すべし而して所有者は総ての場合において反対の証を立てざるを得ず（１８４０年４月１１日の官令第１４節）
第４５６条 ２３の理由に因り貯金預所に為したる附託又は公務上の位置に因り附託の名義において受取ることを得べき人に因り受取られたる附託は特別に適法の附託と認むべし
第４５７条 附託を受けたる者はその附託せられたる物件を管守するに付き自己の所有する物件を管守すると等しく注意すべし（デンマーク法律第５条、第８条、第４４条○フランス民法第１９２７条）
第４５８条 若し附託を受けた物件の火災又はその他の抗拒す可からざる意外の事に因り滅尽する時は附託を受けたる者はこの意外の事に因り又自己の物件を喪失したる時及びこの景情無き時と雖も総てその責に任ずるに及ばず（デンマーク法律第５条、第８条、第４４条）而して損害の償は常にこれを要求するを得ず先づ附託を受けたる者が附託せられたる物件を自己の所有する物件と同時に救済し得たる乎又は得ざりし乎を審査するを要す
第４５８条（補） 随意の附託「デポジチユーム、サンプレクス」に関する規則は己●を得ざる附託「デポジチユーム、ミゼラーブル」にもまた適用すべし而してその裁判上の効は常に同１の者とす
デンマーク法律においては旅舎に宿する旅客の携え来りし物件に関する旅舎の主人の責任に付き拿破崙法典の条款に等しき条目有ることなし故にこの等の義務は相類似したる事項のため定められたる原因に循て審判すべき者とす（ステンフェルド氏の附註）
○第２章 双方相争う物を人に附託する事
第４５９条 双方相争う物件を人に附託するの義務ある者は例之は銀行の如き貯金預所にこれを附託すべし（就中貨幣に関する時）
裁判上の附託とは或る場合において裁判所より１個又は数個の物件に付き命ずる所の附託又は差押を云う（フランス民法第１９２９条）
○ 第１２巻 偶生の事に関する契約
本章中に掲記したる偶生の事に関する契約は遊戯及び冒険の負債に関する契約なるとす（ステンフェルド氏の附註）
第４５９条（補） 何人たりとも遊戯において契約したる負債はこれを償うに及ばず（デンマーク法律第５条、第１４条、第５５条○フランス民法第１９６５条）
第４６０条 遊戯の負債に付ては法律上訴訟を為すを許さず故に互に取結びたる契約は凡そ契約者双方のため必行すべき者に非ず（同上）
冒険の遊戯に付きての新法においては甚た厳酷なる規則を規定せり（ステンフェルド氏の附註）
第４６１条 遊戯の負債を直に償いし者は啻にその失いし金高の払戻を要求するの権有るのみならず若し自身にこれを取戻すことを禁止し又は拒否する時は官吏よりその取戻を促すべし（フランス民法第１９６７条と相異なり）
第４６２条 ●銀にて遊戯を為したる場合においては厳にその失いし金高を失うを禁ず（フランス民法第１９６５条）
第４６３条 遊戯の負債のための権利の証書は契約を結びたる双方とその権利を譲受けたる者の間に効無き者とす故に遊戯に負けたる者のためその負債を償い又は負債を償うがために彼れに金を貸与する第３の人は決して貸金の払戻に付き行うべき権利無き者とす（１７５３年１０月６日のデンマーク官令○フランス民法第１１３３条）
法律においては賭博のため期満得免の権を規定せざるが故に人皆この等の契約の有効と無効とは一般に契約の原則に循て審判すべきことを思量せり但し賭博の特別なる性質を決定せんがためにはこれを考究せざるべからず
デンマーク法律においては畢生間の年金に関する確実なる総則の現存する無し然りと雖も１８４２年に設立して王の制可を得たる畢生間会社の章程中にこの事項に関する規則を掲記せり〔ステンフエルド氏の附註〕
○ 第１３巻 名代の証書
拿破崙法典の本巻中に掲記せる名代証書に関する原則はデンマーク法律中にもまたこれを確定せり但し実際に採用せられたる名代証書の諸種類に付てはこの事に関して布告したる特別の法律を以って裁判上の効を定む故に船将及びその他の者の代書師の名代証書に付ては期満得免の権有る者とす(ステンフェルド氏の附註）
第４６４条 名代人を任ずることは書類又は口述に因り総ての方法を以ってこれを為すことを得べし（フランス民法第１９８５条）
第４６５条 名代人を任ずるは元来無償なり但し謝金を出すこと有るべし而して財産を売却し或はこれを書入質と為すことを承諾するための如き確定の事務に付ては特別の者とし或は財産の支配を管理するに付ては一般の者とす（フランス民法第１９８７条及び第１９８８条）
第４６６条 婦及び後見を免れたる幼者は例外の場合の外名代人と為るを得べし但し婦又は後見を免れたる幼者に委任したる事務の頗る重大に渉て謹慎練熟の人と雖も敢てこれを担任ずるあたわざる時の如き場合においてはその名代人は決して損害の償を為すに及ばず
僕婢は幼年なりと雖も通常の事務においてはその主人の名代人としてこれを取扱うを得べし但し詐偽又は懈怠の場合においては損害の償を為すべし（フランス民法第９９０条と相異なり）
第４６７条 名代人は己の行うたり所を本人に算計す可く且つその己に代て事を為したる者のため本人の受けたる損害の償を担当すべし（フランス民法第１９９３条及び第１９９４条）
第４６８条 本人は自己の名において他人と契約したる義務を自から執行し名代人の出したる費用及び払高は之に息銀を加えて名代人に償い又名代人その任ぜられたる事務を行うに付きその過失に非ずして損害を受けたる時はこれを償うべし（フランス民法第１９９８条ないし第２００１条）
第４６９条 名代の任は名代人を退くる事又は名代人自からその任を退く事に因て終る可く及び本人の死去、治産禁又は家資分散に因て終るべし（フランス民法第２００５条）
第４７０条 誠実の意を以って第３の人が退任せられたる名代人と取結びたる契約は本人これを履行すべし（フランス民法第２００５条）
第４７１条 名代人その任を退く時は之がため本人の利益を害せざる様その事務を継続して行うべし若し然らざる時は損害の償を為すべし（フランス民法第２００７条）
○ 第１４巻 保証
○第１章及び第２章 保証及びその効
デンマーク法律の第１章第１款は保証の事を記載す
第４７２条 保証は唯、適法の義務に付きてのみ成立つをうべし故に保証の有効たるは全く主たる義務の有効たるに属すべし（フランス民法第２０１２条第１節）
第４７３条 保証人は單に義務を負い又は連帯して義務を負うことを得べし
第４７４条 第１の場合において保証の有効たるは義務の性質が権利者の由て以って義務者を告訴するを得る名義を生ずべきや否やに属する者とす
第４７５条 若し之に反して義務者が連帯して義務を負い及び１身の関する原由に因て全くその義務を行うあたわざる時は幼者又は管財人の管理を受くる者の負債に関する時の如く有効の保証なるとす但し幼者又は管財人の取結びたる契約はその契約を結びたる第３の人に義務を負はしむるのみにして幼者又は管財人の管理を受くる者には義務を負わしめざる者とす（フランス民法第１３１３条）
第４７６条 義務者の行うべき義務に対する総ての訴訟は一般に保証人の利益と為るべし（フランス民法第２０３４条）
第４７７条 総て保証人は義務者の保証に優りたる保証を与えて義務を負うことを得べし例之は動産を質と為すが如き是なり（フランス民法第２０１３条と相異なり）
第４７８条 保証人権利者に対し義務を行うためには全く義務者と同１の義務に循うべし（フランス民法第２０１１条）
第４７９条 或人は義務を契約し及び保証人として義務を負うことを得ず即ち刑事において被告人の保証と為るを禁ぜられたる婦及び管財人の管理を受くる者の如き是なり（デンマーク法律第１条、第２３条、第９条）
第４８０条 何人たるを問わず２１０５歳の齢に達せざる前に民事において保証人と為るを得ず
第４８１条 夫の支配を受くる婦はその１身に関する財産を保有し或は夫の不在においては共通財産を管理する時と雖もまた保証人と為ることを得ず
第４８２条 單なる保証人は通常の恩典（ベ●フヒシユウム、オルヂニース）に因て権利者にその義務を行うべき本人の財産を以って先づその義務を得るに充てしむべきことを述べその本人なおその義務を行わざる時の外自から義務を行うに及ばず（フランス民法第２０２１条）但し連帯の保証人は之に反して主たる義務者が契約の期限に至りその義務を行うことを肯せざる時は直にその義務を行うの責有る者とす（フランス民法第１２００条及び第１２２１条）
権利者保証人を相手取て出訴するためには拿破崙法典中に採用されたる総ての限制を受くるに及ばず（ステンフェルド氏の附註）
第４８３条 １箇の義務の高に付き数人の保障人有て各自定りたる部分のため義務を負うたること無き時はこの等の保証人は通常の恩典に因て権利者がその義務を各自に分派し而して各保証人より成る丈け最大なる部分を取戻さんと甞試すべき求を為すことを得べし但しこの方法に付ては各保証人は自から他の保証人の欠欠する時に非ざれば債主に対して義務を負うに及ばざる者とす（フランス民法第２０２５条及び第２０２６条と相異なり）
第４８４条 自己の部分より多く義務を行うたる保証人は主たる義務者に対し及び他の保証人に対して償還を得んとする訴訟を為すことを得べし（デンマーク法律第１条、第2条、第１３条及び第１４条○フランス民法第１２３３条）
第４８５条 加之法律においては義務を行うたる連帯の保証人その共に義務を負うたる者に対し自己の部分を除去してその既に行うたる義務の総高の償還を得んと訴うることを許せり但し保証人は己に権利の譲渡を為さしめたる時に非ざりば義務者に対して権利者の代りを為すを得ず（フランス民法第２０３３条）
この問題に付きデンマーク国においては甚だ論議を極めたる者とす（ステンフェルド氏の附註）
第４８６条 義務を行うべき期限を契約せざる時はその義務の生じたるより１０年に至ると雖も保証人はその義務を行わざる前に義務者に対して訴訟を為すことを得ず（フランス民法第２０３２条第６節と相異なり）
○第３章
保障の義務の消散に関する条目は拿破崙法典第２章中に包含せる条目と同１なりと
す
第４８７条 確定せざる期限の義務の保証人はその保証を通常の期限内に廃止してその責任に境界を置くの権有り但しその期限はその時の景情と主たる義務の性質とに属する者とす
第４８８条 若し之に反して既に契約したる義務のため又は或る時間継続すべき所の確定せざる義務のために保証を為せし時は保証人はその保証廃止するを得ず然れども主たる権利者に義務を行い及び法律に循いその責任を廃止して義務の釈放を受くることを得べし
○ 第４章 保証の義務の消散する事
第４８９条ないし第４９４条 フランス民法第２０３４条ないし第２０３９条と同じ
○ 第１５巻 和解
第４９５条 和解とは１の契約にしてその効は一般契約のために定めたる同１の原則に循い規定する者を云う
第４９６条 成る丈け裁判所において争訟を予防せんことを目的と為す１の設立有り是れ即ち和解委員「トルリゼルセス、コムミッショナン」にして王国の諸府及び田野の諸区においては普く設置せられたる者とす（１７９３年７月１０日の官令）
第４９７条 国士は総て和解裁判所の役員数名を選任す但し和解裁判所の職務は既に生じたる争を了し及び将に生ぜんとする争を予防するに在りとす
第４９８条 民事訴訟は官令中に指示したる場合の少数の外その起らざりし限りは決して通常裁判所に提出することを得ず但し代言人１の証書を以って委員の面前において口上の和解を甞試して不調と判決せられしことを証明する時は格別なるとす（フランス訴訟法第４８条ないし第５８条）
この制度はフランスにおいて治安裁判官の面前において予め為す和解の裁判所よりも更に確実にして効験ある者とす但しデンマーク国においては原被両造自身に出席するを以って至要の方法とす（ステンフェルド氏の附註）
第４９９条 ●誤裁判所及びその他の裁判所の如き非常裁判所においては裁判官勉めて自身に和解を実行すべし
第５００条 原被中の１法律に循い和解委員の面前に召出で受け適法の故障を述べること無く欠席したる時裁判所において争訟を審判すべきにおいてはその相手方に訴訟の費用を償うべきの言渡しを受くべし（フランス訴訟法第５６条）
第５０１条 和解委員は陰密に処置を為すべく請合書を渡し又は原被両造の自認若しくは陳述を証拠と為すは厳にこれを禁ぜられたり但し既に終わりたる和解の特別なる点に関する時は別段なりとす而して総て定規の要件の如く和解を行いし時は簿冊上にこれを記入すべし若し原被両造のこの記入を為し及び之に姓名を手著したる時はこの和解は終審の裁判言渡しと同１の力を有し及び同１の効を生ず故に和解はこれを行う為他の訴訟手続きを要すること無く右と同様に施行すべし但し財産を抵償として差押うる時は別段なり
○ 第１６巻 禁錮
デンマーク法律に循へば民事上の禁錮にに関する原則はフランス法律に因りて定められたる原則と甚だ異なる者たり
禁錮は争訟の裁判言渡し前後に命ずることを得べし抑、第１の場合は財産の差押及び偶生の事に関する契約に付きての条目を掲記するクリスチヤン法典第１条及び第２３条中に記載し而して第２の場合は罰金及び裁判言渡しの執行に関する同法典の第１条及び第２４条中に記載する者とす
抑、慣習法はこの事項特に禁錮の設けの為法律上の要件の一部に付きては法律の条目を更改せしこと鮮少ならず（ステンフヱルド氏の附註）
第５０２条 民事上の禁錮は排撃せられたる１が詐欺の罪人と為らざる時と雖もこれを行うことを得べし
第５０３条 総て裁判言渡しの前に禁錮を行わんとするには原告人より適法と審判せられたる１の証書を呈出し及び総て禁錮の引続き付き負担すべきことを陳述すべく又負債者が抵償として差押えらるべき動産を決して有せざることを証すべし
第５０４条 負債者は保証人を立てて禁錮を免るることを得べし
第５０５条 禁錮は抵償として差押えられたる物件の負債者の言渡さらたる義務を完く尽すに足らざる時は裁判言渡しの後と雖も施行することを得べし
第５０６条 ５１０「リグスダーレル」１「リグスダーレル」は凡そ３「フラン」に当たる以下の金高に付きては禁錮を言渡すことを得ず（１８４６年１月１７日のデンマーク官令○フランス民法第２０６５条）
第５０７条 禁錮はまた義務の高に従いて変わる或る期限にこれを限制すべし而してこの期限の最高度は３年なりとす但し為替手形に関する時は６年間禁錮を継続することを得べし（１８０２年４月１７日及び１８４８年１２月のフランス法律）
第５０８条 負債者この禁錮時間の言渡しを受けたる時は決してその義務の釈放を得べからず而して債主は常に負債者に対してその訴訟を為し及び負債者の現に所有し及び将来所有と為すべし財産を抵償として差押えしむることを得べし
第５０９条 禁錮は決して通常裁判所において言渡すべからずただし特別権即ち裁判官吏と看做されたる「フワセツド」に依てこれを言渡すべし
第５１０条 裁判言渡し又は和解の前に禁錮を命じたる時はこれをして効有らしむる為通常裁判所の確認を得べし
○ 第１７巻 質物の事
デンマーク法律の第７章は質物の事を掲記せり（ステンフヱルド氏の附註）
第５１１条 質は動産或は不動産に付き設定することを得べし（フランス民法第２０７２条）
第５１２条 動産の質はこれを与うるを得或はこれを契約することを得べし「ハアンド、フ●エット、パント、オンデルパアント」故に若し負債者がその債を償うべきの保証としてその債主又は第３の人に質物を渡したる時は即ち是質物を与えたる者とす
第５１３条 質の区別は義務の本義、質として与えたる物件の性質及びその他の景情に属する者とす
第５１４条 契約したる質物は所有者の手裡に存留する者とす（フランス民法第２０７６条 と相異なり）
第５１５条 若し与えたる質物の意外の事に因り債主の手許において破壊したる時は負債者はその物件を失い而して債主はその権利を失う者とす（デンマーク法律第５条、第７条、第１条○フランス民法第２０８０条）
第５１６条 動産の質物は証書を以って証したることを必要とせず質取主がこれを受取りたるを以って足れりとす（フランス民法第２０７４条と相異なり）
第５１７条 義務を得べき権利の証書はこれを質と為すを得べし但しこの場合においては意外の事に関する条目を適用するを得ざる者とす
第５１８条 契約したる質は裁判所において契約書を公読したるや否や直ちに動産並びに不動産に対し効有る者とす而してこの質の成立を定る証書は善良誠実なる証人２名の面前において負債者之に姓名を手著すべし但しその証人は日附及び手著の事実を確保すべき者とす次にその証書は裁判所において第１又は第２の会議席においてこれを公読すべし（１８４１年７月２８のデンマーク官令○フランス民法第２０７４条、第２０８５条）
第５１９条 質は他の証書の如く裁判所において公読を為したる日より始まる者に非ず然れども若し公読の為定められたる期限を遵守せざりし時は姓名を手著せたる日を以ってその日附と為すべし
第５２０条 その証書は法律に因りて命ぜられたる諸方式を履行せしと雖も然れども若しその日附の負債者の家資分散を為せしより６週間の後に在る時は債主に対して効無き者とす而してこの同１の条目はまた人の総てその現に所有し及び将来所有と為すべき財産を質に置き或は特別の名義において指示し及び同１の使用に用立つ類似物件の若干数を質に置く所の場合の為適用すべき者とす（１８１１年７月２８日のデンマーク官令○フランス商法第４４６条と相異なり）
第５２１条 法律においては例之は家屋の賃貸、雇人の給料、醫師の謝礼、製薬者及びその他の者の算計の如き或る権利を目的としたる動産に付きてのみ全く通常の債主権に付きての当然の権利を付与したるが故に動産の質の裁判上の効は既得の権利に係りては不動産の質の効より狭き者とす（１８１９年７月２３日及び１８３４年５月１４日の貼紙○フランス民法第２１０１条）
第５２２条 質取主その質と為りたる動産を売却して己に負債を償わしめんと欲する時は法律上の方法に因りその負債者を告訴し及び裁判言渡し又は和解を得及び裁判上の売却において処分を為すべし（フランス民法第２０７８条及び第２０８８条）
第５２３条 質物に関する時はこの等の告訴を厳に為すことを必要とせず（フランス民法第２７８０条と相異なり）
第５２４条 質物の使用及びその入額を収取するの権利に関しては債主はその契約において明認又は黙認を以って約束せし所の権利の外他の権利を有せざる者とす
○ 不動産の質
不動産の質は現にデンマーク法律中に掲記せり但しこの契約に因りて債主と負債者の間に定められたる関係は一般に質の通常の規則に循て審判すべき者とす（ステンフヱルド氏の附註）
第５２５条 質に用立つ物件の使用を通常期限を超過する猶予期限の為負債者に与えたる時は不動産の質は第３の人に対しその効有るが為裁判所において公読を為すべし
○ 動産の質
第５２６条 第３の人に属する物件を質に取りたる者は自己の固有の物件と同様に之に注意すべしその質物の火災に罹てその家屋と共に滅尽し或はその疎忽若しくはその懈怠と為す能わざる意外の事に因りてその固有の財産と同時に全く滅尽したる時は質物の所有者はその取戻を要求するを得ず而してこの場合においては債主その賃金を失うべし（第５条）
第５２７条 負債者若し証書に因りて定められたる時期に至り債主の手許に質と為したる物件を受出だす又は息銀を払わざる時は債主及び負債者は各自に評価人１名を任ずべし而して質と為したる財産の評価若し息銀と損害の償いとを包含して貸高よりも超過したる時は債主よりその剰余を負債者に償還すべし但し質と為したる物件は当然債主の保有に帰すべし
第５２８条 負債者の評価人を任ずるを拒む時は債主は評価人２名を任ずるの権を有し或は質物を糶売と為さしむるの権を有すべし
第５２９条 何人たるを問わず自己の受取りし質物を貸高より優りたる価格の為他人に譲渡すを得ず又負債者は元利と損害の償いとを払う時はその質物を取戻すを得べし然る時は譲渡人は自己の被りたる損害の償いを債主に向かいて要求することを得べし
第５３０条 書入質と為したる家屋の、火災に罹り或はその他質と為したる不動産の、意外の災いに罹りたる時は負債者自身にその損害を担当すべし但し負債者は猶その負債を償うの責有る者とす
第５３１条 書入質と為りて債主の、入額を所得と為す建造物或は土地の、債主又はその家人の疎忽若しくは過失に因りて意外の災いに罹りたる時は負債者決してその損害を担当するに及ばず但しこの災いの、若し意外の事に係る時は負債者その損害を担当すべし
第５３２条 若し建造物、土地、船舶又はその他の物件を質と為して債主の手に渡さず負債者の、これを保有する時は裁判所において質入の証書を公読し及びこれを簿冊に記入すべしこの裁判上の広告に因りて斯くの如き質の権利は義務の証書を裁判所において公読したるより後に為したる総ての質、贈遺、引渡、移転弁済及び保有に優りたるべし故にこの種の債主は質物に付きてのその貸金の払いを他の諸債主より先に得る者とす
第５３３条 質の契約を為したる負債者の、期日にその契約に循て息銀を払わざるか若しくは還償期限に至りその借高を払わざる時は質物は物件取戻しの訴訟又は入額所有権の他人に移転したる時たりと雖も物件の保有を得んと求むる訴訟の決して起こること無く所有権に因りて債主の保有と為るべし而して若し債主より質物の保有を得んと訴うる時は裁判所において誠実と認められたる者２名を撰任し以ってその請願の通り充許せらるべし仮令い故障を申述る者有るも弁解の道立たざる時は債主はその権利の執行を失うべからず
第５３４条 債主の自身に入額を所得とすべき質物よりその質物の負荷と保存の費用とを除去して息銀を超える毎歳の入額を収取する時は債主はその貸高の中にこの剰余を加入し或はこれを負債者に返還すべし但し債主相当の息銀を収取せざるか若しくは毎歳の費用を償う能わざる時は負債者より質物を取戻すと債主の、これを保有するとを問わず負債者はその不足を払うべきの責に任ずべし
第５３５条 債主は質の権利を他人に移転するを得但し予め保有の裁判言渡しを得たる後に非ざれば質物を売却し又はこれを引渡すことを得ず
第５３６条 裁判言渡しに因りて質物を保有する債主はその物件が１府民の所有する時はその地の裁判所或は免税の自由地に係る時は州裁判所に質物の評価を為すにはその物件の土地に属して負債者が義務の証書中にその価を定めざる時は王の定めたる価に依て或はその物件の建造物又は土地なる時は正価に依る者とす然れども負債者の、その詔書中に定価を指示し之に由、て債主の、質物を保有すべき時は負債者の為したる見盛を以って確的の者とすべし斯くの如く評価を為したる質物は保有の名義において債主の物と為るべし但し債主は質入の証書に循い他の諸債主に先●その貸高とその費用とを取戻し且つ要する時は剰余或はこの剰余の見盛の価（自己の撰を以って）を負債者に返し或は負債者の、これを肯せざる時は裁判上の附託と為すべし
第５３７条 然れども質と為したる物件の買戻しは負債者より裁判言渡しに因りて定められたる猶予内にこれを為すことを得べし
第５３８条 債主の既に入額所有権を得て遂に使用を失いたる質物を他人の２１０年継続して無事に使用したる時及び質物の移転を証明する能わざる時は仮令い債主の保有に在るも質入の証書はその効を奏ずる能わざる者とす
第５３９条 若し数人の債主同１の土地又は同１の建造物を質に取りたる時は最初の債主が質物を保有するを以って他の債主はこの質物を最初の債主より買戻すべし但し最初の債主がこの買戻しを拒む時は後の債主はその質物を奪取して己の正当の賃金を払わしめ得るの権利を有する者とす
第５４０条 他人に属する物件を質に入れたる者は刑事の訟を受け且つ原告人に損害の償いを払うの責に任ぜざるべからず
第５４１条 負債者が借金の為にその財産のみならずその自身をも質と為したる時は債主は己の撰を以って法律に循い質物を差押え或は証書に因りて負債者を拘置せしむるを得べし
第５４２条 若し債主の、質物を看守するを欲せざる時は債主はその貸金の為に負債者の他の財産を己の保有と為さしむることを得べし但し財産抛棄又は元来所有する財産の分別又は財産相続を肯せざる場合においては別段なりとす然れども土地を質に取りたる者がこの土地を払の為に得たることを承諾してこの質物の、賃金を払うに充分なる時は彼れこの質物を看守するを得べく而して若しこの質物の充分ならざる時は負債者の他の財産を以ってその不足を払わしむることを得べし
○ 第１８巻 債主の特権及び書入質の権
○第１章 債主の特権の総規則
第５４３条 先取特権は前巻に規定したる条目に因りてこれを行うべし而して一般にこれを不動産の質に及ぼすべからず故に先取特権は不動産に付きては成立たざる者とす（拿破崙法典法典の第１章及び第２章、第2款及び第3款と相異なり）
○ 第2章 書入質の権
第５４４条 書入質の権は書入と為したる不動産に付きて成立つ者にして裁判所において公読したる証書を交付せしより生ずる者とす
定まりたる期限内に証書を公読したる時は書入質の権を法律上においては全くその日附の日より適法の者とみなすべし然らざれば裁判所において証書を公読したる日より適法の者とみなすべし
第３の人と争訟の起こりたる場合においては「スグジヨウド」と称する証書の為前に記載したる条目に依循するを要す（７月２８日の官令）
「スグジヨウド」とは売主よりその売却したる物件を買主に交付する証書の義にして即ち符号の引渡符号の引渡とは物件の代に証書を交付するを云うを云う
第５４５条 書入質の権の記入を数個の時期に為したる時即ち書入質の権を有する債主が各その証書中に指示せられたる順序に従い書入質と為りたる不動産の価を順次に己に払わしむる時は同１の不動産を数個の書入質と為すことを得べし（フランス民法第２１３４条）
第５４６条 各債主の皆同意し得る時は書入質の権を数名の債主の為同時に行うことを得べし而して順序に先後の別無く債主は総て書入質と為りたる物件を以って己に払わしむるが為同１の権利及び義務を有すべし
書入質の権の順序を他人に対して定るは記入を為したる日附の順序に従うべし（フランス民法第２１３４条）
第５４７条 負債者より負債を払わざる時は書入質の権を有する債主は総て債主の如く裁判言渡し又は法律上の和解を得たるの後、書入質と為りたる不動産を以ってその払を得るの権を有す但しその不動産は一般にこれを糶売と為すべし
第５４８条 但し債主は訴訟の手続きを為すこと無く又は無裁判にて書入質と為りたる不動産を糶売するの権を●留むるを得ず（フランス訴訟法第７４２条）
第５４９条 裁判言渡しに因りて書入質と為りたる不動産を相異なりたる順序を以って数個の記入に確定し及びこれを糶売と為して最後に記入せられたる債主の、売払いの代償を以ってその賃金を払われしこと無き時は書入質と為りたる不動産に付きてのその債主の名義は書入質の簿冊上よりこれを塗抹すべし（同上第７７４条）
第５５０条 この効を得んが為不動産を売払うには３次糶売の公告を為したる後これを為すべし
第５５１条 最後の順序に位する権利者が所有者の意望に反し新聞紙上において予め各、１０４日毎に公告せられたる４次の糶売を要求するを得べき或る場合の在る有り
第５５２条 最後の順序に於ける権利者の糶売の価を以って己に義務を払わしむるに足らざる時は最初の順序に於ける権利者は最も高き価を払うて糶売落札人と為るを得べし
この場合においては充分なる義務の払いを得ずる権利者は己の権利を失うべし（１８２２年４月２３日の官令及び同年６月１９日の貼紙○フランス訴訟法第７７４条）
第５５３条 売却したる不動産の価を以って己に義務を払わしめ能わざりし権利者はその義務者に対して数人訴訟権を保有すべし
第５５４条 権利者は又書入質と為されたる不動産の意外の事に因りて滅尽したる場合においては己の払戻を得んと訴うることを得べし
第５５５条 最後の順序に於ける権利者は書入質と為されたる財産を法律上の差押と為し及び糶売と為さしむるを得べし但しその権利者は己より上位を占むる諸権利者のその債主権の全き払いを得ざる限りは毫も己に払わしむるを得ざる者とす
第５５６条 書入質の権の附属したる債主権はその日附の２１０年を超過すべき時と雖も即ち書入質の権を以って義務の高の払方を担保すべき場合においては期満得免と為すを得ず（フランス民法第２１４８条と相異なり）
第５５７条 土地は別段なる所有者の承諾無くして当然法律上において或る書入質と為れり而してこの等の書入質は土地に課したる税の為官府の物及び銀行に属する所の物たり（１８１３年１月５日のデンマーク官令）
第５５８条 或る職務を行うに因りて法律上の書入質と思量せられたる者有り而してこの等の書入質は他の特別なる諸書入質よりも上位を占むる者とす
第５５９条 この等の書入質の権の附属したる債主権は会計収税官の財産及びその保証人の財産に付きての官府の債主権たり但しその保証人は自身に義務を負担したる者とす
第５６０条 公舎はその管理者又は監督者の財産に付き同じ権利を有する者とす
第５６１条 同じ権利を又種々の官衙に付与せり（７月８日のデンマーク官令）但しこの等の権利及びこの等の特権を得んとするには官吏の証書及び証券を予め裁判所において公読したりしことを要す
デンマーク国においては裁判上の書入質の権無き者とす（ステンフェルド氏の附註）
第５６２条 デンマーク国に在る不動産に付き外国において取結びたる証書より生ずる書入質の権は公然証書を公読し及びデンマーク法律に因りて定められたる諸法式を遵守したりし時は効ある者とす（デンマーク民法第２１２８条と相異なり）
○ 第３章 書入質の糶を公にする事、記入する事及び塗抹する事
書入質の権を記入する事及びこれを公にする事及び売払いの為デンマーク法律に拠て採用せられたる法式は真に拿破崙法典に拠て確定せられたる者と相異なる者にして一層單一にし而して●多の法式を省けり（ステンフヱルド氏の附註）
第５６３条 債主権を組成する証書は裁判所においてこれを公読すべし故に関係各人を呼出すを要せずして人皆書入質の権を知得せり
第５６４条 次に証書は公読したる後当該官吏に因りて書入質の簿冊に記入せらるる者とす（フランス民法第２１４６条）
その官吏は請求者に記入を為したる証書を交付し且つその証書中に裁判所において公読してるその他の記入の報知を附記すべし因りて義務者は最早その財産を自由に支配するを得ざる者とす
第５６５条 この等の簿冊は之に番号を附し且つ横線を書すべし（デンマーク法律第１条、第８条及び１８３８年２月７日及び１８４５年３月２８日の官令）
第５６６条 義務者記入の全部又は一部の塗抹を得んとするには義務を得たる旨を述べる権利者の承諾を包含する公正の証書を書入質の役所に附託すべし然らざれば塗抹を請求する所の者より公然記入を塗抹せしむべき法律上の証書を呈出すべし
第５６７条 塗抹は記入に等しく公に為さんが為裁判所においてこれを公読すべし（フランス民法第２１５７条）
第５６８条 書入質の権を有する権利者の権利は義務を組成する書入質の証書に全く基づく者とす
○ 第１９巻 権利者義務者の不動産を抵償として奪う事
権利者義務者の不動産を抵償として奪う事に関する条目は元来訴訟法に属するを以って書入質の権に関する条目を参看するも未だ完全したる者にあらざるが故にこの巻中に記載したる事項を以ってこれに附加せざるべからず
第５６９条 租税及びそのた確実にして且つ高の定まりたる債主権の支払いに関する時は裁判言渡し又は和解を以って義務者の財産を抵償として奪取することをうべし但しその債主権は特別法又は行政法の決定に因りて租税と同質の者とみなすべし
第５７０条 総て財産の強売は民事権より財産差押の命令書を交付したるの後これを為すべし（フランス訴訟法第６７２条）
第５７１条 土地に付き物権を有する権利者は法式無く不動産を抵償として奪うことを出訴するを得べし然らざればその義務者の不動産を以って己に義務を行わしむる前にその義務者の動産を売却せしむべし（拿破崙法典第２２０６条及び第２２０７条と相異なり）
第５７２条 権利者は法律に循て差押えたる動産を糶売と為さしむるの権有り但し法律上に規定したる法式はこれを遵守せざるを得ず（拿破崙法典第２０９２条○フランス訴訟法第５８３条）
第５７３条 若し売買の価直、債主権の高に優る時はその剰余を義務者に返還すべし
○ 第２０巻 期満得免の権
第５７４条 証書無く又は裁判上の法式無くして２１０年間１個人の保有したる財産は総て正当にその者の所得と為り而して他の証書を要すること無かるべし但しその保有者の唯、質、附託或は賃貸の如き未定の名義において財産を保有したるの証有る時は別段なりとす（デンマーク民法第５篇○拿破崙法典第２２２９条ないし第２２３１条）
第５７５条 期満得免の権を得せしむべき保有はその保有者が正当の所有権を己に得るの意旨において物品を保有したりしことを要す（同上）
第５７６条 保有の正当ならざるも期満得免の権を得せしむざる者に非ず但し保有の、重罪より生ぜし時就中その重罪の性質たるや被害者の主犯を告訴して己の権利を拡張する能わざりしが如き場合においては別段なりとす故に保有者の不正実たりしことは敢て問う所に非ず然れども唯、不正実の証ある時は保有者は享有の初めより期満得免の権を得べからざる者とす
第５７７条 期満得免の権は平民に適用し又公券及び官府の財産並びに公舎及び幼者に属する財産にもまた適用すべし（拿破崙法典第２２２６条、第２２２７条○拿破崙法典第２２５２条と相異なり）
第５７８条 期満得免の権は動産不動産の別無く一般に２１０年間保有したるの後これを得べし而して期満得免の権を得るには必ずしも１個人の、必要なる期限の間物品を保有したるを要せず数所有者の間断無き相続保有もまた期満得免の為必要なる期限を作為するを得べし但しこの相続保有は一般即ち財産相続に因りてこれを得たると特別即ち売買、生存中の贈遺とに因りてこれを得たるとに係らざる者とす（拿破崙法典第２２６２条）
第５７９条 次の場合においては正当に始まりたる期満得免の権を除棄すべし
第１ 保有者物権の享有を失う時
第２ 不正実の証ある時
第３ 保有者裁判所に呼出を受けたる時○縦令い裁判所外において訴訟を受けたる時と雖も期満得免の権を除棄する為充分なりとす（拿破崙法典第２２４４条、第２２４６条）
第５８０条 猶左の場合は期満得免の権の既に経過したる時間を除棄する為裁判所に呼出を受けたる時と同様なりとす
第１ 財産板派の処置を報知する事
第２ 保有所の死去又は家資分散を為したる事
第３ 糶売裁判所より故障を述べる事
第４ 所有物を公読する事
第５ 所有者より物件の取戻を請求するに拘らず売払いを為す時その物件を差押え及びこれを奪う事
第５８１条 裁判所においての訴訟を法律に循て為さざりし時又は裁判所への呼出状法式に背きたるに因りその効無き時は期満得免の権の既に経過したる時間を除棄すべからず（拿破崙法典第２２４４条ないし第２２４６条と相異なり）
第５８２条 期満得免の権に１種特別の者有り即ち記臆すべからざる期満得免の権「プロヱスクリプシヨウ、イムメモリアリス」是なり但しこの期満得免の権は定まらざる期限「タリロウス」以来成立ちたるの証ある時は或る証書無しと雖も法律上１個の権利として維持せらるるを得る者とす
抑、期満得免の権のこの特別の種類は一般に所有権を得るが為通常の期限を確定して充分に期満得免の権を設立するを得ず但し或る場合においては公衆の知り得たる所有権を正当ならしむるに用立つを得べし
第５８３条 通常の期満得免の権に因りて設立せらるるを得ざるが故に記臆すべからざる期限の期満得免の権に因りて成立せらるるを得る或る種類の土地の義務有り但しこの土地の義務の永き期限の間成立ちたる如く法律においてこれを保存するは就中邑、公同又は半公同の運土に関する時に在りとす
第５８４条 期満得免の権なる語は又期満所得の権「プロヱスクリプシヨウ、アクキ●チウハ」の反対即ち有権者が法律上に定めたる期限内に申出でざりし所の権利を失う（即ち期満免除）の意味に解することを得べし
第５８５条 債主権を記する総ての証書はその日附の２１０年前に溯る時は期満免除と為り且つ廃棄せらるる者とす（拿破崙法典第２２６３条）
第５８６条 期満免除はその他夥多の場合においてこれを行う而してその条目は大なる変化に属する者とす
第５８７条 損害の償いを得るの権、財産相続出版人の権等を請求する為に定められる期満免除有り
第５８８条 拿破崙法典第３篇第２０巻の第４款中に掲記したる別段なる債主権の期満免除を定る為には１定の期限無き者とす
デンマーク国民法終●
明治１５年６月３日版権届