アメリカ合衆国ルイジアナ州民法

　　　　　　　　　　　　　フランス　アントワーヌ・ド・サンショセフ　著

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　福地　家良　　　　　　訳

　　　　　諸言　

北アメリカ合衆国中にに於いて慣例と法律とを類聚し一定の民法を編纂せしことを企圓せしは独り累斯安州あるのみ然り而め千八百二十四年前に於いては西班牙の法律仏国巴里の慣例及ひ合衆国に於いて制定せし夥多の法律以て此州を統治し來りしか千八百二十四年当州第六期の立法院開設の際概して我仏国の民法を模範と為し以て第三千五百二十一条に編成せる民法を採択することに議決し往きに大部にして不便且つ矛盾底触を極めたる法律の混用を廃棄するに至れり

「ルイジヤンヌ」州民法

○前加篇　法律の義解及ひ布告

○第１章法律及ひ慣例

第１条　法律とは立法の心意を公然布告したるものを謂う

第２条　保障と刑罰とは法律によって之を指令し、免許し、禁止し又は発令するものとする○法律は平素事物の循環に適用し敢て稀有又は特別の場合に適用すべきものにあらす

第３条　慣例とは不断行為を重複し且つ継続して之を看守するに因て黙許の承諾又は普通の承諾を為すべき効力を得たる行為の永続するものを謂う

○第２章　法律の布告

第４条　布告なき法律は之を看守するに及はす故に本州の主宰は必す之を布告すべきものとす

法律は之を執行し又は実践せしむることを担任する官史に送達し又は法律を成るべく漏れなく公布する為に制定せる法式に因り法律上指定されたる人に送達すべし

本州中諸裁判所附きの書記役はその送達し来る法律の題目と到着したる月日とを之れか為備えたる特別の簿棚に証録すべし

第５条 　法律はその布告の時より全州に於いて執行すべきものとす

第６条　本州の主宰より為したる布告は州庁所在の「パロワス」　僧官の管轄地を云う　中に於いてはその布告の日より三日の後之を知るとみなしその他の「パロワス」に於いてはその布告を為したる地と各「パロワス」の裁判所との間その距離に従ひ定期の三日に四「リーウ」の路程にて一日を乗したる日にこれを知るととみなすべし

第７条　法律の布告ある後は何人たるを問はすこれを知らさることを口実　

　と為すを得す

○第３章　法律の効

第８条　フランス民法第２条増補○法律は既に結ひし契約中の義務に管渉すべらす

第９条　法律は州中に居住する者、州中に財産を所有する外国人又は州中に移住する外国人たるの別なく悉く之を看守すべし　フランス民法第３条

第１０条　公正の証書及ひ私の証書に管する方式とその効とはその証書を記

し又は差し出す所の国の法律と慣例とによりて規定すべし　フランス民法第４７条

蓋し外国に於いて執行すべき為記したる証書の効はその執行すべき国の法律に因りて規定すべし

若し合衆国中他州の国士又は外国の国士他州に於いて本州中にある動産を遺囑し而めその遺囑を為す時又は死去する時その家族と共に本州の管轄地外に居住せし時は前項に設けたる例外を適用すべらす

第１１条　　フランス民法第６条に同し

第１２条　　或る事を禁止すべき法律は縦令ひその法律中に適法の罰則を記せ

ざる時といえども或る事を無効と為すべきの力あり

○第４章　法律を適用すること及ひ解釈すること

第１３条　法律の意味明亮にして二様に解すべきことなき時はその法律の精神を討索するを口実と為し決してその文意を避けんとすること得す

第１４条　法律の言詞はすべて尋常一般の字義に解し而め文法書の規則上その微妙に拘泥することなく人の最も熟知して且つ慣用する所の意味に採るを必要とす

第１５条　芸術又は工作上の言詞、文意及ひ文章はその芸術、工作又は職業を主とする者の付したる意味と字義とに従い以てこれを解釈すべし

第１６条　若し法律の文意に疑わしき所あれはこれを正確なる意味に確定する為二様に解すべき意味ある言詞或いは文章と法律中他の諸部とを検視参照してその意味を探求することを得べし

第１７条　同一条件に付き二箇所の法律ある時は彼この管渉する所あるに原き之を解釈し甲の法律明亮なる時は疑わしき乙の法律を解釈する基本となすべし

第１８条　若し法律の文意に疑わしき所ある時その正確なる意味を弁明するに最も普通にして且つ実効ある方法はその法律の道理と精神とを熟考し又は試みて立法院に於いてその法律を制定するに至りし所以を熟考するにあり

第１９条　若し詐欺を予防する為又は公の利益に管する或理由ある時は法律上により或証書を無効と為すことあり然る時は何人に限らすその証書に詐欺の事なく又は公の利益にはいれいすべきことなきを証拠としてその法律の趣意を避くることを得す

第２０条　法律の趣意を限制し又は減尽するを目的と為しその法律の善悪を区別するは之を解釈すべき任ある者に非れは能はざるものとす

第２１条　裁判官の民事の訴訟を判決するに詳明の法律なき時は公議に従ひ

之を裁判すべく而め公議に従て裁判するに自然法、道理又は最初法律なき時の慣例に依存すべし　フランス民法第４条

○第５章　法律の廃止

第２２条　法律は更に他の法律によってその全部又は一部を廃止すること得べし

第２３条　法律は左に記すが如く明許又黙許を以て廃止す若し書面に認めたる新たなる法律に因りて廃止する時は明許のものとす

若し新たなる法律中に従前の法律はん戻する趣意を保含し又はその従前の法律と調和せざる時は黙許のものとす

甲の法律を廃止したる乙の法律を更に廃止するも甲の法律を再興すべきものに非らす

○第１篇　人事

　○第１巻　人の区別　

第２４条　人に男女の差異あるにより法律上に於いても亦民権、社会上の権及ひ政治上の権に管してその男女の問に必要なる差異を設けたり

第２５条　男は諸種の契約を結ひ又は諸種の職務を為すの権あり但しある人にのみ適用すべき理由あるによりその権を失ふたる時は格別なりとすまた女は法律に於いて特別に行ふこと得べきの権あるものとなしたる職務を除くの外公の任務を受け又は民法上の職務を行ふを得す

第２６条　子は生まれし時よりその両親の権に服従すべし但し子の服従すべき制限と親の権とは後に之を掲示すべし

第２７条　子に嫡出のものあり又は私生の者あり左の如し

法に適して契約したる婚姻により生まれたる者は嫡出の子とす

　法に適して婚姻を結はさる者の生みたる子は私生の子とす

第２８条　死して生まれたる子は試みて生まれしことなく又は懐胎なきことみなすべし　フランス民法第７２５条

第２９条　母の懐胎中の子に管することある時はその子を既に生まれたるものとみなすべし例えはその子生まるる前に財産相続を行う時その濁すべき財産ある時はその子の受くべき部分を保存し而め之を支配すべき管財人を任すべし

第３０条　遺子とはその父の死後に生まれたる子を謂う

第３１条　無感覚者とはその感覚を有すべき年齢に達せし後天然又はアル災害により道理を弁明せざるものを謂う○無感覚者は契約の種類如何を問はす之を結ぶの権利なく又はその者の感覚なきにより管財人に託したる自己の財産を管理するの権なし

第３２条　病理を原由とする無感覚者は自己の事務を管理するの権なく而めその者の一身とその者の財産とは管財人之を支配すべし

第３３条　前の二箇条に記載せる無感覚者は之が為己の所得たる利益を失ふべき者に非す故にその財産を保有するの権、財産相続を為すべきの権又はその身分に応して得べき親の権の効を保全することを得べし

第３４条　自分一身を統制し且つ自己の行為を抑制するに十分なる能力と実験とを有すると否やとは人の年齢によりて区別す。蓋し同年齢の者常に同一の成熟と判断力とを看せざる天然によるものなれは法律上に於いては婚姻の契約を結ひ又は他の契約を為すに充分なる年齢に達したる時を確定す

第３５条　奴隷とはその主人の権威に服従し且つその主人に隷属する者を謂う故に主人たる者は之を売却し又はその奴隷の身体、工芸及ひ労働を自己の随意に為すことを得べく而めその奴隷はその主人に属するもの、外或る事を為し或る物を有し又は或る物を得ること能はす

第３６条　自由を得たる者とは全て奴隷となりし者にして法律により釈放を得たる者を謂う

第３７条　定期に至り自由を得べき者又は遺囑の証書により自由を得べき者とは将来に至り自由を得べきの権を有するものを言う即ち例えは未だ成就せざる未必の条件の成就する時又は未だ発生せざる偶成の事の発生する時自由を得べき者是なり但しこの等の事の発生する比までは奴隷の身分たるべし

第３８条　自由の人とは自然の自由を有する者即ち法律の禁止する事を除くの外すべて己の随意にある事を為すの権を有するものを謂う

第３９条　男子又は女子をして親の権を免れしむる所の後見を免るる事又はその他の手紙は民法上親の権に附したる効のみに管するものにして敢えて自然法に附したる効に変異を及ぼすことなかるべし

第４０条　未だ満十四歳に達せざる男子又は満十二歳に達せざる女子は婚姻を結ぶこと能はざる者と称し満十四歳に達したる男子満十二歳に達したる女子は成人と称す

第４１条　未成年者とは満二十一歳に達せざる者を言う為この年齢に達するまでは後見人又は管財人の管理を受くべく又この年齢に達したる時は成年者たるべし　フランス民法第４８８条

○第２巻　住所及ひ住所を変換するの方法

第４２条　フランス民法第１０２条増補○主たる住居の地とは人の平素駐在するの地を謂う○大約平均すべき期限間数多の場所に輪住しため左の数条に掲示する方法により自己の意思を陳述せざる者ある時は数多の場所中その者の便益となる場所を択みて主たる住居とみなすべし

第４３条　フランス民法第１０３条に同し

第４４条　前条の如く主たる住居を定めんとする意あることを証するには離去する意ある「パロワス」の裁判官の面前及ひ住所を移さんとする「パロワス」の裁判官の面前に於いて別段その申述をなすべし

右申述を為す者はその趣を書面に認め之に姓名を手署すべく又裁判官は之を帳簿に証録すべし　フランス民法第１０４条

第４５条及ひ第４６条　フランス民法第１０５条及ひ第１０６条に同し

第４７条　フランス民法第１０７条増補○然れど全州中又は数多の「パロワス」ある区に於いて職務を行うべき官史はその任務を受けし前の場所を以って住所と為すべし但し之に反する意思を表する時は格別なりとす

第４８条及ひ第４９条　フランス民法第１０８条及ひ第１０９条に同し

○第３巻　失踪者　

○第１章　失踪者の管財人

第５０条　本州中に財産を保有する者失踪し若しくは本州外に住居し而め自己の財産を管理することを担任するものを設けす或いは之を担任するものを死去し或いは継続して財産を管理することを得す又は之を管理することを浴せざるに於いてはその財産所在の裁判官その財産を管理すべき管財人を任すべし　フランス民法第１１２条

第５１条　裁判官の管財人を選任する時は最親の財産相続人よりは失踪者の婦を撰み又最も失踪者に関係なき者よりはその失踪者の権利者を撰むべし但しこの等の人はすべて管財人たるに必要なる身分たるを要とす

第５２条　失踪者の財産の管理を任せられたる者は善良にして且つ実者に財産を管理し又有権者に対し管理についての計算を為すべき由を誓うべきものとす

　管財人はその地裁判官又は裁判官より最初特別に任せられたる公証人をして己の管理する財産に付き善良にして且つ実者なる評価目録を記せ而め又その管理を安全ならしむる為評価目録の高に充分なる保証を出すを要とす　フランス民法第１１３条

第５３条　失踪者の管財人の権力は全く全くその管財人に係る所行を為すのよとし而め如何なる口実あるを問わす己の管理する財産を他に譲渡し又は書入質となすことを得す

　管財人のその財産を管理するときは後見人に等しき義務及ひ責任を負担し抵当を出すべくためその勤務の償いとして毎年受くべき謝金も亦後見人に等しきものとす

第５４条　この管財を継続する時間失踪者に管する訴訟ある時は管財人之を為し又は之を受くべし

第５５条　失踪者の財産を管理する事は左の諸件に因りて終わるべし

　第１　失踪者又は本州外に住居する者自己の財産を管理せしむる為管財の任を興へたるも者又はその他の人を名代人として送遣する時

　第２　或期限を経過せし後失踪者の消息なきに因りその財産相続人法律に原き財産を仮りに保有する時

第５６条　失踪者の管財人たる者はその失踪者より名代人を送り又は失踪者の財産相続人の仮りにその財産を保有するに因り管財を為すべき期限の終わる時財産の管理に管する計算を為すべし

第５７条　本州中に知られたる名代人なく又は財産を管理する為の管財人を附興せられざる失踪者対する訴訟を為すべき人はその訴訟を受理すべき裁判官に請求して失踪者の為訴訟の時弁護すべき管財人を任せしむることを得べし

　　　○第２章　失踪者の財産相続人仮りに失踪者の財産を保有する事

第５８条　フランス民法第１２０条増補○若し五年以降失踪者の消息なき時は失踪を公害すべき裁判言渡し要せす

第５９条　フランス民法第１２１条に同し但し最親の財産相続人その失踪の広告を得ること及ひその失踪者の財産を仮に己れの所有と為すことを訴出するは最終の消息を得たる時より満七年の後とす

第６０条　フランス民法第１２２条に同し

第６１条　若し失踪者のことを大いに信すべき思料ある時は裁判官は前条に掲載せる期限の経過せざる前に於いて仮に保有せんとする訴えを裁判する時は失踪する原由と失踪者の消息をなし得ざる原由とに注意すべし

第６３条　フランス民法第１２３条に同し但しフランス民法の「基地の裁判所の検事」を除く

第６４条　財産の全部に付いての遺囑贈遺の証書ある時はその財産の全部を受くべき財産相続人は最親の財産相続人に優れたるものたれは失踪者の財産をかりに保有することを得べし但しその財産を安全ならしむるため担保を出すべし

第６５条　フランス民法第１２４条に同し

第６６条　フランス民法第１２５条増補○失踪者の財産を仮に保有する者の出すべき担保はその財産の管理不良なるにより生すべき損失の高に超過せざるを要とす

第６７条及ひ第６８条　フランス民法第１２６条に同し但しフランス民法の「検事」を「裁判官」に作る

第６９条　若し失踪者の財産相続人その失踪者の財産を仮に己の保有と為せし後失踪者の蹄著するに於いてはその財産相続人は左に記載する比例に応してその財産より生したる毎年の入額を返還すべし

　五年間の中に蹄著する時は三分の一

　十年の中に蹄著する時は入額の二分の一

　十年の後に蹄著する時は三分の一

　三十年間失踪の後は失踪者の財産を仮に保有するもの入額の全額を所得と為すべし　フランス民法第１２７条

第７０条　フランス民法第１２８条に同し但しフランス民法の「その失踪者の不動産」の下に「又は奴隷」を加え又左の別項を増補す

　然れどもその奴隷中の若干を売却するに必要なる子とある時は裁判官之を売却すべき言い渡しをなし而めその代償は堅固なる方法により利益を生すべき用方を為す又は不動産或いは奴隷を購求する為に用うべきことを裁判官より言い渡すべし

第７１条より第７６条に至る　フランス民法第１２９条より第１３４条に至るに同し

○第３章　失踪者に属する事あるべき権利についての失踪の効

第７７条より第８０条に至る　フランス民法第１３５条より第１３８条に至るに同し

　○第４章　婚姻の事に付き失踪の効

第８１条　十年間失踪の後最も消息なき時はその失踪者の婦又は夫裁判所より免許を得たる後再婚を為すの権あり又裁判所に於いては法律上の定めたる期限に充分なる時間失踪者より消息なきことを検討せし後再婚の免許を為すべし

　失踪せし夫又は婦その配偶者の再婚せし後蹄著するも前婚は既に解きたるものたれは再婚をなすことを得べく而め失踪を原由となし一方の配偶者の結ひたる婚姻の契約は確然たる適法のものとす　フランス民法第１３９条差異

○第５章　父の失踪の時幼年の子を監督する事　

第８２条　フランス民法第１４１条に同し

第８３条　若し母再婚を為す時は失踪せし父の血族親又はその朋友を以って組成せる親族会議の意見を取るに非ざれはその子を監督するの権なし

第８４条　母その子を監督することを親族会議により拒まれたる時は幼年の事後見、の事、及ひ管財のことの巻に規定せる方法に従いその子の為後見人を任すべ

第８５条　若し父の失踪せし時母は既に死去し又はその子の丁年に達せざる前に死去する時も亦前条に指示したる方法に因りその子の為仮に後見人を任すべし

第８６条　フランス民法第１４３条に同し

　　○第４巻　夫婦

○第１章　婚姻

第８７条　法律に於いては婚姻を以って民法上の契約とみなす

第８８条　婚姻を為すに付き法律上に規定する諸件は左に記列す

　第１　婚姻の契約を結ひ及ひ之を広告するの方法

　第２　婚姻のその法に適したる効及ひ婚姻の結果

　第３　婚姻を解く方法

第８９条　法律上に規定せる規則に従い契約し且つ公正したる婚姻に非ざれは法律上に於いて婚姻と認むることなし

第９０条　婚姻は固と之を結ぶ一方の者の死去する迄継続すべき契約たりと雖も法律に定めたる原由に因り配偶者の中その一方の者の死去する前に之を解くことを得べし

○第２章　婚姻の契約を結ぶ方法

第９１条　婚姻は法律上に於いて民法上の契約とみなすべきものたり故に婚姻の契約を結ぶ時その双方の者左に記載する諸件に依存せる時は法律上に於いて婚姻を適法のものとみなすべし

　第１　婚姻を結ぶことを希望せし事

第２　婚姻を結ぶことを得し事

第３　法律上に規定せる法式と公正のことに従テ婚姻を結ひし事

第９２条　若し婚姻を結ぶ双方の者自由の承諾を為さざる時は決して婚姻を適法のものと為さす

左に記列する諸件は自由の承諾に非らす

第１　強誘者に対して承諾する時但し強誘されたる人充分の自由を得たる後承諾するときは格別なりとす

第２　暴行を以って奪われたる時

第３　婚姻を結ぶ双方の者の中その一方の者婚姻を結ぶの意ある人を誤りたる時　フランス民法第１８０条

第９３条　本州中に於いて婚姻を広告するの免許を得たる僧官及ひ官史は十四歳以下の男十二歳以下の女を婚姻せしむることを得す若しこれ等の者を婚姻せしむる時は官史は免職僧官は本州中に於いて常に婚姻を広告するの権を剥奪せらるべし

第９４条　フランス民法１４７条に同し

第９５条　自由の人と奴隷との間には婚姻を結ぶことを得す又その婚姻を広告することを禁す而めその婚姻は無効たるべし又白人種と黒人種との婚姻も同様たるべし

第９６条より第９８条に至る　フランス民法第１６１条より第１６３条に痛るに同し但し兄弟姉妹の婚姻親は傍系親の間に婚姻を結ぶこと能はざるものと為す部類中に保含することなし

第９９条　婚姻を結ぶことを得べき年齢に達せし男女の未丁年者その婚姻を結ぶにはその父母又その父母の中後に生存する者の承諾を得くべく又若しその父母なき時は管財人の承諾を得くべし

前項の未丁年者は婚姻を結ぶに付きその免許を得んとする裁判官にその承諾の証を立るを要す　フランス民法第１７３条

第１００条　婚姻を結はんとする丁年者はその丁年たるの証を立つべし　フランス民法第７０条

○第三章　婚姻を広告する事

第１０１条　本州の「パロワス」中の一に居住する僧官はその「パロワス」中に婚姻を広告するの権を有すべし

第１０２条　「パロワス」の裁判官は一人又は数人の治安裁判官をして己の管轄内に於いて婚姻を広告せしむることを得べし

第１０３条　如何なる婚姻に管するを問はす「パロワス」の裁判官より僧官又は婚姻の広告を負担すべき治安裁判官に特別の免許を送達するに非れはその広告を為すことを得す

第１０４条　婚姻の免許を為す前「パロワス」の裁判官は寺院又は裁判所の門戸に婚姻の事を広告し十五日を経過して故障を述ふる者なき後婚姻の免許を為すべし

若し婚姻を結ぶことに付き急速にして且つ重大なる事ある時は裁判官の意見に因りその広告を為すことなし

第１０５条　裁判官は婚姻の免許を為す前将来夫たるべき者をしてその婚姻に付き最も故障なきを担保せ而めんが為その資力に応し証人たる者と連帯して保証金を出さしむべし○この保証金を預かり置く期限は二年間とす　フランス民法第６８条差異

第１０６条　婚姻の免許は夫婦他らんとする一方の者の住所ある「パロワス」の裁判官に非れは之を為すを得す

第１０７条　婚姻は丁年に達したる保証人三人の面前に於いて之を広告し而めその広告を為したる官氏の姓名を手署したる証書を婚姻を結ぶ双方の者及ひ証人に送達すべし　フランス民法第７８条差異

第１０８条　婚姻を結ぶに付き故障を述ふる者ある場合に於いて述ふる者の誓と裁判官の意見にて婚姻の中止を言渡すに充分なる道理とを以って故障の証拠と為したる時は夫婦たらんとする者にその故障を通達し裁判官は夫婦たらんとする者と故障を述べたる者との申立を聴んが為裁判所に出頭すべき日を示すべし

第１０９条　フランス民法第１７７条に同し

第１１０条　何人に限らす婚姻の故障を述ぶることを得べく但しその故障却下せざるに於いてはその故障を述べたる者より訴訟人費を弁すべきものとす　フランス民法第１７９条

第１１１条　何人に限らす名代人を以って婚姻を為すを得す

○第四章　婚姻を無効と為す訴訟

第１１２条及ひ第１１３条　フランス民法第１８０及ひ第１８１条に同し

第１１４条　父母の承諾なき時と雖も法律上に規定せる法式に従い未丁年者婚姻の契約を結ひし時は無効と為すべからす但し父母の承諾なき事をその父母の至当と思考する時は之を以ってその婚姻を結ひし子に財産を相続せ而めざる正当の原由と為すことを得べし

第１１５条　フランス民法第１８４条に同し

第１１６条　住古の法律に設けたる婚姻を無効と為すべき原由は之を廃止す

第１１７条　婚姻を取消すべき訴訟によりて利益を得べき者のその訴訟を為すことを得べき場合に於いては傍系の親又は前婚にて生まれたる子は婚姻取り消しの訴訟を為すことを得す但しその子の父又は母なお生存し而めその婚姻を取り消すに付き現に利益を得べらざる時は格別なりとす

第１１８条　フランス民法第１８８条に同し

第１１９条及ひ第１２０条　フランス民法第２０１条及ひ第２０２条に同し

○第五章　夫婦双方の義務

第１２１条　フランス民法第２１２条に同し

第１２２条及ひ第１２３条　フランス民法第２１４条及ひ第２１５条に同し

第１２４条　フランス民法第２１７条に同し

第１２５条　夫と別居を為したる婦は如何なる事を為すに管せすその夫の免許を得るを要せす　第２４１０条を見よ

第１２６条より第１２８条に至る　フランス民法第２１８条より第２２０条に至るに同し

第１２９条及ひ第１３０条　フランス民法第２２２条及ひ第２２３条に同し

第１３１条及ひ第１３２条　フランス民法第２２５条及ひ第２２６条に同し

○第六章　婚姻を解く事

第１３３条　フランス民法第２２７条に同し但し第３を変更する左の如し

本巻の第四章に掲示せし原由中の一箇を以って婚姻を無効と為す事又は夫婦中の一方の者の失踪せしに因り他の一方の者法律上に免許せる場合に於いて他の人と婚姻を結ひし事

夫婦その居を別つと雖も婚姻の契約を解除するに非らす但し爾来夫婦同室し又は夫婦の間に存在せし財産を共通すべからす　フランス民法第３１４条

○第７章　再婚

第１３４条　フランス民法第２２８条に同し

○第５巻　夫婦別居　

○第１章　夫婦別居の原由

第１３５条　住古より本州の法律に存在したる夫婦別居は左の数条に記する原由に因りて為すべきものとす

第１３６条より第１３８条に至る　フランス民法第２２９条より第２３１条に至るに同し但しフランス民法第２３１条に左の１項を増補す

　苛虐は之を受けたる者之を為したる者と共に生活するに堪えざる種類たるを要す

第１３９条　夫婦別居は左に記する場合に於いても亦相互に訴求することを得べし　

　第１　夫婦中一方の者他の一方の者に管して公に名誉を汚す時

　第２　婦その夫を棄絶し又はその夫婦を棄絶する時

　第３　夫婦中一方の者他の一方の者の生命を害せんとせし時

○第二章　夫婦別居の訴訟

第１４０条　夫婦別居を為すには必す裁判所に訴えをその取調べを受け且つその裁判所を受くべく而め仲裁人に夫婦別居を為さんと求むることを得す

第１４１条　夫婦中の一方の者を遺棄せしことを原由と為したる夫婦別居の訴求は夫婦同居の家を離去せし者正当の原由に因ることなく他の一方の者と同居することを固く拒絶し而めその拒絶の事を左に記載する法式に従い確証せし時に非れは認可すべからす

第１４２条　夫婦中一方の者正当の原由あるに因り失踪せし時は縦令ひその失踪者より最も消息なき確証ある時と雖も夫婦別居の訴求を認可することなし但し失踪者の巻に規定したる事に官する時は格別なりとす

第１４３条　夫婦中一方の者他の一方の者を遺棄せし時はその遺棄せし者に対し夫婦同居の住所に蹄来すべき旨を追月三次に催促し然る後なお到来せざるに於いては夫婦別居の裁判言渡をなすべし而めその裁判言渡も亦追月三次に為すべきものとす

若し夫婦中一方の者を遺棄せし者本州中に住居する時はその物の平素の住所に前項の催告又は裁判言渡を為し又本州中より失踪せし時は夫婦別居を訴求したる配偶者の求めに因り裁判官より任ぜられたる弁護者に対して前記の催促又は裁判言渡を為すべし

○第３章　夫婦別居の訴訟に付き仮の処置

第１４４条　夫婦の間に生まれたる数人の子ある時訴訟審判中その夫婦相互に争ってその子を仮に監護せんとするに於いては原告又は被告たるを問はすその夫に監護を免すべし但し夫をしてその子の全員又は若干員を監護せしむべからす重大の原由あるに於いては裁判官の配慮を以て確定すべし　フランス民法第２６７条

第１４５条より第１４８条に至る　フランス民法第２６８条より第２７１条に至るに同し

○第４章　夫婦別居の訴訟を受理せざる事

第１４９条及ひ第１５０条　フランス民法第２７２条及ひ第２７３条に同し

○第５章　夫婦別居の効

第１５１条　フランス民法第３０１条に同し

第１５２条　フランス民法第２９９条及ひ第３００条に同し

第１５３条　フランス民法第３０２条に同し

第１５４条　フランス民法第３１４条に同し但し本章の四箇条にはフランス民法の「離婚」を「夫婦別居」に作る

○第６巻　主人及ひ雇人

○第１章　雇人の諸種類

第１５５条　本州中に於いては雇人を分つて二箇所の種類とす即ち自由の雇人及ひ奴隷是なり

○第２章　自由の雇人

第１５６条　自由の雇人とは本州中に於いて雇人の契約を結ぶ者の利益のため或工作若しくは商業に使役さし又は或事に従事する為或償額賞興金又は或条件を確定し以って自己の労働を賃貸し、売却し又は雇はる、所のすべての人を謂う

第１５７条　本州中に於いては自由の雇人二三箇の種類あり左の如し

　第１　若干の雇賃を確定し以て一日間、一週間、一月間又は一年間自己の労働を賃貸する者

　この契約の定額を確定する規則は賃貸の巻中にあり　

　第２　或金額を得べき旨を確定せしにより労働の賃貸に非らすして全く之を売却したるものと看做し定期の時間労働を為す為に雇はるる者

　第３　就業者即ち藝術、工作、又は職業をふ習する為或人に使役さるる者

　旅行の費用を弁償する為自己の労働を売却したる雇人に管する規則は特別の法律に確定するを以って本巻に掲載せす

第１５８条　未丁年者はその父母、後見人又は管財人若しこの等の人なきときは契約の証書を差し出すべき「パロワス」の裁判官の承諾を得るに非れは雇はるることを得す

第１５９条　未丁年者の雇入期限は男子は十八歳女子は十五歳に達せし時を以って満期とす但しこの期限より一層早く満期となるべき旨を規定したる時は格別なりとす

第１６０条　雇人とならんと欲する定年者は五年以下の期限に非れは雇はるることを得す

第１６１条　外国に於いて五年以上雇はるるべき契約を為せし者本州中に到着する時はその時より起算し雇入れの期限を五年に減縮すべし

第１６２条　雇入れの契約の証書は公証人又は公証人の職務を担当する官史に差出すべし○この証書は公証人の面前に於いて契約を結ひし双方の者に読聴かせし後その双方の者と証人及ひ公証人之に姓名を手署すべし

第１６３条　雇主と雇人若しくは修行者との間に結ふ雇人の契約の真意は雇人若しくは修行者はその雇人との期限間その雇主に使役され又雇主に於いては同上の期限雇人若しくは修行者に飲食物若しくは需要品を給興し且つ部屋を貸興すべしことを約定するにあり

　その他雇主は修行者に藝術、工作、又は職業をふ授し且つ読書筆算を教授すべきものとす

第１６４条　雇人及ひ修行者とその雇主とは双方各自に雇主の契約を執行すべき義務ありと雖もその契約解除の訴求を為すに正当の原由ある時は雇主若しくは修行者又は雇主の訴求に因り確定の期限前にその契約を解除することを得べく而めこの場合に於いて裁判官は雇入れの契約を結ひしに付き既に払ふたる給料の一部を未だ経過せざる時間に算当して返還すべきことを言渡すべし但しその雇人の過失に因りて雇人の契約を解除せし時は最もその給料を返還するに及はす

第１６５条　若し雇主その雇人若しくは修行者を悪く取扱い或は彼等に対し残忍過酷の所業を為し又は彼等と契約したる義務を執行せす又雇人若しくは修行者雇主の免許を得すその家を脱出し又は失踪し或はその雇人に対して自己の職務又は義務を行はさる時はこの等の所為を以て雇入れの契約により損害を受けたる一方の者を釈放する正当の原由と為し且その者にその時の場合と公義とに因り裁判官の意見を以て損害の償を與ふる正当の原由とみなすべし

第１６６条　修行者の雇主死去する時はその修行者の結ひし契約をその時の儘にて最も給料を余剰することなく解除すべし○然れども死者の財産相続人の一人その使者と同一の身分にして且つ工作又は職業も同一なる時は修行者の為死者に代りて修行師となるべき免許を得べし

第１６７条　雇主はその雇人若しくは修行者の怠慢又は不品行なる時に方りて之を譴責することを得ると雖もその譴責たる温和で最も罰棒を與ふるを得す但し日雇いの者に対しては同上の権なき者とす

第１６８条　雇主はその雇人を打擲し又は気すつけし第三者の人に対し起訴することを得べし蓋しこの場合に於いてはその雇人を使役すること能はざるに因り損害を受けしことを以て訴訟の原由となし而めその損害は予審の裁判言渡の時証明すべきものとす

第１６９条　雇主その雇人を保護するのみに付き或人に対し起訴せし時は自ら弁解することを得べく又雇人その雇主を保護するためのみに付き起訴せし時も亦自ら弁解することを得べし是れ畢竟雇主は雇人を不断使役するに因て利益を得べく又雇人はその雇賃を出す雇主の側に在りて之を保護するの義務あるに因るなり

第１７０条　雇主は准契約及ひ故意に非らすして人に損害を加えたる所行の巻に設けたる規則に従いその雇人の犯したる所の故意を以って人に損害を加えたる所行の責に任すべし

第１７１条　雇主は己の家より市街又は大道に或物を投捨し特に一人又はその土地一般の住民に損害を加えたる時はその責に任すべし何となれは雇主たる者はその家の取締を監督し且つその家より発生するすべての過失の責に任すべき者たれはなり

○第三章　奴隷

第１７２条　本州中に於いて奴隷取扱の取締及ひ方法と奴隷の重罪及ひ軽罪の処刑に管する規則とは立法院の特別の法律に因て確定せり

第１７３条　奴隷は全くその雇主の意に服従すべきものとす而め雇主はその奴隷を譴責し又は罰することを得但しその身体を傷け或はその一部を切断し或は生命を失うの恐れあるか又は生命を奪うか如き度外に過酷なる方法を以てすることを得す

第１７４条　奴隷は己に自由を得べきことを目的と為したる時の外如何なる種類の契約をも結ぶの権なし

第１７５条　奴隷の所有する物はすべてその雇主に属すべく而めその奴隷は己の貯蓄せし財産即ち金額又は雇主の意に因り所得と為すことを得べき動産の一部を除くの外最も己に保有することを得す

第１７６条　奴隷は如何なる者と雖も財産相続又は他の方法に因り人に譲渡すことを得す然れども未だ奴隷とならさる時自由の人たる血族親より相続せし財産は財産相続を開始する前に自由を得たる卑属親に贈與することを得べし

第１７７条　奴隷は公私の負任及ひ職務を為すを得す且つ本州の特別なる法律に確定したる例外を除くの外後見人、管財人、遺囑の管理者の民事若しくは刑事の証人となるを得す又民事の原被告となり裁判所に出廷することを得す但し己の自由を得べき訴訟を為し又はその自由を得べき証を述ふる格別なりとす

第１７８条　奴隷の犯したる重罪又は軽罪を公に償はしむる為政府の名義を以てその奴隷に対する訴訟ある時はその雇主にその訴訟を通達すべし

第１７９条　雇主は己の命に因てその奴隷の為したる事件即ちその委託せし事務の種類に因て之を管理し又は条約することを得たる諸件の責に任すべく又若し雇主その奴隷に或事を為すを免許せす又は或事を委託せさる時は唯己に得たる利益の高に至る迄の外その責に任すべらす

第１８０条　雇主は奴隷の犯したる軽罪又は重罪に因て生せし損害の償金をその被害者に差出すべし但しその奴隷に対し公けの刑を言渡すべき事は損害の償に管係なきものとす

第１８１条　然れども雇主はその損害を受けたる者に通常の法式に従ひ奴隷を交附し以て公に売却せしむる時はすべての責任を免るべく而めその奴隷の代償に損害の償と諸入費とを除去してなお過剰ある時は即ち奴隷の雇主に返還すべきものとす又雇主は縦令ひ奴隷の代償損害の償いと諸入費とを払うに不足する時と雖もその損害を償うべき裁判言渡ありし日より遅くとも四日以内に奴隷を交附し且その奴隷雇主の命に因り重罪又は軽罪を犯したる証なきに於いては全く損害を免るべし然れども若し同上の如き証あるに於いては雇主たる者はその奴隷を交附し以て責任を免るることを得ざるのみならす賠償の価格如何を問はすすべてその責に任すべきものなり

第１８２条　奴隷は雇主の承諾を得るに非れは婚姻するを得す又その婚姻の契約に付ては民法上の効を生することなし

第１８３条　奴隷の身分たる婦の生みし子はその婦の婚姻したると否やとを問はすその婦と同様の身分たる故に奴隷にして且つその婦の所有に属すべき者とす

第１８４条　雇主は本州中に於いて法律上に規定せる法式と要件とに従い生存中の贈遺又は遺囑贈遺の証書に因て自由を與ふる時は必す明許にしてその法式に従ふを要とす又遺囑贈遺の証書に因て自由を與ふるに於いては遺囑贈遺の事、財産相続人を撰任する事遺囑贈遺の管理する事の如き諸件に管して効を生することなし且つ該証書に因て自由を得たる者この等の事に管する諸件を記するも試て記せざるものと看做し無効のものとす

第１８５条　奴隷の年齢凡その三十歳に達し且つ自由を得べき前少なくとも四年間品行方正なる者に非れは何人と雖も自由を與ふることを得す

第１８６条　雇主又はその奴隷又はその子の生命を救ひし奴隷には年齢に管することなく自由を與ふることを得べし

第１８７条　奴隷に自由を與えんとする雇主は「パロワス」中に居住する「パロワス」の裁判官にその申述を為し而め裁判官は之を公害せしむる為その申述を四十日間裁判所の門前に貼付しこの期限を経過する迄故障を述ふる者なき時はその雇主に自由を與ふる証書を交附すべきことを免許すべし

第１８８条　奴隷に自由を與へし者その証書を交附せし時は縦令ひその自由を得たる者生命を保ち難き模様ありと雖も需要品を供給するの義務なし

第１８９条　一旦奴隷に自由を與へし時は爾来その雇主又はその財産相続人之を取消すことを得す

第１９０条　権利者の権利に属し又は強て財産相続人に任せられたる者の法律上に於いて得べき財産の部分に属する奴隷に詐譌を以て自由を與ふる時はその効なきものとす而めその詐譌の証とみなすべきは自由を與ふる時之を與へし者その権利者に対し義務を盡すに充分なる財産を有せさること又は己の財産相続人に法律上に於いて與ふべき財産の部分を遺留するに充分なる財産を有せさること又はその奴隷を特に書入質と為せしこと等を確証するにあり但し奴隷を書入質となせし場合に於いてはその奴隷又は親族その書入質と義務を盡すに於いては奴隷に自由を與へしことを有効のものとす

第１９１条　如何なる奴隷の雇主を問はすその奴隷の政府に勤労を盡したるに因て立法院の命に因り且つ評価人の意見を以て確定したる奴隷の代価を払うべきことを政府に於いて負担し以て自由を與ふるを除く外直接又は間接に奴隷に自由を與ふべき義務あることなし

第１９２条　雇主は如何なる原由あるを問はす自己の奴隷を売却するの義務なし但し左に記する二箇所の場合に於いては売却せさるを得す

　第１　雇主他人と連帯して奴隷を所有する時連帯の所有者その連帯を解く為奴隷を売却せんと求むる時

　第２　雇主奴隷に対し残酷の取扱ひを為すに因り裁判官之に管する処刑を言渡の外奴隷をしてその雇主の妄用する権威を脱れ而めんため公に之を売却することを至当と認むる時

第１９３条　将来に於いて自由を得べき権利を得たる奴隷はその権利を得たる時より遺囑の贈遺又は生存中の贈遺を受くることを得べし故に贈遺又は遺贈に因て得たる財産は現物の盡にて引渡さんか為その自由を得る時迄保存するを要す○又その自由を得べき時に至る迄は管財人をしてその財産を管理せしむべし

第１９４条　遺贈の証書に因り自由を得べき者は本州外に轉移することを得す○但し人の己を本州外に出ささるを得さる正当の原由あると思考する場合に於いては法律上に保護を受くべき為裁判所に出訴することを得

第１９５条　遺囑の証書に因て自由を得べき者若しその自由を得べき期限前に死去せし時は遺贈者又はその財産相続人贈遺又は遺囑の財産を取戻すべし

第１９６条　将来に至り全く自由を得べき権利を得たる女の生みたる子は母の身分を相続し縦令ひその母自由を得べき期限前に死去せし時と雖も確定の期限に至れは自由を得べし

○第７巻　父及ひ子

○第１章　すべての子

第１９７条　子に嫡出又は不嫡出あり

第１９８条　嫡出の子とは結縁中に生まれたる子を謂う　

第１９９条　不嫡出の子とは結縁外に生まれたる子を謂う

第２００条　不嫡出の子に二種あり左に記するか如し

　子を懐胎せし時法に適して婚姻を結ひたる二人の者より生まれたる子及ひ婚姻に対して適法の故障ある時その婚姻を結ひたる二人の者より生まれたる子是なり

第２０１条　姦通の子とはその子の懐胎の時一方の者又は双方の者他の人と不適法な交接を為したる二人より生まれたる子を謂う

第２０２条　倫乳の子とは法律上に於いて婚姻を禁止したる階級の血族親たる二人の者の交接を為せしに因り生みたる子を謂う

○第２章　嫡出の子

○第１款　婚姻に因て子を嫡出となす事

第２０３条　フランス民法第３１２条第１項に同し　

第２０４条　フランス民法第３１３条に同し

第２０５条　婚姻を結ひし日より百八十日を経過する前に懐胎したる有様にて生まれたる子は婚姻に因て生れたる子と為すべらす　フランス民法第３１２条第２項

　懐胎したる子は六箇月を経過せし後生れたる子を謂う

第２０６条　婚姻を解きし後又は夫婦別居の裁判言渡ありし後三百日を経過して生れたる子も亦婚姻に因て生れたる子となすべからす

第２０７条　夫婦別居の裁判言渡ありし後三百日を経過して生れたる子はその夫婦別居の後同室せし証拠ある時を除くの外嫡出の子と為さざることを得べし何となれはその夫婦は夫婦別居の裁判言渡に服従せし者と思料すれはなり

　然れども夫婦随意に別居せし時は反対の証拠たるに非されは常に同室するものとみなすべし

第２０８条　夫婦遠隔の地に在て同室し難き時も亦婚姻に因て生れたる子の父とみなすべらす　フランス民法第３１２条第３項

第２０９条　フランス民法第３１４条第一項及ひ第２項に同し

第２１０条及ひ第２１１条　フランス民法第３１６条及ひ第３１７条に同し

　　　　○第２款　嫡出の子を証する方法

第２１２条より第２１４条に至る　フランス民法第３１９条より第３２１条に至るに同し

第２１５条　出産の証書又は洗禮の証書なく或は引読して現に子たるの影状を有することなく或は姓名を誤り或は分明ならさる父母の生みたる者と為してその子の出産の証書を記し或は棄兒或は捨去られたる子或は身分を隠匿されし子は証人又は証書を以て子たるの証を立つることを得べし　フランス民法第３２３条

第２１６条　フランス民法第３２５条に同し

　　　○第３章　不嫡出の子

　　　　○第１款　嫡出と為す事

第２１７条　フランス民法第３３１条増補○その他嫡出と為すべき方法はすべて廃止す

第２１８条及ひ第２１９条　フランス民法第３３２条及ひ第３３３条に同し

　　　　○第２款　不嫡出の子を認むる事　

第２２０条　父の法に適して認めたる不嫡出の子は私生の子と稱し父の分明ならさる子は父なき子と稱す以て私生の子と区別す

第２２１条　フランス民法第３３４条増補○黒人種の為には他に如何なる証ありと雖も認可することなし

第２２２条及ひ第２２３条　フランス民法第３３５条及ひ第３３６条に同し

第２２４条　フランス民法第３３８条に同し

第２２５条　私生の子或人の子たることを訴ふる時は之に管係ある者より故障を述ふることを得べし　フランス民法第３３９条

第２２６条　前条に掲載せる方法に因て認められさる不嫡出の子人を指して我父なりと訴ふることを得べきは自由の人にして且つ白人種のみに免許す

　自由の黒人種も亦人を指して我父なりと訴ふることを得べし但し我父なりとする人の黒人種たる時のみとす　フランス民法第３４０条第１項差異

第２２７条　前条に従い人を指して我父なりと訴ふることを得べき場合に管して父たる事は左に記列する諸件に因て確定す

　第１　我子と認め且つその子に名を附與したる父の私に記せし諸種の証書ある時

　第２　父の公又は特別に我子なりと認め又は談話中その子に名を附與し又はその子を何某と名つけ以て養育せし時

第３　子の父母の妾となりて生活する者と認められ且つ子を懐胎せし時妾の名義を以てその父の家に住居せし時

第２２８条　母の誓詞中に縦令ひ仮に父と想像すべき者の屋外の外他所に於いてその者と同室せし証を述ふると雖も若しその母淫行の風習ある歟又はその子の生まるる前に於いて他の一人又は数人と不適法に交接せし者と認めらるる者に於いてはその誓詞に因て誠実の父と確定するを得す

第２２９条　フランス民法第３４０条第二項に同し

第２３０条　人を指して我母なりとする訴訟はその母の婚姻を結ひし婦たる時を除くの外如何なる婦嫡出の子と雖も之を為すことを得べし　フランス民法第３４０条差異

　人を指して我母なりと訴ふる子はその婦の生みたる子に相違なきことを証すべし

第２３１条　仁慈の人棄臾を拾取り以て養育せし時はその父母たる者勢力、脅迫又は災禍に因て奪はれたることを証するに非れはその子を取戻すことを得す

　その他如何なる血族親と雖も預而め後見人又は管財人を任し且つその子に管して有したる入費の弁償を確実にする為充分なる保証金を出せし後に非れはその子を取戻すことを得す

○第４章　養子のの事

第２３２条　試みて本州の法律上に於いて免許せし養子の事は之を廃止す

○第５章　父の権

○第１款　嫡出の子に対する父の義務及ひ父に対する嫡出の子の義務

第２３３条　フランス民法第３７１条に同し

第２３４条　フランス民法第３７２条増補○父子の間不和を生する場合に於いては父の権その子の権に優るものとす

第２３５条　子たる者は父母の権内に属すべき限りは法律又は風儀に違戻する事を除くの外すべてその父母に服従すべし　フランス民法第３７４条

第２３６条　未だ婚姻を為すことを得べき年齢に達せさる子はその父母の免許なく父の家を離去することを得す而め父母は条理ある方法を以てその子を教戒することを得べし

第２３７条　父母は幼年の事の巻に掲示せる規則に従いその子の為後見人を任するの権あり　フランス民法第３９７条

第２３８条　父母の生存中の権利の一部を教師、教訓者又は子の養育を委托する他の人に附與することを得べく而めその権利の一部とはその子を使用する目的に合格ならしむる方法を以て教育し且つ教訓する権を謂う

　又父母はその権を修行者と為すの権あり

第２３９条　父母はその子の丁年に至り又は後見を免るる迄結縁の間その子の財産の入額を得るの権あり　フランス民法第３８４条差異

第２４０条　フランス民法第３８５条第１項及ひ第２項に同し

第２４１条　夫婦別居するに於いては前条に記する入額所得権は全く夫婦別居を訴えてその許可を得たる父又は母の利益となるべし但しその入額所得権を得たる者は前条に記する負任を有し一方の者は之を有することなし　フランス民法第３８６条

第２４２条　フランス民法第３８７条に同し

第２４３及ひ第２４４条　フランス民法第２０３条及ひ第２０４条に同し

第２４５条　フランス民法第２０５条増補○又子は父母或いはその他の尊属親の不幸にして精神錯乳する時その有様に必要なる務めを為すべし

第２４６条　前条の場合に於いて養料なる語は之を求むる者の食料、萬居及ひ需要に必要なるすべての物を謂う

　又養料を幼着に渡すへき時は養料中に教育料を保含するものとす

第２４７条より第２５０条に至る　フランス民法第２０８条より第２１１条に至るに同し　

第２５１条　父母はその子を保護すへき者たれは子その父母の支配を受くべき間はその子の管係する民事上の諸種類の訴訟ある時子の為裁判所に出頭することを得べく且つ人よりその子に為したる贈遺を請取ることを得べし

第２５２条　父母はその子或人を罵詈し又は打擲せしに因り訴訟を受けたる時その子を弁護する為のみに付きては弁解することを得べし

第２５３条　父母は准契約及ひ故意に非らさるして人に損害を加えたる所行の巻に規定したる方法と場合とに従いその子を故意を以て人に損害を加え若しくは故意に非らすして人に損害を加へたる所行の責に任すべし　フランス民法第１３８４条第二項

○第２款　私生の子に対する父の義務及ひ父に対する私生の子の義務

第２５４条　父なき子は人の親族に非らす又血族親を有することなし故に縦令ひその子法に適して認められたる時と雖も父の権に服従するに及はす

第２５５条　然れども天然の性質と人情とに因てその父母と私生の子との間に互いに行うべき若干の義務あり

第２５６条　父母は私生の子の養料を要する時は之を給與すべし

　私生の子も資力あれはその父母に必要なる時資料を呈供すべし

第２５７条　私生の子は父母に養料を訟給すること得べきのみならすなおその父母の死去せし後その財産相続人に対して訟給することを得べし

第２５８条　然れどもこの訴訟を為すには左に記する諸件あるを必す必要とす

　第一　父母又はその父母の中養料の訟給を受くべき一方の者より法に適して認められたる事又は人を指して我父若しくは我母なりと訴へる時公平の裁判言渡に因て私生の子と認められたる事

　第二　その子己の生活の為全く養料の必要なることを充分なる方法を以て証する事

第２５９条　養料は一般に之を訟給する者の所要と之を出すべき者の資力とに因て之を算すべきものたるも黒人種の私生の子にはその食料、萬居及ひ衣服の供給を確実にし且つ読み書き又は工作を習はしむる為のみの充分なる高を超過すべからす

第２６０条　養料を出すべき義務は私生の子自己の労働を以て生計を営むことを得べき能力あるに至り又はその父母私生の子に生活に充分なる方法と為すに適当する藝術、工作又は職業を習は而めたる時は消散すべし但し或疾病或は宿痾に因て生計の為労働すること能はさる時は格別なりとす

　又私生の子の父若しくは母生存中その子の生活に充分なる養料を與へ又或は贈遺を為し或は贈遺に等しき他の利益を與へし時は父母の財産相続人は養料を出すべき義務を免るるべし

第２６１条　嫡出の子に與へ又は嫡出の子に出すべき養料に管して前款に設けたるすべての規則は私生の子に管しても亦適用することを得べし但し前数条に記したる規則に違戻する場合は格別なりとす

第２６２条　姦通又は倫乳に因て生れたる子にも母或はその母の尊属親より養料を給与すべし　フランス民法第７６３条

○第八巻　幼者の後見、管財及ひ後見を免かる事

○第一章　後見の事　

○第一款　総則

第２６３条　未だ婚姻を結ふ年齢に至らさる幼年即ち男子は十四歳未満女子は十二歳未満の者の身體と財産とは後見人の支配に任かすべし

　前項に記する年齢に達せしと時より丁年に至る迄又は後見を免かる迄は管財人の支配を受くべし　フランス民法第３８８条

第２６４条　後見人に四箇所の種類あり左に記するか如し

　自然の後見、遺囑の後見及ひ裁判官より任せられたる後見是れなり

第２６５条　自然の後見は当然に之を為すの権利ありその他の後見は裁判官より免許を受け又は任せらるるものとす

第２６６条　後見人は即ちその後見を為したるに付ての計算を為すべし

○第２款　自然の後見の事

第２６７条　　フランス民法第３８９条増補○その子の丁年に至り又は後見を免る時は財産の支配を停止すべし

第２６８条　フランス民法第３９０条に同し

第２６９条　自然の後見人は裁判上に管する諸件を担任し且つ後見人の観察者を任せらるを得す但し保証金を出すに及はす

第２７０条　フランス民法第３９３条に同し

第２７１条　フランス民法第３９４条増補○後見を為すことを肯せさる母と雖もその子の教育に管する監督と配慮とに付ては後見人たるべし○この場合に於いて後見人はその子の財産の支配に管する諸件のみを担任すべし

第２７２条及ひ第２７３条　フランス民法第３９５条及ひ第３９６条に同し

第２７４条　父は当然己の認めたる私生の子の後見人たるべし○母は当然父の認めさる私生の子の後見たるべし

　父母に認められたる子の後見人はその父たるべく若し父なき時はその母たるべし

○第３款　遺囑の後見

第２７５条　フランス民法第３９７条増補○この後見人は通常遺囑贈遺の証書に因り任するを以て遺囑の後見と稱す然れども父母の中後に生存する者公証人及ひ証人二人の面前に於いて後見人を任すべき旨を申述し以て之を任することを得べし

第２７６条　フランス民法第３９９条に同し

第２７７条　若し法律上に於いて後見を為すべき血族真にて遺囑の後見人に優る者ある時は即ち遺囑の後見人は幼者の父母より任せられたる後見を承諾するに及はす

　然れども若し遺囑の後見を肯せらる場合に於いては幼者の父又は母よりこの後見を承諾せしむる為與へたる遺囑及ひ他の利益を失うべし

第２７８条　凡その裁判官幼者の利益の為当然と思考するに於いては中後ちに死去する者より任せられたる後見人を認定することを肯せさるを得べし　但し親族会議の意見に従うべし

この場合に於いては左の数条に制定する規則に従い幼者の為後見人を任すべし

第２７９条　認られたる私生の子の父母はその子の為後見人を任することを得べし但し法に適して後見人を任する時は裁判官の免許を得るを必要とす

第２８０条　若し父母の中後に死去せし者その子の為数人の後見人を任せし時は第一に任せられたる者その後見を担任すべく然れどもその第一に任せられたる者死去失踪若しくは無能力者となり又は辞退せし場合に於いては第二に任せられたる者後見を担任すべし而して以下順に追う右に同し

○第４款　正当の後見

第２８１条　父母の中後に死去せし者その子の為後見人を撰任せす或は後見人を確定せす或は後見人の辞退を免許せし時は裁判官より宗系の最近の尊属親を以て後見人に任すべし

第２８２条　男女姓を混して同級の宗系の親数人ある時は男に後見を任すべし

第２８３条　同姓にして　男性女性を云　且つ同級の宗系の親数人ある時は裁判官親族会議の意見に因り後見人に任せらるべき者を撰任すべし

第２８４条　女性中正当の後見人たらんことを求むるを得べき者は獨り幼者の父母とす但し強いて後見人となることを承諾せさるを得さるの義務なし

第２８５条　養者の宗系の尊属親なき時は直ちに幼者の財産相続人又は最近の財産相続人の次にある傍系の最近の血族親を以て後見人に任すべし

　直ちに幼者の財産相続人又は最近の財産相続人の次にある同級の血族親数人ある時は裁判官は親族会議に因りて後見人に任せらるるべき者を撰任すべし

第２８６条　後見を任せらるることを肯せさる第四級までの血族親は幼者に対し後見を肯せるるに因り生したる損害の責に任すべし

第２８７条　姻族親は血族親の名義中に保含することなし

　　　　○第５款　裁判官の任する後見　

第２８８条　フランス民法第４０５条に同し

第２８９条　後見を任し又は確定する事は本州中に幼者の住所ある時はその地を管轄する「パロワス」の裁判官若しその住所なき時は幼者の重たる財産ある地を管轄する「パロワス」の裁判官の任とす但しその裁判官言渡に対しては三十日間に控訴することを得べく若しその期限を経過するに於いてはその権を失うべし

第２９０条　幼者の為後見を任すべき場合に於いてはその後見を撰任すべき裁判官の管轄する「パロワス」中に居住する血族親は後見を任すべき事件の起りし日より遅くとも十日以内にその後見を任すべき用意を為すを要とす　フランス民法第４０６条

第２９１条　幼者の血族親幼者なる歟又は後見を為すの権なき婦なる時は前条に記する規則の例外とす

第２９２条　血族親幼者のため後見を撰任せさる時は之に由て幼者の受けたる損害の責に任すべし

　この責任は幼者の財産相続人となるべき等親中の血族親負担すべく然れどもその等親中最近の者損害を償うの資力なき時はその次の者之を負担すべし但しこの場合に於いて財産相続人となる同級の者は連帯して損害の責に任することを得す

第２９３条　前条の責任より生する訴訟は後見人のその任を受けたる年の中に為すべきものとす　

　若し後見人その責任より生する訴訟を起こさざるに於いては幼者に対しその責任の保証人となるべし

第２９４条　何人に限らす幼者の為後見人を任すべき原由を裁判官に述ふることを得べし　フランス民法第４０６条　

第２９５条　何人に限らす幼者に対し訴訟すべき権ある者は幼者の後見人なき場合に於いてその幼者の為後見人を任せられんことを所轄裁判官に求むるを得べく又欺の如くして任せられたる後見人は保証金を出すに及はす唯その裁判所に己の知識の及ふ迄幼者の利益を保証すべき誓を為すべし

第２９６条　裁判官は専断を以て棄兒又は捨去られたる子の為後見人を任するを得べし但し他人を撰任するよりその子を拾ひし者を任すべし

第２９７条　フランス民法第４１８条に同し

第２９８条　若し後見人その任を受けし後死去若しくは本州に在らさる時は裁判官前に記載する法式に従い他の後見人を撰任すべし

第２９９条　フランス民法第４１９条に同し

　　　　○第６款　後見人の監察者

第３００条　裁判官は後見を任する書面を後見人に送達する時と同く専断を以てその後見人の監察者を任するの権ありフランス民法第４２０条第４２２条及ひ第４２３条の差異

第３０１条　フランス民法第４２０条第２項に同し

第３０２条　後見人の監察者は親族会議の委員たるを得すと雖もその会議に臨み討議することを得べし而して親族会議の論議巧者の利益を害すべき時は之に抗拒するの義務あり

第３０３条及ひ第３０４条　フランス民法第４２４条及ひ第４２５条に同し

　　　　○第７款　親族会議

第３０５条　幼者またはその他の人の利益の為法律上親族会議を要すべき場合に於いてはその会議の論議に因り利益を得べき者の血族親少なくとも五人若し血族親なき時はその朋友を以て会議を組成すべしこの血族親又は朋友は会議を開くべき「パロワス」中に住居する者に限るべし　フランス民法第４０７条

第３０６条　血族親は順次最新の者より採るべし○自餘はフランス民法第４０７条第２項に同し

第３０７条　親族会議の委員は裁判官之を任すべし

第３０８条　親族会議は治安裁判官又は之か為任せられたる公証人の面前に於いて開くべし○この会議は之を開くべき日より少なくとも三日前に評議し以て確定したる日に開くべし　フランス民法第４１１条

第３０９条　親族会議の委員は意見を申述する前その会議に臨みたる検察官の面前に於いて己の本心を以て意見を述ふべき誓を為すを要とす

第３１０条　親族会議に臨みたる検察官はその委員の不在なるに因り又は会議の目的たる事務を一日に終わる充分なる時間なき場合に於いて延会を必要なりと思考する時はその延期を命することを得べし

第３１１条　親族会議に臨みたる検察官はその論議したる事を詳記したる調書を作り委員姓名を手署することを知る時は之と共に姓名を手署し且つ決議せしむる為各委員に調書の寫を配属すべし

　　　　○第８款　後見を免除する原由

第３１２条　地位と職務とに因り後見を免るる者は左の如し

　第一　主宰及ひ執政官

　第二　本州の諸裁判所の裁判官及ひ官吏

　第三　ヌーベル、ヲルレヤン府の知事

　第四　税関の敗税官　

　第五　本州海陸の常備軍附属の軍人

　第六　教訓者及ひ本州中に於いて公立学校を維持する人

　第七　僧官　

第３１３条及ひ第３１４条フランス民法第４３０条及ひ４３１条に同し

第３１５条　幼者の血族親に非らさるすべての人及ひ四級外の血族親は強いて後見を承諾するに及はす　フランス民法第４３２条　　

第３１６条より第３１８条に至る　フランス民法第４３３条より第４３５条に至るに同し　

第３１９条　後見の任命を辞せんと欲する後見人はその職に任せられたることを熟知せし時又はその告知を得たる日より三日以内に後見を任せたる裁判官にその由を上申すべし○自条はフランス民法第４３９条に同し

第３２０条　フランス民法第４４０条に同し

第３２１条　父たる者は上に記載する原由又はその他の原由を以てその子の後見を免るることを得す

　　　　○第９款　後見の職に任すること能はさる事、後見の職に参せ而めさる事、後見の職を退かしむる事

第３２２条　フランス民法第４１２条に同し但し後見の職に任すること能はさる事に増補する左の如し

　奴隷

　無感覚者及ひ風癲者

　病痾に因て事務を管理すること能はさる者　フランス民法第４３４条　

　刑法上公の職務を行うこと能はさる者　フランス民法第４３４条

　幼者の義務者、但し後見の職に任せらるる前に義務の釈放を得たる者はこの限に非らす

第３２３条フランス民法第４４４条増補

　第三　法律上に規定せる期限内に幼者の財産の目録を作らしむることを怠りし者

第３２４条　後見の職に任せられたる後家資分産を為せし者はその任を解くべし

第３２５条　前に記するが如し後見の職に任すること能はさる事、後見の職に参せ而めさる事、後見の職の退かしむる事の諸原由は後見人の監察者にも亦之を適用す

第３２６条　後見の職に参せ而めす又はその職を退かしむべき原由は父に適用することを得す但し財産の管理生実ならさるか又は甚き不品行なる時は格別なりとす　フランス民法第４２６条

第３２７条　フランス民法第４５０条に同し

第３２８条　後見人及ひ監察者はその職務を行い始むる前裁判官の面前に於いて善良にして且つ誠実に職務を担任すべき誓いを為すべきものとす

第３２９条　後見人は善良にして且つ誠実に幼者の動産、不動産、証券及ひ義務を得べき書類の目録を作りその財産に付ては裁判官の任したる適法の誓いを為せし勘定者をして評価せしむべし

　この自録を作ることは後見を任せし日より遅くとも十日以内に裁判官若しくは之が為に裁判官より任せられたる公証人之を作ることを始むべし　フランス民法第４５１条

第３３０条　父母を除くの外諸後見人は己を任し若しくは確定したる裁判所の書記局に善良に後見の支配を保全する為適法の保証金を差出すべし

　この保証金は証券、金銀及ひ目録に証記したる不動産の価格と幼者の資力に応し後見人の悪しきより生すべき損失を賠償せしむる為裁判官の確定したる金額に平均するを要とす

　又この保証金は後見人の幼者の財産を支配するに因りその財産の増減するに従い後見人の監察者又はすべて幼者の血族親の請求を以て増減するを得べし

第３３１条　後見人は書入質と為さざる土地を本州中に有し而してその価保証金として出す金額に二倍することを証明し又は書入質と為すことを自由にして保証金に平均する価ある不動産を特別に書入質戸為すに於いては保障金を出すことを免るることを得べし

第３３２条　後見人となるべき者前条に記したる保障の一部を出せし後に非されは後見の職に任する書面を交附することなし後見人となるべき者その職に任する書面を得る迄は幼者の財産の支配に参加することを得す但し財産を保全する為最も猶豫すべからさる場合に於いて或所為を為すことは格別なりとす

第３３３条　フランス民法第４５２条に同し

第３３４条　幼者の不動産及ひ奴隷は之を書入質となし又は売却することを得す但し幼者の後見人より財産の一部又は全部を売却し又は書入質を為すを以て最も利益となることを申術するに因り法に適して会合したる親族会議に於いてその財産を売却し又は書入質戸為すを以て全く幼者の為緊要なりとし又は誠実に利益ありと決議ある時は格別なりとす　フランス民法第４５７条

第３３５条親族会議に於いてその財産を売却し又は書入質と為すことを幼者の為利益あると判断する場合に於いては之に官する要件を確定し且つその原由を詳にすべし

第３３６条　幼者の財産を売却する時は裁判官の免許を受け且つ動産に付いては十日間、奴隷に付いては三十日間法に適して公告せし後糶売すべし而してこの公告は若しヲルレヤンの「パロワス」外に於いて財産を売却すべき時は通例の場所に貼付し又ヲルレヤンの「パロワス」中に於いて売却すべき時はヌーベル、ヲルレヤン府の新聞紙を以て公告すべし

　又新聞紙の刊行ある「パロワス」中に於いては前項に規定せる公告を貼付するの外なお該新聞紙を以て公告すべし

第３３７条　幼者の財産は目録中に確定する代価より廉価に売却することを得す若しその財産を売却せんとする時その目録中の代価より廉価なるに於いてはその代価に証る迄前の法式に従い更に糶売するを要とす但し裁判官は親族会議の意見に因り幼者の負債弁償の期限を延はし或は幼者の財産を速に又は利益ある方法を以て売却するに容易なる他の方法を與ふべし若し裁判官既に確定したる代価を以てその財産を売却すること能はさる旨を熟知するに於いては更に一回又は数回評価せしむることを得べし

第３３８条　若し幼者の父又は母その幼者の共通の財産を有するときはその父又はその母は法に適して会合したる親族会議に於いてその財産を売却することを以て幼者の利益となることを決議し且つ後見人の監察者の承諾ある後裁判官より任せられたる評価人の誓を為して評価したる代価にその財産の一部又は全部を購求することを得べく然れどもこの如くして売却したる財産はその代価と利息の弁償とを安全ならしむる為特に書入質と為したるものとみなすべし

第３３９条　幼者の財産及ひ奴隷売却の禁止はその幼者に対する裁判言渡を執行すべき時又は幼者と共に財産相続を為すべき者又は分つべからさる財産を共通して所有する者の求めに因りその財産を糶売すべき場合に及ほすべからす　フランス民法第４６０条

第３４０条　若し幼者の財産中に土地を開拓し或は製作所を設るか如き必要なる物ある時は後見人その財産を支配し又は人をして支配せしむること能はす然れども財産の価格に応して毎歳入額を得ることを確固ならしむることを得べし

　この土地を売却する時も亦糶売することを要とす

第３４１条　幼者の入額そのひ費用の額より多きこと五百弗に至る時は後見人用者の利益を以てその入額を利益を生すべき方法に用ふべし○若し後見人利益を生すべき用方を為さざるに於いては契約上にて得べき利益より一層高い利益を生すべきものとす　フランス民法第４５５条

第３４２条　後見人は公銭のの法式に因り己れの労働と配慮との償いを得んが為その管理すべき毎歳入額の高より百分の十を引去るべし

第３４３条　幼者の需要及ひ教育に付ての費用は幼者の身分と資産とに従い実直と必要とに背かさる方法を以て算定すべし○その費用は幼者の入額に超過すべからす然れども若しその入額幼者の教育と生計の費用とに充分ならさる時は親族会議にて元資を売却し以てその費用に充ることを免許するを得べし

第３４４条　後見人は單身にて財産を管理し且つ幼者の立会なく自己の名義を以て証書を記すべし

　後見人遠隔の地に往する時は自己の名代人を出し自らその責に任して諸件を管理することを得べし

第３４５条より第３４７条に至る　フランス民法第４６１条及ひ第４６２条に同し

第３４８条　フランス民法第４５７条に同し

第３４９条　後見人は幼者の得たる贈位遺囑の贈遺及ひその他の利益を請取ることを得べし但し如何なる場合を問はす幼者の動産又は不動産の一部又は全部の恩恵の名義を以て随意に為すことを得す　フランス民法第４６３条差異

第３５０条　後見人はその職の終わる時及ひ裁判官より命を受くる毎に己の管理せし財産の計算を為すべし　フランス民法第４６９条及ひ第４７０条

第３５１条　本州を出る後見人は己の名代人を任し且つ豫而めその管理の計算を為すべく又若しこの等の事を為さざるに於いて本州を出ることを停止され又は裁判官の金額を確定したる保証金を出すべきものとす

　裁判官は本州に歸著する時に於いてその後見の職に復すると否やとを確定す

第３５２条　フランス民法第４７１条に同し

第３５３条　フランス民法第４７４条第１項に同し又第２項を變更する左の如し

第３５４条　後見人の財産は後見の職に任せし日よりその支配と支配より生する責任とを安全ならしむる為幼者に対して黙許の書入質たるべし若し後見人第３３１条に従い特別の書入質と為したる時は同上の如き一般の書入質を為すに及はす　フランス民法第２１３５条

第３５５条　フランス民法第４３２条に同し

第３５６条　フランス民法第４７５条に同し但し期満得免の期限は４年とす

　　　○第２章　幼者の管財人

第３５７条　幼者成人たるの年齢即ち男子は満１４歳女子は満１２歳に達する時は後見人の支配を免かれて管財人の支配を受くべし

第３５８条　幼者の管財人に二種あり左の如し

　財産に付ての管財人

　訴訟に付ての管財人

第３５９条　財産についての管財人は幼者の財産を管理し且つその身上に配慮しすべて契約を為す時幼者を扶助す

　訴訟に付ての管財人は裁判所に於いて幼者を扶助し且つ財産に付ての管財人の利益と幼者の利益と反対すべき行為に付ては財産に付ての管財人に代はるべし

第３６０条　財産に付ての管財人は左に記する時に非されは後見人に異なることなし

　第一　後見人は幼者の好意如何を問はすその幼者に附すべきものたるも財産に付ての管財人は幼者の行為あるに非されはその幼者に附すること能はさることのみならす幼者より裁判官に申立て管財人たるに必要なる身分ある時裁判官より之を任すべきものとす

　第二　後見人は自然遺囑正当又は裁判官に因て任せらるるの別ありと雖も管財人は全く裁判官より任せらるべきものたり

　第三　後見人は幼者の不在の時たりともその幼者の名義を以て諾契約を結ひ且つ幼者の利益と己の利益を反対せさる場合に於いてはその幼者の為裁判所に出頭すべきものたり財産に付ての管財人は幼者の契約を結ふ時之を扶助し又裁判所に出頭することなしその裁判所に出頭すべき職務は訴訟についての管財人之を担当すべし

第３６１条　前条に記載する差異を除くの外財産についての管財人の義務、権利及ひ職務は後見人に異なることなし故に後見の事のの巻に制定せる規則は如何なる管係あるを問はすすべて財産についての管財人に適用することを得べし

第３６２条　成人たる年齢に達せし以上の幼者は縦令ひ己の好意に因り裁判官に財産に付ての管財人を上申する権利ありと雖も一旦管財人を撰任し或は裁判官より任せられたる管財人を認諾したる時は丁年に達し又は後見を免るる時迄管財を受けたるを得す管財人を辞職せしむるに付き正当の原由ある時は格別なりとす

第３６３条　幼者その管財人を選任する迄後見の職は幼者の未た成人たるの年齢に達せさる時に等しき方法を以て継続すべし

第３６４条　財産に付ての管財人及ひ訴訟に付ての管財人は裁判官より任すべし又この裁判官は幼者より上告せし者の管財人たるに必要なる身分なる時は之を撰任するを要とす

第３６５条　訴訟に付ての管財人は幼者の一般の事務の為に任し又は或特別の事務の為に任することを得べし

　訴訟に付ての管財人は右二箇所の場合に於いて後見人の観察者に等しき誓を為し而して全く保証金を出すに及はす

　訴訟に付き特別に任せられたる管財人のの職務は為に任せられたる事務と共に終わると雖も一般の訴訟に付ての管財人は正当の原由あるに非されは之を變更し若しくは退かしむること能はすこの管財人の職務及ひ財産に付ての管財人の職務は幼者の丁年に至り又は後見を免かるる時終わるべし

第３６６条　成人にして未だ後見を免れさる幼者は訴訟に付いての管財人の扶助を受くるに非されは裁判所に出頭することを得す若しその管財人なき時に於いて訴訟手続きを整頓する為之を任するは裁判官の職務とす

　　　○第３章　後見を免かるる事

第３６７条　フランス民法第４７６条に同し

第３６８条　幼者たる夫は管財人の扶助なく裁判所に出頭することを得す又婦をして裁判所に出頭せしむべき免許を為すを得す

第３６９条　フランス民法第４７７条第１項に同し但し第２項を変更する左の如し

幼者の後見を免かるるはその父又は母より証人二人の面前に於いて公証人にその申述を為すべし

第３７０条フランス民法第４７８条第１項増補○後見を免かるるは幼者の血族心中の一人又は幼者躬を求むることを得べし　フランス民法第４７９条

第３７１条　幼者はその父母の度に過きて過酷の取扱を為し或は與料を給與せす或は不品行の模範となるに於いてはその父母の意に背き後見を免かるることを得べし

第３７２条及ひ第３７３条フランス民法第４８０条及ひ第４８１条に同し

第３７４条　後見を免かれし幼者は己の一年の入額に平均する高に付て適法の契約を結ふことを得べし

第３７５条　後見を免れし幼者は財産を支配するのみの事に付き記したる証書を單一なる損害又はその財産の用方不良なることを原由として取消すことを得す○自餘はフランス民法第４８４条第２項に同し

第３７６条　フランス民法第４８４条第１項に同し

第３７７条　後見を免かれし幼者は生存中の贈遺を以て動産及ひ不動産を己れの随意に為すことを得す但し配偶者となるべき者の為婚姻の契約を以て随意に為すことは格別なりとす

第３７８条　後見に因て後見を免かれし者を除くの外すべて後見を免かれし幼者は裁判官より特別に任せられたる訴訟に付ての管財人の扶助を受くるに非されは裁判所に出所することを得す　フランス民法第４８２条　

第３７９条　フランス民法第４８７条に同し

第３８０条　後見を免かれし幼者法律上に於いて確定せる制限に過ぎたる契約を結ひし時は後見を免かれし事の方法如何を問はすその後見を免かれたる事を取消すべし

第３８１条　後見を免かれし事を取消す時は幼者をしてその後見を免かるる前に等しき支配を受けしむるに至るべし　フランス民法第４８６条

　然れども若し幼者の父母その幼者に対し度に過きて苛酷なる取扱を為し或は養料を給與せす或は不品行の模範となる時に於いてその父母の意に背き後見を免かれし幼者の為には法律上に制定せる法式に従ひ更に他の管財人を任すべし

　　　○第９巻　風癲無感覚者及ひ己の事務を支配する能力なき者

　　　　○第１章　狂疾又はその他の病疴に因り自己の財産を支配する能力なき者の治産の禁及ひ管財の事

第３８２条及ひ第３８３条　フランス民法第４８９条及ひ第４９０条に同し

第３８４条　治産の禁を受くべき者の血族親及ひ配偶者なき時又はこの等の者関係せさるときは治産の禁を為すべき訴えを受けし者の保護者の申立を聴き専断を以てその裁判言渡を為すべし但しこの場合に於いて治産の禁の被告者よりその保護者を任せさる時は裁判官之を任すべし

第３８５条　すべて治産の禁は之を受くべき者の住所ある「パロワス」又はその者の駐在する「パロワス」の裁判官より言渡すべし

第３８６条　癲疾　精神錯離して躁動するものを云　の所為に付ては裁判官治産の禁を言渡すに不満足すべき証を立るを要とすこの証は証書若しくは証人を以て立ることを得べく又裁判官は躬を或は裁判官より特に任せられたる人を以て治産の禁を為すべき訴えを受けし者を訊問し又はその身分に付きその衆人の意見を同一ならしむる為醫者その他術ある者をして之を診察せしむべし

第３８７条　治産の禁の下調へする間裁判官被告の動産を保全し又は不動産を支配する為必要なりと思考するに於いては被告の財産を仮に支配すべき者を任すべし

第３８８条　治産の禁を為すべき裁判言渡は預め実行すべきものとす但し控訴することを得べし

第３８９条　フランス民法第５００条に同し

第３９０条　治産の禁の訴訟入費はその治産の禁の裁判言渡ありたる時は被告者の財産を以て弁しその裁判言渡なき時は原告者の財産を以て弁すべし

第３９１条　治産の禁の裁判言渡は管財人に任せられたる者の配慮を以てその裁判言渡ありたる日より一月以内にヌーベル、ヲルレヤン府に刊行する新聞紙に英文及ひフランス文を以て少なくとも三回ひ公告し又治産の禁の受けし者の住所ある「パロワス」の訴庭の門前に貼附すべし若し管財人その公告を為さざる時は治産の禁あることを知らすしてその禁を受けし者と契約を結ひし人に対し損害の償いを為すべし

第３９２条　治産の禁を為すべき訴訟を却下せらるときは新たに発生せし所為あるに非されは再ひ訴訟を為すを得す

第３９３条より第３９８条に至る　フランス民法第５０２条より第５０６条に至るに同し　

第３９９条　婚姻を結ひし婦治産の禁を受くる時は当然その婦の管財を受くべし○然れども婦その夫に反対する利益を有する事務又はその夫と共に検証すべき事務ある時はその夫裁判官をしてその治産の禁を受けし婦の名代を為すべき訴訟に付ての管財人を任せしむべきものとす

第４００条　婦管財人たるに必要なる身分ある時はその夫の管財人に任せらるることを得べし且つ保証金を出すに及はす　フランス民法第５０７条　

第４０１条及ひ第４０２条　フランス民法第５０８条及ひ第５０９条に同し

第４０３条　フランス民法第５１１条に同し但し「検事の説を聴たる上」を除く

第４０４条　治産の禁を受けし者疾病に罹りたる時は病屙の種質と資産の有様ようとに従ひ裁判官はその住所又は病院に於いて治療すべき言渡を為すべし○若し狂病なる時は安全なる場所に置くべし

第４０５条　フランス民法第５１０条に同し

第４０６条　己の利益欲情に管して治産の禁を為すべき訴訟を為し敗訴したる者は損害の償を為すべき言渡を受けくべし

第４０７条及ひ第４０８条　フランス民法第５１２条に同し

第４０９条　治産の禁を受くべき者は風癲又は無感覚者を除くの外或病気に因り己の身上と財産とを支配するの能力なき者に非さるよりはその禁を受くることなかるべし

　同上の如き人には裁判官より管財人を附與し管財人は本章の規則に従ひその職に任し財産を管理すべきものとす

第４１０条　治産の禁を受けし者は親族会議の指圖に因り及ひ少なくとも患者二人その者の健康に管し他行を必要とする確実なる意見あるに因て裁判所より免許を得るに非されは本州外に出ることを得す

第４１１条　裁判官は治産の禁を受けし者の職務は少なくとも毎年一回ひ治産の禁を受けし者の健康の模様と治療の方法とを裁判官に報道するにあり

　之か為監督者は治産の禁を受けし者を観ることを必要なりと認むる毎にその者の側に至るべし

第４１２条　若し裁判官その報道を得し後治産の禁を受けし者を躬ら検視することを必要なりと思考する時はその者を検視すべき

　裁判官は管財人の不在の時その治産の禁を受けし者を検視すべし

第４１３条　治産の禁は浪費を原由として為すべからす　フランス民法第５１３条差異　

　　　○第２章　管財人を附與すべき人

第４１４条より第４１７条に至る　この数条は失踪者、懐胎中の婦不在中の財産相続人及ひ財産を譲渡せし義務者の為に任すべき管財人の類聚を保含するのみとする

　　○第１０巻　団結

第４１８条より第４３８条に至る　この数条の規則はすべて団結、この団結に管する本義、使用、先取特権、無能力及ひ解散に管す

　右の如き規則は原来民法に管係なし故に之を騰冩するを必要と思考せさりき

　○第２編　財産所有の権を得る種種の方法

　　○第１巻　物件及ひ財産

　　　○第１章　物件及ひ財産の区別

第４３９条　財産なる語は国土の富と資力とを組成するすべてのものを謂う但この語意は物件なる語にも亦管係あるものたり物件は権利の第二の目的となるべきものにして之に管する規則は人、物、又は訴訟に適用すべきものたり

第４４０条　物件に共通若しくは公領のものあり又団結若しくは各人に属すべきものなり

第４４１条　共通の物件とはその所有権特別なる人に属せらる者にして例えは空気、流水、海及ひその岸の如き天然に因て定められたる用法に従い衆人自由に之を使用することを得べきものとす　フランス民法第７１４条

第４４２条　海岸とは冬季に因て最も高く海水の張る時その波浪の達する地の間隔を謂う

第４４３条　海岸は公衆にて使用することを得べきものたれは何人に限らす漁猟を為し或は暴風を避け或は船舶を繋ぎ或は綱を乾かし或は之に類似のことを為す時碇泊する為小屋を建築することを得べし但しその海岸に住居する者の建造したる建家又は塔標に損害を加ふべからす

第４４４条　公領の物件とはその所有権一国の人民に属し而して諸人民の使用することを得べきものを謂う○この種類の物件は舟楫を通すべき河川、港口、入海碇泊場、道路及ひ水ある所迄の川の道とす

　故に何人たるを問はす川、港口、入海及ひ碇泊場に於いて漁猟することを得べし　フランス民法第５３８条

第４４５条　都府又はその他の地に於いて共通して使用すべき物件即ち市街及ひ公園地の如きも亦公領の物件たり　フランス民法第５３８条

第４４６条　舟楫を通すべき河川の海岸も亦公衆にて使用すろことを得べきものたり故に何人に限らす己れの船舶をその海岸に著け或はその海岸に植付けたる樹木に纜を繋ぎ或はその海岸に船舶の荷を揚け或は商品を保存し或は綱を乾かし及ひこの等の事に類似することを為すことを自由たるべし

　然れども海岸の所有権はその近傍に土地を有する者に属すべし

第４４７条　神聖なる物件及ひ宗教上の物件の区別とこの種類に属する物件の本義及ひ之を売却すること能はさる事とに管する住古の法律は之を廢し同上の物件所属の団結又は教会は之を売却することを妨げなし

第４４８条　河川の道とは水の最も多き時に方て通常の有様にて河川を保つ広域を謂う是れ畢竟或原由に因り一時河川の湓ふる、ありと雖も海岸の種質を變することなき因るなり

　然れども「ミン、ピ井」の海岸に州を生する時はこの州を持って海岸と為すべし

第４４９条　都府又はどの他の場所の住民一般に属する財産に二種あり左の如し

　市街、公園地、海岸等の如き都府の住民及ひその他の人の共通して使用すべきその他の財産

　都府の団結に属する入額にんてその住民の利益の為支配人を以て使用することを得べき共通の財産　フランス民法第５４２条

第４５０条　各人に属する物件は特別の財産又は資産たるべし

第４５１条　財産は第二の場合に於いて有形と無形とに区別す

第４５２条　フランス民法第５１６条に同し

　　　○第２章　不動産

第４５３条　不動産又は不動の物件とは一般に甲の地より乙の地に移すこと能はさる物件及ひ動かすことを得さる物件を謂う

　然れどもこの義解は全くその性質に因て不動たる財産のみに通用し法律上の規則に因て不動たる財産に通用すること能はす

第４５４条及ひ第４５５条　フランス民法第５１７条及ひ５１８条に同し

第４５６条　フランス民法第５２０条に同し

第４５７条　引渡すべき期限の経過せし後不動産より生したる利益及ひ不動産を差押へし後生したる利益はその不動産の一部とみなし之を差押へし者の利益と為すべし

第４５８条及ひ第４５９条　フランス民法第５２３条及ひ第５２４条に同し

第４６０条　フランス民法第５２５条第１項に同し

第４６１条　奴隷はその性質に因り動産たりと雖も法律上の規則に因り不動産とす

第４６２条　無形の財産は権利のみを以て存立すべきものたれは原来動産若しくは不動産の種類と為すこと能はすと雖もその無形の財産を適用すべき目的と左に規定する規則とに従ひ動産若しくは不動産の部類に編入す

第４６３条　フランス民法第５２６条に同し

　　　○第３章　動産

第４６４条より第４６６条に至る　フランス民法第５２７条より第５２９条に至るに同し

第４６７条　有形若しくは無形の財産たるを問はすべて本巻に制定せる規則に従いその性質又は法律上の規則に因て不動産たらさるものは動産とみなすべし

第４６８条　フランス民法第５３２条増補○然れども若し家屋又は建造物を修理若しくは増築する為又は木材を交換する為その家屋又は建造物より離したる木材は不動産の性質あり故に不動産とみなすべし

第４６９条　フランス民法第５３４条第１項増補○然れどもその房室内にある書庫及ひ銀の食器は「ミュウブル、ウブラン」　動産の意にてその儀の最も狭を謂う　

の中に算入すべらす

第４７０条より第４７２条に至る　フランス民法第５３５条及ひ第５３６条に同し

　　　○第４章　財産と之を所有するものとの管係

第４７３条　財産を所有し又はその入額を所得と為す者とその財産との管係ある財産を二種に区別す即ちその一は所有権を附し難き財産その二は所有権を附すべき財産是れなり

第４７４条　所有権を附し難き財産中にも亦所有権を附することを得べき財産あり即ち入額を所得と為し又は使用することを得べき共通の財産是れなり

　又之に反し天然に所有権を附し能ふべき財産たるも私の所有権と調和し難く又公に使用する為に定められたるに因り所有権を附し能ふべき性質を失ふべき財産ありこの財産にはその用法を廢したる後に非されは更に所有権を附する能はす即ち道路、市街及ひ公園地是なり

第４７５条　所有権を附すべき財産とは人に属すべきものにして且つ売買、交換、贈遺期満得免又はその他の方法に因りその主人或は所有者を変更すべき財産を謂う

第４７６条及ひ第４７７条　フランス民法第５３７条及ひ第５３９条に同し

第４７８条　国民の領物とは特にすべて国民に属する土地の所有権と権利にして国民は現にその入額を所得と為し又は唯、入額を得べき権利を謂う

第４７９条　フランス民法第５３４条に同し

　　○第２巻　所有権

　　　○第１章　一般の原則

第４８０条　所有権とは他人に管することなく重に一人にて財産を所有するを得る権利を謂う　フランス民法第５４４条

第４８１条　財産の所有権は直接にその財産を領する者に属することなし

第４８２条　所有権を分ちち完全又は不完全に二種とす

　完全の所有権とは無期の所有権にして且つ所有者の外他人の為その所有権に属する財産に対物権を賦課せられさるものを謂う又不完全の所有権とは未必の条件或は執行の期限に管し或は入額所有権或は定額ある入額所得権或は土地の義務の権を以て制限したるものを謂ふ

第４８３条　完全の所有権を有する者は己の財産を一人にて所有し又は随意に為すことを得べし但し法律又は規則に於いて禁止したる用法を為すを得す　フランス民法第５４４条

第４８４条　不完全の所有権を有する者は他の人の権利即ち対物権又は財産に付き他に権利を有する者の権利を害すべからさる規則に因るに非されは己の財産を所有し又は随意に為すことを得す

第４８５条　所有権は重に人の為に存在する権利と思想すべきなり而してその所有権は之を例ふるに一箇の人の如き即ち真誠なる人又は一箇の団結の如き即ち民法上又は思想上の人とす

第４８６条　二人にて同一の財産に付きその所有権の全部を所有するを得さるを以て所有権の本義とす○然れども二人にて同一の財産を共通し各自に得べき財産に付ては所有者たるを得べし

第４８７条　一箇の証書に因り一回ひ財産の所有権を得たる者は所有権の不足するところを補う為に非されは後に他の証書に因り所有権を得ること能はす

　又右に反し若し一箇の証書に因り既に或人に財産を引渡すべき時はその財産の所有者より或人にその財産を売却し次に同人に遺囑として贈與する時に於けるか如くなお他の証書に因りその人は引渡すことを得べし

第４８８条　財産の所有権と保有権とは最も類似するものに非すして全く区別すべき者たり

　所有権は仮令ひ他人之を行うと雖も存在すべし

　然れども若し所有権他の人の気満得免に因り所有権を得るに必要なる時間その人をして財産を保有せしむる時はその財産に付ての所有権を失うべし

第４８９条　フランス民法第５４５条増補○相当の償とは財産の所有者にその奪われたる財産の現価を償ふの外なおその財産を奪われたるに因り受けたる損害の償を為すを謂う

第４９０条　フランス民法第５４６条に同し

　　　○第２章　財産より生する物に付き主に因て従を俳すの権

第４９１条　フランス民法第５４７条増補○奴隷の子

第４９２条　奴隷の子及ひ獣類の子は主に因て従を併はすの権に因り之を生みたる者を所有する人に属すべし

第４９３条より第４９５条に至る　フランス民法第５４８条より第５５０条に至るに同し

　　　○第３章　財産に附加し且つ合同する物に付き主に因て従う伴はすの権

第４９６条　フランス民法第５５１条に同し

　　　　○第１款　不動産に因て主に従ふ伴はすの権

第４９７条より第５０２条に至る　フランス民法第５５２条より第５５７条に至るに同し

第５０３条及ひ第５０４条　フランス民法第５５９条及ひ第５６０条に同し

第５０５条　フランス民法第５６１条第１項に同し

第５０６条　若し河川の中央に島嶼に相対する河川の両岸にある地の諸所有者その島嶼を分たんと欲する時は河川の中央を畫すろ島嶼の部分を分割すべし　フランス民法第５６１条第２項

第５０７条　若し河川の中央を畫する線を分ちその島嶼一方の岸に偏る時はその島嶼ある岸を所有する者のみに属しこの岸の諸所有者はその島嶼に対する地の広域又は表面の割合にてその島嶼を分割すべし

第５０８条　若し数多の所有者ある岸に対し漸積の地を生する時は当時その岸を所有する者の地の広域又は表面に従いその所有者之を分割すべし

第５０９条　フランス民法第５６２条に同し

第５１０条　フランス民法第５６３条増補○若し河川故道に復する時は当所有者はその古地を復すべし

第５１１条　フランス民法第５６４条に同し

　　　　○第２款　動産に付き主に因て従を伴はすの権

第５１２条より第５２４条に至る　フランス民法第５６５条より第５７７条に至るに同し

　　○第３巻　入額所得の権、定限ある入額所得の権、家屋住居の権

　　　○第１章　入額所得の権

　　　　○第１款　総則

第５２５条　フランス民法第５７８条増補○入額所得の権に属する物件の本質を變すべからさる義務あるは完全の入額所得の権ある時のみとす

第５２６条　入額所得の権に二種あり左の如し

　完全の入額所得の権、この権は入額を所得と為す者仮令ひ物件を使用するに因り又は時間の経過するに因り自然に破壊し又は滅却すると雖もその物件の本質を變することなく入額し所得と為すを得べき物件に管する権を謂う

不完全の入額所得の権又は准入額所得の権、この権は物件を耗盡し、費消し又はその本質を變するに非されは入学所得と為す者に必要ならさる物件に管する件を謂う

第５２７条　完全の入額所得の権は之に属する物件の入額を所得と為す者に移ることなしその入額を所得と為す者はその権の終わる時所有者に返還するを以て家族の良夫たるか如く成るべくの物件を保存し以て享有するを要とす

第５２８条　不完全の入額所得の権は之に属する物件の所有者の入額を所得と為す者は後に記する義務を担任しその物件を耗盡し売却し又は己れの適意に為すことを得べし

第５２９条　入額所得の権は即ち権利を以て存在するものたれは無形の財産とす

第５３０条　入額所得の権は分つことを得べし他なしこの権を数人に付與する時と雖も各人己の得べき部分に分つ入額所得の権は唯一箇たれはなり○又この権の目的と為すは有形にして且つ分つことを得べき入額を得るに在れはなり

第５３１条　入額所得の権は始め数人の得べき部分に分ち又は分つことなく之をその数人に付與することを得べし

第５３２条　フランス民法第５７９条に同し

第５３３条　フランス民法第５８１条に同し

第５３４条　フランス民法第５８０条に同し

第５３５条　入額所得の権は財産を保有し得べき者又は団結に付與することを得べし

第５３６条及ひ第５３７条　フランス民法第５８２条より第５８４条に至るに同し

第５３８条　フランス民法第５８５条に同し但しフランス民法の「但し」以下を除く

第５３９条　入額所得の権に属する奴隷の子その入額所得の権ある時間に生れたる時はその所有者に属し入額を所得と為すものはその子の労働又は勤務のみを所得と為すべし

第５４０条　フランス民法第５８６条に同し

第５４１条　家屋に付いての入額所得の権は仮令ひ入額所得の権を設定する証書に記載なきと雖もその家屋より生する利益及ひその家屋に据付けの器具に付きその家屋を使用するの権に優るものとす

第５４２条　フランス民法第５８７条に同し

第５４３条　フランス民法第５８９条増補○仮令ひ数箇の物件中の一箇を使用せしに因り入額所得の終るに方り全く滅盡せし時と雖も入額を所得と為す者はその代りを出すを以て足れりとす

第５４４条　入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する物件より通常生する所の利益を所得と為すの権あり

第５４５条　入額を所得と為す者はその権を得たる時に開鏧したる金属の礦又は石礦その入額所得の権に属する地内にある時は之を所得と為し且つその礦よりより生する物を売却するを得べし但し未だ開鏧せさる金属の礦又は石礦に付いては最も利益を得るの権なし　フランス民法第５９８条

第５４６条　フランス民法第５９６条増補○然れども舟楫を通すべからさる河川中その土地に対して生せし島嶼は入額を所得と為す者之を己の所得と為すことを得す而してこの島嶼は物件又は財産の巻に制定せしか如くその土地の所有者に属し入額を所得と為す者はその土地に着き最も権利を有することなし

　又入額所得の権に属する土地より発見せし財貨は入額を所得と為す者之を所得と為す権なし但し躬らその財貨を発見せし時は他人の土地に於いて財貨を発見せし者の法律上に於いて得べき権利のみを得べし　フランス民法第５９８条第２項

第５３７条　フランス民法第５９７条増補○而して若しその土地入額所得の権を付與せし者より他の人に属する土地に因て圍繞さるる時は通行の権はその土地の所有者又はその財産相続人より入額を所得となす者に償を得ることなく付與することを要とす

第５３８条　フランス民法第５９５条第１項増補○その権を償を得て他人の貸與ふることに記したる証書及ひ契約書はその期限の如何を問はす入額所得の権の滅盡する時当然に無効の者となるべし

第５４９条　土地の入額を所得と為す者その権利を所得と為し、保有し又は保有する為必要の時はその土地の所有者又は第三の人に対し訴訟することを得べし

　　　　○第３款　入額を所得となす者の義務

第５５０条　フランス民法第６００条増補○若し所有者本州中に在らす旦を名代人を置かさる時は入額を所得と為す者の財産の目録を記する時裁判官より立合を為すべき代言人を任すべし

第５５１条　フランス民法第６０１条第１項に同し　

第５５２条　保証金の高は入額所得の権に属する動産及ひ奴隷の代価即ち財産の目録に記入したる価格及ひ入額所得の権に属する土地の大小に従ひ入額を所得と為す者又はその土地の人のその土地を毀損する時その責に任せしむる為裁判官の定めたる金額に等しき者とす

第５５３条　フランス民法第６０１条の末項に同し

第５５４条　若し入額を所得と為す者人に己の権利を売却し、付與し貸與へ又は賃貸する時はその保証人とそのに己の権利を譲受けし者のその入額所得の権に属する物件に付いての過失又は毀損の責に任すべし

第５５５条　入額を所得と為す者本州中に於いて土地を有し且つ充分の価ありて書入質と為すこと自由なる時は法に適して書入質と為し以て法律上に於いて出すべき保証金に換ふることを得べし

第５５６条及ひ第５５７条　フランス民法第６０２条及ひ第６０３条に同し

第５５８条　入額を所得と為す者はその権利を開始する時入額所得の権に属する土地に存在せし土地の義務を行うの義務あり

第５５９条　フランス民法第６０３条に同し

第６６０条　入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する物件を家族の良父たるに等しく大切に保存すべし

　故に入額を所得と為す者は詭欺、過失又は怠慢に因り物件を毀損する時の責に任すべし

第６６１条　入額を所得と為す者はその入額所時の権に属する土地に己の一身の娯楽にする為と雖も改良を加へ又は有益又は必要なる修理を加ふることを得べし但しその土地に砂礫を敷き又はその有様を変更することを得す○然れども入額所得の権を開始せし時より存在する建造物は入額を所得と為す者その譲渡を受けし時の儘にて保存し仮令ひ之を改良する為と雖も所有者の承諾を得るに非されはその構造の形况を変更し又は房室を分つこと能はす

　然れども入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する家にして且つ己の住屋と為せし家なる時は光線を引く為窓を開くことを得べし

第５６２条　入額を所得と為す者その入額所得の権に属する奴隷を有する時はその奴隷の慣染したる勤務に非されは之を使用すること能はす

第５６３条　入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する土地に所有者の築造を始めたる建造物を成就し又は更に建築することを得す但しその建造物その土地の耕転に必要なるか又は収穫物を庇う為に必要なる時は格別なりとす○然れども年を経たるに因り又は抗拒すべからさるに力に因り毀損若しくは轉覆したる建造物は之を更に建築することを得べし

　然れども入額を所得と為す者若し一回ひ建造物を築造する時は之を破壊し又はその木材を除去することを得す而して入額所得の権の終る時之が為償いを得んと求むることなくすべて所有者に交付すべし

第５６４条　入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する財産を保存し又は土地を耕作する為の諸費用を担任し又若しその財産中に奴隷ある時は直実にして且つ当然なる方法を以てその奴隷に食糧、衣服疾病の入費及ひその子の需用を供給すべきものとす　フランス民法第６０８条

第５６５条　フランス民法第６０５条に同し

第５６６条　フランス民法第６０６条に同し

第５６７条　入額を所得と為す者はその入額を所得と為す権の継続する間評価人の意見に従い己の担任すべき修理を為ささるを得す若し之を為さるるに於いては所有者に対し損害の償を為すべき者とす

第５６８条　入額所得の権開始の時より入額を所得と為す者のその権を保有する迄の間に若し所有者その入額を所得と為す者の担任すべき必要の修理を為せし時はその者に対しその代価を要求し或は又その代価の弁償を得るまで入学所得の権に属する物件の保有を差留むることを得べし

第５６９条　入額を所得と為す者は仮令ひ己れに対し所有者より義務を行ひ又は負担すべき訴訟を為し之を行うべき裁判官言渡を受けし時と雖も入額所得の権を放棄するに於いては己の担任すべき修理又は入学所得の権に管する他の義務の釈放を受くること自由たるべし

　然れども仮令ひ入額を所得と為すその入額所得の権を放棄すると雖も既に享有したる入額所得の権に属する義務又は自己及ひ他の人の為したる毀損に付いてその責に任すべき義務を免かるるの効なし

第５７０条　入額を所得と為す者は所有者の為すべき重大の修理をその所有者をして為さしむべき訴訟を為すの権なし○然れども若しその所有者修理を為すことを拒むに於いては入額を所得と為す者その修理に必要なる費用を弁し而して入額所得の権の終る時その修理を所有者に引き渡すべき改良の員数中に保含せさるものとみなし所有者又はその財産相続人よりその費用の弁償を受くべし

第５７１条　フランス民法第６０７条増補○然れども若し所有者毀損したる建造物を改造し又は己の担任すべき重大の修理を為さんとする時は入額を所得と為す者は己に最も少なき損害と不便とを受くべき方法を以てその改造又は修理を為すことを免許すべき義務あり又その入額を所得と為す者はその改造又は修理を為すに相当の期限を所有者に確定することを得べし

第５７２条　フランス民法第６０２条増補○又入額を所得と為す者はその入額所得の権を享有する期限間橋梁、道路、渠溝及ひ堤防を築造し或は修理し且つ入額所得の権に属する土地に於いて為すべき同止の種類に属する他の工作をも為ささるを得す

第５７３条より第５７５条に至る　フランス民法第６０９条より第６１１条に至るに同し

第５７６条　生存中の贈遺の証書に因り正意を以て設定し且つ確定の期限ある入学所得の権に属する財産の全部又は一部に付き入額を所得と為す者はその所有者の負債を担任するに及はす且つその負債に付き訴訟を受くることなし但しその入学所得の権に属する財産の一箇又は数個その負債弁償の為書入質となりたる時は格別なりとす

第５７７条　遺贈の証書に因て設定したる入額所得の権に属する財産の全部又は一部に付き入額を所得と為す者は直接に遺贈者の負債を担任するに及はす更に之を言う時は財産相続に付いての権利者は入額を所得と為す者に対しその財産を以て負債を弁償せしむる為訴訟することを得す但しその財産相続の権に管する財産を差押へ及ひ負債の弁償を得る為遺贈者の財産相続人に対し訴訟するの権あるものとす

第５７８条　財産の全部又は一部に付いての入額所得の権を人に贈與せし遺贈者の財産相続人その財産相続の権に付いての権利者より訴訟を受くる時はその負債の弁償に必要なる金額に平均する迄入額所得の権に属する財産の一部を売却することを得べし但しその入額を所得と為す者左の数条に言うか如く豫而め左の金額を払うことを欲せさる時のみとす

第５７９条　フランス民法第６１２条第３項及ひ第４項に同し

第５８０条　若し前条に反し遺囑として得たる入額所得の権中に遺囑者の財産の一部又はその財産のある種類中の一部のみを保含する時は財産の一部に付いての入額を所得と為す者は唯財産相続の権に管する負債の弁償を財産相続人と分担すべきのみとす

第５８１条　フランス民法第６１２条第１項及第２項に同し

第５８２条　フランス民法第６１３条増補○然れども入額所得の権に属する財産請求の為所有者に対する訴訟の入費は入額を所得と為す者と所有者とに分課すべし

第５８３条　子の財産に付き法に適して入額所得の権を享有する財産に管するすべての訴訟入費を担任すべし

第５８４条　入額を所得と為す者その入額所得の権に属する土地に於いて土地の義務を得べき義務を身から使用せさるに因り滅盡せ而めし時は所有者に対しその責に任すべし○期満得免の効に因り土地の義務を得べき権を失いし時も亦然り

第５８５条より第５８７条に至るフランス民法第６１４条より第６１６条に至るに同し

第５８８条　入額を所得と為す者はその権を享有する間に奴隷の死去したる時その代りを出し又はその代価を払うに及はす但しその奴隷入額を所得と為す者の詭欺又は過失に因て死去せし時は格別なりとす

第５８９条　フランス民法第５９９条第２項及ひ第３項に同し

第５９０条　入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する土地に生したる毀損とその所有者に引渡すべきの義務ある改良とを相殺することを得べし但しその毀損と改良とは入額を所得と為す者の法律に従い相殺することを得べき員数中に在るを要とす

第５９１条　入額を所得と為す者の為ある建造物を造訾し或は土地又は他の改良を為したる請負人又は工丁入額所得の終るに於いてその代価を得べき時はその土地に付き先取特権を有し且つ左の数条に規定する制限を以て所有者に対しその先取特権を行うことを得べし

第５９２条　若しこの土工入額を所得と為す者の担任すべき修理なるか又は法律に従い築造することを得べき時その工丁に引渡すべき残余の金額あるに於いては所有者より之を払うべきの義務あり但しこの所有者は入額を所得と為す者又はその財産相続人に対しその金額取戻しの訴訟を為すことを得べし

　右に反しその土工所有者の為すべき重大の修理なる時は所有者はその工丁に代価を払うの義務あり而して入額を所得と為す者に対しては勿論その財産相続人に対しても亦代価取戻しの訴訟を為すことを得す

第５９３条　若し工丁の為したる土工入額を所得と為す者の法律に従い為すことを得べき土工の員数中に含蓄せさるに於いては所有者は工丁にその代価を払い以てその土工を差留め又は入額を所得と為す者若しくはその財産相続人をして各自の入費を以てその土工を除去せしむるの権あり然る時は工丁その土工の代価を得る為入額を所得と為す者又はその財産相続人に対してのみ代価を要求する訴訟を為すべし

　　　　○第４款　所有者の義務

第５９４条　入額所得の権に属する物件の所有者は入額を所得と為す者にその物件を引渡し又はその入額を所得と為す者よりその物件を保有せらるるの義務あり

第５９５条　所有者入額を所得と為す者に対して錯雑障碍又はその方法如何を問はす己の所為に因りその権を害することを得す　フランス民法第５９９条第１項

第５９６条　所有者は入額所得の権に属する土地又は物件を引渡す前後に之を変換することを得す若し之を変換するに於いては仮令ひ改良する為と雖も入額を所得と為す者の約定を害するものと為す

故に所有者入額を所得と為す者の承諾を得るに非されは建造物を高め又は試みて無き建造物を新築することを得す○又その所有者樹木を損し建造物を破壊し或は入額を所得と為す者に害を及ほすべき他の変更を為すことを得す若し之を為し損害を生するに於いてはその償いを為すべし

第５９７条　入額所得の権に属する土地の所有者はその土地に土地の義務を課することを得す但し入額を所得と為す者を害せさる方法を以てする時は格別なりとす

第５９８条　若し入額を所得と為す者所有者の停止すべき障碍に因り入額を所得と為すこと能はさる時は所有者は己の保証人たる者に付き奪取又は錯雑を受けたる時又は入額を所得と為す者に或必要なる土地の義務の権を與ふべき時之を與ふることを拒みたる時に於けるか如く入額を所得と為さ而めさるに付いての損害の償を為すべき義務あり

第５９９条　所有者は入額所得の権を人に與へたる時既に破壊し又は損失を生せし物件は之を善良の有様に復する義務なし但し自己の詭欺又は或証書に因り物件を善良の有様に復することを担任する時は格別なりとす

第６００条　所有者は入額を所得と為す者の承諾を得ることなく入額所得の権に属する物件を書入質売却又は譲渡することを得べし

　然れども入額を所得と為す者に損害を及ほすべき形況又は条件ある時はこの等のことを為すを免らす

　　　　○第五款　入額所得の権に終る方法

第６０１条　入額所得の権は入額を所得と為す者の死に因て終るべし　フランス民法第６１７条第１項

第６０２条　或人に財産の入額を遺囑として贈與するに於いては入額を所得と為すことの一種類たれは又遺囑を受けたる者の死に因てその財産の入額を得ることは終るべし

　養料又は之と同一の種類にして毎歳遺囑として得べきことに管する時も亦然り

第６０３条　入額を所得と為す者の権利或は期限或は或未必の条件の如く成就する時又はその期限の経過する時に非されはその権利を開始し又は停止すべからす

第６０４条　若し入額を所得と為す者他の人にその入額所得の権を返還すべき義務ある時はその入額所得の権は之を返還すべき時終るべし

第６０５条　フランス民法第６２０条に同し

第６０６条　夫よりその婦に嫁資を返還する為付與したる入額所得の権はその婦の嫁資の元金と利息とを全く得る迄継続すべし但し婦の所為に因りて嫁資の弁償を為すこと能はさる時は格別なりとす

　夫の財産相続人数人ありてその中の一人嫁資を弁償したる時は入額所得の権はその人の死に因りて終るべし

第６０７条　フランス民法第６１９条に同し

第６０８条　入額所得の権は入額を所得と為す者の死する前その入額所得の権に属する物件の滅盡するに因り終わるべし○自条はフランス民法第６２４条に同し

第６０９条　フランス民法第６２３条に同し

第６１０条　入額所得の権に属する物件若し或災禍に因りその形状を変し通常の用法を以て使用すること能はさるに至りし時は滅盡せし者ともみなすべし

　故に田野又は地面の入額を所得と為すの権を有しその田溢水の覆ふ所となり池又は泥と変するに於いては入額所得の権は滅盡すべし

　然れども溢水の退くに従いその田の乾き始めの有様に復するに於いては再ひ入額所得の権を生すべし　フランス民法第６１７条

第６１１条　遺囑として贈與したる入額所得の権に属する物件の遺囑者の既に贈與したる後変更すると雖もその入額所得の権を設定したる遺囑をその物件の変更に因り取消したる者とみなさざる間はその権を滅盡することなし

第６１２条　フランス民法第６２１条増補○然れども若し入額所得の権に属する物件をその入額所得の権を設定せし者その権を設定する以前書入質と為したるに於いては入額を所得と為す者は書入質の権利者の訴訟に因りその権利を奪はるることあるべし但し本巻の第三款に記せしは如く入額所得の権に属する物件の所有者に対しその権利取戻の訴訟を為すことを得べし

　又入額を所得と為す者は自己の権利者より入額所得の権を差押へらし又は売却せ而められ以てその権を奪はるることあるべし

第６１３条　入額を所得と為す者又はその権の名義を以て入額所得の権を有する者本州に現在の者は十年間不在の者は二十年間その権利を行はさるに於いては所有者土地の全部又はその土地を分ち或は分たさる一部を以て設定したると否とに関係することなく入額所得の権を失うべし

第６１４条　入額所得の権は之を所有権に伴せたるに因ても亦滅盡すべし　フランス民法第６１７条第５項

第６１５条　若し入額を所得と為す者單所有権を得る時は左に記する所有権を失う時に於けるか如く入額所得の権は全く滅盡すべし而してその入額所得の権は所有権の全部を失うに於いてその所有権を得たる証書を入学所得の権に管するべき原由又はその証書に誤謬ある原由を以て取消す時の外再ひ生すべからす如何となれは入額を所得と為す者右の原由を以て所有権の証書を取消すに於いては試みて所有者となりしことなく且つ入額所得の権と所有の権とを伴はすること能はさるを以て入額所得の権は継続すべし

第６１６条　フランス民法第６１８条第１項及ひ第３項に同し

第６１７条　入額を所得と為す者その入額所得の権に属する土地に毀損を生したる時は所有者に必要なる修理を為すべき由を供陳し且つ確定の期限中に成就すべきことを明らむる為充分なる保証を與へ以てその所有者の取戻を避くることを得べし

第６１８条　フランス民法第６１８条第２項に同し

第６１９条　フランス民法第６２２条に同し

第６２０条　入額所得の終る時はその権に属する物件は再ひ所有権に属し單所有者にみを有せし者はその時より物件の所有権を当然復すること始む

　然れども入額を所得と為す者又はその財産相続人は所有者又はその財産相続人より法律に従い返還すべき諸入費或は前払ひの金額を得る迄その入額所得の権に属する物件の保有を留め置くの権あり

　　　　○第２款　受用の権及ひ家屋住居の権

第６２１条　受用の件とは人の物件を使用し又は人にその物件より生する利益の中より己れ一身又はその家族の需用に必要なる一部を要求することを得べき権利を謂ふ

第６２３条及ひ第６２４条　フランス民法第６２５条及ひ第６２６条に同し

第６２５条　然れども若し物件のその所有者の方に在りて受用の件を有する者の権利この物件より生する利益中己れ一身若しくはその家族の需用に必要なる一部を要求することに限る時はその受用のの権を有する者は保証を立て又は財産の目録を記するに及はす如何となれは受用の権を有する者はその得たる利益を返還するに及はされはなり

第６２６条より第６２８条に至る　フランス民法第６２８条より第６３０条に至るに同し

第６２９条　土地の利益に付き受用の権を有する者はその土地に住居する権利を有するに非されは己の権利を行う為或は住居する為その土地に行うことを得す唯己の一身又はその家族に必要なる利益を所有者に対し要求する為の訴訟を為すことを得べし

　故に受用の権を有する者は常に裁判官に因て土地の所有者に対し要求する権利ある利益の分量を確定すべし若しこの分量受用の権を得る証書に記載なき時は受用の権を有する者の身分及ひ家族の増減とその権を付與せし者の資産とに因て確定すべし

第６３０条　家屋受用の権と家屋住居の権とは全く相類似するものたれは同一の規則を以て管理す

第６３１条　一人又は数人の奴隷或は獣類を受用するの権を有する者は己の需用又は家族の為之を使役するの権あり

第６３２条　獣群を使用するの権を有する者は己の毎日の需用又は家族の需用に必要なる乳汁を取る為のみに非されは他に之を使用することを得す

第６３３条　貨幣、食物又は飲物の如き耗盡するに非されは使用すること得さる物件に付き重要の件を有する者は入額を所得と為す者の如く且つこの者に管する規則又は条件に等しき規則又は条件を以て物件を使用するの権あり

　又麻布類、家屋の装飾器、船舶、河舟の如き耗盡するに非らすと雖も使用するに従い漸次に毀損すべき動産を受用する時も前項に同し

第６３４条　フランス民法第６３１条に同し

第６３５条　需用の権利は他に規定する証書ある時を除くの外一年又は数年のみならすその権を有する者の單生間継続すべし

第６３６条　フランス民法第６３２条に同し

第６３７条　フランス民法第６３３条増補○然れども家屋住居の権を有する者はその家屋又はその家屋中己に指定められたる一部を友人旅舎の主人又は塾生に貸與ふるも妨けなし但し躬らその家屋に住するを要とす

第６３８条　本章に記したる家族なる語は需用の権又は家屋住居の権を有する者の婦、子又は僕婢を含蓄する者とす

第６３９条　フランス民法第６３４条に同し

第６４０条　フランス民法第６２７条に同し

第６４１条　フランス民法第６３５条に同し

○第４巻　土地の義務
○第１章　一般の原則

第６４２条　土地の義務は一般にこれを分かちて２種とす即ち人に対する土地

の義務及び物に対する土地の義務これなり

人に対する土地の義務とはこれを設定するにより利益を得べき人に管する土地の義務にして即ちその人と共に終るべし○この土地の義務の種類を分かちて３種とす入額所得の権受用の権及び家屋住居の権これなり

物に対する土地の義務とは土地の所有者己れの利益のため近傍の土地において得べき土地の義務を謂ひ又これを称して田圃或いは地面に管する土地の義務と謂ふ

物に対する土地の義務即ち地面に管する土地の義務と称する所以の者は他なしこの義務は土地の利益の為設けし者たれば人の為より寧ろ土地の為に行ふべき義務たればなり

本巻に記する所の者は物に対する土地の義務即ち地面に管する土地の義務とす

第６４３条　フランス民法第６３７条に同じ

第６４４条　前条に保含する義務により物又は地面に対する土地の義務を設くるには先つ２箇の土地ありて甲の地より乙の地に対しその義務を行ふを要とす

故に　し人の所有物の為に非ずしてその人の為に土地の義務を設定する時はその義務は無効に属すべし然れども物に対する土地の義務の種類に非ざる者とす

第６４５条　前条に記する２箇の土地は２人に属するを必要とす他なし若し２箇の土地の１人の所有権に属しその所有者一方の土地の為他の一方の土地を使用するにおいては土地の義務と称せずして後に記載するが如く家父の定用と称すればなり

第６４６条　又土地の義務を設定したる人の為その土地を使用し又はこれによって利益を得ることをもって土地の義務の目的と為すを要す

然れどもその利益を得ること契約を結ぶ時存在することを必要とせず唯し快楽又は将来或いは永遠に期すべき利益をもって土地の義務を適法と為すに足れりとす

第６４７条　地面に管する土地の義務は一方の土地より他の一方に対して行ふべき者たれはこの２箇の土地は近傍に在るを要とすと雖も連続するを必要とせず

第６４８条　土地の義務を得べき権利は無形の権利にしてこの義務の附属する土地に非ざれば存立すること能はざるが為附帯の権利なり

第６４９条　土地の義務はころを受くべき土地の利益の為他の一方の土地より行ふことを必要と為す者たればその土地の所有者の身上において変更を生ずると雖どもその土地に付き変更を生ぜざる間は継続すべし

第６５０条　土地の義務を得べき権はこれを行ふべき至く附属すべき者たればその権利を土地より分別し独立の者とみなしもってこれを売却し、貸与へ贈与し又は書入質と為すことを得

第６５１条　土地の義務の種類中土地の所有者をして或事を為さしむるを目的と為さず或事を為さざるをもって目的と為し又は人をしてその土地に或事を為さしむるをもって目的と為すべき者あり

第６５２条　土地の義務を得べき権は分かつべからざる者とみなし物或いは人に対する分部に分つことを得ず何となれば近傍の土地において通行の権眺望の権又はその他の土地の義務を得べき権の一部を有しかつ一方の義務を負担するが如きは土地の義務の随意に　戻すればなり

土地の義務を得べき権を行ふことはその時日に制限を設くることを得べしと雖もその制限したる権利は土地の義務を得べき全部の権にしてその権の一部と為すことなし

故に一方の土地より行ふべき土地の義務はこれを受くべき土地の全部に対してころを行ふべくかつその土地の諸部に付き設くべき者たりこれ畢竟その土地の一部を売却する時これを買ふ者をして土地の義務を受くべき権利を有せしめかつその土地の全部に付きこれを行はしめんが為なり

第６５３条　土地の義務を得べき権は仮令分かつべからざる者にしてかつ土地の全部に付き設くべき者たりと雖も若しこれを分かつこと有益にして又これを分かつことを得べき時はこれを分かつも妨げなし

第６５４条　土地の義務を行ふべき土地の部分はその所有す者に属すべし然れどもこの所有者は別段に設けたる警察規則によるに非ざればその道路の位置を変更することを得

第６５５条　フランス民法第６３９条に同じ

○第２章　地の位置より生ずる権利

第６５６条　フランス民法第６４０条に同じ

第６５７条　フランス民法第６４４条に同じ

第６５８条　フランス民法第６４７条に同じ

第６５９条　フランス民法第６４６条に同じ

○第３章　法律上に定めたる土地の義務

第６６０条より第６６２条に至る　フランス民法第６４９条及びフランス民法第６５０　条に同じ

第６６３条　所有者は己れの土地において適意に土工営造を為すことを得ると雖もその隣地の者の土工営造を享有する自由を妨げ又はその者に損害を加ふべき土工営造を為すを得ず

第６６４条　何人に限らず隣地の建造物に損害を加ふべき土工営造を為すことを得すと　　雖も若しこれを為さざるにより或妨害を生ずべき時は己れの土地において適意にすべての物を営造するの自由を得

第６６５条　柔皮匠、染物師等の事業の如き隣人を妨害する臭気を散すべき職業たりと雖も若し土地の義務の設定ある時はその隣人は耐忍せざるを得ず又若しその土地の義務の設定なき時は警察の官令又は慣例によりてこれらの事を規定すべし

第６６６条　建築物を所有する者はその建造物の崩壊するにより又は木材の離るるにより隣人又は通行人に害を及ぼさざる方法をもってその建造物を保持すべき者とす又若し同上の方法をもって保持せざるにより損害を被りたる者ありたる時は所有者の怠慢より生じたる者と為しその償を為すべき者とす　フランス民法第６５２条第１項

第６６７条　若し建造物の崩壊せんとするにおいてはその隣人は所有者をしてこれを取崩し又は支柱を施さしむべき訴訟を為しその訴訟の間若し建造物の崩壊せんとするにより損害を受くべき時はその建造物を維持するに必要なる支柱を施すことの允許を裁判所より受くることを得べしその入費は評価人のその危険を検証せし後所有者より弁償すべき者とす

第６６８条　火災の時はその邑人火災の延焼を妨ぐため家屋を崩壊することを得べし○その所有者はその火災己れの家屋に及達せざることを証するに非ざれば損害の償ひを請求するの権なし

第６６９条　土上又は土下たるを問わずすべて隣地に対し営造を為す者は必ず鉛直に営造しかつ突出せし物を造ることを得ず

第６７０条　フランス民法第６５２条第２項に同じ

○第１款　双方の所有に属する分界の障壁繞囲及び溝渠

第６７１条　本州の都府又はその郭外において障壁なき場所に始めて造営を為す者は障壁の半をその隣地に出すことを得べしその障壁は木柱その他の物を用ふることなく石又は練瓦石をもって造り高さは少なくとも家屋の第２階に達し又障壁の全部の厚さはその障壁より土台の突出したる部分を算入することなく１８「プース」に超過すべからず又この土台の厚さは３「プース」に超過するを得ず

然れども前項の造営を為す者はその人をして強て障壁の造営を分担せしむることを得ず

第６７２条　若し隣人前条の如くして築造したる障壁の入費を分担せんと欲する時はこの障壁は双方の所有者に属する分界の障壁とす

第６７３条　フランス民法第６５３条に同じ

第６７４条より第６８２条に至る　フランス民法第６５５条より第６６３条に至るに同じ

第６８３条　田野において若し２箇の土地に繞囲を為すべき有様なる時は繞囲の入費をもって双方の所有者の共通とす又若し繞囲すべからざる土地を有する者は繞囲を分担するの義務なし

第６８４条　フランス民法第６７０条に同じ

第６８５条　フランス民法第６６６条に同じ

第６８６条　フランス民法第６６９条に同じ

第６８７条　フランス民法第６７２条に同じ

○第２款　造営土工を為すに必要なる距離及び２箇の家屋の中間に為すべき造営の事

第６８８条　フランス民法第６７４条増補○又若しこれらの事に関して毫も取締の規則なく又はその１２を欠く時予定せざる場合においては次に記する規則に依遵せざるを得ざる者とす

第６８９条　分界の障壁に傍ふて暖炉を造らんとする者は練瓦石又はその他の物をも選奥って半「ピエー」の厚さに二重壁を造るべし

第６９０条　分界の障壁に傍ふて隩竈、竈、鋳造所を造らんとする者はその障壁と隩竈、竈、鋳造所との間に半「ピエー」の空所を残し隩竈等の壁は１「ピエー」の厚さに造るべし

第６９１条　分界の障壁又は分界に非ざる障壁に傍ふて圊厠又は井を掘る者は１「ピエー」の厚さに二重壁を造るべく若し一方は圊厠にして他の一方は井なるにおいてはその間４「ピエー」の厚さに壁を造り又若し２箇の井なるにおいてはその厚さ３「ピエー」をもって足れりとす

○第３款　隣地を望下する事

第６９２条　フランス民法第６７５条に同じ

第６９３条　何人に限らず２箇の土地の分界においてその分界の外部即ち類地に出づべき方法をもって歩廊、又は層階の窓前に縁側及びその他の突出せし物を造るを得ず

○第４款　承霤

第６９４条　フランス民法第６８１条に同じ

○第５款　通行及び道路に関する権

第６９５条　フランス民法第６８２条に同じ

第６９６条　他人の土地に環遶せられたる土地の所有者は己の欲する所の隣地を通行するの権を得んと求むるの自由なし○自余はフランス民法第６８３条及び第６４６条に同じ

第６９７条　通行の権を附与するに最も短き通路を提供するは土地の所有者のみに限ることなし如何となれば若し通行の権を得んと求むる者の土地売買、交換又は分派の効によりてのみ環遶せらるるべき時は以前通行の権ある土地を売却せし者分派せし者又はその他の所有者より環遶せられたる土地の購求者又は所有者に償を得ることなくかつその土地の義務を得べき権と共に売却せず又は譲渡さざる時と雖も通行の権を附与するべき者たるによればなり

第６９８条　通行の権は環遶せられたる土地の所有者又はその奴隷又はその工丁に附与するべきのみならずなおその獣類、馬車耕耘の器械及びその土地を使用し又は耕作するに必要なるすべての者のためにもまた附与せざるを得ず

第６９９条　通行の権を行ふべき場所を１回確定するにおいては土地の義務を得たる者はその場所の位置を変更するを得ずと雖も土地の義務を行ふべき者は己れに少なく損害を受くるため甲の地より乙の地に通路を変更することを得べしただし土地の義務を得べき者以前に等しく容易に通行するを得るを要とす

第７００条　道路に２種あり公道及び特別の道路これなり

第７０１条　公道とは街道にして一般に所有するものより出しかつ保持すべき道路を謂ふ

第７０２条　特別の道路とは或人のため有益なるをもって開きたる道路を謂ふ

第７０３条　所有者たるの名義をもって河川の岸に公道を具備すべき者は既に供したる道路河川によりて毀損若くは崩壊するにおいては償を得ることなく更に他の道路を供するの義務あり

若しその道路河川によりて崩壊せずと雖も毀損若くは水のために覆はれて人の通行することを得ざるに至る時は所有者はその水のために覆はれたる道路に成るべく近き場所に毫も得ることなく己れの土地をもって公衆の通行に具備すべし

第７０４条　フランス民法第６８５条に同じ

○　第４章　契約上又は好意に関する土地の義務

○第１款　契約上又は好意に関する土地の義務の種類

第７０５条及び第７０６条　フランス民法第６８６条及び第６８７条に同じ

第７０７条　市外の土地の義務を得べき権の重なる種類は左の如し」

支柱に関する権利、承霤に関する権利、水を流すことに関する権利、及びこれを妨ぐことに関する権利、望観及び天窓に関する権利及び人のこれを害することを妨ぐことに関する権利、通行の権利及び水を汲むことに関する権利これなり

第７０８条　支柱に関する権利とは一方の所有者その隣人をして己れの家屋又は梁木をその隣人の障壁に支ふることを允さしむることに付いての土地の義務を得べき権を謂ふ

この土地の義務を互ひに行ふ時若し他に約定なきにおいては障壁を支ふるために供すべき建造物にしてかつ土地の義務を負担すべき有様なる建造物を所有する者に限るべしただし一方の者その障壁を放棄するにおいてはその義務を行ふに及ばず

一方の所有者その隣地に突出する物を造営することを得べき旨を契約せし時もまた前項に等しき土地の義務を得べき権ありとす

第７０９条　すべて土地の所有若は法律に循ひ雨水をして隣地に流下せしめず全く己れの土地又は公道に流下する方法をもって屋蓋を造るべし　フランス民法第７５１条

水を流すことは承霤に付いての土地の義務に管する者とす
承霤に管する土地の義務とは隣地の屋蓋の水を己れの土地に流し又は己れの屋蓋の水を隣地に流すべき権利を謂ふ

第７１０条　水を流すことに管する権利とは水樋又は溝渠に溜りたる水を隣地に流すべき権利を謂ふ

この土地の義務を得べき権は承霤に管する権に異なる所ありこれ畢竟承霤に管する権より一層著しき義務を課すべき者たるによるなり

第７１１条　窓　とは概して多少直接に建造物の外部を望観すべき方法を容易にするためこの建造物に諸種の窓を開くを謂ふ

天窓とは僅少の窓にして外部を望観すべき方法を得るためより寧ろ或場所を照らすために供すべき窓を謂ふ

第７１２条　窓牖に管して土地の義務を得べき権に２種あり即ち第１には自由に観望するの権利と隣地に建造物を高めもって窓牖を塞閉することを防ぐべき権利これなりその第２には隣人その近接する一方において窓及び天窓を有することを防ぐべき権利又は証書によるに非ざればその窓　及び天窓を有すること能はざる権利を一方の所有者に附与する者これなり

第７１３条　天窓に管して土地の義務を得べき権にもまた２種あり即ちその第１には家屋の所有者その隣人の土地より日光を得るため分界の障壁に窓を開きかつその隣人の日光を塞閉するに至る迄建造物を高むることを防ぐの権利これなりその第２には隣人その園庭又はその他の場所に日光を引くため己れの障壁又は分界の障壁を開くことを防ぎ又は証書によりて規定せし部分のみに日光を引くの自由を限る権利これなり

第７１４条　或物を高むるの権利とは不動産の所有者その隣人に障壁を或高さに達する迄高むることの義務を課するに付き土地の義務を得べき権利を謂ふ

或物を高むること能はざるに付いての土地の義務を得べき権とは隣人をして或高さに達する迄に非ざれば家屋を高めしめざることを目的と為すべき権利を謂ふ

第７１５条　都府における通行の権とは一方の所有者その隣人をしてその家屋に至らしむるため己れの家屋内を通行せしめざるを得ざる所の土地の義務に対する権を謂ふ

この権は反対の約定ある時を除くの外無期の土地の義務を得べき権に非ずして即ちこの権を行ふべき旨を約定せし者のためのみにこれを設けし者たればその財産相続人はこれを行ふこと能はず

第７１６条　フランス民法第６９６条第２項増補○土地の義務を得べき隣地の家屋に居住するものの使用権に対して制限すべき権もまた承諾せし者とすただし証書によりて反対の条件ある時は格別なりとす

第７１７条　田野に管して特別なる土地の義務を得べき権とは通行、道路、汲水、水を引くこと又は水樋、飲水場、牧畜場に管する権又は練瓦石若しくは石灰を製造し或は隣地の土砂を掘るに付いての権を謂ふ

第７１８条　通行又は道路に管する権とは法律又は契約によって定めたる土地の義務を得べき権にしてこれを行ふべき者は他人の土地を徒歩、乗馬或は馬車にて通行し又は駄馬或は荷車を引きて通行するの権あり

若し同上の土地の義務を得べき権を法律上に定めたる時は通行の権を行ふべき者の需要に応するをもって土地の義務の規則とす

若し右に反し土地の義務を得べき権を契約によって定めたる時はこれを行ふ方法と軽重とは証書をもって規定すべし

第７１９条　汲水の権とは他人の噴水より水を汲むべき権を謂ふ

第７２０条　水樋に管する権とは水樋又は溝渠をもって他人の土地を横きり己れの土地に水を引くべき権を謂ふ

第７２１条　飲水場に管する権とは池、沼又は他人の水源において食料に供する獣類に水を飲ましむべき権を謂ふ

第７２２条　牧場に管する権とは隣地において食料の獣類に青草を食はしむべき権を謂ふ

第７２３条及び第７２４条　フランス民法第６８８条及び第６８９条に同じ

○第２款　土地の義務を定むる方法

第７２５条　１箇の土地に無期の土地の義務を定むるの権は土地の真誠なる所有者のみこれを有すべし　フランス民法第６８６条

第７２６条　土地の単所有権のみを有する者は入額を所得となす者の承諾を得るに非ざればその土地にその義務を定むるを得ずただし入額所得の権の終る時土地の義務を行ふことを始むべき時は格別なりとす

又従前より一層家屋を高むること能はざる土地の義務の如き入額を所得となすものの権利を毫も害すべからざる土地の義務は例外なりとす

第７２７条　土地の義務を定むるにはその土地の所有者たるのみをもって定まれりとせず即ちその所有権を主轄しかつこれを売却するの権を有することを要とす

故に幼者、婚姻を結びし婦、治産の禁を受けたる者等は土地の義務を定むるを得ずただしこれらの者己れの財産を売却するに付き必要なる法式に循ふ時は格別とす

第７２８条　夫は仮令の婦の承諾を得ると雖も嫁資に付き土地の義務を定むるを得ずただし婚姻の契約書中に嫁の承諾を得たる後はその嫁資を売却するも自由たることを特別に記載したる時は格別なりとす

第７２９条　名代人は特別の権を得たるに非ざれば己れの負担する土地に付き土地の義務を定むるを得ず

第７３０条　団結はその財産を売却することを得べき時に等しき場合と法式とによるに非ざればその財産に付き土地の義務を定むるを得ず

第７３１条　買戻の権ある不動産の買主は己れの購求せし土地に付き土地の義務を定むることを得べしただし買戻の契約に効を生ずる時はその土地の義務は停止すべし　フランス民法第１６７３条

第７３２条　返還すべき不動産の所有者又は未だ成就せざる未必の条件により遺嘱として得たる土地の財産相続人の如き取戻を受くべき所有権のみを有する者もまた土地の義務を定むることを得べしと雖もこの土地の義務は所有権と共に消滅すべししかして土地の義務を得べき者はその義務の消滅する際に方り期満得免の権を得んと求むることを得ず何となれば所有権の消滅せざる間は土地の義務を定めし双方の者の間既に開始したる訴訟権なきをもってなり

第７３３条　入額を所得と為す者はその入額所得の権に属する土地に付き土地の義務を得る名義となるべき権利を毫も人に附与することを得ず

第７３４条　分かつべからざる土地を共有する一人の所有者は他の共有者の承諾を得るに非ざればその共有の土地に付き土地の義務を定むるを得ず

第７３５条　共有の土地に付き土地の義務を定むることを承諾せし一人の共有者はその他の共有者の承諾無きを原由としてその土地の義務を得べき権の執行を妨ぐるを得ず

若し土地の義務を定むることを承諾せし共有者或方法により一人にてその土地の所有者となるにおいては嘗て一人にして定めし所の土地の義務を得べき権を行ふことを人に允るすべき義務あり

第７３６条　若し土地の共有者中の一人己れの所有する部分のみに付き土地の義務を定めたる時は他の共有者の承諾を得るを必要とせずただし土地の義務を得へき権を行ふことは土地の分派によりその土地の義務を行ふべき者の得べき部分の明亮に至る迄は中止すべし

然れども前項の場合において土地の義務を得べき者はこれを行ふべき者をして土地の分派を請求せしめ又は射を他の共有者に対しその土地を分派せんことを請求することを得べし

第７３７条　土地を分派すべき請求ありたるにより他の共有者その土地を糶売することに決議したる時己れの得べき分部に付き土地の義務を定めし者その土地の全部の落札者となるにおいては常に一人にてその土地を所有せしが如くその土地の全部に付き土地の義務を行ふべし

然れども若し糶売の効により土地の義務を承諾せし者より他のものに落札するにおいては土地の義務は消滅するをもってその義務を承諾せし者はこれを承諾するに付き請取りたる対価を返還すべき者とす

第７３８条　土地の共有者中土地の義務を定めし者糶売の効により他の共有者の受くべき土地の部分の所有者となりたる第３の人に己れの受くべき土地の部分を売渡すにおいては第３の人はその売主に等しく土地の義務を行わざるを得ず

第７３９条　土地の義務を得べき権は所有権を転移すべき諸種の証書によりて設くべき者にして即ち真にその権を引渡すこと能はさる者たればその義務を受くべき土地の所有者その権を行ふにおいてはその権を引渡したる者とみなすべし

第７４０条　土地の義務はすべて所有権を附することを得べき財産に付き定むることを得べき者たれば公領地及び都府又は団結せる土地の共通財産に付てまた定むることを得べし

第７４１条　同一の土地の義務をもって一人の利益のため数多の土地に対して定むるも１箇の土地をもって数多の土地に対し土地の義務を行ふべき時に等しき者にして即ち土地の義務の本義に違戻することなし

第７４２条　１箇の土地のため１箇の土地の義務を定めたる証書中に最初の土地の義務を得べき者の利益のため同一の土地に他の土地の義務を定むるも妨げなし

第７４３条　未だ整頓せざる土地又は人の未だ所有者たらざる土地の利益のため土地の義務を定むることを得然れどもこの場合において最初の希望の如くその土地の所有者となること能はざるにおいては土地の義務は消滅すべし

又何人に限らず未だ建築せざる建造物に付き土地の義務を行ひ又は建築落成の後これを受くべきことを契約することを得べし

第７４４条　何人に限らず土地の或部分に付き土地の義務を定め又はその義務の釈放を受くることを得ただしその部分を指定するを要とす

第７４５条　或土地の義務を行ふべき土地を所有する者はその土地の義務の同種類たると他の種類たるとを問はずその土地に付き更に新たなる土地の義務を定むることを得べくただし既に第１に土地の義務を得たる者の権利を害することを得ず

第７４６条　書入質となりたる土地の所有者はその土地に付き土地の義務を定むることを得べくただし権利者はその義務を定めたるにより土地の代価を著しく下落すべき時においては義務の弁償を促すことを得べくかつ土地の義務を得べき権を得たる者はその土地の所有者に対し損害の償を得べき訴訟を為すことを得べし

第７４７条　土地の義務を行ふことに付ては時間を限ることを得べし

故に汲水の権を得たる者は某時に非ざればこれを行ふことを得ず又通行の権を得たる者は某時間に非ざればこれを行ふことを得ず

第７４８条　何人に限らず契約によりて適法の土地の義務及び場所の位置より生ずる土地の義務を変更することを得ただし公の利益を害することを得ず

第７４９条　土地の自由に受用すべきため定めたる土地の義務に付きその区域またはこれを行うべき方法に管して異議ある場合においては常に義務者即ち土地の義務を行ふべき土地の所有者のためにその土地の義務を解釈すべし

第７５０条　およそ土地の義務は乙の土地のため甲の土地に定むべくして人のために設くべき者に非ず故に権利を附与する証書に丙の土地のためにその権利を附与せしことを載せたるにおいては仮令その権利をもって土地の義務を得べき権利の性質を帯びざさる者と為す時と雖もその権利の本義に付き異議を唱ふることを得ず

第７５１条　若し前条に反し土地の義務を定めたる証書に土地の利益のために権利を附与したることを載せずしてその土地の所有者のためにこれを附与したることを載せたる時はその権利の本義に原き土地に管して物に対する利益なるか又はその土地の所有者に管して人に対する快爽のためのみなるかを注意すべし

第７５２条　若しその附与したる権利の本義土地に管して物に対する利益を与ふべき者たるにおいては仮令その権利に名称なき時と雖もその権利をもって物に対する土地の義務と思料すべし

第７５３条　若し前条に反しその権利の本義に原き人に管して人に対する快爽を与ふべき者たるにおいてはこの権利は人のために契約せし者とみなし特定の申述あるに非ざれは物に対する権利と為すべからず

第７５４条　他人に附与したる権利の果して人に対する権利なるにおいてはその本義に原き人の死去によりて消滅すべしただし証書によりこれに反する特定の契約ある時は格別なりとす

○第３款　土地の義務を得る方法

第７５５条　何人を論せず己れの土地において土地の義務を行ふことを得べき者は当然に土地の義務を受くることを得べし

土地の義務を行ふことを得ざる者にしてこれを受くることを得べき者あり斯の如きは即ち己れの権利を有せざる者、幼者、承諾を得ざる婦、他人の財産を管理する者、後見人及び婦の土地に管する夫これなり他なし土地の義務を受くるにおいてはこれを受くべき土地の価と快爽とを増加するによるなり

第７５６条　土地の所有者とみなさざる者にして所有者の名義により正意又は不正意をもって土地を享有する者及び名代の証書を有すると否とに管せずその土地の所有者の名義をもって事務を管理する者は土地の義務を受くることを得べくしてその土地の義務を行ふべき者は所有者の承諾を得んと求むることを得ずこれ畢竟この土地の義務は人のために承諾せしに非ずして全く土地のために承諾せし者たればなり

第７５７条　然れども前の数条に記したる場合において若し幼者、承諾を得ざる婦及び他人の事務の管理を委託する所有者高額を要する契約なりと認むるにおいてはその土地の義務を拒絶しもってその契約を取り消し又はその契約の執行を拒むことを得べし

第７５８条　又仮令所有者若しくは所有者の名代人に非ず又は特許により所有者の名義をもって事務を管理する身分を有せざる者と雖も自己のためのみに付き契約を結ぶべき約定を為すにおいては己れの保有する土地の利益のため土地の義務を受くることを得べし

第７５９条　分かつべからざる土地の共有者中の一人その共有の物件を改良せんと欲する時は即ちその共有する土地の利益のため土地の義務を得べき契約を為すことを得ると雖も他の共有者は事務を管理するの所為に非ざることを口実としてその契約を拒むことを得べしただしこの抗拒権は共有者のために非ざれば開発することなし

第７６０条　入額を所得と為す者はその不動産の所有者のために契約を結ぶことを申述し又は己れの後に土地を保有すべきすべての人のために土地の義務を定むることを契約するにおいては即ち入額所得権に属する土地のため土地の義務を受くることを得ると雖もこれを得べき証書中に入額を所得と為す者の名義のみを載せ土地の保有権を相続すべき者のために契約せしことを載せざるにおいては土地の義務を得べき権利は入額所得権と共に消滅すべくして土地の所有者はその土地の義務を得んと求むることを得ずこれ畢竟この土地の義務は入額所得権に属する土地に付て得たるに非ず即ち入額所得権の継続する時のみに対して得たる者なればなり

第７６１条より第７６６条に至る　フランス民法第６９０条より第６９５条に至るに同じ

第７６７条　フランス民法第６９６条増補○然れどもこの場合と他の土地の義務に必要なる附帯の義務として通行の権を与へたる場合とにおいては土地の義務を行ふべき土地のため最も直線に短縮したる便利なる路によりて通行の権を行ふべし

○第４款　土地の義務を得べき権利を有したる土地の所有者の権

第７６８条及ひ第７６９条　フランス民法第６９７条及び第６９８条に同じ

第７７０条　土地の義務を得べき権利を有したる土地の所有者は職工と共にその義務を行ふべき土地に行き土地の義務を得べき権利を行ふに必要なる造営土工を為し又は修繕すべき場所にその造営土工に適用せんとする木材又はこれより除去せし破損物を置くの権ありただしこの所有者は成るべく僅少の損害を加へかつ速やかにその場所を引払ふの義務あり

然れども地の義務を定むる証書中にその義務を受くべき土地の所有者その権利を行ふに付き造営を為すことを得ざること又は或方法によるに非ざればその造営を為すことを得ざる旨を載せたる時はその約定を循守せざるを得す

第７７１条より第７７４条に至る　フランス民法第６９９条より第７０２条に至るに同じ

第７７５条　通行の権を行ふに付き必要なる場所を証書中に規定せざる時の如き土地の義務を行ふの方法不確定なるにおいてはその義務を行ふべき者通行の権を行ふべき場所を確定すべし

第７７６条　通行の権を附与したる証書に道路の広域とその権を行ふべき方法即ち徒歩、馬乗又は馬車にて通行することを記せさるにおいては土地の義務を得べき者の従来その権を行ひし方法によりてその証書を解釈すべし

若し前項の如き方法無きにおいては契約を結びたる正実なる必意と道路を通行することを契約し及び認諾せし目的とを検証すべし

若し前項の形況明亮ならさるにおいては土地の義務を行ふべき土地のためとなるべき方法により裁判言渡を為すべくして直線の場所においては８「ピエー」の広さ屈曲したる場所においては１０「ピエー」の広さある道路を徒歩にて通行することを允すべし

第７７７条　若し時間を定むることなく通行することを契約し又は承諾せしにおいては閉鎖すべき場所を通行すると否とに区別し若し閉鎖せざる場所を通行すべき時は即ち何時たるとを論せず仮令夜間と雖も通行することを得べしこれ他なし何時なりと雖も通行すること必要なればなり

又若し土地の所有者の安全のために閉鎖すべき場所を通行すべき時は約定したる時間に非ざれば通行することを得ず

第７７８条　建築を企てたる者天窓又は窓牖を開くことに付き無限の権利を得たるにおいてはその所有の家屋若くは建造物を照し又は装飾するに必要なる窓を開きかつ己れの適意にその形を作り又は大にするの権あり

然れども建造物落成の後は保有権と土地の有様とによって土地の義務の区域を定めその所有者は最早その窓を増加し又は大にすることを得ず

○第５款　土地の義務の終る方法

第７７９条　土地の義務は左に記列する諸件によりて終るべし

第１　義務を行ふべき土地若しくはこれを得べき土地の崩壊する事又は土地の義務に属する物件使用すること能はざる有様に変更する事

第２　土地の義務を得べき権の消滅するに必要なる時間その権を行わざるにより期満得　免となる事

第３　権利と義務と混同する事

第４　土地の義務を行ふべき土地の部分を放棄する事

第５　土地の義務を得べき者その土地の義務を放棄し又は明許若くは黙許により己れの権利を放棄する事

第６　土地の義務を行ふべき時間の終りたる時又は土地の義務を解除すべき未必の条件の発生する事

第７　土地の義務を得べきことを定めし者の権利の解除する事

第７８０条及び第７８１条　フランス民法第７０３条及び第７０４条に同じ

第７８２条　或土地の義務を行ひこれを受くべき分界の障壁又は家屋の破壊、砕毀又は転倒せし後再びこれを建造すると雖も此障壁又は家屋に付き存立せし土地の義務を受け若くはこれを行ふことはなお新たなる障壁又は家屋に付いてもまた継続して存立すべしただしその土地の義務を重くすることを得ずかつ次条に記載する期満得免をもって抗拒すること能はざる方法により再び建築するを要とす

第７８３条　若し抵抗すべからざる力ある事件又はその他の事件により破壊、砕毀又は転倒せし家屋若くは建造物土地の義務を得べき土地の所有者に属する時若しその所有者期満得免の権を得るに必要なる時間を経し後家屋又は建造物を再び建築するにおいてはその土地の義務は消滅すべし　フランス民法第７０７条

第７７８４条　若し前条に反し土地の義務を行ふべき家屋又は建造物の破壊、砕毀又は転倒せし時は仮令その所有者期満得免となるべき時間の経過せし後その家屋又は建造物を再び建築すると雖もその家屋又は建造物に付いて行ふべき土地の義務を害することを得ず

第７８５条　土地の義務を得べき権を現在者は１０年間不在者は２０年間行はざるにおいてはその権は消滅し又は期満得免となるべし

第７８６条　フランス民法第７０７条に同じ

第７８７条　土地の義務を得へき権を行ふに付き必要なる造営土工を毀壌すること即ち承霤の権に管する承霤及ひ観望の権に管する窓を減省する事等は土地の義務を得べき権に反対する契約と謂ふ

第７８８条　若し土地の義務を得べき土地の所有者の預知し及び停止すること能はざる障害物ありて土地の義務を得べき権を行ふこと能はざるにおいてはその権を行わざるに付き気満得免となるべき期限は障害物のある時間その土地の所有者に対して経過することなし

第７８９条　土地の義務を得べき権を保存し又は期満得免となるべき期限の経過を妨ぐにはその義務を得べき土地の所有者又はその所有者の権を行ふもの又はその権を行ふに付きその所有者の名代となることを得べき身分を有する者即ち入額を所得と為す者、土地或は家屋の賃借主若くは名代人及び事務を管理する者のみに限り土地の義務を得べき権を行ふことを必要とす

その所有者の使役する職工、奴隷、朋友又は所有者に面謁するために来りたる者その土地の義務を得べき権を行ふをもって足れりとす

第７９０条　仮令外国人と雖も土地の義務を得べき権ある土地のためにその権を行うにおいては義務を得べき権ある土地の所有者は土地の義務を保存することを得べし

第７９１条　土地の義務を得べき権を行わざるに付き土地の義務に付き期満得免となるべき期限は場所の位置より生ずる土地の義務即ち天然の土地の義務又は止むを得ざる土地の義務に対して経過することなし

第７９２条　フランス民法第７０８条に同じ

第７９３条　若し土地の義務を得べき者証書によりて得たる権利より一層拡張したる権利を行ふにおいてはその権利を保存せし者とみなすべしこれ畢竟大は小を保含するによるなり

然れども前項の如き権利を行ふ者はその余計の権利を所得と為すこと能はざる者たれば証書によりて得たる土地の義務の部分に減却せざるを得ずただ但し期満得免の効により得たる土地の義務を得べき権利にしてかつ間断なく人目に触るべき権利なる時は格別なりとす

第７９４条　若し前条に反し土地の義務を得るべき者証書によって得たる権利より一層狭縮したる権利を行ふにおいてはその権利の如何なる種類たるを問わず期満得免となる時間保有権によって保存する所の権利の部分に減却すべし

第７９５条　土地の義務を得べき者土地の義務を得べき権を行ふに付き必要なる附従の権のみを行ふにおいては主たる権を行ふたる者とみなすべからず

第７９６条　若し土地の義務を得べき者己れの得たる権利より他の権利を行ひ己れの得たる権利を行はざるに付き期満得免となるべき必要なる時間を経過したる時はその権利を失ふべししかして現に行ひし権利に間断あるか又は人目に触れざる権利たるにおいてはこれを得ること能はず

第７９７条及び第７９８条　フランス民法第７０９条及び第７１０条に同じ

第７９９条　若し土地の義務を得べき土地を分派するにおいては嘗てその土地の共有者たりし各人は己れの行ふべき権利の部分に非ざればその権利を保存することを得ず又期満得免に必要なる時間その権利を行はざる者は即ちその権利を失ふべし

第８００条　土地の義務を得べき者その権利を行はさずにより気満得免となりしことを抗拒するには自分又は名代人にてその土地に付き期満得免に必要なる時間土地の義務を得べき権利を行ひしことを証すべし又水を引くことに管する土地の義務の如き日を異にして数人に行ふべき義務はその数人の中己れの権を行はざる者はその権を失ふべくその義務を行ふべき土地はその義務の解釈を受くべし

第８０１条　フランス民法第７０５条に同じ

第８０２条　若し契約を解除すべき未必の条件により又は法に適して故障を述ふるとき土地を分派すべき約定により義務を行ふべき地と権利を有する地と同人の所有となりたる時右２箇の原由中の１によりて２箇の地を合併したる証書を取消すにおいては再び土地の義務を生ずべくして同上の如き場合において土地の義務は消滅せしに非ずして全くその執行を中止せし者たり

第８０３条　土地の義務を得べき一人の財産相続人土地の義務を行ふべき土地の相続を単純に承諾するにおいては権利と義務と混同すべし

故に前項の如く単純に財産相続を承諾せし財産中特に己れの土地に対し土地の義務を行ふべき土地を他人に渡し己れの権利を保存すべき契約を為さざるにおいては義務を行ふべき土地は嘗て財産相続人の手にて成りたる権利と義務との混同の効により義務の釈放を受くべし

第８０４条　然れども単純に財産を相続せし者己れの相続せし財産に付き有する所の権利の全部を第３の人に売却するにおいては権利と義務と混同することの妨げとなるべくしてその財産中の土地は嘗て財産相続人の手に渡りしことなき時に等しく継続して土地の義務を得べき権を有し又は土地の義務を行はざるを得ず

第８０５条 若し財産相続人土地の義務を行ひ若くはその義務を得べき土地を第３の人に遺嘱し贈遺として引渡すため一時己れの手に保有せし時又はその土地の所有権に付き或期限ある時もまた土地に管する権利と義務と混同することなし

第８０６条 若し財産相続人その相続する財産の価き至る迄の外負債を償はざる特権をもって相続を為せし時は権利と義務と混同することなし若し財産相続人権利者の請求によりその相続せし財産を放棄せざるを得ざるにおいては土地の義務は最初の有様に復すべし

第８０７条 夫婦結婚間共通と為したる財産は夫婦の各自に属する財産と相続することを得ず故に結婚間に得たる財産をその結婚間に売却するにおいてはその財産を得たる前に存在せし土地の義務又は権利は更に契約することを要することなく継続して存在すべし

第８０８条 前数条に記したる場合とこれに類似の場合とを除くの外権利と義務と混同するによって減尽したる土地の義務は更にこれを設くるに非ざれば再び発生することなしただし家長の用方をもって証書とみなすべき間断なく又は人目に触るべき土地の義務は例外なりとす フランス民法第６９８条

第８０９条 義務を行ふべき土地を放棄するにおいてはその土地の義務は如何なる種類たるを問はず当然消滅すべし

第８１０条 義務を行ふべき土地の所有者その義務の釈放を得るには必ずしもその土地の全部を放棄するをもって緊要なりとせず即ちその義務を行ふべき土地の一部を放棄するをもって足れりとす

第８１１条 若し土地の所有者己れの障壁の一部をもって建造物又は梁椽を支持しかつこの障壁を保全するに必要なる修理を為すべきの義務あるにおいては義務を得べき土地の所有者に義務を行うふべき障壁の部分を委附しもって土地の義務を免かるることを得べし

第８１２条 土地の義務はその義務を得べき土地の所有者その義務を受くることを肯せず又は好意をもってその義務を釈放するにおいては消滅すべし

義務を受くることを肯せざること又は釈放することは明許又は黙許の者たり

第８１３条 土地の義務に管する明許の釈放をは必ずこれを書面に認むべくして証書中に明記したる条件に限る者とす

第８１４条 若し義務を得べき土地数人の所有に属する時その所有者中の１人にて共有の土地の得べき義務を釈放をせんとするには他の所有者の承諾を得るに非ざればそ其の土地の義務を釈放をすることを得ず義務を釈放せし者は再び己れに土地の義務を得んと求むることを得ず

第８１５条 義務を得べき土地の所有者より義務を行ふべき土地の所有者に土地の義務を得べき権を消滅する者と思惟すべき造営土工をその義務を行ふべき土地に為すことを許したる時は義務の釈放を黙許したる者とす

第８１６条 義務を得べき土地の所有者その権を行ふことを妨ぐべき造営土工を為すことを允許せしに付き黙許により土地の義務の釈放を得べへきは左の諸件によるべし

第１ 造営土工を為すの允許又は承諾を口上或は書面にて明許の方法をもって得る事けだし土地の義務を得べき権に反対する造営土工を為すに付き黙許を得ると雖も期満得免に必要なる期限の継続する間は義務を釈放せし者と思料すべからず

第２ 建築したる造営土工の堅牢にしてかつ永続すべき物たる事

第８１７条 又土地の義務を或時間に限り設けし時又は或事件の発生するにおいては停止すべき未必の条件によって設けし時は消滅することあるべし

第８１８条 その他土地の義務はこれを行ふべき者の権利の解除する時もまた消滅すべしこれ他なし何人に限らず己れの有する権利より一層多量の権利を他人に転移すること能はざればなり故に或人未必の条件によって中止し又は或場合において解除すべき権利のみを有する土地又は人に返還すべき土地に付き土地の義務を定めたる時の如きはその土地の義務はその人の権利と共に消滅すべし

義務を行ふべき土地の所有権の証書に管する既往の錯誤をもって取消す時もまた土地の義務は消滅すべし

○第５巻 土地の囲繞及び測地

第８１９条より第８５１条に至る

○第６巻 建築を停止し又は妨ぐことを得べき新たなる造営土工

第８５２条より８６５条に至る

○第３編 財産所有の権を得る種々の方法

○増加巻

○総則

第８６６条 フランス民法第７１１条増補○及び法律の効によってこれを得及びこれを移すべし

○第１巻 財産相続

○第１章　財産相続及び財産相続人の種類

第８６７条 財産相続とは死者の権利及び義務を財産相続人たる者に転移することを謂ふ

第８６８条 或人の死後に遺留せし財産の全部、権利及び坦荷もまた相続すべき財産又は　相続の権ある財産と謂ふけだし財産は義務に超過し義務は財産に超過し又財産なくして全く坦荷のみあることあり

第８６９条 財産相続の権とは死者の死去する時存在せし権利又は義務を云ふのみならずなお財産相続を開始せし後に生じたる権利及びその財産相続の時に生ぜし新たなる義務を保含すべし

第８７０条 死者の財産及び権利をその時のままにと財産相続人の受くべき権利もまた財産相続又は財産相続の権と謂ふ

第８７１条 財産相続に３種あり左の如し

遺嘱の財産相続

嫡出の財産相続

不規則の財産相続

第８７２条 遺嘱の財産相続とは法律上に規定したる法式ある遺嘱の証書より生ずる財産相続を謂ふ

第８７３条 嫡出の財産相続とは法律上死者に最近なる嫡出の血属のために設けたる財産相続を謂ふ フランス民法第７３６条

第８７４条 不規則の財産相続とは嫡出又は遺嘱の財産相続人なき時法律上において或人又は政府のために設けし財産相続を謂ふ

嫡出及び不規則なる財産相続の２種は本巻の主眼とす

第８７５条 前の数条に記載したる３種の財産相続に準じて又３種の財産相続人あり左の如し

遺嘱の財産相続人

嫡出即ち血統の財産相続人

不規則の財産相続人

第８７６条 当然に財産相続を為すべき等級の者たるにより財産相続人と思料すべき者を最親の財産相続人と謂ふ

最親の財産相続人の身分は財産相続を為さしむる者の死去する前とその財産相続を開始せし後とを問はずその財産相続を承諾し又は肯せざる時迄附与したる者とす

第８７７条 財産相続を承諾する方法に循ひ財産相続人を分ちて２種とす即ち尋常の財産相続人及びその相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人これなり

第８７８条 尋常の財産相続人とはその財産相続の明許又は黙許によって承諾せしを論せず財産の目録を記することなくかつその財産を別段遺し置くことなく財産相続人となりたる者を謂ふ

第８７９条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人とは規則に適したる方法をもって財産の目録を記しその相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を得るに非ざれば財産相続を承諾せざる者を謂ふ

第８８０条 遺嘱、嫡出又はその他の財産相続人たるを問はずすべて死者の財産と権利とを相続しかつその財産をもって死者の義務を行ふべき者は財産相続人と称す

第８８１条 フランス民法第７３２条に同じ>○第２章　嫡出の財産相続

○第1款　総則

第８８２ 遺嘱の財産相続人なく又はこれあるも無効となるにおいては財産相続は法律の効により嫡出の財産相続人のため開始する者とす

第８８３条 嫡出の財産相続人に３箇の順序あり左の如し

嫡出の子及び卑属親

父母及び嫡出の尊属親

傍系の親

第８８４条 卑属尊属及び傍系の最近の血属親は左の次条に設けたる規則に循ひ死者の嫡出の財産相続人となることを得べし

第８８５条より第８８８条に至る フランス民法第７３５条より第７３８条に至るに同じ

第８８９条 嫡出の財産相続に付いては男女の性及び出生したる順序に区別あることなく最も完全なる平等をもって財産相続の目的とすべし

○第２款　代て財産相続を為す事

第８９０条より第８９６条に至る フランス民法第７３９条より第７４４条に至るに同じ

第８９７条 父母より財産相続を拒まれたる者又は悪むべき所行あるにより財産相続を為すこと能はざる者の子は財産相続を開始すると雖もその父の生存するにおいてはその父に代てその祖父又はその他の尊属親の財産相続を為すことを得ずただしその父の死去せし後はその父に代り法に適して財産相続を為すことを得べし

○ 第３款　卑属親財産相続を為す事

第８９８条 フランス民法第７４５条に同じ

○第４款 尊属親財産相続を為す事

第８９９条及び第９００条 フランス民法第７４８条及び第７４９条に同じ

第９０１条 若し死者に子孫、兄弟、姉妹、その兄弟姉妹の卑属親及び父母なくして他の尊属親のみある時はこの尊属親は左の数条に規定したる規則に循ひ死者の財産を相続し傍系の親は財産相続を為すこと能はず

第９０２条 フランス民法第７４６条に同じ

第９０３条 父方又は母方に最近の尊属親一人ある時はこの尊属親一人にて死者の財産を相続しこの尊属親より一層疎遠なる階級の尊属親は財産相続を為すこと能はず

第９０４条 フランス民法第７４７条に同じ

第９０５条 又尊属親は子孫なくして死去したる子又は尊属親に嘗て与へたる金額をその死者の財産中より取戻すことを得べし

第９０６条 前の数条に記したる財産即ち子孫なくして死去したる子又は卑属親に与へたる財産を相続する尊属親はその贈遺者の嘗て生存中に為したる書入質の義務を行ふべし

又贈遺者に与へたる物件取戻の権を行ふたる尊属親はその贈遺者の財産中その与へたる物件の価に応じて義務の弁償を分担せざるを得ず

○第５款　傍系の親財産を為す事

第９０７条より第９０９条に至る フランス民法第７５０条より７５２条に至るに同じ

第９１０条 若し死者に子孫兄弟姉妹、その兄弟姉妹の卑属親、父母及び父方母方の尊属親亡き時は傍系の親その財産を相続すべし

傍系の親中最近の階級の者は他の傍系の者を除去して財産相続を為し又同級中に数人の傍系親ある時はその人数に循ひ平等に分派して財産相続を為すべし

○第３章　不規則の財産相続

第９１１条 若し死者に尊属親、卑属親その他嫡出の血属親なきにおいては法律上左に記する法律と順序とに循ひ後に生存する配偶者私生の子若しくは政府にて財産相続を為すべし

第９１２条 母より法に適して認められたる私生の子はその母に嫡出の子及び卑属親なき時においてその母の財産相続を為すことを得べしその母の父母及びその他の尊属親又は嫡出の傍系の親はその財産を相続すること能はず

私生の子の母に嫡出の子又は卑属親ある場合においてその私生の子の権利は父たる事及び子たる事の巻に記したる規則によって確定したる僅少の養料に減却すべし

第９１３条 私生の子その父より法に適して認められたる時その父に卑属親、尊属親、傍系の親又は後に生存する婦なき時はその父の財産を相続し政府はこれを相続すること能はず

すべてその場合において私生の子はの父又はその財産相続人に対し養料を訴求するの権のみを有すべしただしその財産相続人より私生の子に給付すべき養料は父たる事及び子たる事の巻に規定したる価格たるべし フランス民法第７５６条差異

第９１４条 フランス民法第７６２条に同じ

第９１５条 フランス民法第７５６条末項に同じ

第９１６条 フランス民法第７６５条に同じ

第９１７条 私生の子の父母既に死去して私生の子もまた死去したる時はその私生の子の兄弟姉妹又は卑属親に財産相続を為さしむべし フランス民法第７６６条

第９１８条 死去したる夫に卑属親、尊属親又嫡出の血属親なしと雖も夫婦別居又は財産分派を為さざる婦ある時はその婦その夫の財産を相続しその夫の子又は法に適して認められたる私生の子は財産相続を為すこと能はず

又これに反し死去したる婦に卑属親、尊属親又血属親なしと雖も夫婦別居又は財産分派為さざる夫の生存するにおいてはその夫は婦より法に適して認められたる私生の子なき時に非ざればその婦の財産相続を為すこと能はず

第９１９条 前の数条に記載したる場合において財産相続を為すべき私生の子はその財産相続を開始すべき場所の裁判言渡によりその」相続すべき財産の保有権を得べし フランス民法第７２４条

第９２０条 嫡出の子又は卑属親なくして死去したる母の財産相続に付き私生の子の保有権を得べき裁判言渡はその私生の子なきにおいては財産相続を為し得べき血属親と私生の子の本州中に現在する時はその私生の子又は名代人との面前において為し又その私生の子の本州不在の時は裁判官より任せられたる弁護者の面前において為すべき者とす

第９２１条 父より認められたる私生の子その父の財産を相続すべき権あることを申述しもってその財産の保有権を得んと求むる裁判言渡は裁判官より法に適して允許を得たる公証人の善良にしてかつ誠実なる目録を記せし後及び私生の子の保証を為せし後に非ざれば為すべからず

第９２２条 父より相続すべき財産の保有権を得たる私生の子の出すべき保証金の高は財産の目録に記したる総高の３分の２たるべし

第９２３条 フランス民法第７６８条に同じ

第９２４条 後に生存する配偶者にして前の数条に記載したる場合において財産相続を為すべき者はその相続すべき財産に封印しかつその財産相続を開始すべき場所の裁判官よりその財産の保有権を得べき裁判言渡を受くるを要とすただしその裁判言渡は裁判官より法に適して允許を得たる公証人の善良にしてかつ誠実なる目録を記せし後次条に規定したるか如くその配偶者の善良及びひ完全なる保証を為したる後その死去したる配偶者の財産相続人たる者の不在の時その者のために任せられたる弁護者の面前において為すべき者とす フランス民法第７６９条

第９２５条 後に生存する配偶者にして既に死去したる配偶者の財産の保有権を得たる者の出すべき保証金はその財産の全額に平均するを要とすこれ畢竟その財産を保有せし日より３年の間に財産相続人たることを申出てたる者有る場合においてその財産の返還を安全にせんか為なりただし３年を経過せし後はその保証を為すの義務を免かるべし

第９２６条 後に生存する配偶者又は父の財産に付き保有権を得たる私生の子の保証金を出し置くべき３年の時間はその配偶者又は私生の子は裁判所の許可を得るに非ざればその財産を他人に渡すことを得ず

第９２７条 フランス民法第７７２条に同じただし「又は土地の官署を除く」

○ 第４章 財産相続を開始する方法

第９２８条 遺嘱又は嫡出の財産相続は人の死去と法律上に規定したる場合において失踪の後死去の思料とによって開始すべし フランス民法第７１８条

第９２９条 死者の財産相続を開始すべき場所は左に記列す

死者の本州中において住所を有し又は確定の寄留所を有せし時はその居住せし「パロウス」管内

本州中において死者の住所又は寄留所なきにおいては不動産を有せし「パロウス」管内若し又その死者数多の「パロウス」に財産を有する時はその財産の目録に循ひ重なる不動産ありと認むる「パロウス」管内

確定の寄留所を有せず又は常在の地を定め難き財産を有し本州において死去せし時はその死去せし「パロウス」管内 フランス民法第１１０条

第９３０条より第９３３条に至る フランス民法第７２０条より７２２条に至るに同じ

第９３４条 法律上財産相続を為すべき嫡出の財産相続人はその財産相続を為せし時更にこれを言ふ時は死者の時即ち財産相続を開始せし時より財産相続の権を得たる者とす

前項の規則は遺嘱の財産相続人及び財産の全部に付いて遺嘱を受けたる者に適用し特別の遺嘱を受けたる者に適用すべからず フランス民法第８８３条

第９３５条 財産相続人はその財産の保有権を得又は財産相続を承諾するの意を表する手続きを為す前と雖も単に法律の力によって前条に記載したる権利を得べし

第９３６条 財産相続を開始せし後財産相続人その財産相続を受けたりと認むべき時は死者の所有せし保有権は嘗て中止せしこと無き時に等しく又は財産を保有するの所為如何に管せず財産相続人たる者継続してこれを有すべし

第９３７条 死者の有せし財産の保有権をその財産相続人たる者継続して有するにおいてはその保有権に管する過失もまたその利益と共に財産相続人に転移すべくして所有者の変更有るも保有権の本義に付きその変更を及ぼすこと無し

第９３８条 死者の死去の時その死者の財産を相続せし者と認められたる財産相続人の得たる権利の第１の効と為すはその財産相続人未だその財産相続を承諾せず又は己れのために財産相続の開始せしことを知らざる時と雖も自己の財産相続人その相続を承諾せし時はその相続したる財産を自己の財産相続人に転移するを得べし

第９３９条 その権理の第２の効と為すはその財産相続人すべての訴訟又は財産保有の権に付ての訴訟たりとも死者の為すことを得べき権を有せし訴訟を直接に為し及び嘗て死者の為せし訴訟を履行することなりとす

第９４０条 財産相続を為すことを得べき財産相続人死者の死去せる時その相続の権を得ると雖も未だ財産相続を承諾し又は肯せざることを決せざるにおいてはその相続の権は不確定の者とす

若し財産相続人その相続を承諾するにおいては死者の死去せし時より相続せし者とみなし又若しその相続を肯せざるにおいては嘗て財産相続を請けしこと無き者とみなすべし

第９４１条 フランス民法第７７７条に同じ

第９４２条 すべて最近の階級の財産相続人その財産相続を肯せずしてその次に位する階級の血属親これを承諾するにおいてはこの血属親は死者の死去せし時より直接に権利と財産とを相続せし者とみなすべし

故に最近の血属親その財産相続を肯せざるにより財産相続人となるべき者若しその財産相続を承諾する前に死去するにおいては最近の階級の者として第１に死者の財産を相続せし者とみなしその財産相続人に相続の権を転移すべし

第９４３条 私生の子及び後に生存する配偶者はその相続すべき財産の保有権を得る裁判言渡を受けべき者たれば死者の死去せし時より財産相続を為せし者とみなすべからずただしその保有権を得んとする訴求を為す前に死去するにおいてはその財産相続人に相続の権を転移する者とす

○ 第５章 財産相続人たるの権なき事及び財産相続人たるの禁を受けたる事

第９４４条 財産相続人たるの権なき事とは財産相続を開始する時その相続を為すに付き必要なる身分のなきことを謂ふ財産相続を開始する時この身分を有せざる者は財産相続人たることを得ず

故に遺嘱なき財産相続又は法律の効によって行ふべき財産相続を為さんとする財産相続人のその権有ると否とはその財産相続を開始する時に注意すべき者とす

第９４５条 自由の人は勿論幼者、無感覚者の他これら等の者に類似の者もまた無遺嘱の財産相続或いはその他の財産相続を為すことを得べし

財産相続の如何なる種類たるを問はず奴隷たる者は財産相続を為すの権無し

第９４６条 財産相続を為すの権無きことは思料をもって定むること能はざる者たり故に財産相続を為すの権なきことを申立る者はその証を立るを要とす

第９４７条 フランス民法第７４５条第１項に同じ

第９４８条 母の胎内に在る子の利益を得るべきことに付いては既にその子の生れたる者とみなすべき者たればその子は懐胎後に開始したる財産相続を為すことを得べしただし生るる時財産相続を為し得べき権有るを要とす

然れども懐胎後の婚姻によって嫡出の子となりたる子はその父母の婚姻の公告後に開始したる財産相続に非ざればこれを受くること能はず

第９４９条 懐胎中の子を既に生れたる子とみなすは全くその子の出生を希望する者たればその子の生存して生るるを必要とす

第９５０条 仮令無理に母の胎内より出したる子の暫くして死去すると雖もその生存せしことの確然たるにおいては懐胎後その子のために開始したる財産相続と共にその子の財産を他人に転移することを得べし

第９５１条 故に財産相続の権を子に附与するに付きその証を立つべき２箇の条件あり即ちその１はその子財産相続開始の時懐胎する事その２は生存して生れたる事これなり

第９５２条 結婚の間に子の懐胎したるや否とその子の懐胎後に死去したる夫の財産をその子の相続し得べき否とを知るには父たる事及び子たる事の巻において嫡出の子のために設けたる規則によって確定すべ

第９５３条 法律により婚姻の日より起算し１８０日前に生れたる子の嫡出なることに付き夫より異義を唱ふること能はざるすべての場合においてはその子の相続とその子の相続したる財産とを相続するの権有りその財産を相続するの方法は法に適してその子を嫡出の子と認めたる時に等しき者とす

第９５４条 夫の死去の時より２ヶ月以内に再婚しその再婚の後５ヶ月以内に子を生みその子の生存して生れたるにおいてはその子は前婚によって生れたる者と為し前夫の財産を相続せしむることを得べし

第９５５条 生存して生れたる子の前婚又は再婚によって生れたるや否を知るに必要なる月数を算するには１ヶ月を３０日としかつその子の利益となるべき時は起算の日を１日とみなすべし

第９５６条 財産相続を為すの権無きことを申立る者よりその証を立るを通例と為すと雖もまた死去したる子に代てその相続の権を得んと求むる者は後に生存する者なるによりその子は財産相続開始の時懐胎せしことを生存して生れたることとを証すべし

第９５７条 出生の時その子の生存し居りたることを確証するに必要なる証 を得るに付いてはその子の肢足を動かしたるによるに非ずしてその子の呼吸、発声又はその他生存せしことを証すべき徴候により生存して生れたる者と定むべし

第９５８条 財産相続を為すの禁を受けたる者とは人に対し或義務を欠きたるによりその人の信用を失ひこれによって財産相続の権を奪はれたる者を謂ふ

第９５９条 財産相続を為すの禁を受けたる者と財産相続を為すの権無き者とは差異有る者にして即ち財産相続を為すの権無き者は嘗て財産相続人たりしこと無きも財産相続を為すの禁を受けたる者は法律上財産相続を為すに付き必要なる他の身分を有せしにおいては嘗て財産相続人たりしこと有るべければなり○故に財産相続を為すの禁を受けたる者はその禁を受くべき原由有るにより財産相続の権無き者と為す裁判言渡によってその権を剥奪せられたるもその権を剥奪せらるる迄はこれを掌握したる者とす

第９６０条 フランス民法第７２７条増補○死者を死刑に処すべき讒訴を上告したる者は処刑を受けたる後一旦その死者より恩恵を り又は赦免を得んと雖も財産相続を為すの禁を免かるること能はず

第９６１条 財産相続を為すの禁は決して当然に受くべき者に非ず故に財産相続を為すこと能はざる原由有るにより訴へられたる財産相続人又は法に適して財産相続を為せし後その訴へを受けたる財産相続人の面前において裁判所よりその言渡を為すべき者とす

第９６２条及び９６３条 フランス民法第７２８条及び第７２９条に同じ

第９６４条 財産相続人たる者はその相続の権を終身剥奪するの裁判言渡有る迄法に適して財産を保有すべき者なればその相続せし財産に付いての売買の契約は有効の者とすただしその財産の買主に詐譌してその売買の契約を為さざるを要とす

又仮令財産相続の禁を為すべき原由有るによりその相続の権を剥奪せんとする訴訟を受けし後に売買の契約を為すと雖も買主のその訴訟有るを熟知せさるにおいてはその契約は有効の者とす

然れどもすべてこの場合において財産相続の権を剥奪されたる財産相続人は売買の代価と訴訟を受けたる日より計算したる利息とを償ふべき裁判言渡を受くべくしてその財産相続の権を剥奪すべき裁判言渡有りたる後最初の財産相続人に代て相続せし血属親は財産の買主より償ふべき売買の代価の残額を要求しかつ請取るの権有り

第９６５条 財産相続を為すの禁を受くべき原由有るによりその相続の権を剥奪せられたる財産相続人の詐譌なくして為したる書入質に付いてもまた前条に同じ

第９６６条 財産相続人に対しその相続の権を剥奪すべき裁判言渡有る時はその財産相続人より嘗て財産を相続せしめたる者に対して行ふべき者即ち一時権利と義務と混同したるにより消滅せし権利と訴訟権とを再び生すべし

前項の財産相続人その財産相続に付いての義務を行ふたるにおいてはその義務の弁償を受くべし

第９６７条 フランス民法第７３０条に同じ

第９６８条 財産相続を為すの権無き事及びその禁を受くべき事の原由有るにより財産相続より除去すべき訴訟は財産相続を為すの禁を受くべき者無き時財産相続を為すことを得べき血属親又はその禁を受くべき者と共に財産相続人となるべき血属親より為すべき者とす

第９６９条 財産相続の禁を為すべき訴訟は取消難き者とすただし苛虐を受けし者より和解を為し又は赦免を為したる時は格別なりとす

○第４章　財産相続を承諾し及び肯せざる方法

○第１款 財産相続を肯せざる事

第９７０条 フランス民法第７７５条に同じ

第９７１条 すべて本巻に記載するの所の財産相続を承諾する事弁に肯せざる事或いは分派若くは返還する事及び義務を弁償する事に管する規則は遺嘱の財産相続と無遺嘱の財産相続とに適用することを得べし

第９７２条 財産相続を承諾するにはその相続を為さしむる者の死去する時財産相続の開始したるを必要とす

第９７３条 財産相続の与へらるる前にこれを承諾するを得ず

第９７４条 財産相続の承諾を適法の者と為すにはその財産相続を与へられたるのみをもって充分なりとせず即ち財産相続の確然たる方法をもってその財産相続の開始し又は与へられたるを知るを必要とす

第９７５条 若し無遺嘱の財産相続人遺嘱の証書無き心意をもって財産相続を承諾せし後その存在不分明なりし遺嘱の証書を発見するにおいてはその承諾は無効たるべし

第９７６条 財産相続を承諾せし者は如何なる名義をもってその財産相続を得たるやを知るを要とす故に若し遺嘱の財産相続人無遺嘱の財産相続人に等しき承諾を為すにおいてはその証書は無効たるべし

第９７７条 財産相続の承諾を適法の者と為すには財産相続人その財産相続の開始したることと己れに財産相続を為すべきことを知るをもって足れりとす財産相続人は如何なる財産の部分を得たるかを知るを必要なりとせず

第９７８条 財産相続人その財産相続を開始し又は相続を与へられたる前にこれを承諾し又は肯せざることを申述すると雖も全く無効にして又これらの事は財産相続の権の開始せし時その相続を法に適して承諾し又は肯せざることの障害となること無し

第９７９条 未必の条件に管する遺嘱の財産相続人はその未必の条件の未だ成就せざる時又はその条件の発生したる事を知る前に財産相続を承諾し又は肯せざることを得ず

己れのために遺嘱の財産相続有ることを知らさる時もまた然り

第９８０条 全部の財産相続を承諾すべき権利を有する者はその承諾を分ちもって財産の一部を相続すべき承諾を為すを得ず

第９８１条及び第９８２条 フランス民法第７７７条及び第７７８条に同じ

第９８３条 前条に記したる証書なる語は財産相続人として義務を行ひ又は契約を結ぶの必意をもって記したる証書の謂にして敢て尋常の書面端書及び財産相続を為すべき者の死者の相続人たることを口上にて申述するの謂に非ず

第９８４条 前条に記したる必意は財産相続に付き黙許の承諾を表するためその所為と一致し又はその所為によって証せらるるを要とす

第９８５条 財産相続を為すことを得べき者その財産相続に属することを知らざる物件を随意に為すにおいてはこの所為はその相続を承諾せし必意を表せざるをもって財産相続人たるの所為と為すべからず

第９８６条 前条に反し仮令実際財産相続に管せざる所為なりと雖も財産相続を承諾するの必意たるを明白なること有り

第９８７条 又財産相続人たることの必意を真に想像せしむべき所為及び時の形況に循ひ種々に解釈すべき所為有り

第９８８条 財産相続を為すべき者財産相続人たるの身分を有するに非ざれば記すること能はざる所の所有権に管する証書を記する時は実際その財産相続を承諾せしことを想像せしむるに足るべし

然れども次条に記するが如き所有権に付き物件を保全するに必要なる証書を記すべき時は例外なりとす

第９８９条 財産相続を為すべき者その相続すべき財産を随意に為す時は財産相続人たるの名義に非ざれば他の名義をもって証書を記すること能はず

第９９０条 時の形況により種々に解釈すべき証書に付いては所有権の証書と財産を支配するの証書にこれを保含するの証書及び財産相続の権を示すべき所の財産相続の準備に管する証書とに区別するを要とす

前項に記する証書を記したる期限によってもまた財産相続人たるの必意有ると否やとを知るに足るべし

第９９１条 フランス民法第７７９条に同じ

第９９２条 財産相続を為すべき者全くその財産相続に付いて必要又は有益なる或所為を為さざるを得ざる時においては公証人の面前において又は訴訟に管する時は初審裁判所の取調の時に申述べたる財産相続を肯せざることをもって財産相続に反対の必意を表することを得べし

第９９３条 財産相続に付き僅少なる効を生ずるもその者をもって取消すべからざる財産相続人と為すに足れりとす>第９９４条 財産相続を為すべき者財産相続人たるべき身分をもって死者の負債のため裁判所より呼出を受けたる時において相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を得たること　に財産相続を肯せざることを申述すること無くしてその裁判所言渡を受くるにおいては財産相続人たるの所為を為せし者とみなすべし

第９９５条 或人その血属親に対し憐憫又は仁慈の所為をなすにおいては財産相続人たるの所為を行ふたる者とみなすべからず故に仮令故障を述べずしてその血属親の埋葬の管照を為し又は葬式の入費を出すと雖も財産相続人とみなすべからず

第９９６条及び第９９７条 フランス民法第７８０条に同じ

第９９８条及び９９９条 フランス民法第７７６条に同じ

第１０００条 若し婦の財産相続を承諾せざる時その夫結婚間に享有する入額を増加するためその財産相続を承諾するに付き利益有りと認むるにおいてはその婦の肯せざる時と雖もその財産相続を承諾すべくして損害は己れに負担すべき者とす

第１００１条 フランス民法第７８１条に同じ

第１００２条 若し財産相続を為すべき同階級の者数人有るにおいてはその一方の者は尋常に財産相続を承諾し他の一方の者はその相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権をもって財産相続を承諾することを得べし フランス民法第１８２条

第１００３条 フランス民法第７８３条に同じただしフランス民法の「ただしその者」云々以下除く

第１００４条 財産相続を承諾せし者善良にしてかつ誠実なる目録を記せし後その財産の保有権を得たる時は死者の権利者及び死者より遺嘱を受けし者にその相続したる財産を委棄しかつその財産の誠実なる計算とその財産に付き己れに得たる利益又は入額を返還するにおいては財産相続に管する負債を弁償するの義務を免れるべし

然れども前項に手続を為すの利益を得るには財産相続を承諾せし者その相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を得る場合のため規定したる法式によってその相続したる動産又は不動産を随意に為せしことを必要とす

その他本条第１項の如き手続を為すにはその財産相続人終審の裁判言渡により尋常の財産相続人たる言渡を受けたること無く又はその財産相続人をして財産相続人たるの身分を受けしむるため死者の権利者より訴訟を受けたる時その財産相続を承諾せしこと無きを要とす

第１００５条 尋常の財産相続を承諾せし者と雖もその財産相続を開始せし「パロウス」中に現在し又は名代人を出したる権利者中の過半数の請求によっては財産の目録を記しかつ相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権をもって財産相続を承諾する場合に等しき方法をもって保証を出さざるを得ず

第１００６条 尋常の財産相続を承諾するの効と為すはその承諾を為せし者丁年に達したる時は財産相続によって得たる財産と己れの固有の財産とをもってその財産相続に管する負債を弁償すべき義務を行はざるを得ざるに在りただし財産相続人たるの所為を為す前にその相続すべき財産に付き善良にしてかつ誠実なる目録を記したる時は格別なりと

○ 第２款　財産相続を肯せざる事

第１００７条 財産相続を為すことを得べき者当然にその財産を掌握するにおいてはその財産相続を放棄しもって財産相続人たるの身分を失ふべき必意を表せざる間は財産相続人とみなすべし

第１００８条 何人に限らず前款に設けたる規則に循ひ法に適して財産相続を承諾し得べき場合に非ざればこれを肯せざることを得ず フランス民法第７８０条

第１００９条 何人に限らず未必の条件によって財産相続を承諾し又は肯せざることを得ず

第１０１０条 財産相続を肯せざることは思料をもって為すことを必ず証人２人の面前において公証人の記したる証書により明許の方法をもってこれを為すべし フランス民法第７８４条

第１０１１条 財産相続を附与されたる者のこれを肯せざることを得べきはその相続したる財産を他人の転移することを得べき権有るを要とす故に幼者は裁判所の允許及びその後見人又は管財人の允許を得るに非ざれば法に適して財産相続を肯せざることを得ず

治産の禁を受けたる者に付いてもまた同じ

第１０１２条 夫の支配を受くべき婦はその夫より法に適して允許を受け又その夫允許を為すを拒む時は裁判所より允許を受くるに非ざれば己れの得たる財産相続を肯せざることを得ず

第１０１３条 財産相続を承諾し又は肯せざることを得べき権有る者は自分又は名代人にてその財産相続を承諾し又は肯せざることを得ただしその名代人はこれがため特別に任ぜられたるを要とす

第１０１４条 フランス民法第７８５条増補○若し権利者に義務を行ひたる後なお財産相続人無き時はその財産相続の権は嘗てこれを肯せざりし者と同階級の者に属し若し同階級の者無き時はその肯せざりし者の次に位する階級の者に属すべし

又前項に反しその財産相続人一時その財産相続を承諾することを拒むと雖も全くこれを肯せざるに非ざる時は財産相続を承諾するの権利の期満得免とならざる間はその財産相続人その財産相続を承諾しもってその財産を得んと求むることを得べし

第１０１５条 フランス民法第７８６条増補○財産相続を為すべき者のその財産相続を肯せざる者の受くべき財産の部分を併すの権は嫡出の財産相続又は無遺嘱の財産相続に付てのみ生ずべし遺嘱の財産相続に付いては遺嘱の財産に管する時又は或場合に非ざればその権を行ふこと能はず

第１０１６条 前条件の如き財産を併すの権はこの権によって利益を得べき者の心意如何に管せず当然に得べき者とす

第１０１７条 財産を併すべき者は始め己れの得たる財産のみを受けその財産相続を肯せざる者の財産の部分を受くることを拒むを得ずこれ畢竟財産の全部に付きその相続を承諾し又は肯せざることを必要と為すによるなり

第１０１８条 既に財産相続を承諾せし者その承諾を取消さんとする場合の如きは前条に記載する規則の例外とす何となれば斯の如き場合においてはその共に財産相続を為すべき者は財産相続を肯せざりし者の部分を受くることを拒みその部分を権利者に委棄しもってその財産相続に管する負債の弁償を免かるることを得ればなり

第１０１９条 財産を併すことは財産相続を承諾せし者又はその承諾を為し得べき者の利益のために為すへき者たれば嘗て財産相続を肯せざりし者は己れの後にその相続を肯せざりし者の財産の部分に付き異議を唱ふるを得ず

第１０２０条 財産相続人中の１人その相続を肯せざるによりその主無き財産の部分を得べきそ他の財産相続人は各々その相続せし財産の高に準じてその主無き財産を分派すべし

第１０２１条 その分派は財産相続の分派に等しき方法により本人又は名代人をもって為すべし

第１０２２条 フランス民法第７９２条に同じ

第１０２３条 フランス民法第７８９条に同じ

第１０２４条 フランス民法第７９０条増補○又財産相続を肯せざることの期満得免とならざる間は財産相続人は常にその相続を肯せざることを申述することを得べしただし財産相続人たるの所為を為せし時は格別なりとす

○ 第３款　相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権及び財産相続を決議する期限

第１０２５条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権とは次条に規定する時間と方法とに循ひ財産の目録を記しその相続すべき財産の価格に至る迄の外財産相続に管する担荷と義務とを行はざることに付て得たる特権を謂ふ フランス民法第７９４条

第１０２６条 財産相続を決議するの期限とはその相続する財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人その己れに与へられたる財産相続を承諾すると肯せざるとに付き何れに便益有るやを慮るために得たる時間を謂ふ

第１０２７条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権とその財産相続を決議する期限とを享有せんと欲する者は財産相続を為さしむべき者の死去を知りし時直ちに財産相続人たるの所為を行はざる前に初審裁判官又は治安裁判官に依頼してその相続すべき財産に封印すべし

第１０２８条 その財産に封印せし日より１０日以内に財産相続人はその財産相続を開始すべき場合の裁判官に封印を開きかつ相続すべき財産の目録を善良にしてかつ誠実に記せんことを請求するの願書を差出すべし

第１０２９条 本州中において財産相続を開始すべき場合にして最親の財産相続人の本州中に現在し又は名代人を出したる者その財産に封印し及びその財産の目録を記する手続を為さざる場合においては死者の権利者は財産相続を開始せし日より１０日間を経過せし後その財産相続人をしてその相続を承諾し又は肯せざることを申述せしむるため財産相続を開始せし場合の裁判官をしてその相続人を呼出さしむるの権有り

第１０３０条 若し裁判所に呼出されたる財産相続人その財産相続を承諾することを申述し又は決答を為さず又は裁判所に出席せさるにおいては尋常の財産相続人に等しくその財産相続を承諾せし者とみなし権利者より義務の訴求を受くべし

第１０３１条 若し前条に反し裁判所に呼出されたる財産相続人その相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権をもって財産を相続しかつその財産相続を評議するため猶予の期限を得んと求むるにおいては裁判官はその猶予の期限を与へかつその者１箇の身上及び財産相続人たるの身分をもって受けたる訴訟は中止すべきことを命令すべし　フランス民法第７９８条

第１０３２条 財産相続人の直接に又は財産相続に付いての権利者の訴訟により財産相続の評議を為すために猶予の期限を得んと求むる時は裁判官は財産相続人をしてその相続すべき財産を指示せしめかつ法に適して允許したる公証人をしてその財産相続人及び証人２人の面前において目録を記せしむべし

第１０３３条 相続すべき財産数多の「パロワス」に在る時はその財産相続を開始する場合の裁判官はその数多の「パロワス」の裁判官に委任してその各自の管轄内に在る財産の目録を記せしむべし

第１０３４条 相続すべき財産の目録を記し終りたるにおいてはこの財産相続を開始する場合の裁判官は財産を管理すべき支配人を任しその財産の管理を安全ならしむるためその支配人をして善良にしてかつ充分なる保証又は書入質を為さしむべし

第１０３５条 財産の質に任ずるは第１に相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人を選任すべし

第１０３６条 若し相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する丁年の財産相続人をしてかつ本州中に現在する者２人又は数人有る時は裁判官はその中より最も堅個なる者を選択して財産を支配せしむべし

第１０３７条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人すべて幼者なるにおいてはその後見人又は管財人財産の支配を為さんと求むることを得べしと雖もその支配を為すべき許可を受くるにおいてはその支配に管する所為に付いては１人にてその責に任じかつその後見人又は管財人の幼者の父母たると否とを問はず前条に記したる保証を為すべきの義務有り

第１０３８条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人不在なるにより本州中にその名代人を置く時はその名代人その名代を己れに任じたる者の名義をもってすべて財産相続に管する権利者を退けて財産を支配せんと求むることを得べしただしその名代人は１部の財産相続を承諾し又は肯せざるためには総理の委任状を有するを要とす

第１０３９条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人若しくはその名代人又は財産の支配を監視し又は財産の支配を承諾し又は財産の支配を為すに必要なる保証を為すべき後見人若しくは管財人無き時は裁判官は財産相続の権利者中最初にその財産を支配せんと求めたる者の中より１人又は２人を選んで財産の支配人に任ずべし

第１０４０条 数人の財産相続人有りてその中の数人は尋常に財産相続を承諾しその他の数人は財産相続を評議するため猶予の期限を得んと求むるにおいてはその財産相続を開始すべき場合の裁判官は財産相続の目録を記しその財産相続人の問に財産を分派する迄財産を管理する支配人を任すべし

第１０４１条 すべて前条によって任ぜられたる支配人の出すべき保証金は動産及び不動産の実価と無価物を除くの外すべて財産の目録に包含したる権利の高とに４分の１を加へたる価格たるべし

第１０４２条 財産の支配人に任ぜられたる者は財産相続人の虧缺したる時の財産の管財人と同視すべしただし左の次条に設けたる変更有る時は格別なりとす

第１０４３条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人にその財産相続を評議するため与ふべき猶予の期限は数多の目録有る時においては最後の目録を記し終りたる日より起算して３０日間たるべし フランス民法第７９５条差異

第１０４４条 財産の支配人は前条の期限間には減尽すべき物件又は動産又は義務の弁償に必要なる物件に非ざれば他人に譲渡すことを得ずただしこれらの物件を譲渡すにもまた裁判所よりその許可を得るを必要とす

第１０４５条 フランス民法第７９７条に同じ

第１０４６条 然れども死者の権利者は財産相続の支配人に対して訴訟権を行ふことを得べし

第１０４７条 フランス民法第８０２条に同じ

第１０４８条 財産相続を評議すべき期限の経過する時は権利者及び遺嘱の贈遺を受けたる者は財産相続人をしてその財産相続を承諾し又は肯せざるかを説明せしむることを得べき者たれば財産相続を開始すべき場合の裁判官にその説明を為さしむべき願書を差出すべし

然る時はその裁判官相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人を呼出して決答を為さしむべき者とす

第１０４９条 若し前条の願書を差出したる後その相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人尋常にその財産相続を承諾する旨を申述するにおいてはすべてその相続すべき財産を交附せらるべしただしその財産相続人はその相続すべき財産と自己の財産とをもって負債の責に任じ又死者の権利者はその財産相続人に対する訴訟の裁判言渡を得べし

第１０５０条 前条の願書を差出したる時財産相続人裁判所に出頭せさる場合においてはその財産相続人をもって尋常の財産相続人とみなしその尋常の財産相続人に等しき義務を負はしむべし

第１０５１条 若し財産相続人その相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償ははざる特権をもって財産相続を承諾したる時は財産の支配人はすべて財産を売却しその相続すべき財産の高を定むべし支配人はその財産相続人に引渡すべき高と義務の弁償に必要なる高とを引去りし後の過剰の高を己れに収取することを得べし

第１０５２条 又前条に記したる財産相続人その財産相続を肯せざるにおいてはその財産相続に管する対人権を保有しかつその財産相続を肯せざる前に財産の支配人に任ぜられたる時は継続してその財産を支配すべし

第１０５３条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人その相続を肯せずして他に相続人無き時若し他の財産相続を為し得べき者その相続を承諾せんと欲する時は即ち財産相続人となる允許を得べし又この者は相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人のその相続を肯定せざる時においてなおその財産相続を評議すべき猶予の期限の余日有るにおいてはこの期限を享有するの権利有り然れども若しその期限の経過したるにおいては更にこれを得んと求むることを得ず又左に記するが如くその財産相続を承諾し又は肯せざることを明白に申述するの義務有り

第１０５４条 フランス民法第８０１条に同じ

第１０５５条 相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権を有する財産相続人善良の法式によってその財産相続を肯せざる時他の財産相続人のこれを承諾せんと欲する者無く又はこれらの者有るもその財産相続を肯せざる時は財産の支配人は裁判官の許可を得た後不動産及びその他の財産を売却すべし

第１０５６条 財産の支配人はその財産を売却せし後己れを支配人に任じたる裁判官にその財産の計算を為しもってその計算の確実なることを証すべしただしこの支配人は仮令負債を償ひ又は遺嘱の贈遺を為すに充分なる財産有りと雖も別段裁判官より許可を得るに非ざればこれらのことを為すを得ず

若し負債を償ふに充分なる財産有る時は財産の支配人は負債弁償の表を作りこの表には遺嘱の贈遺より負債を先きに記すべし又若しその財産負債を償ふに不充分なる時は権利者の先取特権及び書入質の権の順序とその権とに循ひ財産を分配して負債を償ふべき表を記すべし

第１０５７条 財産の支配人よりその財産を分配して負債を償はんとする願を為す時は裁判官は財産相続に管する権利者及び遺嘱の贈遺を受けたる者にその願に付き１０日間に各自の意見を述ふべき旨を報道すべきことをその支配人に命令すべし若しその権利者及び遺嘱の贈遺を受けたる者その意見を述ふべき理由を有せざる時においてもまたこれらの者に支配人より願出たる財産分派の許可又はその支配人より差出したる財産分派の表に準じて負債の弁償を受ること能はざる所為を報道すべきことを支配人に命令すべし

第１０５８条 前条の報道を為せし後１０日間を経て若し権利者及び遺嘱を受けたる者より毫も故障を述へざるにおいては財産の支配人は財産を分配して負債を償ふに付いて得たる許可又は己れより裁判官に差出して検証を得たる分配の表に準じて負債を弁償すべし

第１０５９条 若し前条に反し負債の弁償又は財産分派の表に対して故障を述ふる者有る時は裁判官これを簡略に裁定すべし

第１０６０条 又若し負債を弁償せし後これ迄権利者たることを遅延して申述せざりし新なる権利者の現出するに方り財産相続人の手にその負債を償ふに充分なる財産無き時はその新たなる権利者遺嘱の贈遺を受けたる者をしてその嘗て受取りたる贈遺物の全部又は己れに弁償を受くべき負債の元資息銀及び入費の総計に充分なる高に至る迄その贈遺物を返還せしむることを得

第１０６１ 新なる権利者に負債を償ふべき充分の贈遺物無き時はその新なる権利者は負債を償ふべき命令即ち裁判言渡有りたる日より起算して３年間先取特権又は書入質の権を有する権利者を除くの外私の証書を有する他の権利者に対して財産取戻の訴を為すことを得べし

第１０６２条 財産の支配人は財産の計算を為す時無価物を除くの外己れの支配に属する財産の目録の高に応して２分半の口銭を得べし

若し支配人２人有る時はその口銭を平等に分派すべし

第１０６３条 フランス民法第８１０条に同じ

第１０６４条 義務者が承諾することを拒む所の財産相続又は権利者の権利を害するため肯せざる所の財産相続を為すの許可を得んと欲する権利者は預じめ義務者又はその名代人又はその義務者の不在なるにより裁判官より任ぜられたる弁護者を裁判所に呼出したる後財産相続を為すに必要なる許可を得べき願を財産相続を開始すべき場所の裁判官に差出すべし

第１０６５条 若しこの願により裁判官義務者のその財産相続を承諾することを拒み又は権利者の権利を害してその財産相続を肯せざるの証を得る時はその権利者に義務者に代て財産相続を為すべき許可を為し又財産の目録を記しかつ財産相続に管する負債を償はしむるためその財産相続の支配人を任ずべしただしこの支配人は保証金を出すべき者とす

第１０６６条 財産の支配人は負債及び財産相続に管する入費を弁償せし後その過剰を財産相続人に返還すべし

第１０６７条 義務者の名義をもって財産相続を承諾する権利者は相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権をもって財産相続を為したる者とみなすべし

○第７章　財産相続人の虧缺したる財産又は財産相続人の不在にして名代人を出さざる財産を封印し又は支配する事

○第１款　財産に封印し又はその封印を除去する事

第１０６８より第１０８７条に至る

○ 第２款 財産相続人の虧缺したる財産及び遺嘱の証書無き財産を支配する事

○第１節 総則

第１０８８条 財産相続人の虧缺したる財産相続とは財産相続人たらんと求む者無く又は財産相続人の不分明なる時又は分明なるもその相続を肯せざる時の財産相続を謂ふ

第１０８９条 遺嘱無き財産相続とは或人の遺嘱の証書を記すること無く遺し置きたる財産相続又は証書を記せし後その証書を取消し又はその証書の不規則なるにより取消したる時の財産相続を謂ふ

第１０９０条 財産相続人の虧缺したる財産はこの財産の管財人たる名義をもって裁判官より任ぜられたる支配人これを管理すべき者とす

第１０９１条 遺嘱無き財産の諸相続人又はその中の数人不在にしてかつ本州中に名代人無き時は（財産相続人の幼者なる時は格別なるとす）不在の財産相続人の管財人たる名義をもって裁判官より任ぜられたる支配人その遺嘱無き財産を管理す

第１０９２条 然れどもその不在の財産相続人幼者にしてかつ管財人無き時は幼者の後見人その財産を管理す

○第２節　財産相続人の虧缺したる財産又は遺嘱無き財産にして人をもって支配すべき財産の目録を記する事

第１０９３条より第１０９５に至る 財産相続を開始したる時より１０日間を経て後財産相続を為さんと求むる者無く又は財産相続人の不在なる時は裁判官は財産の目録を記すべき手続を為しかつその財産の支配人を任ずべし

第１０９６条より第１１０４条に至る

○第３節　財産相続に付いての管財人を任ずる事

第１１０５条より第１１２５条に至る 財産相続人の虧缺したる財産又は財産相続人の不在なる財産に付いての管財人は裁判官預じめ新聞紙に広告せし後選任せられんと欲する者の求めによってこれを選任ずべし

○第４節　管財人の職務及び権力

第１１２６条より第１１４８条に至る すべて管財人はその選任せられたる日より１０日間に財産相続に管する権利者をしてその証書を差出さしむるためその権利者に己れの管財人に任ぜられたることを公告すべし

その後は共通の財産を分派すべき手続を為すべし

死者の入社したる会社商業の会社たるにおいては後に生存する社員この会社に管する利益の計算を担任せんと求むるの権有り然れどもこの社員は死者の管財人にその管財せし財産の計算を為すべし

商業上の会社たらざるにおいては財産を現物にて分派し又はこれを糶売して分派すべし

管財人は財産相続に管する財産を糶売する時入札するを得ず

管財人は己れの管理する金額の息銀を返還するに及ばず又管財人は財産の管理に付いての簿冊にして裁判官の姓名を手署しその下に横線を記したる簿冊を保有すべき者とす又裁判官は息銀を返還することの必要なりと認むる時の息銀の返還を命令するの権有り

○第５節　財産相続の管財人を免じ又は変更すべき原由

第１１４９条 管財人の或不正実の事を為し又は計算を為さず又は名代人を設けずして不在となり又は裁判官の求めに応じて計算書を記せざるにおいては管財を免ぜらるべし

第１１５０条より第１１５２条に至る 管財人その任命の日より３日間に保証金を出さず又は家賃分産を為し又は負債の弁償に付き権利者より猶予の期限を得たる時又は重大の過失を為せし時は管財を免せらるる者とす

○第６節　財産を売却する事及び管財人の管理せし財産の計算を為す事

第１１５３条より第１１５９条に至る 管財人はその任命の日より動産に付いては１０日以内不動産に付いては３０日以内にその動産不動産を売却せんと求むることを得これらの財産は失踪したる財産相続人の弁護者の面前において糶売すべし

第１１６０条より第１１６６条に至る 若し相続すべき負債を償ふに足らざる時は諸権利者を呼集して負債弁償の事を評議せしむべし財産を売却すべき条件に付いては書入質の権利者の意見をもって他の権利者の意見に優る者とすただしこの評議に付いては裁判官の検査を受くべし

第１１６７条より第１１７３条に至る 管財人は財産相続を開始せし後３ヶ月以内に己れの記したる目録即ち裁判官の検証を得たる目録に応じて負債を償ふべし又裁判官は目録に管して故障を述ふる者有ると否とを知るため公にこの目録を公告すべきことを管財人に命令すべし

義務の抵当となりたる権利にして即ち財産を計算する迄管財人の保有する権利及び証人２人の証明によって分明ならざる失踪者の権利またこの目録に記載すべし

第１１７４条より第１１７７条に至る 控訴の時為したる故障は争議に管せざる義務を弁償するの妨げとなること無し権利者たることを遅延して申述したる者は３年間財産取戻の訴を行ふことを得べし

第１１７８条 仮令相続すべき財産僅少なるも裁判官は財産の目録を記せしめかつ売却すべきことを命令し又管財人の為すが如く義務の弁償を為さしむべし

○第７節及び第８節 管財人の為すべき計算及び管財人の受くべき口銭又は管財人任を延期する事

第１１７９条より第１２０３条に至る 管財人の財産を管理すべき期限は１ヶ年とす管財人は裁判官にその管理したる財産の計算を為し又裁判言渡によって確定したる剰余の財産は国庫の会計官に交附すべし相続すべき財産の計算を為し終らざる時に非ざれば管財人のその職務を担当する期限を延すべからず口銭の名義をもって１００分の２分半を管財人に附与すべし

○第９節　失踪したる財産相続人の弁護者を任ずる事及びその弁護者の職務

第１２０４条より第１２１３条に至る 失踪したる財産相続人の弁護者はその財産相続を開始したる時裁判官これを任ずただし成るべく代官人中より選任ずる者とす

弁護者は諸証書を記し又管財人を任ずる前に急を要する訴訟を為すことに付き失踪したる財産相続人の名代を為すべき者とす弁護者は管財人のその任を終り又は財産相続人のその財産相続を為す迄己れの職務を担当すべし弁護者は己れの尽したる勤労に応じて報謝を受くるの権有り

○第３章　財産分派及びその財産の返還

○第１款　財産分派

○第１節　財産分派の本義及びその種類

第１２１４条 若し或人の死去せし時数人の財産相続人を残し置きたる時はこれらの財産相続人己れの得べき財産の部分に応じて分つべからざる財産の所有者たればその財産を分派する迄は財産相続人の間に財産共通を組織したる者とみなす

第１２１５条 フランス民法第８１５条第１項に同じ

第１２１６条 財産分派とは各財産相続人の受くべき財産の部分に応じて各財産相続人の間に財産を分配するを謂ふ

第１２１７条 財産分派に随意又は裁判上の者有り即ち左の如し

随意の財産分派とはすべて丁年にして現在する財産相続人の間に相互の承諾をもって財産を分派する者を謂ふ

裁判上の財産分派とは裁判所の権力によりかつ法律に規定したる法式を遵守して財産を分派する者を謂ふ

第１２１８条 又財産分派に確定又は仮の者有り即ち左の如し

確定の財産分派とは永続すべき者にして即ち取消すべからざる者を謂ふ

仮の財産分派とは更に他の財産を分つことを得べき時に至る迄又は取消し能はざる財産分派を為し得ざる身分の者の仮に或財産を分派する者を謂ふ

第１２１９条 又法律上の法式を遵守して為したる裁判上の財産分派は確定財産分派と為しこの法式を遵守せざるにより取消すことを得べき財産分派は仮の財産分派と為すべし

第１２２０条 何人に限らず相続すべき財産に付き分つべからざる契約を為すことを得ず又仮令この如き契約を為すもその効無き者とす

第１２２１条 フランス民法第８１５条第２項増補○然れどもこの契約は財産相続人の間に結びたる会社の契約とみなし即ち会社に等しき規則を適用すべし

第１２２２条 生存中の贈遺者又は遺嘱の贈遺者は２人又は数人に分たずして贈遺したる財産を分つことを禁ずるを得ず又仮令これを禁ずるも贈遺の証書に記せざる者とみなすべし

第１２２３条 生存中の贈遺者又は遺嘱の贈遺者は己れより人に贈与したる財産を或期限に達する迄又は未必の条件の発生する迄分つことを禁ずるを得べし

然れどもその贈遺を為し又は財産相続を開始せし日より起算してその期限５ヵ年を経過し又は５ヵ年間未必の条件の発生すること無くして裁判官この期限の経過したる時財産を分つべからざる事により財産相続人の間に粉議を生ずる原由となりたることを証明するにおいては財産分派を命ずることを得べし

第１２２４条 父又は他の尊属親遺嘱の証書によってその子又は孫の幼者たる時間財産を分つことを禁ずるにおいてはその子孫中の１人丁年に達し財産分派を請求する迄財産分派の禁止を遵守すべし

第１２２５条 若し死者の嘗て摘出の財産相続人又はその他の者のため財産分派を規定したる時は更に財産分派を為すに及ばず裁判官もこの財産相続に管しては死者の必意に随はざるを得ず

遺嘱の贈遺を為したる者財産の１部又は数部をその子に当然に与ふべきことを示したる時もまた更に財産分派を為すに及ばず フランス民法第１０７５条

第１２２６条 諸財産相続人の各自に得たる財産の部分より利益を得るためその財産を共通して使用することの必要なる時においてもまた財産分派を為すべからず

第１２２７条 財産分派に付いての訴訟はその財産を分たずかつこれを分たざるの証有る間期満得免となるべからず

故に仮令諸財産相続人その財産を分たずして１００年以上共通したる時と雖も各財産相続人は常に財産を分派せんと求むることを得べし

第１２２８条 然れども若し財産相続人中の１人又は数人３０年間継続して己れの得たる財産の１部又は全部を分ちて保有したる者有る時は財産分派を為さんとする求めを排斥することを得べき者とす

第１２２９条 財産相続人中の１人のみ３０年間継続して財産を分ちもって保有するにおいては財産を分たずして保有する財産相続人は相互に財産分派の訴訟を為すことを得べし

○第２節 財産分派を相互に請求することを得べき人

第１２３０条 財産分派は遺嘱の財産相続人と否とを問わずすべてこれを請求することを得べし

財産の全部又は特別に指定したる財産に付き２人又は数人共通して遺嘱の贈遺を受けたる時もまた財産分派を請求することを得べし フランス民法第８１６条

第１２３１条 財産分派の訴訟は啻 に相与に財産相続を為したる者又は遺嘱の贈遺を為し足る者のこれを為すのみならずなお分つべからざる原由有るにより分たざる所有権を有する者もまたこれを為すことを得べし　フランス民法第８１５条

第１２３２条 財産分派の訴訟を為すには財産を分たずして所有する者のみを必要なりとせず即ち正当にしてかつ誠実の証書有る保有権もまた財産分派の原由と為すことを得べし

第１３３３条 保有権をもって財産分派の原由と為すにはその保有権を有する者現に己れの名義をもって財産を保有するを要とすこの訴訟権は土地の借主又は受託者の如き他人の名義をもって財産を保有する者に属すること無し フランス民法第２２３０条

第１２３４条 財産分派は財産相続人中の数人又は各自に請求することを得

第１２３５条 フランス民法第８１７条第１項に同じ

第１２３６条 婚姻を結ぶべき年齢に達せざる幼者又は後見を免かれたる幼者は通常の訴訟に等しき己れの管財人の許可と立合とをもって己れの管係有る財産分派を請求することを得べし

第１２３７条 然れども幼者及び治産の禁を受けたる者の後見人又は管財人或は婚姻を結ぶべき年齢に達せざる幼者又は後見を免かれたる幼者己れに対する財産分派の請求に応答するためには裁判官の許可を受くるを必要なりとせず

第１２３８条 フランス民法第８１７条第２項に同じ

第１２３９条 婚姻を結びたる婦は仮令その夫と財産分派を為せし者たりと雖もその夫又は裁判官の許可を得るに非ざれば相続すべき財産の分派を請求するを得ず

然れども婦若しその夫と別居しかつ財産を分派し又は離婚したる時は前項に記したる許可を得るに及ばず

第１２４０条 フランス民法第８１８条に同じ

第１２４１条 相与に財産分派を為すべき者の外なおその者の財産相続人又は財産を譲受けたる者もまた財産分派を請求し又はその請求を受くべき者とす

第１２４２条 相与に財産相続を為すべき者の中１人の売却したる財産の部分を譲受け又は糶売によって得たる者有る時はその者をしてその売買又は糶売の代価をもってその財産の部分を還さしむることを得べき権利を往古の法律によりその他の財産相続人に附与したる事は目今これを廃棄す フランス民法第８４１条差異

第１２４３条 相与に財産相続を為すべき者の相互に財産分派の訴訟を為すにはこれを為す者現にその財産を保有するを必要なりとせず

第１２４４条 前の数条に記したる規則による時は仮令相与に財産相続を為すべき者の中の１人その相続すべき財産を分ちて保有したる時と雖も若し財産分派の証書又は期満得免を得るに必要なる保有権を有せざる時は財産分派を請求せざるべし

○第３節　裁判上の財産分派を命ずる方法

第１２４５条及び１２４６条 フランス民法８１９条に同じ

第１２４７条 裁判上の財産分派を為すには分派すべき財産を評価したる公正の目録を記すべしただし公正の目録を記するために規定したる法式に循ふべき者とす

第１２４８条 財産分派に管係する者のその財産分派を請求したる時より１年を過ぎざる前に記したる公正の目録は財産分派の標準と為すことを得ただし財産相続人中の１人更に評価せんことを求め又は目録中に保含したる財産の価を誠実に記せず又はこの目録を記したる日より後に増加せし価を記せざるの証を立る時は格別なりとす

第１２４９条 財産相続人中の１人前条の如きことを求め又は証する場合においては裁判官更にその財産を評価すべきことを命令ずべし

この評価は裁判官よりこれがために任ぜられたる評価人にしてかつこの評価に付き調書を記すべき公証人より法に適して保証されたる評価人これを為すべき者とす

第１２５０条 フランス民法第８２２条第１項に同じ

第１２５１条 財産分派の訴訟を受理する裁判官は簡略なる方法をもってこの訴訟を判決すべし

第１２５２条 財産分派の訴訟を分つべからざる財産を分たんと欲する財産相続人より為すべき者にして即ちその相与に財産相続を為すべき他の財産相続人又はその名代人を裁判所に呼出して財産分派の裁判官言渡を受け又はこれに管して争を生ずる時はその処置を規定するためになすべき者とす>第１２５３条 他の財産相続人に対して財産分派の訴訟を為す１人の財産相続人はその訴訟を受けたる者も己れに等しき財産相続人たることを証するを要とす

第１２５４条 死者より贈遺を受けたる子又はその他の卑属親の間に財産分派を為すべき時は裁判官その遺嘱を受けたる者をしてその贈遺物をそのままにて返還し又はその他の方法をもって返還せんことを欲することを申述せしむるため３日間を超へざる猶予の期限を確定すべし

第１２５５条 若し死者より贈遺として得たる土地を返還せざるを得ざる者そのままにてこれを返還すべきことを申述するにおいてはその土地はこの時より分派すべき財産の部分に合併すべし

第１２５６条 然れども若し贈遺を受けたる者相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって返還すべきことを申述し又は財産の返還を為すに付いての方法を申述するために得たる猶予の期限をその方法を申述すること無く経過するにおいてはその土地のままにて返還することを求むるの権利を失ふ者とす

第１２５７条 贈遺を受けたる者現物のままにて財産を返還し又は相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって返還することを申述したると否とを問はず財産の返還を受くべき財産相続人は贈遺を受けたる者のその申述を為せし後直ちに次の款に記したる規則に循ひその返還すべき財産を評価せんことを請求し又は裁判官をして命令せしむることを得べし

第１２５８条 フランス民法第８２３条に同じ

第１２５９条 財産分派又はこの分派を為す方法に付き裁判言渡を為したる裁判官は相与に財産相続すべき者の一般の利益に最も適当しかつ最も便益有る方法を規定するの権有りただし次の規則に衣遵すべき者とす

第１２６０条 フランス民法第８２６条に同じ

第１２６１条 フランス民法第８２７条第１項に同じ

第１２６２条 財産を分派する際その価を減却し又は相与に財産相続を為すべき者の損失又は不便となる時は分つに不便なる財産と謂ふ

第１２６３条 財産分派を為すにはその財産を売却せざるを得ざる時若し死者の財産相続人不在なるか又は幼者又は治産の禁を受けたる者なる時は裁判官その財産相続人の後見人若しくは管財人の願により又は幼者或は治産の禁を受けたる財産相続人の親族会議の意見に循ひ或期限に至り代価を収受すべき約定をもってその財産を売却すべしただし財産相続に管する負債を償ふため現金をもってその財産を売買することの必要なるにおいては格別なりとす

第１２６４条 若し死者の財産相続人中に丁年者又は現在の者有りて現金をもって財産売買を為さんことを請求するにおいてはその者の得べき財産の高に至る迄財産を売却しその余の財産は他の財産相続人の承諾したる期限に至り代価を収受すべき約定をもって売却すべし

けだしその財産を売却したる金額を分派する時はその総額を或期限に至り得べき１年１割の金額を引去りたる高に減却すべくして己れの得べき財産の部分を現金にて請取んと欲する者はその減却したる金額より己れの部分を受取るべき者とす

第１２６５条 すべて丁年に達したる財産相続人はその相続すべき財産を分派する時己れの相続すべき財産の部分に付き入札することを得べくしかして財産分派によって確定したる己れの部分より一層多量の部分を購求したる時に非ざればその代価を払ふに及ばず

第１２６６条 幼年の財産相続人もまたその相続すべき財産を売買する時その後見人若くは管財人の意見又は立合をもって入札することを得べし

ただし後見人又はこれらの事に付き特別に裁判官及び親族会議より許可を得るを要す

第１２６７条 フランス民法第８２８条第１項に同じ

第１２６８条 フランス民法第８２７条第２項に同じ

○第４節　裁判上の財産分派を為せし後公証人の為すべき処置

第１２６９条より第１２８３条に至る

第１２８４条 財産の返還を受くべき財産相続人のため財産の全部中よりその返還を受くべき財産の部分を収受すべきことを定めたる時はこの財産相続人はその財産の代価に応じ公証人によって己れの適意の財産を収受することを得べき者とす

第１２８５条 若し財産の返還を受くべき権利を有する者数人有る時はその財産を分派し鬮引にてその財産の配賦を確定すべし

第１２８６条より１２８８条に至る フランス民法第８３１条より第８３３条に至るに同じ

第１２８９条 財産相続人の各自に受くべき財産の部分はこれがために選任されたる評価人これを定めかつ財産分派を担任する公証人これを保証す フランス民法第８３４条

次に相与に財産相続を為すべき者の間に鬮引を為すべし

第１２９０条 フランス民法第８３７条に同じ

第１２９１条 フランス民法第８３８条に同じ

第１２９２条 フランス民法第８３６条に同じ

第１２９３条 財産相続に管する負債は分派することを得ず故に各財産相続人は己れの相続したる財産の高に応じてその負債を分担すべき者とす然れども各財産相続人の相続したる財産の不平等を償ふため最も多量の財産を得たる者にはこれに比して最も多量の負債を払はしむることを得べし

第１２９４条 フランス民法第８４０条に同じ

第１２９５条 仮に財産分派を為せし時は不在の者又は治産の禁を受けたる者又は幼者又は婚姻したる婦はこの分派を取消さんと求むることを得べく又若しこの財産分派によって損害を受けたる時は財産分派の取消に管する款に記したる如く更に財産分派を為さんと求むることを得べし

幼者は丁年に達せざる時と雖も前項の財産分派取消の訴訟を為すことを得然れども婚姻を結びたる婦は夫婦の財産共通を解除したる後に非ざればその夫の為したる仮の財産分派に対して訴訟することを得ず

第１２９６条 およそ公証人財産分派を為し終りたる時は最も先に財産分派を請求せし者その分派を言渡したる裁判所の書記局に財産分派の証書の公正なる写を差出し左に記する通知を為すべきことを裁判官の命じたる日より１０日間に相与に財産相続を為すべき者にこの財産分派に付き意見を具陳すべき旨を通知したることを申述し又若しその相与に財産相続すべき者その意見を具陳したるにおいては法に適して財産分派を為すことの許可を得ること能はざる所以を申述すべし

第１２９７条 若し財産分派を為すの通知を得たる者その分派を行ふたる方法に付て異議有るにおいてはこれがため附与されたる期限の内に財産分派の許可に対する故障を筆記して申述すべし又この故障を述ふる書面には己れの権利を害すべき財産分派と思惟すべき誤謬過失又は不規則の争を謄記するを要す フランス民法第８３７条に同じ

第１２９８条 裁判官前条の故障の全部又は一部を理に適したる者と認むる時は財産分派を改正すべき旨を命令し公証人に財産分派に管係したる者を送附すべしこの公証人は裁判官の意見に循ひ更にその分派に管する追加の証書を記し既に改正したる財産分派の証書に等しき方法により裁判所の書記局にその証書の公正なる写を差出すべし

第１２９９条 若し前条に反し財産相続人の為したる故障を理に適せざる者と認むる時は財産分派に管係する者の間に確定の者と為すべき財産分派の証書を認可すべしただし法律上に規定したる法式を循守するを要とす フランス民法第９１７条

第１３００条 若し公証人相続すべき財産の組成評価人の任命及び誓詞財産相続人の各自に相続すべき財産の区別及び鬮引又は財産分派に管する者にその分派を通知すること等の如き分派の証書を設くるに予じめ必要なる方法を循守してその財産分派の証書の模様を変更するもその証書は無効に属すること無し

第１３０１条 フランス民法第８４２条に同じ

第１３０２条 財産分派を為せし後その分派に算入せざる財産有る時はその分派の全部を改正し又はその財産のみに付き分派すべし

第１３０３条 永く失踪したるにより人より死去せし者と思料されたる財産相続人の１人財産分派を為せし後現出するにおいては最前の財産分派を取消しその人をしてその相続すべき財産の全部を得せしむるため財産の現物及び既に耗尽せし財産の価格を更に分派すべし

第１３０４条 財産の返還に管する規則を除くの外すべてこの款に設けたる規則は分つべからざる物件を数人にて所有する者の間に分派を為す時に適用することを得べしただしこの数人の所有者中失踪したる者有るか又は幼者若しくは治産の禁を受けたる者なるか又は丁年者若しくは本州中に現在する者にして財産分派を為すこと或いはこれを為す方法に付き争いを生じたる時に限る者とす

又この種類の財産分派を為すには分派に管係する者の住所有る土地に管すること無くその分派すべき財産所在の土地を管轄する裁判官に訴訟を為すべし

○第２款　財産の返還

○第１節　財産返還の本義及びその返還を為すべき者

第１３０５条 財産の返還とは１人の財産相続人財産の分派を為す前に預らしめ受取りたる財産を分派すべき財産の部分中に算入するために返還するを謂ふ

第１３０６条 父母又はその他の尊属親の財産を相続する子又は卑属親は財産分派の前に受取りたる財産を返還せざるを得ず（自余はフランス民法第８４３条に同じただし左の如く増補す）

本条の規則は子又は卑属親その尊属親の財産を遺嘱の財産相続人又は嫡出の財産相続人として相続し又は尋常に或いは相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償はざる特権をもって相続する時に適用すべし

第１３０７条 財産を返還すべき義務を行ふは父母又はその他の尊属親の財産を分派して相続すべき子又は嫡出の卑属親の問に財産の平均を保つをもって目的とし又尊属親よりその子或いは他の卑属親に贈与したる財産をもって或日財産相続を行ふ時分派すべき財産中に算入せざるを得ざる財産なりとしこれを先取りしたる者と思料すべき財産を返還するを目的とす

第１３０８条 財産の返還は贈遺を為せし者の法に適してその財産を返還すべきことを命じたると否とに管せず常に行ふべき者とす何となればこの財産の返還を為すことを格別に禁じたる時を除くの外常に命じたる者と思料すべきによるなり

第１３０９条 然れども若し贈遺を為したる者これを受けたる者の利益のため又はこの者に過分の財産を与ふる必意有る旨を法に適して申述せしにおいては贈遺を受けたる子又はその他の卑属親はその贈遺物を返還するに及ばずただし贈遺物の代価その贈遺を為したる者の随意に為し能はざる財産の高に過剰する時は格別にして即ちこね過剰は返還すべき者とす フランス民法第８４３条及び第８４４条

第１３１０条 贈遺を受けたる者の利益のため又はその者に過分の財産を与ふべきため贈遺したることに管する申述は贈遺を為したる者の必意を記したる証書又はこの証書を記したる後公証人及び証人２人の面前において記したる証書中に謄録すべし

第１３１１条 贈遺を受けたる者の利益のため又はこの者に過分の財産を与ふべきために財産を贈遺したることに管する申述は前条の証書に等しき他の証書をもって為すことを得べしただし贈遺を為したる者の必意を両様に解すべからざる方法をもって為すを要とす

第１３１２条 贈遺を受けたる者の利益のため又はこの者に過分の財産を与ふべきために贈遺したる財産の価格と財産相続に管する財産の価格とを計算し若し嫡出の子の当然に受くべき財産不足するにおいては贈遺を受けたる者仮令贈遺のみを受け財産相続を放棄せんと欲する時と雖も他の財産相続人の当然に相続すべき財産の高に至る迄返還するを要とす フランス民法第８４４条

当然に相続すべき財産を計算する時は尊属親よりその他の血属親或いは外人に贈与したる財産もまた算入すべ

第１３１３条 財産を返還すべき義務は遺嘱の証書有ると否とを論せずすべて父母又はその他の尊属親の財産を相続すべき子又は嫡出の卑属親これを得べき者とす

故にその他の財産相続人又は財産相続に管する財産の贈遺を受けたる者又は権利者と雖も財産の返還を請求することを得ず

第１３１４条 子又は卑属親はその父母又はその尊属親の財産を当然に相続すべき権を有する者たればその相続すべき財産の平均を保つため己れに受取りたる過分の財産を返還すべき者とす

故に私生の子法律に規定したる場合においてその父母の財産を相続する時はその父母より財産を返還すべき命を受けたる時を除くの外財産を返還するに及ばずこれ畢竟私生の子は法律上当然に財産相続を為すべき権利を有せざればなり

第１３１５条 返還すべき財産を有する子又は嫡出の卑属親その財産を与へたる尊属親の財産相続を肯せざるにおいてはその財産を返還すること無く己れの得たる生存中の贈遺又は遺嘱の贈遺物を差引せんと求むることを得べし

然れども若しその相続すべき財産中に財産相続を肯せざりし者の返還すべき財産を合して正当に財産相続を為すべき者の得べき財産に不充分なるが如き時は財産相続を肯せざりし者その正当の財産相続を完全するに充分なる財産の高に至る迄財産を返還すべし フランス民法第８８４条及び第８８５条

第１３１６条 前の数条に規定したる如く嫡出の卑属親をして財産を返還せしむるためにはこの卑属親直接に己れに生存中の贈遺又は遺嘱の贈遺を為したる尊属親の財産相続人となりたるを要とす

第１３１７条及び１３１８条 フランス民法第８４７条及び第８４８条に同じ

第１３１９条 前の３箇条に記したる卑属親即ち祖父母の財産相続を為す孫中には曾孫及び自分又は名代人にて尊属親の財産相続を為す嫡出の卑属親もまた保含したる者とみなすべし

○第２節　財産の返還を受くべき者及び返還すべき財産の種類

第１３２０条より第１３２３条に至る フランス民法第８５０条より第８５３条に至るに同じ

第１３２４条 財産相続人は己れに財産相続を為さしめたる尊属親と結びたる契約によって得たる利益を返還するに及ばずただしその契約により不当の利益を得たる時は格別なりとす

第１３２５条 フランス民法第８５４条に同じ

第１３２６条 父よりその子に与へたる利益は仮令生存中の贈遺又は遺嘱の贈遺に管せざる時と雖もまた返還すべき者とす

第１３２７条 財産を返還すべきの義務は父母又はその尊属親の財産相続を為せし者のその尊属親の財産を管理し又は労役を為したるにより受くべき謝金を請求するの妨げとなること無し

第１３２８条 フランス民法第８５５条増補○若しこれに反して贈遺を受けたる者の過失又は怠慢により不動産減尽したるにおいては財産相続を開始したる時の不動産の価を返還すべき者とす

○第３節　財産を返還する方法

第１３２９条 フランス民法第８５８条に同じ

第１３３０条 贈遺を為したる者その己れに得たる財産を相続すべき財産の高に合併するため返還したる時は現物のままにて返還したる者とす

第１３３１条 贈遺を受けたる者己れの請取たる財産の代価を相続すべき財産の部分より差引きその残余の財産を相続したる時は相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって財産を返還したる者とすただしこの財産の返還は財産分派の款に記したる方法をもって行ふべし

第１３３２条 財産の返還に管する義務を行ふにはその財産の不動産たるか又は奴隷又は動産たるかを区別するを要とす

第１３３３条 不動産の贈遺を受けたる者財産分派の時既にその不動産を保有したるにおいてはそのままにこれを返還し又は相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すべき方法をもって返還すること自由たりただし贈遺を為したる者現物のままにて返還すべき約定を為せしにおいてはその他の丁年の財産相続人にしてかつ本州中に現在し又は名代人を出したる者の承諾を得るに非ざれば贈遺を為したる者の命じたる他の方法をもって財産を返還するを得ず

第１３３４条及び第１３３５条 フランス民法第８６１条及び第８６２条に同じ

第１３３６条 不動産の贈遺を受けたる者はその不動産に付き快楽のために修繕したる部分を除去するの権有りと雖もその入費を計算するを得ず又不動産を破壊すること無くその修繕したる部分を除去し又は贈遺を受けたる時の形状にその不動産を回復し得べき時に非ざればその修繕したる部分を除去することを得ず

第１３３７条 不動産に付き為すことを得べき入費に３種有り即ち必要なる入費有益なる入費及び快楽のための入費これなり

第１３３８条 フランス民法第８６３条に同じ

第１３３９条 およそ不動産の贈遺を受けたる者財産分派の款に規定したる法式によりその定期中不動産のままにて返還すべき旨を申述せし後贈遺を受けたる者の過失によらずしてその不動産減尽するにおいては即ち財産相続に属する損失と為し贈遺を受けたる者はその不動産又はその代価を返還するに及ばざるべし

第１３４０条 若しその不動産の一部を減尽したるにおいてはその時の有様にて残余の不動産を返還すべし

第１３４１条 又若し贈遺を受けたる者の相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって財産の返還を為すべき旨を申述せし後不動産の減尽したるにおいては贈遺を受けたる者の損失と為すべし

第１３４２条 フランス民法第８６５条に同じ

第１３４３条 前条の場合において若し贈遺を受けたる者嘗て書入質と為したる財産を現物のままにて返還ししかして相続すべき財産分派の時更にその書入質と為したる財産を得るにおいては書入質はその財産を返還せざる時に等しく存在すべしただし贈遺を受けたる者その相続すべき財産分派の時他の動産又は不動産を受取りたる時は贈遺を受けたる者の権利者己れの義務者の相続すべき財産分派の時得たる財産をもって書入質の高に応じ義務の弁償を得べき先取特権を有すべし

第１３４４条より第１３４６条に至る フランス民法第８６６条より第８６７条に至るに同じ

第１３４７条 若し不動産の贈遺を受けたる者相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって不動産を返還すべき旨を申述したるにおいては財産相続を開始せし時の価をもって財産返還を為すべし フランス民法第８６０条

第１３４８条 フランス民法第８６０条に同じ

第１３４９条 又若し不動産の贈遺を受けたる者止むを得ざる事故有りてその不動産を売却せし時はその売却によりて得たる代価にて相続すべき財産を差引きその残額を返還すべし

第１３５０条 不動産の贈遺を受けたる者その不動産を売却せし後その買主の方においてその不動産減尽したる時は贈遺を受けたる者その売却によりて得たる代価にて相続すべき財産を差引きその残額を返還すべし

第１３５１条 相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって返還を為すべき時はその返還を受けて相与に財産相続を為すべき者その相続すべき財産を売却せんと要求するの権有りこれ畢竟この売却より生じたる代価をもって己れの返還を受くべき財産の部分とその代価の余剰に附き己れに分派を受くべき部分とに充たしめんかためなりただしその相与に財産相続を為すべき者財産の目録又は財産分派の基本となる評価の証書に記したる代価に準じて相続すべき動産を差引き返還を受くべきことを好む時は格別なりとす

第１３５２条 相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き財産相続を為すの法をもって返還を受くべき諸財産相続人若しその返還を受くべき部分に充つるためその相続すべき財産を売却せんと欲するにおいては財産分派を審理する裁判官の面前において贈遺を受けたる者の返還を為す方法に付き申述を為すべし若し然らざればそ其の申述を為すの権を失ひ即ち贈遺を受けたる者の申述に原き相続すべき財産のまま又はその他の方法をもって返還を受くべきことを承諾したる者とみなすべし

第１３５３条 若し贈遺を受けたる者と相与に財産相続を為すべき者己れに返還を受くべき財産に充つるためその相続すべき財産を売却せんと求むる時は裁判上の財産分派を為すに方り共通の財産を糶売すべし

第１３５４条 若しこれに反し財産の返還を受くべき財産相続人その相続の全部の返還を財産相続に属する財産をもって受くることを欲し又は財産の売却を請求するの権を失ふたる時は財産分派の款に規定したる方法に循ひ財産相続に属する動産又は不動産をもってその返還を受くべき者とす

又返還を受くべき財産相続人は如何なる場合におけるも己れの欲せざる財産をもってその返還を受くるに及ばず

第１３５５条 相続すべき財産無く又は返還を受くべき財産相続人をしてその財産相続を為さしむるに不充分なる時はその返還を為すべき財産相続人その財産の一部又は全部を返還すべし

第１３５６条　返還を為すべき財産相続人は１年間にその全額を返還することを得べしただしその１年の期限に達する時は１割の利息を附して払うべき義務の証券を相与に相続すべき財産相続人に差出しかつ義務の弁償を確実にするためその返還すべき不動産を保有する時はその不動産又はその相与に相続すべき財産相続人の意に適する他の不動産をもって特別に書入質と為すを要とす

第１３５７条　前条に記載したる如く義務の証券を出して返還を猶予したる財産相続人若し１年間を経過するもなおその義務を尽くさざるにおいてはその義務を受くべき財産相続人又はその代権人その書入質の財産を差押へ予めその財産を評価すること無く直ちに糶売し最初の入札の代価によって売却することを得べし

第１３５８条　前条の如くして売却せし財産若し返還すべき財産の高に等しき時は差押を為せし財産相続人又はその代権人は財産相続を開始したる以前に特別の負債又は義務のため書入質の権を得たる権利者より先に先取特権によって義務の全部の弁償を受くべしただし書入質の権を得たる権利者は贈遺を受けたる者の他の財産をもって義務の弁償を得んと求むることを得べし

第１３５９条　フランス民法第９３０条に同じ

第１３６０条　返還すべき不動産を購求し又は保有したる第３の人その返還すべき財産の贈遺を受けたる者と相与に財産相続を為すべき者に左に記載したる金額を弁償するにおいてはその財産取戻の訴えを避くることを得べし

贈遺を為したる者己れの随意に為すことを得べき部分に超過したる財産を贈与したる時はその過分の財産の代価

又若し条件に関して毫も特別の約定なき時はその財産の代価の全部

第３の人は贈遺を受けたる者より相与に財産相続を為すべき者に尽くすべき義務も尽くさざるを得ず

第１３６１条　奴隷を贈遺したる時はその奴隷に付いての権利は贈遺を為したる者より贈遺を受けたる者に全く転移したるなり○故に贈遺を受けたる者はその奴隷の生産すべき子に付いて利益を得るに等しき方法によりその奴隷に関する災害及び損失を負担すべし又若し奴隷の贈遺を受けたる者正意をもってすべての奴隷又はその中若干名を他人に引渡したる時はその返還を受くべき財産相続人その奴隷を購求し又は保有したる者に対し奴隷取戻の訴へを為すことを得ず

第１３６３条　前に記したる２箇条の規則は動産の贈遺を受けたる者のこれを返還すべき時もまた適用すべし然れども若しその動産の名称を記載したる目録無き時は返還を受くべき者贈遺の時その動産の価を確証するに足る証拠を得んと求むることを得　フランス民法第８６８条

第１３６４条　金額を返還すべき時はその全額を返還するも相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引きその返還を為すも贈遺を受けたる者の随意たるべしただしその贈遺を受けたる者は不動産の返還に付き規定したる方法に循ひその全額を返還し又は相続すべき財産中にて以前得たる部分を差引き返還を為すべき旨を申述せざるを得ず　フランス民法第８６８条第１項

第１３６５条　奴隷動産又は金額の贈遺を受けたる者相続すべき財産中より差引きもって返還を為すことを欲する時若し相続すべき財産返還すべき財産に充分なる時はその相与に財産相続を為すべき者をして現物のままにて異議無く返還を受けしむるの権有り

第１３６６条　フランス民法第８６９条第２項に同じ

第１３６７条　相続すべき財産若し贈遺の奴隷動産又は金額を返還するに不充分なる時は贈遺を受けたる者その相与に財産相続を為す者に返還を為すに付き不動産の返還に関して前の数条に記載したる要件に循ひ猶予の期限を求むることを得べし

○第３款　財産相続に付き担当すべき負債を払う事

第１３６８条 財産相続に付き担当すべき負債を払う事に付いては特に２箇の条件に注意せざるを得ず

１ 負債の弁償を受くべき権利者の訴訟権及びこの訴訟を受くべき人

２ 訴訟を受くべき人に負債を附課する事

第１３６９条 附課する事とは財産相続に付き分担すべき負債の部分を各財産相続人に分派するを謂ふ

第１３７０条 財産相続に付いての権利者は死者より引渡を受くべき負債の弁償を得るため３箇の訴訟権を有す即ち左の如し

１ 財産相続人に付いて人に対する訴訟

２ 己れの権利を行ふため書入質の財産を保有する者に対する書入質の訴訟

３ 死者の財産と財産相続人の財産とを分派する訴訟

第１３７１条 人に対する訴訟権は財産相続人をして死者の負債を払はしむべき義務をもって原由とす

第１３７２条 財産相続人己れに提供を受けたる財産相続を尋常に承諾するにおいては財産相続に付き担当すべき負債を払ふことの義務を契約したる者とす

第１３７３条 財産中にて別段指定めざる一部分又は全部に付き遺嘱の贈遺を受けたる者は財産相続人とみなすべき者にしてかつ財産相続人の位置を保つ者たれば即ち財産相続人に等しき規則と例外とに循ひ財産相続に付き担当すべき負債を払はざるを得ず

第１３７４条 前に記したる規則に循ひ目録を記せさる数人の財産相続人は仮令その財産相続に付き担当すべき負債相続すべき財産に超過する時と雖もその財産相続に付き担当すべき負債を払はざるを得ずただし連帯すること無く各自にその負債を払ふことを得べし フランス民法第８７３条

第１３７５条 若し死者に１人の財産相続人のみ有るか又は財産相続人中独り１人の者に財産の全部を遺嘱して贈遺したる時はその財産相続人又は財産の全部に付き遺嘱の贈遺を受けたる者その財産相続に付き担当すべき負債を償ふべき者たればその死者の権利者より直接に己れ１人に対し負債の弁償を訴求せらるべき者とす

第１３７６条 フランス民法第８７０条に同じ

第１３７７条 財産相続を数箇の族に分つ時は数人の財産相続人有る時に等しく各々の名代人その財産相続に付き担当すべき負債を分担すべし

第１３７８条 若し財産相続人中の１人死者の権利者たる時は己れに得べき権利と財産相続に付き担当すべき義務とを混同し他の財産相続人の担当すべき負債は各財産相続人に訴求することを得べし

第１３７９条 フランス民法第８７１条に同じ

第１３８０条 遺嘱の贈遺者己れの随意に為すこと能はざる財産の部分を贈遺したる時においてその贈遺者より相続すべき財産その財産相続に付き担当すべき負債を償ふに不充分なる時は遺嘱の贈遺を受けたる者をしてその遺嘱の贈遺者の随意に為すこと能はざる部分を返還せしめ又はその財産相続に付き担当すべき負債を払ふに不足する財産を返還せしむることを得べし

前項に記したる第１の場合においては遺嘱の贈遺を受けたる各人その遺嘱の贈遺者随意に為すことを得べき部分に超過したる財産を返還し又第２の場合においては財産相続に付き担当すべき負債を払ふに充分なる高に至る迄財産を返還すべき者とす

ただし死者の権利者より遺嘱の贈遺を受けたる者に対して行ふべき訴訟期限は財産相続を開始したる日より起算し３年をもって期満得免となるべし

第１３８１条 財産相続に付き担当すべき負債を払ふことに付き諸財産相続人の間又は財産相続人と第３の人との間に特別の契約を結ぶと雖も死者の権利者の得べき義務に変更有ること無し

第１３８２条及び第１３８３条 フランス民法第８７３条及び第８７４条に同じ

第１３８４条 フランス民法第８７５条に同じ「ただし遺物財産の価に至る迄」云々以下を除く

第１３８５条 フランス民法第８７６条に同じ

第１３８６条 死者の不動産裁判上又は適法の書入質となりたる時はその不動産の１箇又は数箇を保有する各財産相続人はすべて権利者の意によって訴訟を受くべき者とすただし訴訟を受けたる財産相続人は前条に記したる如く他の財産相続人に対し不動産取戻の訴求を為すことを得べし

第１３８７条 書入質となりたる財産を相続すべき財産相続人その書入質に関する財産を訴求する権利者にその財産の売却を為さしむるためこれを引渡すにおいてはその書入質に関して受くべき訴訟を免かるべし

第１３８８条 又若し前条の財産相続人その財産を権利者に引渡すと雖もこれを売却して書入質の負債を償ふに足らざる時は己れの相続すべき財産をもってその負債を償ふべき裁判言渡を受くべき者とす

第１３８９条 贈遺者か己れの負債のため又は第３の人の負債のため書入質と為したる財産を或人に贈与したる時はその贈遺を受けてその財産を保有する者その負債の弁償のため権利者より訴訟を受くべき者とすただしその贈遺を受けたる者は書入質に関する訴訟を免るるため贈遺せられたる財産を放棄するの権有りとす

第１３９０条 贈遺を受けたる者書入質に関する訴訟を受けし後負債を弁償し又はその書入質となりたる財産を放棄すると雖も遺嘱者の財産相続人に対し財産取戻の訴を為すことを得ずこれ畢竟贈遺を受けたる者遺嘱物を受取る時はその遺嘱の贈与と共に書入質の義務を承諾したる者とみなすべきによるなり フランス民法第８７４条差異

第１３９１条 若し贈遺者の財産相続人書入質の権利者より対人権に属する訴訟を受けて贈遺者の負債を償はざるを得ざる時は贈遺の約定を解除したる時に等しく贈遺を受けたる者に対し贈遺物取戻の訴訟を為すの権有り

第１３９２条 贈遺者その贈与したる財産を第３の人の負債のため書入質と為したる時は贈遺を受けたる者書入質の本人即ち義務者たる第３の人に対し財産取戻の訴訟を為すの権有り

第１３９３条 負債の弁償に付きこの款に記載したる規則は贈遺者と贈遺を受けたる者とに関し又は贈遺者のみに関したる特別の規則に障碍を及ぼすこと無しただし嫡出たる財産相続人の権利を害する時は格別なりとす

第１３９４条 前の数条に記載したる約束及び規則は財産相続人又は財産の全部を得たる者に対する時のみその効を有する者にして負債弁償のため死者の権利者に対し財産相続人の行ふべき義務に変更を生ずること無し

第１３９５条 フランス民法第８７７条に同じただし裁判言渡の如く執行を行ふ期限は１０日の後とす

第１３９６条 財産相続人は裁判言渡の如く執行を行ふべき証書の送達を受けし後といえども権利者の単純なる申述のみに原き執行の命令を為せし時はその裁判所に対してその執行の命令に抗拒することを得べしただし財産相続を評議するため猶予の期限を願ひし証有る時のみとす何となれば財産相続人たる者はこの猶予の期限の経過する迄執行を停止することを得べければなり

第１３９７条 フランス民法第８７８条に同じ

第１３９８条 死者の財産と財産相続人の元来所有する財産とを分別するは甲の権利者に負債を償ふことに充ちて用ふべき財産と乙の権利者に負債を償ふことに充ちて用ふべき財産とを混同せざらんことを目的とす

第１３９９条 死者の権利者財産を分別せんと求むるの効は財産相続人の権利者より先に財産相続に属する財産をもって負債の弁償を得るに在り

第１４００条 死者の権利者たる者は何人に限らずすべて財産の分別を請求することを得べし○財産の分別を請求するの権利を得るには現に負債を償ふべき期限の経過したるを必要とせず

第１４０１条 仮令偶生の事又は未必の条件に関する権利を有する権利者たりと雖も死者の権利者は財産の分別を請求することを得べし然れどもこの権利者の如きは未必の条件の如く成就せざる間は財産相続人の権利者に負債を償ふことを妨げたること能はざる者たれば未必の条件の如く成就するにおいて財産の返還を得んがため財産相続人の権利者に対し担保を得んと求むることを得べし

第１４０２条 遺嘱の贈遺を受けたる者は死者の負債弁償の後その残余の財産をもって贈遺の財産を得んがため死者の財産と財産相続人の財産とを分別せんと求むることを得べし

第１４０３条 死者の財産の一部を相続すべき者その死者の権利者たる時は己れの相続すべき財産の一部のみに付き権利と義務とを相続し残余の財産に付いては依然として権利者たる者なればその相続を為すべき者に対し死者の財産と財産相続人の財産とを分別せんと求むることを得べし

第１４０４条 財産の分別により利益を得べき者は財産相続人の権利者に対しその先取特権の如何を問はず死者の財産と財産相続人の財産とを分別せんと求むることを得べし

第１４０５条 数人の財産相続人を遺したる死者の権利者は唯その財産相続人中若干人に対し死者の財産と財産相続人の財産とを分別せんと求むることを得べき者にして必ずしもその他の財産相続人に対し同上の分別を求むるに及ばず

第１４０６条 死者の財産と財産相続人の財産とを分別すべき訴求を為したる権利者は死者より嘗てその１人の子に生存中の贈遺として与へたる財産をもって分別すべき財産中に加ふることを得ず然れども生存中の贈遺を受けたる子はその贈遺物を相与に財産相続を為すべき者に返還すべき者とすこれ畢竟この財産は斯くの如く分別すべき財産の部中に在らずしてかつその贈遺を受けたる子より贈遺物を返還すべき規則はその相与に財産相続すべき者の利益のために設けたる者なればなり フランス民法第８５７条

第１４０７条 フランス民法第８７９条に同じただしフランス民法「然れども死者の債主遺物相続人の死者に代へて債を負ふべきことを承諾し」を除く

第１４０８条 若し死者の権利者財産相続人の権利者となることを承諾し又はその財産相続人の財産をもって質入或は書入質と為し又は執行の期限若しくは猶予の期限を与へたるにおいては死者の義務は更改したる者とす

然れども死者の権利者その死者の財産相続人に対して訴訟を為し又は己れに受くべき利息をその財産相続人より請取りたるのみにては死者の義務は更改すること無し

第１４０９条 死者の財産と財産相続人の財産とを分別せんとする訴求はその財産相続人その財産相続を黙許又は明許したる日より起算し３箇月以内に属すべき者とす若しこの期限の経過したる後はその訴求を為すことを得ず フランス民法第８８０条差異

第１４１０条 死者の財産と財産相続人の財産とを分別せんとする訴求を為す権利者は財産相続人に負債有ることを確証しかつその負債有るにより死者の財産を消費して己れに損害を受くべきことを確証したる申述を為すに非ざればその訴求は却下せらるべし

第１４１１条 財産相続を開始したる時より死者の財産と財産相続人の財産とを分別すべき訴求を為すに付き与へたる３箇月の期限間は財産相続人権利者の権利を害して死者の財産を他人に譲渡し又は質入と為し又は売却することを得ず若しこれらのことを為すにおいては権利者の権利を害したる者として権利者よりその契約の取消を訴求することを得べし フランス民法第８８０条差異

第１４１２条 財産相続人の権利者もまた死者の権利者に対し財産相続人の財産と死者の財産とを分別すべき訴求を為すの権利を有する者たればその訴求は死者の権利者に等しき方法によりかつ同期限中に為すべく又その訴求の効も財産相続人のため死者の権利者に等しき効を生ずべし フランス民法第８８１条

第１４１３条 死者の権利者その死者の財産と財産相続人の財産とを分別すべき訴求を為し死者の財産その負債の全部を償ふに足らざる時は財産相続人の権利者が負債の弁償を受けし後財産相続人の財産をもって負債の弁償を得んと求むることを得べし

第１４１４条 死者の財産と財産相続人の財産とを分別すべき訴求を為したる財産相続人の権利者もまた財産相続人の財産その負債を償ふに足らざる時は死者の財産の残余をもって財産相続人より負債の弁償を受くべき権利を有すべき者とす

第１４１５条 死者の権利者数人有りてその権利各平等にして先取特権又は書入質の権を有せさるにおいてはその数人の権利者は死者の財産と財産相続人の財産とに付き平等の権利を行ふべし

第１４１６条 前条の場合において若し書入質の権を有したる権利者有る時はその書入質の順序により死者の財産をもって負債の弁償を得べしと雖も財産相続人の財産に付いて書入質の権を有せざる他の権利者と平等の権利を行ふべき者とす

第１４１７条 然れども書入質の権を有したる死者の権利者又はその他の権利者にして財産相続人の権利者たる名義又は財産相続人に対せし裁判言渡により財産相続人の財産に付き第１に書入質の権を得たる者はその財産相続人の財産に付き他の権利者に優る者とす

第１４１８条 財産相続人又は財産の全部を受くべき者は死者の財産に平均する高に至る迄の外遺嘱物を引渡すに及ばざる者たれば死者の負債を弁償せし後その残余の財産を遺嘱の贈遺を受けたる者に引渡すにおいては遺嘱物を引渡すべき義務を免るる者とす

第１４１９条 前条の如く遺嘱の贈遺を受けたる者に残余の財産を引渡すべき者嫡出の財産相続人たるにおいては法律上において嫡出の財産相続人の得べき財産の部分を死者の中より引去るの権有る者たればその嫡出の財産相続人は遺嘱の贈遺を受けたる者にその引去りたる残余の財産のみを引渡すべし

○第４款　相続すべき財産分派の効

○第１節　相続すべき財産分派の保証

第１４２０条 相続すべき財産分派は相与に財産相続を為すべき者の問に行ふ所の交換にして即ち甲者は乙者の権利のため自己の権利を乙者に交付し乙者は甲者の権利のため自己の権利を甲者に交付すべき者たり

第１４２１条より第１４２３条に至る フランス民法第８８４条増補○然れども故障の如何なる種類たるを問はず相与に財産相続を為すべき者の間に保証を設けざることを相続すべき財産分派の証書中に通常の条款をもって契約することを得ず

第１４２４条 フランス民法第８８５条第１項に同じ

第１４２５条 損失の償の高は損失を受けたる財産相続人の相続すべき財産分派の時得たる物件の価格にして他の財産相続人各その所得と為したる部分の割合をもってこれを償ふべき者たればその損失を受けたる財産相続人は己れの所得と為したる物件の未だ何人に属するか判然せざる時は故障を原由として損失の償を得んと求むることを得ず

第１４２６条 フランス民法第８８５条第２項に同じ

第１４２７条 財産相続に属する財産に２箇の効有り故に各財産相続人の問に為すべき保証にもまた相異なる２箇の効有り左の如し

動産及び不動産にして現に存在する財産に付いては財産相続に属する財産の部分のためのみに保証を為すべき者とす

他の財産の種類即ち他人より得べき義務又はその他の権利に付いては財産相続に属する財産の部分のために保証を為すのみならずなおその財産の存在する模様更にこれを言へば財産相続のため現に引渡すべき財産なるか又はその財産に付いての義務者相続すべき財産を分派する時その義務を行ふの資力有るか又は義務者か未だ行ふべき期限に至らざる義務をその期限に至り行ふの資力有るかに付いて保証を為すべき者とす

第１４２８条 前条に記載したる保証はこれを為すべき明文無きも当然に為すべき者たれば各財産相続人は相続すべき財産分派の証書に保証を為すべきことを記載せざる時と雖も相互に保証を為さざることを得ず

第１４２９条及び１４３０条 フランス民法第８８６条に同じ

第１４３１条 相続すべき財産分派を為せし後嘗て存在することを知らざる新たなる義務又は負担を発見したる時はその新たなる義務又は負担の如何なる種類たるを問はず各財産相続人これを認諾して相互に保証を為すべき者とす

第１４３２条 相続すべき財産分派の証書中に記載したる義務を行ふため相続すべき財産分派を為せしにより生じたる黙許の書入質の如きは爾來これを為すを得ずただし各財産相続人の便益により明許の書入質を為すは格別なりとす フランス民法第２１０９条差異

第１４３３条 相与に財産相続を為すべき者の間に為すべき保証に付いての訴訟期限は通常の訴訟期限に等しと雖もこの期限は相続すべき財産分派に属する財産のためにはその財産に関して故障有る時より経過を始め又権利に付いては義務者のその義務を尽すの資力無き証拠有る時より経過を始むべし

第１４３４条 書入質となりたる不動産又はその他の不動産を所得と為したる財産相続人は相続すべき財産分派を為す前に己れの所得と為すべき財産の部分に付きその相与に財産相続を為すべき者の為したる書入質の義務を行ふに及ばずしかしてその書入質は当然に解除すべしただしその書入質と為したる財産相続人の所得と為したる財産にして書入質と為すことを得べき種類たるにおいてはその財産に付いてのみ書入質は解除せさるべし

○第２節　相続すべき財産の分派を取消す事

第１４３５条及び第１４３６条 フランス民法第８８７条「若し相続すべき１箇の遺物を分派の時遺忘」云々以上に同じ

第１４３７条 相続すべき財産の分派に幼者治産の禁を受けたる者又は失踪者の関係有る時若し裁判上相続すべき財産の分派に関して法律上に規定したる法式によりその分派を為したるにおいては丁年者の取消すことを得べき原由によるに非ざればその分派を取消すことを得ず フランス民法第８４０条

第１４３８条 然れども若し前条の法式によらざる時は改めて分派を為すべし

第１４３９条 フランス民法第８８７条「若し相続すべき１箇の遺物を分派の時遺忘」云々以下に同じ

第１４４０条より第１４４２条に至る フランス民法第８８８条及び第８８９条に同じ

第１４４３条 財産相続人中の１人他の財産相続人にその財産相続に付いての権利を売却したる時は売主の財産相続に関する負債の弁償を担任し買主の毫も損害を受けたるに非ざれはその売買取消の訴を免るりことを得ず

第１４４４条 又買主の前条の如き訴を免るるためには売主よりその買主に財産相続に関するすべての権利即ち相続すべき財産中に保含する諸権利を売却したるを必要とする者なれば若しその売主相続すべき財産を分派する時己れの所得と為すべき不動産のみを売却しその不動産の定価より４分の１の損失を受くるにおいてその売買の契約を取消すことを得べし

第１４４５条 財産相続に関する財産を売買したる時若し買主のみその財産の財産相続に関することを知り売主にこれを知らしめざるの証有る時はその売買の契約を取消すことを得べし

第１４４６条 フランス民法第８９１条に同じ

第１４４７条 前条に記載したる如く改めて分派を為すを防ぐことを得べき被告人その原告人に金高又は財産相続に属する財産をもってその相続すべき部分を追補したる時はその金高又は財産に付き分派を取消す訴訟の起りたる日より利息又は利益を払ふべき者とす

第１４４８条 フランス民法第８９２条に同じ

第１４４９条 父その子数人のため相続すべき財産の分派を規定したる時は仮令財産相続人中の１人又は数人その他の財産相続人より余分を相続したるともその分派を取消すことを得ず又幼者に係る時と雖も右に同じただしその余分父の随意に為すことを得ざる部分なる時はこの限りに在らず フランス民法第７７９条差異

第１４５０条 幼者は丁年者に対して相続すべき財産の分派を取消さんと求むることを得これ畢竟この分派は１人のために成存する者に非ず又他人のために損害を受くべからざるによるなり

第１４５１条 分派を取消すべき訴訟期限は分派の日より起算し又錯誤或いは詐欺に関する場合においてはこれを発見したる日より起算して１０年とす フランス民法第１３０４条第１項

第１４５２条 フランス民法第１３１４条に同じ

〔第１４５３条〜第２２７１条〕未入力

　　○第５巻　准契約、故意をもって人に損害を与えたる所行及び故意に非ずして人に損害を与えたる所行

　　　○第1章　准契約

第２２７２条　フランス民法第１３７１条に同じ

第２２７３条　前条の如く契約無くして義務を生ずるすべての所為は即ち准契約を組成するべし○又別に准契約を組成するに重なる二種の所為有り即ち他人の事務を管理する事及び引渡すべからざる物件を引渡す事是なり

第２２７４条　フランス民法第１３７２条に同じ

第２２７５条　誤って甲の事務を管理する者は乙の事務を担任するの義務無し但し甲乙の事務の間に関係有る時は格別なりとす

第２２７６条より第２２７９条に至る　フランス民法第１３７３条より第１３７６条に至るに同じ

第２２８０条　錯誤により自ら義務者たるを信じて物件を引渡したる者はその物件を取戻すの権有り

第２２８１条　フランス民法１２３５条に同じ

第２２８２条　引渡すべからざる物件とは嘗て成存せしこと無き義務を成存すると信じて引渡したる物件又は釈放を得たる義務のために引渡したる物件を謂う

第２２８３条　無効の証書のため引渡したる物件もまた引渡すべからざる物件とみなすべし

第２２８４条　義務を消滅すべき抗拒の法によって免かるることを得べき義務を行うたる時もまた取戻しの訴を為すことを得べし

第２２８５条　然れどもこ抗拒の法は天然の義務を消滅すべき者たるを要とす

第２２８６条　発生すると否と不確定なる未必の条件によって約束の効を中止したる時に行うたる義務もまた引渡すべからざる物件を引渡したる者とす

第２２８７条　前条の原則は確定の日に引渡すべき物件又は発生することの確然たる未必の条件に管して引渡すべき物件に応用することを得ず

第２２８８条より第２２９０条に至る　フランス民法第１３７７条より第１３７９条に至るに同じ

第２２９１条　フランス民法第１３８０条増補○若し物件を収受したる者不正意なる時は義務を行うたる者にその物件を返還するの外当然に損害の償を払うべき者とす

第２２９２条　フランス民法第１３８１条に同じ

第２２９３条　すべての人又は仮令い承諾を為す権無き者と雖も第三の人の所為より生ずる准契約によってはその第三の人に義務を尽くし又はその第三の人をして義務を行わしむること有るべし

　　　○第２章　故意をもって人に損害を加えたる所行又は故意に非ずして人に損害を加えたる所行

第２２９４条及び第２２９５条　フランス民法第１３８２条及び第１３８３条に同じ

第２２９６条より第２２９９条に至る　フランス民法第１３８４条に同じ但し左の１項を増補す

　幼年者及び癲狂者の後見人又は管財人は己れの監守する物件に付き生じたる損害の責に任ずべし

第２３００条　奴隷の主人はその奴隷の人に加えたる損害の責に任ずべし但しその奴隷を放棄する時は格別なりとす

第２３０１条　獣類の所有者はその獣類の人に加えたる損害の責に任ずべし然れども若し獣類を失したる時は損害を受けたる者にその獣類を放棄しもって損害の責を免かるることを得べし

　危険なる獣類又は猛悪なる獣類の畜主はこれを逃逸せしめたる場合に於いてその損害の責に任ずるの例外とすべしフランス民法第１３８５条

第２３０２条　フランス民法第１３８６条に同じ

第２３０３条　損害の償を確定するには常に腐敗又は破壊したる物件の実価に原くべき者に非ず即ち物件の所有者が不注意によってこれを破壊せしめたる時の形況に減却すべき者とす

第２３０４条　第三の人に不適法の所為を為さしめ又はこれを為すことを助け又はこれを為すことを奨励したる者はこれを為したる者と連帯してその所為より生じたる損害の責に任ずべし

　　○第6巻　婚姻の契約書及び財産に管する夫婦双方の権

　　　○第1章　総則

第２３０５条　フランス民法第１３８７条に同じ

第２３０６条　フランス民法第１３８９条に同じ

第２３０７条　フランス民法第１３８８条に同じ

第２３０８条及び第２３０９条　フランス民法第１３９４条及び第１３９５条に同じ

第２３１０条　フランス民法第１３９８条に同じ

第２３１１条　婚姻の契約に付き最も一般に為すべき約束は嫁資を定むる事及び夫婦間相互に贈遺を為す事又は単に一方の者より他の一方の者に贈遺を為す事又はその婚姻に付き他の人より贈遺を受くる事等を定むるに在り

第２３１２条　結婚間に買入れたる財産又は得たる利得を共通すると否とはこれを約束するに及ばず是れ畢竟反対の約束無き場合に於いては法律の効力によって共通すべき者たればなりフランス民法第１３９３条

　然れども夫婦は共通の約束を変更し又制限し又共通を為さざることを約束するを得べし

第２３１３条　婚姻の契約に付き通常為すべき諸種の約束及びその効はその約束の目的たる財産に付き諸種の区別によって生ずべし

第２３１４条　夫婦の財産はその夫婦固有の財産と共通の財産とに区別す

第２３１５条　婦の固有の財産は嫁資たる財産と嫁資に非ざる財産とに区別す

　　　○第２章　婚姻の契約の種類

　　　　○第1款　婚姻に付いての贈遺

第２３１６条　フランス民法第１０９１条に同じ

　　　　○第2款　嫁資

第２３１７条　フランス民法第１５４０条に同じ

第２３１８条　フランス民法第１５４１条増補○夫の与えたる財産は嫁資に非ず

第２３１９条及び第２３２０条　フランス民法第１５４２条及び第１５４３条に同じ

第２３２１条　嫁資は婦又はその他の尊属親又はその他の血属親又は他人これれを定むることを得べし

第２３２２条より第２３２６条に至る　フランス民法第１５４４条より第１５４８条に至るに同じ

第２３２７条　嫁資は結婚間夫の享有するためその夫に与うる者とす

第２３２８条　嫁資を定めたる者に対しその嫁資の弁償を得るため夫の為すことを得べき訴訟期限は債権に管する訴訟期限に等しき期限をもって期満免除となるべし

第２３２９条及び第２３３０条　フランス民法第１５４９条第１項及び第２項に同じ

第２３３１条　然れども夫の不在の時又は嫁資の財産を得んと求むることを怠りたる時はその婦裁判所の允許を得たる後その財産を得んと求むることを得べし

第２３３２条　フランス民法第１５４９条第３項に同じ

第２３３３条及び第２３３４条　フランス民法第１５５０条及び第１５５１条に同じ

第２３３５条　嫁資と定めたる奴隷の代価に付いては夫その所有権を得ること能わず但し特別の契約有る時は格別なりとす

　嫁資と定めたる不動産の所有権はその代価を定めたると否とを問わず又仮令い特別の契約有りと雖も夫に転移することを得ずフランス民法第１５５２条差異

第２３３６条　嫁資と為したる金額をもって購求したる不動産もまた嫁資たるべし

　金額をもって嫁資と為したる時その嫁資弁償のため贈与したる不動産もまた嫁資たるべしフランス民法第１５５３条

第２３３７条より第２３３９条に至る　フランス民法第１５５４条より第１５５６条に至るに同じ

第２３４０条　フランス民法第１５５７条増補○然れどもその嫁資たる不動産の代価を更に利益を生ずべき方法をもって使用し又は他の不動産を購求するために使用するべし

第２３４１条　フランス民法第１５５８条に同じ

第２３４２条　フランス民法第１５６０条第１項に同じ

第２３４３条　フランス民法第１５６１条に同じ

第２３４４条　フランス民法第１５６２条第１項に同じ

第２３４５条より第２３５０条に至る　フランス民法第１５６３条より第１５６８条に至るに同じ

第２３５１条　婚姻の契約書に価を定めざるか又は婦その所有権を失わざる旨を別段定めたる時は夫は己れの受取りたる員数の外その獣類より生れたる子を返還するに及ばず価を定めざる奴隷をもって嫁資と為したる時はその夫死去したる奴隷又は己れの過失に非ずして生じたる不足を補うに及ばずして唯残余の奴隷とその子とを返還すべし

第２３５２条　フランス民法第１５６９条増補○婦が自ら嫁資を与うることを約定したる場合に於いては夫は既に嫁資を受取りし証を得ずしてその嫁資を返還するの責に任ずるに及ばず何となれば斯くの如き場合に於いて婦又はその財産相続人はその婦の払わざる嫁資を取戻さんとするの権無ければなり

第２３５３条　フランス民法第１５７０条に同じ

第２３５４条　若し夫その婦の嫁資と為したる不動産をもって賃貸と為し而して婚姻を解除したる時その賃貸の期限尚１箇年有る時は婚姻解除の時より起算して１箇年の後賃貸の契約を解除すべし但し賃借主その賃借の土地又は家屋を返却することを好む時は格別なりとす

第２３５５条　フランス民法第２１３５条第２の第１項及び第２項に同じ

第２３５６条　フランス民法第１５７２条に同じ

第２３５７条　夫は何時に限らず書入質の巻に記載したる如く婦の血属親又は朋友をもって組成したる親属会議の承諾を得たる後特別の書入質を為しもって適法の書入質の財産の全部を請戻すことを得べしフランス民法第２１４０条

第２３５８条　フランス民法第１５７３条に同じ

第２３５９条　婦僅少の嫁資を持参したる歟又は夫婦中最初に死去したる者富豪なる時若し３人の子のみ有るに於いては後に生存する者は死者の財産の４分の１を己れの所有と為し又他の４分の１を入額所得と為すことを得べし○然れども若し多くの子有る時は１人の子の得べき財産の部分を死者の遺嘱の贈遺とみなし入額所得と為すことを得べし

　　　　○第3款　婦の嫁資外の財産

第２３６０条　フランス民法第１５７４条に同じ

第２３６１条　フランス民法第１５７６条第１項に同じ

第２３６２条　婦が自ら嫁資の財産と区別したる方法をもって支配せざる嫁資外の財産はその夫の支配する者とみなすべし

第２３６３条　若し夫１人にて嫁資の財産を支配し又は夫婦にてこれを支配し而して結婚の間に買入れたる財産を夫婦の間に共通すべき約定有る時は即ちその財産より生ずる利益は夫婦に属すべし○若し右に反する時は夫婦共にその得たる利益を随意に共有すべし但し婚姻を解除する時存在する利益又入額はこれを生ぜしめたる財産の所有者に属すべし

第２３６４条　夫をして嫁資外の財産を支配せしめたる婦はその夫の支配を差留むることを得べし

第２３６５条　フランス民法第１５７９条に同じ

第２３６６条　フランス民法第１５７５条に同じ但し婦の出すべき費用は入額の２分の１とす

第２３６７条　フランス民法第１５７６条第２項増補○然れども若し夫その婦の人に譲渡したる嫁資外の財産の代価を受取り又はその代価を己れの利益のみに利用したる証有る時はその婦はその代価の弁償を得る為その夫の財産に付き適法の書入質の権を得べし

第２３６８条　婦は前に記載したるが如く仮令い結婚間と雖も嫁資外の財産及びその利益取戻すためその夫に対し訴訟するの権を有すべし

○第4款　結婚間に買入れたる財産及び結婚間に得たる利得を共通する事

　　　　　○第1節　法に適したる財産の共通

第２３６９条　本州中に於いて婚姻を契約したる時は結婚間に買入れたる財産又は得たる利得を共通するの権を生ずべし但しこれに反対の証有る時は格別なりとす

第２３７０条　本州外に於いて婚姻の契約を結びし者後に本州に来て住居を定むる時は夫婦にて本州に来りし後に得たる財産に付いて共通の規則を循守せざるを得ず

第２３７１条　共通の財産を組成する者は夫が支配したる財産又は権利を有する財産より生ずる利益及び夫婦相互の労力又は工業より生ずる利益は如何なる名義たるを問わず夫婦にて結婚間に得たる財産とす

第２３７２条　結婚間に生じたる負債は共通の負債たるべし○婚姻前の負債は夫婦中のこれを為したる者より弁償すべし

第２３７３条　フランス民法第１４２１条及び第１４２２条増補○然れども夫がその婦に損害を与うるため共通の財産を売却せざるか又は詭欺によってこれを随意に為したる証有る時は婦は詭欺有ることを証してその財産の２分の１を取戻すためその夫の財産相続人に対し訴訟を為すを得べし

第２３７４条　婚姻解除の時夫婦相互に所有するすべての財産は共通の財産又は結婚間に買入れたる財産とみなすべし

第２３７５条　結婚間に買入れたる財産又は得たる財産を共通するに於いては婚姻解除の時その財産を夫婦又はその財産相続人に平等に分配すべし而して婚姻の時夫婦相互に所持したる財産にして夫又は夫婦相互に支配したる財産より生じたる利益は仮令い夫婦中その一方の者が他の一方の者より一層多量の財産を所持し又はその一方の者は毫も所持せざる時と雖も夫婦間に平等に分配すべし

第２３７６条　婚姻解除の時夫婦固有の土地に植付たる物の根に生じたる利益は夫婦の間又はその財産相続人の間に平等に分配すべし

第２３７７条　夫婦中一方の者に属する財産が結婚間に増加し又は改良し而してその増加又は改良は夫婦共通の労力費用又は工業の結果たるべき証有る時は一方の配偶者又はその財産相続人に増加又は改良の価額の２分の１を褒賞として附与すべし

第２３７８条　結婚間に買入れたる共通の財産を分配する時は夫婦は結婚間の負債にして婚姻解除の時未だ弁償せざる負債を平等に分担せざるを得ず

第２３７９条　フランス民法第１４９４条第１項に同じ

第２３８０条　共通の財産を受くべき権を放棄する婦は結婚間に買入れたる財産共通の権を失うべし

　然れども婦は婦資の財産婦資外の財産及び固有の財産を採るの権有りフランス民法第１４９２条

第２３８１条　フランス民法第１４５４条に同じ

第２３８２条　フランス民法第１４５６条に同じ

第２３８３条　婦は相続すべき財産の高に至る迄の外負債を払わざる特権を有する財産相続人のその財産相続を為すと否とを評議する為に制定したる期限中に共通の財産を受くべき権を放棄すべき者とす

　若しこ期限を経過するも尚その権を放棄せざるに於いては相続すべき財産の高に至る迄の外負債を償わざる特権を有する財産相続人に等しくその権を放棄すると否とを申述すべき督促を受け又は共通の財産を受くべき裁判言渡を受くべしフランス民法第１４５７条

第２３８４条　婦は公証人及び証人２人の面前に於いて共通の財産を受くべき権を放棄するを要す

第２３８５条　婦の須用に供する麻布類及び衣服類は如何なる場合と雖も財産の目録に包含するべからず而して婦は毫も方式を循守すること無くこ等の物を取戻すことを得べし

第２３８６条　丁年に達したる孀若し終審裁判を為すの権有る裁判所より共通の財産を受くべき裁判言渡を受けたる時は最早共通の財産を受くべき権を放棄するの権無き者とす

第２３８７条及び第２３８８条　フランス民法第１４６０条及び第１４６１条に同じ

第２３８９条より第２３９２条に至る　フランス民法第１４６３条より第１４６６条に至るに同じ

　　　　　○第２節　更改し又は制限したる財産共通

第２３９３条　夫婦は婚姻の契約書中に於いて共通の財産を不平均ならしむることを約定し又は一方の者の財産は何等の物たることを定め而してその財産より生ずる利益は共通せざる旨を約定しもって随意に適法の財産共通を更改することを得べし

　　　　○第5款　夫婦財産を分別する契約

第２３９４条及び第２３９５条　フランス民法第１５３６条に同じ

第２３９６条　婦は嫁資外の財産に付き前に記載したる方法に循い己れの動産又は不動産を売却することを得べし

第２３９７条　フランス民法第１３３７条に同じ但し婦の担当すべき費用は入額の２分の１とす

第２３９８条　フランス民法第１５３９条に同じ

　　　○第３章　結婚間婦より請求する財産分派

第２３９９条　フランス民法第１４１３条第１項に同じ

第２４００条　夫の法律上その婦の嫁資の財産を利益を生ずべき方法をもって用うべき場合に於いて若しこれを用いざる時はこれをもって婦の財産分派を請求することを得べき充分の原由とす

第２４０１条　フランス民法第１４４３条第２項に同じ

第２４０２条　フランス民法第１４４４条に同じ

第２４０３条　財産分派の裁判言渡を受けたる婦はその裁判言渡の日より遅くとも３ヶ月以内に英語とフランス語とをもって３回新聞紙上にその旨を広告すべしフランス民法第１４４５条

第２４０４条　又財産分派の裁判言渡を受けたる婦は結婚間に買入れたる財産のその裁判言渡の時迄存在し而してその夫とその財産を共通して利益を得べき時は即ち共通を承諾することを得べし但しこ場合に於いては財産共通より生じたる負債の弁償を分担すべし婦は婦資の財産婚姻の時携帯したる財産又は結婚間に相続したる財産及び固有の財産を取戻すべし

第２４０５条　フランス民法第１４５２条に同じ

第２４０６条　フランス民法第１４４５条第２項に同じ

第２４０７条より第２４０９条に至る　フランス民法第１４４６条より第１４４８条に至るに同じ

第２４１０条　フランス民法第１４４９条に同じ但し１８２６年の法律に増補する左の如し

　夫と別居したる婦は仮令い如何なる場合に於けるも己れの不動産を譲渡すことに付いてはその夫の允許を受くるに及ばず

第２４１１条　契約又は裁判言渡によって夫と財産を共通し又は分派したる婦は不動産の如何なる種類たるを問わず婚姻解除の以前に於いてはその夫又は裁判官の許べを得るに非ざればその不動産を他に譲渡することを得ず

　但し嫁資たる不動産を譲渡すことを得べき場合に於いてはこ限に在らず

第２４１２条　契約又は裁判言渡によって夫と財産を共通し又は分派したる婦は婚姻の前又は後に夫の契約したる負債に付きその夫のため又はその夫と共同して法に適して義務を負うこと無し

　　○第７巻　売買

　　　○第１章　売買の契約の本義及び法式

第２４１３条　本巻に記載したる規則に因り特別に預定したる場合に於いて売買の契約を為す時は契約より生ずる義務の巻に定めたる一般の規則を循守すべしフランス民法第１６２４条

第２４１４条　フランス民法第１５８２条増補○故にこの契約を完全ならしむるには一致すべき３箇の者有り即ち売買したる物件代価及び承諾是なり

第２４１５条　不動産又は奴隷の売買はすべて公正の証書又は私の証書によって為すべし○不動産または奴隷を口上にて売買したる時は第三の人に対しては勿論その契約を結びし双方の者に対してもまた無効たるべし而してその売買の証を立つべき証人を允さず

第２４１６条　口上にて動産を売買したる時は如何なる金額に登る売買と雖も法に適したる者とす但し証人となる者は契約より生ずる義務の巻に於いて法律上に定めたる規則を循守すべし

第２４１７条　私の証書をもって為したる不動産又は奴隷の売買はその証書に登記したる日より権利者に対し効を生ずべし

　然れども私の証書をもって契約を結びし双方の者はその財産相続人又はその代権人は売買の契約に管しその証書の登記無きことをもって故障を述ぶることを得ず何となればこれ等の者は私の証書をもって為したる売買に於いても公正の証書によって売買したるが如く義務を担当すべき者たればなり

第２４１８条　既に物件の所有者となりたる者錯誤によりその物件の他人に属したると信じてこれを購求するも法に適せざればその契約は無効なり而してその代価は物件の所有者に返還すべき者とす

第２４１９条　父母よりその子に不動産又は奴隷を売却したる時若し正当の財産相続人その売買の時不動産又は奴隷の代価を払いしこと無き事又は実価より４分の１以下の代価を払いしことを証するに於いてはその財産相続人は贈遺を詭欺したる者としその売買の契約を排譼することを得べし

　　　○第２章　売買を為すの権有る人

第２４２０条及び第２４２１条　フランス民法第１５９４条及び第１５９５条に同じ

第２４２２条　フランス民法第１５９７条に同じ

　　　○第３章　売却することを得べき物件

第２４２３条　フランス民法第１５９８条に同じ

第２４２４条　人の売買することを得べき物は動産、不動産、奴隷、獣類、須用品の如き有形物と義務の証券、財産相続の権、土地の義務を得べき権及びその他の権利の如き無形物とす

第２４２５条　時としては将来の物即ち土地に於いて収穫すべき利益未だ生れざる獣類若くは奴隷又はこれ等の物に類似する他の物にして未だ現物無き者を売買することを得べし

第２４２６条　又時としては不確定なる希望心を売買することを得べし即ち例これは漁人が未だ投ぜざる投網一打ち売買するが如きは仮令い毫も獲物無き時と雖も売買の契約は存在すべし何となればその売買したる物は希望心と獲物を収取するの権なればなり

第２４２７条　フランス民法第１５９９条に同じ

第２４２８条　取戻の請求有る物件はその取戻の請求中に請求者に損害を与うる方法をもってその物件を売買するを得ず

第２４２９条及び第２４３０条　フランス民法第１６００条及び第１６０１条に同じ

　　　○第４章　売買の契約の完全する方法

第２４３１条より第２４３５条に至る　フランス民法第１５８３条より第１５８８条に至るに同じ

第２４３６条　フランス民法第１６１５条に同じ

第２４３７条及び第２４３８条　フランス民法第１５８９条及び第１５９０条に同じ

第２４３９条　フランス民法第１５９１条増補○売買の代価は金額をもって定むべし他なし若し然らざれば売買に非ず即ち交換なればなり

　代価は著実を要とす更にこれを言えば誠実にしてかつ実際代価を払うべきことを約定するを要とす

　代価は物件の実価の外他の比例をもって定むべからず

第２４４０条及び第２４４１条　フランス民法第１５９２条及び第１５９３条に同じ

　　　○第５章　売買の契約の完全せし後物件に付いての損害を負担する者

第２４４２条　売買の契約の完全せし以来その売却したる物件に付いての損害は買主これを負担すべし但し次に記載したる更改有るべし

第２４４３条　売買したる物件を買主に引渡す迄売主は大切にその物件を保存することを監守するの義務有り若しこの保存を注意すること無くして物件の滅尽し又は破壊するに於いては売主その損害を負担すべし

第２４４４条　若し買主重大の怠慢をもって物件の引渡を受くることを怠りたるに於いては売主物件保存の注意を為すべき義務の釈放を受くべし

第２４４５条　若し売主物件を引渡すことを怠り而してその物件抗拒すべからざる力によって滅尽するに於いては売主の損失なりとす但しその売買したる物件を引渡す前に買主の方に於手もまた抗拒すべからざる力によって損失を生ずることの確実なる時は格別なりとす

第２４４６条　義務の執行を中止すべき未必の条件によって売買したる物件その未必の条件の成就する前に滅尽するに於いては売主の損失とす又その物件の破壊せしのみなる時は買主その物件を取るか又は契約を取消すこと自由なり又若しその物件売主の所為によらずして改良したる時は買主の利益とす

第２４４７条　２箇中の１を択むを得べき売買の契約有る時若しその２箇中第１の物件契約を結びし後に滅尽するに於手はその２箇中の１を択むの権の売主に有るか又は特別に買主に附与されたるとを問わず売主の損失なりとす故に売主は第２の物件を引渡すの義務有り又若しその第２の物件の滅尽するに於いては買主の損失にしてその代価を払わざるを得ざる者とす

第２４４８条　前条の場合に於いて２箇中の１を択むの権買主に在る時その２箇中の１の物件の引渡を受くることを怠る以前に滅尽するに於いては買主は契約を取消すことを得べし

　　　○第６章　売主の義務

第２４４９条及び第２４５０条　フランス民法第１６０２条及び第１６０３条に同じ

第２４５１条　売主より買主に対して為すべき保証は２箇の目的有りとす即ちその１はその売払うたる物件を買主の所有するに付阻害無きの保証を為す事又その２はその物件に知り得ること能わざる不良の所無きの保証を為す事是なり（フランス民法第１６２６条）

　　　　○第１款　物件を引渡す事

第２４５２条　フランス民法第１６０４条に同じ

第２４５３条　フランス民法第１６０６条に同じ

第２４５４条　奴隷の引渡は現にこれをその買主に引渡すによって成就し又既にこれを引渡したる時は契約を結びし者の承諾のみをもって成就するものとす

第２４５５条　法律上にて不動産の引渡はその所有権を転移する公正の証書と共に常に引渡す者とみなす

第２４５６条　若し売主その売払うたる物件を所有するに非ざる名義又は入額所得の名義によって保管する時は売買契約を隠匿したる者とみなすべし○契約を結びし双方の者は第三の人に対して正確となるべき売買の契約を為すを要とす

第２４５７条　フランス民法第１６０７条に同じ

第２４５８条　若し売主その売払うたる物件を保管せざる時は買主にその物件を引渡すため自己の費用をもって引取るの義務有り但し反対の約定有る時は格別なりとす

第２４５９条より第２４７０条に至る　フランス民法第１６０８条より第１６１９条に至るに同じ

第２４７１条　物件の細目を記し而してその際限を定めて売買したる時は如何なる場合と雖もその物件の度量に差異有るをもって代価を増減すること能わず

第２４７２条より第２４７５条に至る　フランス民法第１６２０条より第１６２３条に至るに同じ

　　　　○第２款　買主他人より訴訟を受けその買入れたる物件を奪わるること無き旨を売主より保証する事

第２４７６条　買入れたる物件の全部又は一部を第三の人の権利によって奪わるる時は買主の損失とす

第２４７７条　フランス民法第１６２６条に同じ

第２４７８条　保証を為すべき時は物件を奪う者の権利の売買の契約を為す以前に存在するを必要とす○若しこの権利の売買の契約以前に不完全にして買主の怠慢によって完全の者となりたるに於いては保証を為すに及ばず

第２４７９条より第２４８７条に至る　フランス民法第１６２７条より第１６３６条に至るに同じ

第２４８８条　保証は売払うたる物件の一部を奪わるるべき時に為すのみならず尚その物件を奪わるることを預知したる時もまた為すべき者とす○欺の如きは即ち奴隷の子をその母の死後に奪うことに於けるが如し

第２４８９条　財産相続の権利を売買したる時若しその買主相続すべき財産中特別の物件を奪わるるべき時は保障を為すに及ばず他無し欺の如き場合に於いて売払うたる物件は唯財産相続の権利のみなればこの権利中には財産相続に属する物件のみを包含すればなり

第２４９０条　物件の一部を奪わるる時は売買の契約を取消すことを得ざる者たればその奪われたる一部の代価は売買の代価の総額に比準して確定しこれを買主に返還すべしフランス民法第１６３７条差異

第２４９１条及び第２４９２条　フランス民法第１６３８条及び第１６３９条に同じ

第２４９３条　物件を奪われんとする買主その売主に対し保証を得んと欲する時は直にその故障有る旨を売主に通知するを要とす

第２４９４条　フランス民法第１６４０条に同じ

第２４９５条　若し買主故障を述ぶる者を相手取り出訴せざるを得ざる時は売主にその訴訟の事柄を通知すべし而して売主はその訴訟に関渉すると否とを問わず買主の負訴訟となりたるに於いては当然買主に損害の償を出すべし

　　　　○第３款　売買したる物件に不良の所有る事

　　　　　○第１節　売買したる物件に不良の所有るにより売買の契約を取消すべき訴訟を為すに至る事

第２４９６条及び第２４９７条　フランス民法第１６４１条及び第１６４２条に同じ

第２４９８条　物件に知り能わざる不良の所有ることを売主が売買の契約を為す以前又はその時申述する時は買主よりその売買を取消すべき訴訟を為すを得ず○この申述に付いては証人を立つること得べし

第２４９９条　不生活物に知ること能わざる不良の所有って売買の契約を取消すべき訴訟を生ずる事はこの節の始めに記載したる義意に包含する不良の事とす

第２５００条　奴隷又は獣類に付知ること能わざる不良の事は２種に分ち体に管する不良の事及び性質に管する不良の事とす

第２５０１条　体に管する不良の事とは関係及び不関係の２種に分つ左の如し

　不関係の不良の事とはその不良の事有るにより直に売買の契約を取消すべき訴訟を生ずる者を謂う

　関係の不良の事とはその不良の事有るにより売買したる物件を滅却してこれを不用に属せしむべき時に非ざれば売買の契約を取消すべき訴訟を為すべからざる者を謂う

第２５０２条　奴隷に管する不関係の不良の事と為すは痺癖風癲老衰とす

第２５０３条　馬及び「ミユレー」馬の一種に付いて不良の事と為すは「プース」呼吸病「モルブ」ナイラ病「フールブ」足の病とす

第２５０４条　奴隷及び獣類の体に付いて他の不良の事はこの節の始めに記載したる義意に包含する者とす

第２５０５条　奴隷の性質に付売買の契約を取消すべき不良の事は左の場合に限る者とす

　１　死刑に処せらるべき重罪を犯したる者

　２　盗を為す者

　３　逃亡の習慣有る者

　４　奴隷に逃亡の習慣有る者と為すはその主人の家に数日間２回不在せし者及び１回に１箇月以上不在せし者とす

第２５０６条　獣類の性質に付売買の契約を取消すべき不良の事はこ節の始めに記載したる義意中に包含す

第２５０７条　売主その売買したる物件の品位を正意をもって申述し而してその品位をもって売買の主たる原由と為したるに於いては売買の契約を取消すべき訴を為すを得ず

第２５０８条　売買の契約を取消すべき訴訟を為す所の買主はその売買の契約を結ぶ以前に不良の事有りたることを証すべき者とす

　若し不良の事を売買の契約を結びし後３日中に確証するに於いてはその不良の事は売買の契約以前に存在せりと思料すべし

第２５０９条　売主物件に不良の所有ることを知らざりし時はその物件の代価売買によって生じたる費用及びその物件を保存するに付生じたる費用を償うべし但し売主がその物件に付いて得たる利益右の費用を充分に償うこと能わざる時は格別なりとすフランス民法第１６４４条

第２５１０条　若し不良の所有る物件その悪しき品位なるにより滅尽するに於いては売主の損失とす

第２５１１条　買主が売買の契約を取消すべき訴訟を為す以前その物件抗拒すべからざる力によって滅尽するに於いては買主その損失を負担すべし

　然れども若しその物件裁判の初りたる後に滅尽するに於いては仮令い抗拒すべからざる力によると雖も売主その損失を負担せざるを得ず

第２５１２条　売買の契約を取消すべき訴訟はその契約を結びし日より起算して遅くとも１箇年内に為すべし

　こ期限は売主が物件に不良の所有ることを知ってその旨を買主に申述することを怠りたる場合に適用すべからず

　又右の期限は本州中に住居を定めざる売主が売買の契約を結びし時より１年を経過せざる前に不在する時にも適用すべからず而してこの場合に於ける期満得免の期限はその不在の時間中止する者とす

第２５１３条　獣類の売買の契約を取消すべき訴訟はその売買の契約を結びし日より１５日以内に為すことを得べし

第２５１４条　売買の契約を取消すべき訴訟はその売買したる物件の滅尽せし後に為すことを得但し買主の過失によって滅尽せざる時のみとす

第２５１５条　フランス民法第１６４９条に同じ

第２５１６条　売買の契約を取消すべき訴訟は買主の財産相続人の間に分つことを得ず更にこれを言えば諸財産相続人は連合して訴訟を為すを得ると雖も各自に得べき己れの部分のみに付いて訴訟を為すことを得ず

第２５１７条　売主の諸財産相続人又はその財産相続人中の１人に対して訴訟を為すは買主の自由とす

第２５１８条　数多の物件を合して売却したる時その１箇に不良の所有ってその物件をもって駄馬又は牛の１対の如き１対と為すべき者なるに於いてはすべての物件に付いて売買の契約を取消すべき訴訟を為すことを得べし

　　　　　○第２節　売買したる物件に不良の所有るによりその代価を減ずる事

第２５１９条　売買したる物件に不良の所有ってその物件不用となるか又はこれを使用するに不便なるか又は価額を減ずべき時は買主その代価を減ずべき訴訟を為すことを得べし

第２５２０条　売主その売却したる物件に品位無きを有りと申述し而して売買の契約を取消すべき訴訟を為す程に重大の事に非ざる時は買主は代価を減ずべき訴訟を為すことを得べし

第２５２１条　物件の代価を減ずべき訴訟を為したる者は売買の契約を取消すべき訴訟を為すことを得ず

　然れども裁判官は売買の契約を取消すべき訴訟に付いて唯その代価を減ずべき裁判言渡を為すことを得べし

第２５２２条　代価を減ずべき訴訟は売買の契約を取消すべき訴訟と同一の規則及び制限に従うべき者とす

　　　　　○第３節　売買したる物件に不良の所有ることを売主より買主に隠蔽せし事

第２５２３条　フランス民法第１６４５条に同じ

第２５２４条　前条の場合に於いては何時たりとも売買の契約を取消すべき訴訟を為すことを得べし但し不良の所有ることを発見せし時より１年を経過せざるを要とす

　不良の所有ることの発見は思料をもって定むることを得ざる者なれば売主よりその発見のことを証する者とす

第２５２５条　売主その売却したる物件に品位無きことを有りと申述したるに於いては詭欺とみなすべしこと斯くの如くして売買したる時はその契約を取消し又は代価を減じ又は損害の償を為すべき訴訟を為すことを得べし

第２５２６条　売主に詭欺の事有るに於いては買主が己れの為したる担保を放棄するの義務有ること無し

　　　第７章　買主の義務

第２５２７条　買主の義務は左の如し

　１　売買の代価を払う事

　２　売買したる物件の引渡を受くる事又は取去ることを得べき物件なる時はこれを取去る事又は売主が買主のため物件を保存するに付出したる費用を買主より償う事

第２５２８条　フランス民法第１６５０条及び第１６５１条に同じ

第２５２９条　買主の代価を払わざる時売主未だ物件を引渡さざる時は売主その物件の引渡を提供しもって買主をして強て代価を払わしむることを得べし

第２５３０条　若し契約を結びし後売主に物件を引渡さざるに付怠りの咎無き時その物件の売主の過失によること無く引渡すこと能わざる有様となるに於いては買主その代価を払わざるを得ず

第２５３１条　フランス民法第１６５２条に同じ

第２５３２条　若し売主その買主に代価を償うに付猶予の期限を与えたるに於いてはその期限の経過せし後より息銀を生ずべし

第２５３３条　買主その買取たる物件の引渡を受くることを怠りその咎を受けたる時は売主に損害の償いを為すべし

第２５３４条　売主は仮令い動産又は奴隷を売却したる場合に於いてもその物件を己れの方より外に出し買主をして損失を負担せしむべきことをその買主に通知してその允許を受くることを得べし

第２５３５条　フランス民法第１６５３条に同じ但しフランス民法の「又は仮令い買主」云々以下を除き「買主が売買の契約を結ぶ以前物件を奪わるるべき危難の通知を得たる時はこの規則の例外とす」を加う

第２５３６条　前条の場合に於いて売主保証人を立ること能わざるにより物件の代価を取ること能わざる時は買主をして強て代価を己れに預けしむることを得べし

第２５３７条　買主もまた息銀を払うべき義務を免がるるため物件の代価を預けんと求むることを得べし

第２５３８条　若し買主訴訟の起る以前に代価を払うたるに於いてはその代価の取戻又は訴訟の間保証人を得んと求むることを得ず

第２５３９条　フランス民法第１６５４条に同じ

第２５４０条　フランス民法第１６５５条に同じ但し裁判官の与うることを得べき猶予は６箇月を超過すべからず

第２５４１条及び第２５４２条　フランス民法第１６５６条及び第１６５７条に同じ

第２５４３条　買主物件の代価を払わざるにより売主その売払うたる物件を差押え又は取戻すべき時物件の価額減じたるに於いては買主は売主に約定したる代価の高に至る迄その減却したる代価を償うべき者とす

　　　○第８章　売買の契約を無効と為す事及びこれを取消す事

第２５４４条　フランス民法第１６５８条に同じ

　　　　○第１款　買戻の権

第２５４５条　フランス民法第１６５９条に同じ

第２５４６条　フランス民法第１６６０条に同じ但し買戻の期限は１０箇年とす

第２５４７条より第２５５２条に至る　フランス民法第１６６１条より第１６６６条に至るに同じ

第２５５３条　買主は売主が買戻の権を行う日迄物件より生ずる利益を己れの所得と為すことを得べし

第２５５４条　買主はその売買したる物件より天然に生じたる増額に付いて確定の所有者となるべく而してその増額を売主に返還するの義務無し

　然れどもその増額売買したる物件を破壊するに非ざればその物件と分つこと能わざる性質の物なる時は買戻の権を行うべき者正当の代価を払いその増額の譲渡を請求することを得べし

第２５５５条　買戻の契約により物件を買うたる者己れの費用をもって増額を得たるに於いては売主より償を取るの権有り又その売買したる物件を最初の有様にて返還することを得べき方法をもってその増額を取去ることを得べき時はこれを取去るの権有り

第２５５６条　売買したる物件は買戻の権を行う者にその時の有様にて返還せざるを得ず○若しその物件買主の過失によること無くして破壊したる時は売主その損失を負担すべし○若し買主の過失により破壊したるに於いては仮令い僅少の破壊と雖も買主より売主に償を出すべし

第２５５７条より第２５６２条に至る　フランス民法第１６６７条より第１６７２条に至るに同じ

第２５６３条　売主の権利者はその売主のみに限り行うことを得べき所の買戻の権を行うことを得ず

第２５６４条　売主が買戻の権を行う時現に財産の根に生じたる入額はその代価を弁償し又は預けたる時より売主に属すべし但し反対の契約有る時は格別なりとす

第２５６５条及び第２５６６条　フランス民法第１６７３条に同じ但しフランス民法の「但し買主の詐偽無く」云々以下を除き「若し売主１０年の後買主の承諾を得て不動産を買戻したる時は買主のその不動産に付担当したる義務及び書入質の義務は依然としてその不動産に附着したる者とす」を加う

　　　　○第２款　売主のため損失有る原由をもって売買の契約を取消す事

第２５６７条　フランス民法第１６７４条に同じ但しフランス民法の「１２分の７以上の損失」を「２分の１以上の損失」とす

第２５６８条　フランス民法第１６７５条に同じ

第２５６９条　不動産を正当の代価の２分の１以下にて売買したるに於いては代価を取戻してその不動産を返還し又は正当の代価を払うてその不動産を取置くは買主の随意とす

第２５７０条　若し買主増額を出して正当の代価を払いもって物件を取置くことを選ぶ時は売買の契約を取消さんとする訴訟を受けたる日よりその増額の息銀を払うべしフランス民法第１６８２条

　若し又買主その物件を返還して代価を取戻すことを選ぶ時は売買の契約を取消さんとする訴訟を受けたる日よりその物件より生じたる利益を返還し己れの払うたる代価の息銀もまた訴訟の日より起算して受くべき者とす

第２５７１条　フランス民法第１６８３条に同じ

第２５７２条　取消すこと能わざる売買の契約は左の如し

　１　動産奴隷又は利益の売買

　２　財産相続の権又は他人に為したる財産相続の権の売買

　３　権利の売買

　４　裁判上にて為したる不動産の売買

第２５７３条　２分の１以上の損失有るにより物件を取戻さんとする訴訟は４年間の中に為すべし

　幼者に付いて４年の期限は丁年に達したる日より起算すべし

　丁年に付いては売買の契約を為したる日より起算すべし

第２５７４条　この期限は買戻の契約書中に記したる期限間と雖も経過して敢て中止すべき者に非ず

第２５７５条　２分の１以上の損失を受けたるにより売買の契約取消の訴訟を為したる売主は物件をその時の有様にて取戻すべき者とす

　こ場合に於いて買主は訴訟以前己れの過失によって生じたる破損の責に任ずること無し○買主は己れの利益のために為したる破損の償のみを為すべし

第２５７６条　物件に付買主の為したる改良は仮令い買主の快楽のみに係ると雖もすべて買主にその償を為すべき者とす

第２５７７条　買主は売主より己れの払うたる代価の返還を受け又は物件を保存し或は改良するために出したる費用の弁償を受くる迄その物件に付保有権を有すべし

第２５７８条　フランス民法第１６８５条に同じ

　　　○第９章及び第１０章　公売及び裁判上の売買

第２５７９条より第２６０３条に至る

　原著者日これ等の条はフランス民法と毫も関係無くして訴訟法に関する者なればこれを略す

　　　○第１１章　所有権を強て譲渡さしむる事

第２６０４条より第２６１１条に至る　一般の使用に必要なる物件の所有者は裁判官より相当の代価をもってその物件を譲渡すべき言渡を受くべき者とす

　こ代価を確定するには裁判官１２人の所有者を召喚し法に適して誓を為さしめ同種類の財産の一般の価額と財産を分離するによりその残余の財産の特別なる価額及び財産を分離するにより生ずべき損害とに注意して所有権の価額を申述せしむべし

　こ裁判言渡を為す時は所有者を呼出し陪審官の申述をもって裁判を確定する者とす但し控訴することを得べし

　所有者をして強てその所有権を譲渡さしめたる後その財産に付いて所有者の権又は権利者の権を行うべき者発現するに於いては財産の代価を受取りたる者に対し財産取戻の訴訟を為すべし

　　　○第１２章　無形の権利を移す事

第２６１２条より第２６１６条に至る　フランス民法第１６８９条より第１６９３条に至るに同じ

第２６１７条　義務を得べきの権利又はその他の権利を売りたる者はこれを買受けし者に対しその義務を行うべき者のこれを尽くし得べきことを保証するに及ばずフランス民法第１６９４条

第２６１８条　フランス民法第１６９５条に同じ

第２６１９条　権利を売りたる者これを買受けし者に対しその義務を行うべき者のこれを尽くし得べきことを保証せざる時若しその義務を行うべき者権利売渡しの時その義務を尽くし得べき資力無きことを知り又はその資力無きを知るに正確なる理由有るに於いては売渡しの契約を取消し権利を売りたる者はその代価を返還すべし

第２６２０条及び第２６２１条　フランス民法第１６９６条及び第１６９７条に同じ

第２６２２条より第２６２４条に至る　フランス民法第１６２４条及び第１７００条に同じ

　　　○第１３章　負債に代うる他の物品を渡す事

第２６２５条　負債に代うる他の物品を渡す事とは義務者が金額を弁償する代に権利者が受取ることを欲する所の物件をその権利者に与うるの所為を謂う

第２６２６条　負債に代うる他の物品を渡すは現に物件を引渡すをもって為し終りたる者とす

第２６２７条　こ種類の契約によって売買したる物件に付いての損失は権利者のその物件の引渡を受く以前に在ては権利者これを負担すること無し但しその物件を受取ることを怠りたるに於いてはこの限りに在らず

第２６２８条　義務者その義務を尽くすべき資力無き時は人の己れに払う代価をもって法に適して物件を売払うことを得但し他の権利者の権利を害するに至るべき時は金額を除くの外他の物を権利者に負債の代に渡すことは法律の禁ずる所とす

第２６２９条　前条に記したる差異有る時を除くの外負債に代うる他の物を渡す事は通常の売買の契約に従属する所のすべての規則に依循すべし

　　○第８巻　交換の事

第２６３０条より第２６３４条に至る　フランス民法第１７０２条より第１７０６条に至るに同じ

第２６３５条　２分の１以上の損失有るにより交換の契約を取消すことに至るは不動産と動産とを交換したる時とす○この場合に於いて動産を受取りたる者その動産の価己れの与えたる不動産より２分の１以下の価なる時はその不動産の取戻を為すことを得べし○然れども動産を与えたる者は仮令いその動産の不動産の２倍以上の価有る時と雖もその動産を取戻さんと求むることを得ずフランス民法第１７０６条差異

第２６３６条　前条の外２分の１以上の損失有るにより交換の契約を取消すこと有り即ち財産分派を得べき者の受くべき部分の平等ならざる時これを平等に為すため金額又は動産を与えて不動産と交換したる時若しこの金額又は動産その不動産の価より２分の１以上の高価なるに於いては交換の契約を取消すことを得べし○この場合に於いて取消の訴を為すは金額又は動産を払うたる者に限るべし

第２６３７条　フランス民法第１７０７条に同じ

　　○第９巻　賃貸の契約

第２６３８条　賃貸の契約は契約の通常の規則の外本巻の目的たる特別の規則に従属する者とす

　　　○第１章　賃貸の契約の本義及びその性質

第２６３９条　賃貸の契約は一方の承諾のみによって為すべき双務の契約なり而してこの契約によって一方の者は他の一方の者に代価を確定して物件の享有権を賃貸し又はその労動を賃貸す

第２６４０条　賃貸の契約は売買の契約に於けるが如く物件代価及び承諾をもって３箇の必要なる条件とす

第２６４１条　代価は金額をもって確定すべし○然れども或分量の日用品又は賃借したる物件より生ずる利益の一部をもってもまたその代価と為すことを得べし

第２６４２条　又代価は指定めたる第三の人の中裁によって定むることを得而して斯くの如き契約は第三の人の確定する条件をもって為すべし故に若しこの第三の人代価を確定することを欲せざる時は賃貸の契約無き者とす

　指定めざる人の中裁によって代価を確定したる時は契約を無効とす

第２６４３条より第２６４５条に至る　フランス民法第１７０８条より第１７１０条に至るに同じ

　　　○第２章　物件の賃貸

　　　　○第１款　総則

第２６４６条　物件の賃貸はこれを分て２種とす家屋の賃貸及び土地の賃貸是なりフランス民法第１７１１条

第２６４７条　賃貸を為す者を称けて「プロプリエテール」所有者又は「ロカテール」家屋の貸主と云う

　賃借を為す者を称けて「プロノール」賃借主又は「ロカトール」賃借主と云い又田野の財産を借受くる者を「フェルミエー」土地の賃借主と云う

第２６４８条　使用するにより耗尽する物件を除くの外何人に限らず有形物動産又は不動産を賃貸することを得べし

第２６４９条　通行税を得るの権又はこれに類似の権の如き無形物もまた賃貸することを得べし

第２６５０条　土地の義務を得べき権は土地の義務の付着する土地と分別して賃貸することを得ず

第２６５１条　甲者の物件を保有する者は乙者にこれを賃貸することを得○然れども常に己れの使用する用法のための外その物件を賃貸することを得ず

第２６５２条　他人の物件を賃貸したる者はこれを借受けたる者のその物件の所有者より取戻の請求を受け享有権を妨げらるるに於いてはその賃借主に対し担保を出すべし

第２６５３条　フランス民法第１７１４条に同じ

第２６５４条　賃貸の期限及び条件は一般に契約をもって確定すべき者とす

第２６５５条　期限を定むること無く家屋又はその他の建造物又は居室を賃貸したる時は１箇月の賃貸とみなすべし

第２６５６条　家屋の賃貸を為したる者は契約によって確定したる期限に非ざればその家屋を去ること能わず賃貸主もまたその家屋を去らしむる能わず○若しその期限を確定せざりし時賃借主その家屋を去らんと欲し又は賃貸主の方より去らしめんと欲する時はその旨を筆記し少なくともその月末より１５日以前に他の一方の者に通報すべし

第２６５７条　期限を定むること無く土地又は田野の財産を賃貸したるに於いては1箇年の期限とみなすべし是れ畢竟本州に於いて土地の賃借主がその賃借したる土地の入額を収納するに付一般に必要なる期限なればなり

第２６５８条　土地の賃貸の期限の経過したる後その賃借主がその土地を離るること無く１箇月間継続してその土地を享有するに於いてはその期限は唯1年間延期したる者とす

第２６５９条　若し家屋又は居室の賃借主その賃借の期限の経過したる後1週間継続してその家屋又は居室を享有し而して賃貸主より故障を受くること無き時はその賃借主は第２６５６条に確定したる期限中に於いてその旨を通知したる後に非ざればその家屋又は居室を去ること能わず

第２６６０条　前の２箇条の場合に於いて賃貸の保証人となりたる者は延期より生ずる義務の責に任ずること無し

第２６６１条　若し賃借主賃貸の契約を解除したる時は仮令い家屋を継続して享有したる時と雖も黙許にて賃借を更改したりと申述するを得ず

　　　　○第２款　賃貸主の義務及び権利

第２６６２条及び第２６６３条　フランス民法第１７１９条及び第１７２０条に同じ

第２６６４条　若し賃貸主必要なる修繕を為さざりるに於いては賃借主その修繕を為さざる怠りの咎を賃貸主に帰することを得べく又若し賃貸主その修繕を為すことを拒み或は怠慢に付するに於いては賃借主自らその修繕を為し而してその修繕の缺くべからざることを証して既に払い期限の経過したる借賃又は経過すべき借賃を留置くことを得べし

第２６６５条　フランス民法第１７２１条に同じ

第２６６６条　若し賃借主故障を受けて去らしめらるる時はその賃貸主より賃借の中止より生じたる損害の償を受くべし

第２６６７条及び第２６６８条　フランス民法第１７２２条及び第１７２３条に同じ

第２６６９条　賃借したる物件その目的とする用法に不適当となり又はこれを使用するに太甚だ不便となるに於いては賃借主はその場合に従い賃借の契約を取消すことを得べし但し損害の償を得ること無し

第２６７０条　フランス民法第１７２４条第１項第２項に同じ但し修繕の期限は１箇月とす又第３項を変更する左の如し

　修繕を為すによりその修繕の成就する迄賃借主をして家屋又は居室を去らしめざるを得ざる時は賃貸主その修繕の期限間の借賃を返還すべし

第２６７１条　フランス民法第１７６５条に同じ

第２６７２条　賃貸したる物件に付着する義務有る時これを担当するは賃借主に非ずして賃貸主と為す但し反対の契約有る時は格別なりとす○故に賃貸したる物件に管する雑税土税及びその他の税は賃貸主これを払うべき者とす

第２６７３条　フランス民法第１７２５条に同じ

第２６７４条　フランス民法第１７２７条に同じ

第２６７５条　賃貸主はその賃貸その他賃貸に付いての義務の弁償を得るためその賃貸したる土地に在る賃借主の動産をもって抵当と為すの権有りフランス民法第２１０２条

第２６７６条　抵当を得るの権は土地又は家屋の主たる賃借主の動産に付いて行うのみならず二重賃借主賃借主より更に借受けたる者を云のその主たる賃借主に所有者のその権を行う時払うべき高に平均する迄その二重賃借主の動産に付いてもまた行うことを得べし

　二重賃借主その主たる賃借主に借賃の前払を為したるも所有者に対しては義務の釈放を得ること無しフランス民法第１７５３条

第２６７７条　抵当を得るの権は主たる賃借主又は二重賃借主の動産に付いて行うのみならず又第三の人の明許又は黙許をもってその賃借の家屋又は商店を装飾したるに於いてはその第三の人の財産に付いてもまた行うことを得べし

第２６７８条　抵当と為すべき動産の中には旅人がその旅宿に携帯したる物品又は商品等の如き家屋又は商店に一時有る動産を包含すべからず

第２６７９条　抵当を得るの権を行うためにはその抵当たる物件を賃借主が持去る以前に差押え又はこれを持去りし後１５日以内にして尚賃借主がその物件を所有するに於いてはこれを差押うることを得べしフランス民法第２１０２条第５項

　　　　○第３款　賃借主の義務及び権利

第２６８０条　第１７２８条に同じ

第２６８１条　フランス民法第１７２９条増補○賃借主の更に賃借を為す者有る迄必要なる時間借賃を出しかつ過失より生ずる損害の償を所有者に為すべし

第２６８２条　賃借主は借賃を払わざる時もまた立去るべき求めを受くべし

第２６８３条　若し賃貸主法律に確定したる方法と期限中に於いて賃貸の場所を立去るべきことを賃借主に通知し而してその賃借主猶住居せんとする時は賃貸主その賃借主を治安裁判官に訴えもって立去るべき裁判言渡を受けしめ尚その裁判言渡の後３日を経過して服従せざるに於いては治安裁判官は直に立去るべき裁判言渡を為し賃貸の土地は賃借主の入費をもって警察官より立去らしむべし

第２６８４条　立去るべき命令を執行することを任じたる警察官は閉じたる窓を開かしめ賃借主の所有する物件の一部を入費を払うに必要なる高に至る迄差押えかつ売却することを得べし

第２６８５条より第２６８８条に至る　フランス民法第１７５４条より第１７５６条に至るに同じ

第２６８９条より第２６９１条に至る　フランス民法第１７３０条より第１７３２条に至るに同じ

第２６９２条　フランス民法第１７３５条に同じ

第２６９３条　賃借主は自己又は家族の過失又は怠慢によるの証有る時の外火災の責に任ずること無しフランス民法第１７３３条差異

第２６９４条　１人又は数人の奴隷を賃借したる者は賃貸主又は所有者に直にその旨を通知し若しその奴隷疾病に罹り又は逃亡したるに於いてはこれに付いて生じたる損害の償を為すべし

第２６９６条　フランス民法第１７１７条に同じ

第２６９７条　賃借主はその賃借したる物件に付いて生じたる改良及び増加物をその物件を受取りし時の儘にて返還したる後取去るの権有り

　然れども石灰又は膝食をもって増加物を為したるに於いては賃貸主相当の代償を出してその増加物を留置の権有り

　　　　○第４款　賃貸の契約を取消す事

第２６９８条　フランス民法第１７３７条に同じ

第２６９９条及び第２７００条　フランス民法第１７４１条増補○裁判官は賃貸の契約を取消すに付き猶予の期限を与うるを得ず

第２７０１条　入額所得者の賃貸の契約の期限はその入額所得権と共に終るべしフランス民法第５９５条及び第１４２９条差異

　賃借主は賃貸主の財産相続人に対し毫も損害の償を求むることを得ず但しその賃貸主より賃借主に対し享有権を有したることを通知したる時のみとす

第２７０２条　フランス民法第１７４２条に同じ

第２７０３条　賃貸主はその賃貸したる物件を己れの使用に供せんため賃貸の契約を取消すことを得ず但し反対の契約有る時は格別なりとす

第２７０４条　賃貸主がその賃貸したる物件を売却するもその買主は賃貸の契約書中に確定したる期限の経過するに非ざれば土地又は家屋の賃借主を立去らしむることを得ずフランス民法第１７４３条

第２７０５条　若し賃貸の契約を為す時賃貸主が何時に限らずその賃貸したる物件を己れの使用に供することを得べき旨を約定したるに於いてはその場合の到来する時賃借主に損害の償を為すに及ばず但し反対の契約有る時は格別なりとす

　但し賃貸主は賃借主に第２６５６条に規定したる期限内に予め立去ることを通知するを要とす

第２７０６条より第２７１３条に至る　フランス民法第１７４４条より第１７５１条に至るに同じ

第２７１４条　土地又は田野の賃借主はその賃借の期限中抗拒すべからざる力により収穫物の全部又は一部を失いしことを口実として借賃の返還を得んと求むることを得ず但し平和の土地にして人皆侵入を受くべからざることを信ずる土地の中央に於いて戦争の余毒を蒙り又はこれに類似の場合を生じて賃借の契約を為しし時この契約を結びし双方の者が当然に予知し又は想像し能わざる不虞の事を生ずる場合有る時は格別なりとす

　又賃借主がその返還を求むるには収穫物に２分の１以上の損失有るを証し而して賃借の証書中に予知し又は予知せざる場合より生ずる損害を負担せざることを約定したる時とす

第２７１５条　フランス民法第１７７１条第１項に同じ

　　　○第３章　労動の賃貸

第２７１６条　フランス民法第１７７９条に同じ

　　　　○第１款　僕婢及び工丁を雇う事

第２７１７条　フランス民法第１７８０条に同じ

第２７１８条　雇主の一身又はその家の使役に属する僕婢は何時たりとも何の原由無くして解雇せられ又はその雇主を離るることを得べし

第２７１９条　人の住所又は製造場に於いて工役に使用せらるるため雇われたる者は重大の原由有るに非ざれば約定したる期限前に於いて雇主を離れ又は解雇せらるること無し

第２７２０条　重大の原由無き場合に於いて雇主その雇人を約定したる期限の経過する前に放逐するに於いては雇入れたるすべての期限中の給料を払うべし

第２７２１条　若し前条に反し雇人正当の原由無くその雇主を離るるに於いては雇期限の既に経過したる時間の給料を失うべき者たれば若しその当年又は雇わるる時給料を先取したるに於いてはその給料をその雇主に返還すべし

　　　　○第２款　水陸の運送を為す者を雇う事

第２７２２条及び第２７２３条　フランス民法第１７８２条及び第１７８３条に同じ

第２７２４条　他国に航海する婦その航行中に子を生むもその夫が婦の懐胎たりしことを知得せしと否とに管せず航通の代価を増加すること無し

第２７２５条　フランス民法第１７８４条に同じ

第２７２６条　船艦の長及び水手最終の航海のため得べき給料に付いてはその船艦に於いて先取特権を有すべし

　　　　○第３款　請負の契約

第２７２７条より第２７３３条に至る　フランス民法第１７８９条より第１７９２条に至るに同じ但しフランス民法第１７９２条に増補すること下の如し

　煉瓦屋のためには１０年間木製の家屋のためには５年間

第２７３４条　フランス民法第１７９３条に同じ

第２７３５条　その変易又は増加の充分著しきにより所有者の嘗て知らざりしと想像し能わざる場合と緊要なる変易又は増加を予定せざる場合とは前条の例外とす

第２７３６条より第２７３９条に至る　フランス民法第１７９４条より第１７９７条に至るに同じ

第２７４０条　若し工丁が約定したる造営を為さざるか又は約定したる期限中にこれを為さざるに於いてはその義務を執行せざるにより生じたる損害の償を為すべき者とす

第２７４１条及び第２７４２条　フランス民法第１７９８条及び第１７９９条に同じ

第２７４３条　請負人その工作の弁償を得るためには己れの建築したる家屋又はその他造営物に付先取特権を得べし

　或建家を築造し又は修理するため所有者より直接に使用されたる工丁もまた前項に同じき先取特権を得べしフランス民法第２１０３条

第２７４４条　請負人と契約を結びたる工丁及び材料その他の売主は請負人に義務を尽したる所有者に対し訴訟を為すの権無し

　若し請負人所有者より義務の弁償を得ざる時は工丁又は材料その他の売主は所有者より請負人に引渡すべき物件を差押うることを得べくかつ当然に所有者の先取特権に代ることを得べし

第２７４５条　所有者より請負人に前払を為したるも工丁及び材料その他の売主に対しては前払を為さざりし者と為すべき者たればその工丁及び材料その他の売主は前条に記載したる先取特権を行うことを得べし

第２７４６条　５００ドルより超過する請負を書面に認めかつ書入質を登記する者の帳簿に登記せざる時は前数条に記載したる先取特権を行うことを得ず

第２７４７条　５００ドルに超過せざる請負は前条の法式を行うに及ばず但しその先取特権は築造を終りたる日より起算し６箇月をもって期満得免となるべし

第２７４８条　船艦の製造又は修繕に使用されたる工丁は請負を書面に認むるの法式によること無くかつその金額の如何を問わず前に記載したる先取特権を有すべし但しその船艦の発航する迄訴訟を行わざるに於いてはその先取特権は消滅すべし

　　第１０巻　年金の契約

第２７４９条　年金の契約に２種有り土地を譲渡して年金を受け又は年金を払うべき約定有る貸借及び年金の設定是なり

　　　第１章　土地を譲渡して年金を受け又は年金を払うべき約定有る貸借

第２７５０条　土地を譲渡して年金を受け又は年金を払うべき約定有る貸借の契約とは甲者より乙者に土地又は不動産に付いての権利を貸渡し又は譲渡し而して所有者の名義をもってこれを有せしめ若干の金額又は利益を毎年受くべき権を己れに保存し乙者は甲者に対してこれを払うべき契約を謂う

第２７５１条　年金を払うべき契約有る不動産貸借の契約は無期の者たり○若し期限を定めたる時は尋常の貸借なり

第２７５２条　或期限に至り代価を払うべき約定をもって売買の契約を為し而してその売買したる日より息銀を生ずべき時は年金を払うべき約定有る貸借に非ず

　若しこれに反し代価を払うべき期限を定むること無く唯元金に無期の息銀を生ずべき約定をもって売買の契約を為したる時は年金を払うべき約定有る貸借とす

第２７５３条　年金を払うべき約定有る貸借の契約は売買の契約と貸借の契約に管する者とす

第２７５４条　年金を払うべき約定有る貸借を為すには売買の契約のために設けたる規則に依循すべし但し左に記載する例外は格別なりとす

第２７５５条　年金を払うべき約定をもって貸借したる物件は売買したる物件の買主の所有となるに等しく保有者の所有となるべしと雖もその年金を払うべき保有者はその年金を払うに足る利益を生ずべき方法をもってその物件を善良に保存せざるべからず

第２７５６条　売買したる物件抗拒すべからざる力により滅尽するに於いては買主の損失たりと雖も年金を払うべき約定有る貸借に付いては双方の損失たるべし

　然れども年金を払うべき義務を消滅するには物件の全部の滅尽するを要する者たればその一部のみ滅尽するに於いてはその損失に比較して年金を滅却するのみとす

第２７５７条　売買したる物件は他に条件を要すること無く全く譲渡すことを得べき者たるも年金を払うべき約定をもって売買したる物件に付いては仮令いその物件何人の手に渡るとも無期の年金を払うべき者とす

第２７５８条　売買したる物件の代価を払うは買主一身の義務に属すと雖も年金を払うべき約定をもって貸借したる物件の代価を払うべき義務は所有者に属する者たればその物件を他に譲渡す保有者はその物件を享有したる時間に払い期限に至りし年金のみを払う者とす

第２７５９条　土地を譲渡して受くべき年金は仮令い無期の約定たりと雖も譲渡したる者はその買戻の条件を規定しかつ或期限を過去りし後に非ざれば買戻すこと能わざる約定を為すことを得べし而してその期限は３０年を超過すべからずフランス民法第１９１１条

第２７６０条　年金の契約書中に不動産の価額を確定し有りたる時はその不動産を保有する者その買戻を為さんとする時に於いてその価額外の代価を払うに及ばず

第２７６１条　若しその価額を確定せざる時は年金をその価額の１０分の６とみなし不動産の保有者はその登り高の元資を払うべし

第２７６２条　物件を譲渡したる者は年金の弁償を得るため契約を結ぶ日よりその物件に付書入質の権を得べし但し少しなりとも満１箇年の年金のために非ざればその物件を差押え又は売却せしむることを得ず

第２７６３条　土地を譲渡して受くべき年金はその土地に附着したる者たればその土地に等しくこれを書入質と為すことを得べし

　又差押うること能わざる約定をもって第三の人の利益の為恩恵の契約をもって定めたる年金に付いては前項の例外とす

　　　○第２章　年金の設定

第２７６４条及び第２７６５条　フランス民法第１９０９条及び第１９１０条に同じ

第２７６６条　畢生間の年金の高は如何なる場合と雖も法律上の息銀の２倍に超過することを得ず又無期の年金の高は法律上の息銀に超過することを得ず

第２７６７条　フランス民法第１９１１条に同じ

第２７６８条　フランス民法第１９１２条に同じ但しフランス民法の２年の間を３年の間とす

第２７６９条　フランス民法第１９１３条増補○年金を得べき者の財産の配当を得るに必要なる金高に至る迄元資を還さしむることを得べし

第２７７０条　年金を払うべき者の保証人は年金の契約中に記したる期限中又はその契約書中に期限を記せざる時は１０年の後その年金を払うべき者をして年金を買戻さしむることを得べし

第２７７１条　貸渡したる金額の息銀及び畢生間の年金に付いては少なくとも満１年その金額を払わざる時に方り権利者の訴訟を為せし日より後に非ざれば息銀を生ずること無しフランス民法第１１５４条及び第１１５５条

　　○第１１巻　会社

　　　○第１章　総則

第２７７２条　フランス民法第１８３２条に同じ

第２７７３条　契約を結ぶの能力有る者はすべて会社を組成することを得べし

第２７７４条　会社の契約は契約より生ずる義務の巻及び本巻に記載したる規則をもって規定する者とす

第２７７５条　不適法又は風儀に背戻する目的をもって組成したる会社はすべて無効たるべし○右の如き会社と契約を結びたる人若しその会社の不適法又は風儀に背戻する目的たることを知らざりし時はその社員連帯してその人に対し義務を尽すべし

第２７７６条　会社は単一の承諾のみをもって契約を結ぶ者とす

第２７７７条　共通財産の各所有者はその共通財産を得たる方法如何を問わず会社を組成したる者に非ず

第２７７８条　婚姻によって生じたる財産共通は会社に非ず

第２７７９条　会社に集合したる財産又は会社に得たる財産及びその利益をその会社の利益のために分配せずして保存する時問は会社の元資と称する者とす

第２７８０条　フランス民法第１８３３条に同じ但しフランス民法の第２項に「信用」を加う

第２７８１条　信用とは義務を尽すの固有の身分有ることを謂う

第２７８２条　会社の契約は利得を分配するの希望をもって目的とす○利得を分配するの契約無き時は法律をもってその利得を分配せしむべし

第２７８３条　利益は所有権を得ることに使用すべき旨を契約することを得べし

第２７８４条　利益の分配を受くる者は損失と費用とを担当するの義務有り

第２７８５条　フランス民法第１８５５条第２項に同じ

第２７８６条　１個の社員は己れの受くべき利益を第三の人に与うることを得但し第三の人はその利益を得たるも社員となること無かるべし

第２７８７条　会社は遺嘱の諸事を管理し後見を為し、管財を為し又は他の私用の任務を負うこと無し

第２７８８条　私用の任務とは私の利益のため官吏の允許を得て行うべき職務を謂う

第２７８９条　１人以上にて行うべき私用の任務は会社にて負担することを得べし

第２７９０条　会社はその組成の目的に管する契約又は名代を行うためには名代人又は管理人となることを得べし

第２７９１条　会社名代を為し又はその組成の目的外の事件を管理することを任ずる時各社員承諾を為すに於いてはその名代又は管理は有効の者とす

第２７９２条　承諾は書面をもって為すべし

第２７９３条　会社に於いてその社員中の１人他の社員の承諾を得ること無く所有権を購求したる時は他の社員はこれを承諾し又は拒むこと自由なりとす

第２７９４条　会社の財産は社員各自の負債より前に会社の負債を弁償するために充つべき者とす○社員各自に受くべき財産はその社員の権利者これを差押え又は売却することを得べし但し会社の権利者はその財産に付先取特権を有すべし又右の如く法に適して財産差押を為したる時は会社を解散したる者とみなすべし

　　　○第２章　会社の種類に管する規則

　　　　○第１款　会社の区別

第２７９５条　会社はその目的に従い商業会社と通常会社とに区別す

第２７９６条　商業会社は左の如く組成したる者を謂う

　１　動産をその有様にて又はその形を変じて売買する事

　２　管理人の名義にて動産を売買する事

　３　船艦を賃貸して不動産を転移する事

第２７９７条　通常の会社とは商業のために非ざる者を謂う○自余はフランス民法第１８３５条に同じ

第２７９８条　商業会社は一般及び特別の２種に分つ○商法に抵触せざる点に付いては本巻の規則をもって商業会社に適用すべしフランス民法第１８７３条

第２７９９条　差金会社は商業会社又は通常会社たることを得べし

　　　　○第２款　諸般の財産に付いての会社

第２８００条　諸般の財産に付いての会社とは動産又は不動産の所有権又はその利益を共通すべき契約にして将来の利益を共通せざる時は無効に属すべき者を謂う

第２８０１条　諸般の利益に付いては会社には購求又は工業によって得たる利益を共通する者とすフランス民法第１８３６条

第２８０２条　フランス民法第１８３９条に同じ

第２８０３条　諸般の利益に付いての会社に於いて商業の事務を為す時はその事務は商法に記載したる規則によって規定すべし

第２８０４条　フランス民法第１８４０条に同じ

第２８０５条　諸般の利益に付いての会社を結ぶには社員の姓名を手署したる書面をもって契約しかつ後に記載する方法をもって登記すべしフランス民法第１８３４条

　　　　○第３款　別段定めたる財産に付いての会社

第２８０６条　別段定めたる財産に付いての会社とは商業の性質を帯びざる或事務のために組成したる者を謂うフランス民法第１８４１条

第２８０７条　会社の資産の或部分不動産なる時はその会社の契約は書面に認めかつ登記すべし

第２８０８条　前条に記載したる会社の事務はその会社に関係する者の名義をもって管理すべし但し会社の印をもって管理すべきことを会社の契約書中に記載したる時は格別なりとす

第２８０９条　若し会社の契約を登記したる時は社員中の１名又は数名の姓名をもって編製したる会社の印を用うることを得べし但し会社に関係する者の姓名の外他の者の姓名をその印に編製することを得ず

　　　　○第４款　差金会社

第２８１０条より第２８１３条に至る　差金会社とは元資を出したる社員その元資の高に応じて利益を得べき権を有しかつその元資の高に至る迄の外損失又は費用を償うの責に任ぜざる者を謂うフランス商法第２３条

第２８１４条　社員は法に適して得たる配当金を返還するに及ばず

第２８１５条　社員は証書をもって他の社員に己れの義務を負わしむること能わず

第２８１６条より第２８１９条に至る　会社の契約は書面に認めこれを６日内に登記しかつ差金会社に関係するすべての条件を記載すべし○この契約書には証人の面前に於いて姓名を手署すべし○会社の契約書を登記したる時はこれを公けに開発すべし

第２８２０条及び第２８２１条　会社の事務はその管理者の名義をもってするに非ざれば管理することを得ず○若し社員その会社の事務に立入り又は社員に己れの名義を使用することを充す時は会社の責に任ぜざるべからず○然れども若しその管理者社員の名義を使用する時は元資を取揚ぐることを得而して社員はその責に任ずるに及ばず

第２８２２条　差金主は己れの前払したる元資を受取りたる者の家資分産の有様となり又は義務を尽すの資力無きに至るべき当然の恐れ有るもその元資を取戻すことを得ず

　　　　○第５款　商業会社

第２８２３条　フランス民法第１８７３条に同じ

　　　○第３章　社員の間互に行うべき義務及び社員外の人に対して行うべき義務

　　　　○第１款　社員の間互に行うべき義務

第２８２４条及び第２８２５条　フランス民法第１８４３条及び第１８４４条に同じ

第２８２６条　会社の契約は未必の条件に管せしむることを得べし

第２８２７条　フランス民法第１８４５条に同じ

第２８２８条　会社に確定の物件を差入るべきことを約定したる社員若しその物件を差押えらるべき場合に於いては売主より買主に対して出すべき担保に等しき担保を会社に対して差出すべし

第２８２９条及び第２８３０条　フランス民法第１８４６条及び第１８４７条に同じ

第２８３１条　フランス民法第１８４８条に同じ但しフランス民法の第２項を除く

第２８３２条　フランス民法第１８４９条に同じ

第２８３３条　フランス民法第１８５０条増補○然れども如何なる社員と雖も正当をもって為したる事件より生じたる損害の責に任ずること無し

第２８３４条及び第２８３５条　フランス民法第１８５１条及び第１８５２条に同じ

第２８３６条　フランス民法第１８５３条第１項に同じ

第２８３７条　フランス民法第１８５４条第１項に同じ

第２８３８条より第２８４１条に至る　フランス民法第１８５６条より第１８６０条に至るに同じ

第２８４２条　フランス民法第１８６１条増補○その他人の生じたる損害は第２８３３条に従い自から生じたる損害の責に任ずると等しき方法をもって会社に対しその責に任ずべし

　　　　○第２款　社員外の人に対する社員の義務

第２８４３条　通常会社の社員はその会社の負債を連帯して担当すること無し又各社員は他の社員をして己れの行うべき義務を負わしむることを得ず但し反対の証拠有る時は格別なりとすフランス民法第１８６２条

第２８４４条　通常会社の各社員はその人員に応じて定めたる会社の負債を担保し各社員の元資又はその得べき利益の高に応じて担保すること無しフランス民法第１８６３条

第２８４５条　通常会社の社員中の１人他の社員の承諾を得ずして負債を為し而して会社に於いて利益を得たる時は他の社員もまた義務を負うべし

第２８４６条　会社の管理人の契約したる義務はすべての社員これを担当すべし

　　　○第４章　会社の終る種々の方法

第２８４７条及び第２８４８条　フランス民法第１８６５条に同じ但し「フランス民法の准死と産業を破りたる事と」を除く

第２８４９条　フランス民法第１８６６条に同じ

第２８５０条　各社員に属する数多の物件を共通しもってこれを売却しその代価を差入れて会社を結ぶべき契約を為したる時若しその数多の物件中その１箇滅尽するに於いてはその会社は消散する者とすフランス民法第１８６７条

第２８５１条及び第２８５２条　フランス民法第１８６７条第３項に同じ

第２８５３条　フランス民法第１８６８条に同じ

第２８５４条　社員中の１人治産の禁を受け又は家資分産を為したるに付会社を解散することは社員中の１人死去するに等しき効力有りとすフランス民法第１８６５条

第２８５５条より第２８５９条に至る　フランス民法第１８６９条より第１８７１条に至るに同じ

第２８６０条　社員中の１人会社を退絶するもその会社を解散すべき者に非ず但し他の社員に退絶すべき命令有る時は格別なりとす

第２８６１条　フランス民法第１８７２条に同じ

　　○第１２巻　貸借

第２８６２条及び第２８６３条　フランス民法第１８７４条に同じ

　　　○第１章　耗尽せざる物の貸借

　　　　○第１款　耗尽せざる物の貸借の本義

第２８６４条より第２８６８条に至る　フランス民法第１８７５条より第１８７９条に至るに同じ

　　　　○第２款　耗尽せざる物の借主の義務

第２８６９条より第２８７６条に至る　フランス民法第１８８０条より第１８８７条に至るに同じ

　　　　○第３款　耗尽せざる物の貸主の義務

第２８７７条より第２８８０条に至る　フランス民法第１８８８条より第１８９１条に至るに同じ

　　　○第２章　耗尽すべき物の貸借

　　　　○第１款　耗尽すべき物の貸借の本義

第２８８１条より第２８８６条に至る　フランス民法第１８９２条より第１８９７条に至るに同じ

　　　　○第２款　耗尽すべき物の貸主の義務

第２８８７条及び第２８８８条　フランス民法第１８９８条より第１９００条に至るに同じ

第２８８９条　随意に取戻すことを得べき旨をもって物件を貸借したる時は猶予の期限を与うるに及ばず

第２８９０条　フランス民法第１９０１条に同じ但しフランス民法の末文を左の如く変更す

　借主の還すことを得べき有様に至りたる時は直に返還すべき言渡を受くべし

　　　　○第３款　耗尽すべき物の借主の義務

第２８９１条　フランス民法第１９０２条増補○若し返還すべき場所を定めざる時はその貸借を為したる場所に於いて返還すべし

第２８９２条及び第２８９３条　フランス民法第１９０３条及び第１９０４条に同じ

　　　○第３章　息銀有る貸借

第２８９４条　フランス民法第１９０５条に同じ

第２８９５条　息銀には法律にて定めたる者又は契約をもって定めたる者の２種有り

　法律上の息銀には限定有り左の如し

　訴訟の目的たるすべての金額に付いては１００分の５とす而してこ息銀を名けて裁判上の息銀と云う

　契約上の息銀の高は１００分の１０に超過することを得ず而してその高は書面に認めもって確定することを得べし又如何なる場合と雖も証人の証拠を立るを許さず〔１８０７年９月３日フランス国の法律〕

第２８９６条　フランス民法第１９１８条に同じ

　　○第１３巻　附託の事及び双方相争う物を人に付託する事

　　　○第１章　すべての附託の事及び付託の種類

第２８９７条　フランス民法第１９１５条に同じ

第２８９８条　フランス民法第１９１６条に同じ

　　　○第２章　通常の附託

　　　　○第１款　附託の契約の本義

第２８９９条より第２９０２条に至る　フランス民法第１９１７条より第１９２０条に至るに同じ

　　　　○第２款　随意の附託

第２９０３条及び第２９０４条　フランス民法第１９２１条及び第１９２２条増補○若し所有者受託者の方に物件を送り又は送らしめたる時その受託者物件の引渡を明知しかつこれを受取ることを拒まざる時は黙許の承諾有りとす

第２９０５条　所有者の知らざる附託物有りたる時はその所有者受託者の手よりその物件取戻すことを得べし而して受託者はその物件を返還することを拒むを得ず但しその所有者と相対して物件の返還を命ぜしむるためその附託者を呼寄することを得べし

第２９０６条及び第２９０７条　フランス民法第１９２５条及び第１９２６条に同じ

　　　　○第３款　受託者の義務

第２９０８条より第２９１１条に至る　フランス民法第１９２７条より第１９３０条に至るに同じ

第２９１２条　附託したる物件使用するに従て耗尽すべき者なる時若しその附託者その受託者にこれを使用することを許す時は附託の契約に非ずして即ち耗尽すべき物の貸借なりとす

第２９１３条　奴隷又は獣類を附託したる時は受託者その附託者の利益のためこれを利用することを得但し附託者その利用を禁じたる時は格別なりとす

第２９１４条より第２９２６条に至る　フランス民法第１９３１条より第１９４４条に至るに同じ

第２９２７条　フランス民法第１９４８条増補○受託者はその附託者より生じたる負債の外附託者より己れに払うべき他の負債有るを口実とし又は権利と義務と相殺する法式によって附託を受けたる物件を留置を得ず

第２９２８条　若し数人にて同一の物件の附託を受けたる時はその附託を受けたる数人物件の全部を返還するの義務有り

第２９２９条及び第２９３０条　フランス民法第１９４５条及び第１９４６条に同じ

　　　　○第４款　附託者の義務及び権利

第２９３１条　フランス民法第１９４７条に同じ

第２９３２条　附託者はその附託したる物件のその儘にて受託者又はその代権人の手に存在するに於いてはその物件を取戻すの権有り

第２９３３条　若し受託者又はその代権人その物件を随意に為したるによりその代価を払うべき時は附託者はその受託者の他の権利者より先にその代価を受取るの権有り

第２９３４条　往昔の法律上に於いて完全の附託と不完全の附託とに付定めたる区別はこれを廃棄す

　　　○第３章　己むを得ざる附託

第２９３５条　フランス民法第１９４９条増補○正意有る相当の証人１人にて誓を為しもって証拠の申述を為す時は仮令い附託したる物件の代価５００ドル以上なる時と雖も己むを得ざる附託の証と為すに充分なりとす

第２９３６条　フランス民法第１９５２条に同じ

第２９３７条　旅舎の主人は旅客のその携え来りし物件を旅客自らこれを監守すべき人に渡さざる時と雖もその責に任ずべし但しその旅客が僕婢又は他の雇人にその物件を渡置きたる時のみとす

第２９３８条及び第２９３９条　フランス民法第１９５３条及び第１９５４条に同じ

第２９４０条　正意有る相当の証人１人にて誓を為しもって証拠を申述したる時は仮令い物件の代価５００ドルに超過したる時と雖も旅舎の附託に管しては己むを得ざる附託の証に採用すべし

　　　○第４章　双方相争う物を人に附託する事

　　　　○第１款　双方相争う物を人に附託する事の種類

第２９４１条　フランス民法第１９５５条に同じ

　　　　○第２款　双方相争う物を契約上にて人に附託する事

第２９４２条より第２９４５条に至る　フランス民法第１９５６条より第１９５９条に至るに同じ

第２９４６条　双方相争う物の附託を受けたる者は争議決定の後に非ざれば物件を受取るべき者にこれを返還すべからずフランス民法第１９６０条

第２９４７条　受託者はその受託の義務を免がるるに缺くべからざる原由有るに非ざれば己れの受託したる物件を引渡すことを得ず

　こ場合に於いては争議に関係有る諸人認べしたる者にその物件を引渡すべし又若しその諸関係人に対し訴訟を為すべし

　　　　○第３款　双方相争う物を裁判所の言渡をもって人に附託する事

第２９４８条　裁判上の附託とは法律上にてその手続を定めたる場合に於いて裁判官の命令により為すべき附託を謂う

第２９４９条　フランス民法第１９６２条に同じ

第２９５０条　双方相争う物を裁判上にて附託する事とは裁判官の命令を執行するため法律上にて定めたる検察官に為すべき附託を謂う

　こ検察官は双方相争う物を契約上にて附託する事に管する義務を負担する者とすフランス民法第１９６３条

　　○第１４巻　偶生の事に管する契約

第２９５１条　フランス民法第１９６５条第１項に同じ

第２９５２条及び第２９５３条　フランス民法第１９６６条及び第１９６７条に同じ

　　○第１５巻　名代の証書

　　　○第１章　名代の証書の本義及び法式

第２９５４条　フランス民法第１９８４条第１項に同じ

第２９５５条　名代は５箇の利益のため即ち特り本人の利益のため、双方の者の利益のため、第三の人の利益のため、第三の人と本人との利益のため、名代人と第三の人との利益のために契約することを得べし

第２９５６条　名代の目的たる事務は適法の事にして本人これを為すの権有る事たるを要とす

第２９５７条　フランス民法第１９８４条第２項に同じ

第２９５８条　フランス民法第１９８５条第２項に同じ

第２９５９条　名代人その名代を承諾せず又は執行せざる旨を申述するに於いては本人その名代を任じたるの証を立つべし

第２９６０条　フランス民法第１９８６条に同じ

第２９６１条　フランス民法第１９８５条第１項に同じ

第２９６２条　名代人の姓名は名代の証書に記せざることを得べし

　こ場合に於いては証書を所持する者をもって名代を承諾したる者とみなすべし

第２９６３条　フランス民法第１９８７条に同じ

第２９６４条　名代の証書には本人の利益となるべきすべての事の名代を任ずる旨を記し又はその証書中に記載したる事を為すの権に限る旨を記すべし

第２９６５条　フランス民法第１９８８条に同じ

第２９６６条　特別の名代を要すべき条件は左の如し

　物件を売買する事

　抵当を出し又は書入質を為す事

　為替手形若しくは証券を取り又はその裏面に姓名を手署する事

　和解を為す事

　財産の管理に管せざる所行を為す事又は財産管理の結局に必用ならざる所行を為す事

第２９６７条　和解を為すの名代には裁判を為すの名代を包含すること無し

第２９６８条　フランス民法第１９８９条第２項に同じ

第２９６９条　１箇の職業を営む人又は常に従事する事務のため或事を為すの任務を行う人に与うる名代の権は特別に定むるを要せず而してその権は名代人の行うべき任務の本義に付いて規則有り

第２９７０条　フランス民法第１９９０条に同じ

　　　○第２章　名代人の義務

第２９７１条より第２９７４条に至る　フランス民法第１９９１条より第１９９３条に至るに同じ

第２９７５条　すべての名代を為す所の名代人は己れの正意をもって為したる事に付いてはその責に任ずること無し

第２９７６条より第２９７８条に至る　フランス民法第１９９４条に同じ

第２９７９条　名代人はその名代の証書中に記したる条件の外他の事を為すを得ず○若し他の事を為し本人これを認諾せざる時はその本人に対しては無効の者とす而して独り名代人が己れの名義をもって為したる事と為すべしフランス民法第１９８９条

第２９８０条　名代人のその名代の証書中に記載したる事より本人のため一層利益となる方法をもって行うたる事は名代の証書に記載したるより以外の事を為したる者とみなすべからず

第２９８１条　フランス民法第１９９７条に同じ

第２９８２条　名代人己れと契約を結びたる者に自己の任を受けたる権利の定期を通知すること無くして契約を結び又は名代の証書中に記載したるより以外の事を為したるに於いては己れと契約を結びたる者に対し義務の責に任ずること無し

第２９８３条及び第２９８４条　フランス民法第１９９５条及び第１９９６条に同じ

　　　○第３章　契約を結びたる双方の名代人及び事務の中裁人

第２９８５条　中裁人とは契約を結びたる双方の間に事務を商議することを担任するにより双方の名代人とみなすべき者を謂う

第２９８６条　中裁人の義務はすべて通常の名代人の義務に同じ

第２９８７条　中裁人は己れの担任する事務より生ずるすべての事件の責に任ぜずと雖も他の名代人に等しく己れの為したる詭欺又は過失の責に任ずべし

第２９８８条　中裁人は詭欺を為したる場合を除くの外仮令いその中裁に付謝儀を受けかつ物件を購求し又は借用する者の利益のため中裁を為したる時と雖もその物を貸渡し又は売渡すべき者の義務を行うべき資力無き時の担保人となること無し

第２９８９条　商業世話人又は手形売買世話人の如き商業上の事務の中裁人は一般の中裁人の担保すべき義務の外尚商法に規定したる義務を担当すべき者とす

　　　○第４章　本人の義務

第２９９０条及び第２９９１条　フランス民法第１９９８条及び第１９９９条に同じ

第２９９２条　名代人は本人より受くべき金額又は入費の弁償を得るため己れの手に有する本人の財産を留置くの権有り

　又本人より受取るべき物有る時これを己れに有するに於いては権利と義務と相殺する手続によりその物を留置くことを得べしその義務に付紛議無き時のみとす

第２９９３条より第２９９５条に至る　フランス民法第２０００条より第２００２条に至るに同じ

　　　○第５章　名代の終る方法

第２９９６条より第３００３条に至る　フランス民法第２００３条より第２０１０条に至るに同じ

　　○第１６巻　保証

　　　○第１章　保証の義務及びその定限

第３００４条　保証とは既に契約を結びたる甲者と乙者が契約を結ぶ附従の約定にして義務者が自からその義務を行わざる時その権利者に対し充分に義務を尽すべき約定を謂うフランス民法第２０１１条

第３００５条より第３００９条に至る　フランス民法第２０１２条より第２０１６条に至るに同じ

第３０１０条　保証人はその保証を為すに付己れの財産を書入質と為すに及ばず但し別段の約定有る時は格別なりとす

第３０１１条　フランス民法第２０１８条に同じ

第３０１２条　フランス民法第２０２０条に同じ

第３０１３条　保証人の義務はその相続人に継続すべしフランス民法第２０１７条

　　　○第２章　保証の効

　　　　○第１款　権利者と保証人との間に生ずる保証の効

第３０１４条より第３０１９条に至る　フランス民法第２０２１条より第２０２７条に至るに同じ

第３０２０条　権利者はその義務者と保証人とを一通の訴状をもって訴うることを得べし○こ２人に対する裁判言渡有りたる時は義務者の財産をもって先ずその義務に充てしむべき旨を述ぶるの権有る保証人は先ず主たる義務者に対し裁判言渡有らんことを要求することを得べし

　　　　○第２款　義務者と保証人との間に生ずる保証の効

第３０２１条より第３０２６条に至る　フランス民法第２０２８条より第２０３２条に至るに同じ

　　　　○第３款　保証人数人の間に生ずる保証の効

第３０２７条　フランス民法第２０３３条に同じ

　　　○第３章　保証の消滅する事

第３０２８条より第３０３２条に至る　フランス民法第２０３４条より第２０３９条に至るに同じ

　　　○第４章　法律上の保証及び裁判言渡上の保証

第３０３３条　フランス民法第２０４０条第１項に同じ

第３０３４条　フランス民法第２０４１条増補○但し質と為す物件はこれを保存するに困難ならずかつ損害を生ずべからざる物たるを要とす

　又保証金を出すべき者は保証を請取るの任有る検察官にその金額を出すべし

第３０３５条及び第３０３６条　フランス民法第２０４２条及び第２０４３条に同じ

第３０３７条　裁判言渡上の保証の効に付いては訴訟法に規則有り

　　○第１７巻　和解

第３０３８条　フランス民法第２０４４条に同じ

第３０３９条　フランス民法第２０４５条第１項及び第２項に同じ

第３０４０条及び第３０４１条　フランス民法第２０４９条及び第２０５０条に同じ

第３０４２条　和解の契約を執行せざるに於いては罰に処すべき約定を和解の契約に付することを得べし

第３０４３条　権利者その義務者の保証人と和解する時はその保証人の義務を釈放することを得べく而して義務者はその和解をもって権利者に損害を加うべからず但し義務者の和解したる時は保証人もまた義務の釈放を得べし

第３０４４条より第３０５０条に至る　フランス民法第２０５１条より第２０５７条に至るに同じ

　　○第１８巻　延期の和解

第３０５１条　延期の和解とは義務者が一時己れの義務を尽すこと能わざるによりその権利者と和解しその権利者に払うべき金額の弁償に付猶予の期限を得べき契約を謂う

第３０５２条　延期の契約には随意の者と己むを得ざる者との２種有り

第３０５３条　己むを得ざる延期の和解はすべての権利者がその意見を異にする場合に於いて生ずる者とす

第３０５４条より第３０５８条に至る　己むを得ざる延期の和解に効を生ずるためには裁判官が諸権利者の会合を命じその人員の４分の３にしてかつ全額の義務の４分の３を受くべき者の承諾を受け義務者は己れの財産と負債との目録を裁判所の書記局に差出し又諸権利者は裁判官より委任せられたる公証人の面前に於いて誓を為しもって権利の全額を確証しかつ延期の和解の契約書を確的の証書と為すを要とす

第３０５９条　延期の和解の契約書を確的の証書と為すに付故障を述ぶる者はその和解の評議書を書記局に差出したる時より１０日内にその故障を申立つべし

第３０６０条　義務者の財産は延期の和解の効によって書入質となること無し但しその和解に付故障を述ぶる権利者はその義務者がその義務の釈放を得るために金額を用い又は保証人を設くるに非ざればその財産を売却し得ざる旨を要求することを得べし

第３０６１条　若干の権利者義務者の義務の一部を釈放するに付いては他の権利者に管係すること無し

第３０６２条　延期の和解を為し又は義務の釈放を為すに付加入せざることを得べき権利者は左の如し

　先取特権の如何なる種類たるを問わずその特権を有する権利者

　公けの証書をもって特別の書入質の権を有する権利者

　後見人又は管財人より計算の残額を得べき幼者

　嫁資を請取り又は嫁資を取戻すことを得る権有る婦

　故に右に記載したるが如き先取特権有る権利者又は特別の書入質の権有る権利者は仮令い他の権利者の人員４分の３にしてかつ全額の義務の４分の３を得べき者の承諾有る延期の和解の効有るも己れの受くべき財産を差押うるの権有り然れども若しその財産己れの受くべき義務に不充分なる時は延期の和解によって与わられたる猶予の期限の経過したる後に非ざれば義務者に対し又は他の財産に対し不足の義務を得んと求むることを得ず又一般の書入質の権を有する権利者は尋常の権利者に等しく延期の和解の契約を為すべき者とす

第３０６３条　義務者に与えたる猶予の期限は３年を超過するを得ず○故障を延べたる権利者所要の時は３年に超過したる猶予の期限を減縮するの権有り

第３０６４条　義務者が財産を放棄せんと求めたる時は延期の和解を求むることを得ず

第３０６５条　諸権利者延期の和解を許さざるに於いてはその和解の請求を財産放棄の請求に変更するの権有り

　　○第１９巻　判断人に任ず事

第３０６６条より第３０９９条に至る

　原著者日本巻は訴訟手続の規則を包含する者なれば我がフランス国訴訟法第３篇と対照するをべとすけだし吾人はこ事に従事せず

　　○第２０巻　質入の事

第３１００条より第３１０２条に至る　フランス民法第２０７１条及び第２０７２条に同じ

　　　○第１章　総則

第３１０３条　すべて法に適したる義務は質入なる附従の義務をもって確証することを得べし

第３１０４条　主たる義務未必の条件に管する時は質入の義務もまたその主たる義務と共に成就し又は消滅すること有るべし

第３１０５条　主たる義務無効なる時は質入の義務もまた無効たるべし

第３１０６条　純然たる天然の義務に附従したる質入の義務はその天然の義務を確認しかつこれを執行せざるを得ざる場合に至るに非ざればその効を生ぜず

第３１０７条　質入を為すは啻に金額に管する場合のみならず保証の如き他の目的に管する義務のためにもまた為すことを得又甲者乙者をして丙者に対し己れの保証人とならしむるためその乙者に質物を与うるも妨げ無し

第３１０８条　質入は人に対する義務又は物に対する義務に付いて為すことを得べし

第３１０９条　義務者はすべて己れに属する物件を質入と為すことを得べし

　然れども取消すことを得べき所有権又は或義務に属する所有権を有する物件をもって質入と為したる義務者は己れの有する権利の外質入の時他の権利をその権利者に附与することを得ず

第３１１０条　質入となりたる物件の義務者に属するや否を知るためにはその質入の契約を為す時権利者その物件所在の場所に派出すべし

第３１１１条　義務者質入の契約を為す時その質入と為したる物件の所有権を有せざるも後に至り或名義によりその所有権を得たるに於いては所有権の効を質入の契約を結びし時に及ぼしその質入の契約は有効の者たり

第３１１２条　他人の物件をもって質入と為すことを得但し所有者の黙許又は明許の承諾有るを要とす

第３１１３条　然れども所有者の心意に付毫も疑を容るべからざる充分の形情有るに非ざれば黙許の承諾有りとせず

第３１１４条　仮令い他人の物件はこれをその所有者の承諾無くして質入と為すことを得ずと雖も若し義務者これを質入と為したるに於いてはその所有者の取戻を請求せざる間は義務者その義務の全部を弁償したる後に非ざればその物件の取戻を求むるを得ず

第３１１５条　幼者及び治産の禁を受けたる者の後見人又は管財人虧缺したる財産相続又は失踪したる財産相続人の管財人遺嘱贈遺の事を管理する者及び裁判官より確認せられ又は任ぜられたる管理人は法律上に規定せる法式に循い裁判所より明許を得るに非ざれば己れの管理する財産を質入と為すことを得ず

第３１１６条　名代人は本人の承諾又は特権を得るに非ざればその本人に属する物件を質入と為すことを得ず

　然れども若し名代の証書に本人の財産を書入質と為すことを得べき一般の権を包含する時はその財産を質入と為すことを得べし

第３１１７条　都府又は他の団結の財産はその規則によるに非ざれば質入と為すことを得ず

第３１１８条　会社中の者はその者の承諾を得るに非ざれば自己の事業のため共通の物件を質入と為すを得ず又会社の事業のためと雖もその承諾を受けずして質入と為すを得ず但しその者会社の管理人なる時は格別なりとす

　商業会社に管する時はこ規則の例外とす

第３１１９条　権利者が質に取りたる物件を現に保有するをもって質入の契約の本義とす故にその権利者は物件の引渡を受くべき者とす但し他の名義をもって既にその物件を保有したる時は格別なりとす

第３１２０条　こ引渡は有形の物件のみ必要なりとす而して権利を質入と為したる時の如き無形の物件に付いては全く想像上の引渡なりとす

　　　○第２章　動産の質

第３１２１条　すべて人に譲渡すことを得べき有形の動産は質入と為すことを得べし

　又或事を為し又は或事を為さざることを確証するためには金額を質入と為すことを得べし

第３１２２条　権利の証券又はこ種類の権利の如き無形の動産もまた質入と為すことを得べし

第３１２３条　若し義務者権利の証券を質入と為さんと欲する時はその質入の証書によってその権利の譲渡を為すべき者たればその譲渡を受くべき権利者にその権利の証たる証券を譲渡すべし而してその証券私の証書にして人に転移することを得べき者なる時はその裏面に名を手署すべし

第３１２４条　フランス民法第２０７３条に同じ

第３１２５条　フランス民法第２０７４条第１項に同じ

第３１２６条　然れども本州の銀行に係る質入の証書をその銀行又はその支店の出納を司る者の記したる時は公正の証書とみなすべし

第３１２７条　フランス民法第２０７５条に同じ

第３１２８条　現有する者に払うべき権利の証券なる時はその権利を質入と為したる義務者に質入の証書を質として受取りし旨を告知するに及ばず

第３１２９条　フランス民法第２０７６条に同じ

第３１３０条　数箇の物件を質入と為したる時は仮令い請戻さんとする質物の高に応ずる金額を払うとも義務の全部を弁償するに非ざれば数箇中の１を請戻すことを得ず

第３１３１条　フランス民法第２０８２条第１項に同じ

第３１３２条より第３１３４条に至る　フランス民法第２０７８条より第２０８０条に至るに同じ

第３１３５条　質物より生じたる利益はその質物の部分とみなすべし更にこれを言う時は質物と共にその利益は権利者の手に留置ことを得ると雖も権利者はこれを己れの所有と為すことを得ず却てこれを義務者に返還し又は己れの受くべき義務に充て用うべし

第３１３６条　フランス民法第２０８１条に同じ

第３１３７条　義務者の質入と為したる権利の証券を請戻さざる以前にその証券に記したる権利を受くべき期限に至る時はその証券の譲渡を受けたる権利者はその証券の全額を受けもって義務者に対しその義務の弁償を訟求するの権有る者たればその全額をもって己れの受くべき義務の弁償に充て用いその残額有ればその義務者に返還すべし

第３１３８条　フランス民法第２０８３条に同じ

第３１３９条　質物を売却したる代価義務の弁償に超過する時は権利者はその残額を義務者に返還し若しこれに反し義務の弁償に充分ならざる時はその義務者の他の財産をもって不足の額を得んと求むるを得べし

第３１４０条　質物を隠匿したる義務者は窃盗に類する罪を犯したる者とすフランス刑法４０８条

第３１４１条　若し権利者質物の本質又は品位に付欺かれたる時は他の質物を請求し又は仮令い義務者のその義務を行うの資力有りと雖も直に義務の弁償を請求することを得べし

第３１４２条　権利者は幾多の時間質物を保有したりと雖もその質物に付決して期満得免を得べからず

　　　○第３章　不動産の質

第３１４３条　フランス民法第２０８５条に同じ

第３１４４条　フランス民法第２０８６条増補○権利者は質物として得たる奴隷の保有に管する必要物を出すべし

第３１４５条より第３１４７条に至る　フランス民法第２０８７条より第２０８９条に至るに同じ

第３１４８条　フランス民法第２０９１条に同じ

　　○第２１巻　先取特権

　　　○第１章　総則

第３１４９条より第３１５１条に至る　フランス民法第２０９２条より第２０９４条に至るに同じ

第３１５２条　法律上に定めたる権利のために非ざれば先取特権を得んと求むることを得ず

　　　○第２章　先取特権の種類

第３１５３条より第３１５５条に至る　フランス民法第２０９５条より第２０９７条に至るに同じ

第３１５６条　先取特権は動産若くは不動産又は一時に動産と不動産とに付存在すること有りフランス民法第２０９９条

　　　○第３章　動産に付いての先取特権

第３１５７条　フランス民法第２１００条に同じ

　　　　○第１款　すべての動産に付いての先取特権

第３１５８条　フランス民法第２１０１条の第５に旅舎の主人を増補す

　第６　手代書記その他この種類に使用さるる者の給料

　第７　夫より婦に引渡すべき家資に付いての権利

　　　　　○第１節　喪式の費用

第３１５９条　喪式の費用とは死者を埋葬するに付いての費用を謂う

第３１６０条　死者の財産相続人喪式の費用を払うべき時は権利者中１人の求めに応じ裁判官は死者の身分と家族の階級とに応じて相当の高にその費用を滅却することを得べし

第３１６１条　この滅却の場合に於いて裁判官は如何なる原由有るも喪式の諸入費に付２００ドル以上の高を相続人に負担せしむることを得ず

　　　　　○第２節　裁判入費

第３１６２条　裁判入費とは裁判所に訴訟を為したるにより生じたる費用を謂う而してこの裁判入費の名称は多くは敗訴したる者の払うべき入費に適用する者とす

第３１６３条　この入費は費用の条目中に包含したる者にしてかつ裁判言渡の執行に付要したる費用なり

第３１６４条　義務者の財産を保存するためその財産に封印し又はその財産の目録を製するに付要したる費用、家資分産又は権利者の共通の利益のため財産を放棄したるに付要したる費用、財産相続人の虧缺したる財産を管理し又は失踪したる財産相続人に属する財産を管理するに付要したる費用に付いては裁判費用に等しき先取特権を行うべし

第３１６５条　権利者は義務者に対し費用の条目中に包含せざる費用を得んと求むることを得ず

　　　　　○第３節　死去する時の病の費用

第３１６６条　死去する時の病の費用とは義務者の死去する時の費用を謂う○死去したる時は病の費用に付いて先取特権有りとす

第３１６７条より第３１６８条　痼疾病の時は死去前１年内に劇症に変じたる日よりその費用に付先取特権有りとす

第３１６９条　死去する時の病の費用中には医師の診察料看病人の謝金及び薬剤店に払うべき薬料を包含する者とす

第３１７０条　死去する時の病の費用の計算に付争議有る場合に於いては裁判官その計算を規定すべし

第３１７１条　義務者の権下に在る子の死去する時の病の費用に付いても先取特権有りとす

　　　　　○第４節　僕婢の給料

第３１７２条　僕婢とはその主人の家屋に住居し主人１身又はその家族に使役せらるるに付給料を受くる者を謂う

第３１７３条　僕婢はその勤務を止めたる日より起算して１年内に給料を請求する訴訟を為すべし但し既に経過したる年又はその当年に得べき給料のために非ざれば先取特権を有せず

第３１７４条　未だ経過せざる年に付いては仮令い義務者の決定したる計算の証又は証券有る時と雖も先取特権無し

　　　　　○第５節　食料の供給

第３１７５条　食料の供給とは小売人商人の為したる者を謂う

第３１７６条及び第３１７７条　商人はその供給を為したる時より1年内に訴訟を為すべし但し最後の6箇月に付いてのみ先取特権を有すべし

第３１７８条　旅舎の主人又は代価を約定して食料を与うるため己れの方に人を受くる者もまた「メートルドパンション」食料を供給する人の意の名称中に包含する者とす

第３１７９条　幼年又は青年者を養育しこれに食料を与え及び教育するため己れの方に受くる教師もまた前条に同じ

第３１８０条　「メートルドパンション」旅舎の主人及びこ階級に包含する者の先取特権は既に経過したる最後の年及びその当年のために行うべし

　　　　　○第６節　手代の先取特権及び嫁資に付いての先取特権

第３１８１条　手代書記及びこの種類に使用せられたる者は己れの給料に付既に経過したる年及びその当年の経過したる部分のため先取特権を行うことを得べし但し食料の供給に管する先取特権の後とす

第３１８２条　夫の財産に付婦の行うべき先取特権は嫁資と離婚又は財産共通を解除する時夫の有したる財産とに付いてのみ行う者とす

　　　　○第２款　別段定まりし動産に付いての先取特権

第３１８３条　全款に記載したる先取特権は義務者のすべての動産に付いて行う者とす○又或動産に付いてのみ行うべき先取特権有り

第３１８４条　或動産に付いて行うべき先取特権は左の如し

　１　財産の管理人及び一家の理財を司る者に付いては給料若くは謝金借地及び住居のため己むを得ず物品を供給したるにより生じたる義務に付いては既に経過したる年又はその当年に供給したる物品の代価を得るため終に収入したる入額若くは未だ収入せざる入額に付先取特権を行うべし但し財産の管理人及び一家の理財を司る者の先取特権は物品を供給したる者の先取特権に優れる者とす

　２　工丁及び工稽者のその手間賃を受くべき時は己れの修繕若くは造営したる物件に付先取特権を行うべし

　３　不動産の貸主及び耕耘に従事する奴隷の貸主はその年の収入物及び借家を装飾する　所のすべての装飾物の代価とその他土地の開拓に用うるすべての物件に付いて先取特権を行うべし

　４　権利者の差押えられたる質物に付いては先取特権を行うべし

　５　附託者はその附託したる物件の代価に付いて先取特権を行うべし

　６　物件の保存に付いて要したる費用を受くべき者はその物件に付先取特権を行うべし

　７　売渡したる不動産を尚その買主の保有するに於いてはその不動産の代価に付先取特権を行うべし

　８　旅舎の主人自己の供給したる物件の代価を得べき時は旅客のその旅舎に持参せし動産に付いて先取特権を行うべし

　９　馬車の費用及びその馬車に積みたる物件に付要したる付従の費用に付いてはその物件に付先取特権を行うべしフランス民法第２１０２条

　　　　　○第１節　貸主の先取特権

第３１８５条　貸主のその賃貸を得るため土地より生じたる利益又はその貸渡したる場所を装飾する所の装飾物に付いての先取特権は現物の儘の動産に付いて行うべき者たればその賃貸の弁償を受くる迄動産を留置ことを得べし

第３１８６条　貸主の先取特権は賃貸の巻に規定したる方法をもってその貸渡したる動産に付いて行う者とすフランス民法第２１０２条

　　　　　○第２節　質物に付行うべき権利者の先取特権

第３１８７条　権利者はその質物となりたる物件を保有し義務の抵償としてこれを留置き又はその代価をもって義務の弁償を得るためこれを売却せしむるの権有り

第３１８８条　然れども前条の場合に管する質入は契約を為すに必要なる要件に依循して為したるを要とす

　　　　　○第３節　附託者の先取特権

第３１８９条　他人に物件を附託する者はその所有権を保存すべし○何人に限らず附託者の権を損害してその物件を随意に為すこと能わず

第３１９０条　若し受託者その受託物を他人に譲渡しもってこれを妄用し又はその財産相続人受託の事を知らずしてその物件を売却したるに於いては附託者は己れの受くべき附託物の代価に付き先取特権を保有すべし

　　　　　○第４節　物件の保存に付いての費用

第３１９１条より第３１９３条に至る　貸借附託又はその他の名義をもって他人の物件を保有する者はその保存に付いての費用を出すの義務有る者なれば又その物件を抵償と為し他の権利者より先にその費用の弁償を得るに非ざればその物件を返還せざるの権有り

　　　　　○第５節　動産の売主の先取特権

第３１９４条　動産の売主未だその代価を受取らざる時はこれを受取るべき期限を定めもって売買を為したると否とに管せず尚その買主がその動産を保有するに於いては買主の他の権利者より先にその動産の代価を受取るの権有り

第３１９５条　然れども買主がその動産を他の物件と混同して売却するに方り売主その代価を得んと求めざるに於いては先取特権を失うべし

第３１９６条　代価の払い期限を定めずして売却したる売主はその買主が物件を保有する間は転売を妨げ現物の儘にてその売却したる物件を取戻すことを得べし但しその取戻の請求は物件を引渡したる時より８日以内に為しかつ売却したる物件に相違無き旨を確証すべき者とす

第３１９７条　一包と為し又は一括と為し又は箱入にて売買すべき物件なる時その物件の包を解き又は数括と為し又は箱より出して同種類の他の物件と混したるに於いてはその物件取戻を求むるを許さず

第３１９８条　然れどもその売買したる物件の装飾器の如く容易に認むることを得べき物なる時は前条の例に非ず

　　　　　○第６節　旅舎の主人のその旅客の財産に付いて行うべき先取特権

第３１９９条及び第３２００条　旅舎の主人は食料及び居室を貸与えたる旅客の財産に付て先取特権即ちその財産を抵償と為すの権有ればその旅客より負債の弁償を得るためその財産を留置き及びこれを売却せしむることを得べし

第３２０１条及び第３２０２条　旅舎の主人は旅客のその旅舎に持参したるすべての財産又は金額等に付いて先取特権有り而してその財産又は金額の旅客に属すると否とを問わざるべし

第３２０３条　旅舎の費用を得るため旅客の財産を留置きたる旅舎の主人は裁判官の命令を得るに非ざればその財産を売却することを得ず

　　　　○第３款　船舶及び商品に付いての先取特権

第３２０４条より第３２１５条に至る

　原著者日これ等の数条は商法に管する規則を包含す

　　　○第４章　不動産及び奴隷に付いての先取特権

第３２１６条　不動産及び奴隷に付いて先取特権を行うべき権利者は左の如し

　１　土地又は奴隷の売主は代価を払うべき期限を定めて売買の契約を結びたると否とを問わず代価の全額又は残額の弁償を得るため先取特権を行うべし

　２　家屋又はその他の建造物を築造し若くは修繕するために使用せられたる築造者請負人圬丁及びその他の工丁はその不動産に付いて先取特権を行うべし

　３　家屋若くはその他の建造物の築造又は修繕に必要なる材料を売りたる者はその築造物に付いて先取特権を行うべし

　４　１箇の所有者の堤防、橋梁、溝渠及び道路を造り若くは修繕するため奴隷を出したる者はこれ等の物に付いて先取特権を行うべし

第３２１７条　不動産の売主は奴隷獣類及び土地の耕耘に属する器機に付いてもまた先取特権を行うことを得べし

第３２１８条　数多の転売有って代価の一部又は全部を払うべき場合に於いては第１の売主は第２の売主より先に第２の売主は第３の売主より先に以下の順を追って代価の弁償を受くべし

　　　○第５章　動産と不動産とに付いて行うべき先取特権

第３２１９条　動産と不動産とに付いて行うべき先取特権は左の如し

　１　喪式の費用

　２　裁判の費用

　３　死去する時の病の費用

　４　僕婢の給金

　５　手代書記及びこの種類に使用せられたる者の給金

　婦の家資を得るに付いてはその夫の不動産に付いて先取特権を行うを得ず但し婚姻の契約の巻に記したるが如く唯書入質の権有り

第３２２０条　若し不動産無き時は前条に記載したる先取特権は義務者の不動産又は奴隷の代価に付いて行うべし而して義務の弁償は次章に記載したる順序をもって為すべし

　　　○第６章　先取特権を有する権利者の義務の弁償を受くべき順序

第３２２１条　特別の先取特権に属せざる動産の高その動産に付いての一般の先取特権有る負債を払うに充分なる時は左の順序によってその負債を払うべし

　１　喪式の費用

　２　裁判の費用

　３　死去する時の病の費用

　４　僕婢の給料

　５　食料の代金

　６　手代書記及びこの種類に使用せられたる者の給料

　７　嫁の家資

第３２２２条　動産の一部特別の先取特権に属し而してその他の動産すべての動産に付き先取特権有る義務を行うに不充分なる時又は数多の特別の先取特権有る場合に於いては左の規則により先取特権を行うべし

第３２２３条　貸主に如何なる先取特権有るを問わずその貸主に属する動産を売却する時の費用に付いては賃貸に優る先取特権有りとす

第３２２４条　義務者及びその家族の喪式の費用に付いてもまた前条に等しき先取特権有りとす

第３２２５条　然れども貸主は死去する時の病の費用又はすべての動産に付いての先取特権の如き死者の動産に付先取特権有る義務より先に動産の代価を受取るの権有り

第３２２６条　貸主に属する入額に付いては種子及び耕耘に付いての費用財産を管理する者及び一家の理財を司る者の給料として受取るべき金額は貸主より先にその年の入額をもって払うべき者とす

　土地の耕耘器機を売りたる者未だその代価を得ざる時もまた前項に同じ

第３２２７条　借家又は借地を装飾する所の動産又は貸主の先取特権に属する他の物件中第三の人の附託したる物有る時貸主の先取特権に属する他の動産無く又はこれ有るも義務の弁償に充分ならざる時は貸主はその賃貸を得るため附託の物件に付いて附託者より先に先取特権を行うべし但し貸主がその附託の物件の借主に属せざることを熟知したるの証有る時は格別なりとす

第３２２８条　前条に記載したる規則を除くの外附託者のその附託したる物件に付いて行うべき先取特権は財産を封印し又はその目録を作りたる費用を附託者の分担すべき時に非ざれば喪式の費用に付いての先取特権の如き他の先取特権をもって妨げらるること無し

第３２２９条　他人の物件を保存する者の出したる必要なる費用に付いての先取特権はその物件に付他の先取特権に優る者とす但しその物件を売却するに付いての費用を得るには前の先取特権に優る先取特権有りとす

第３２３０条　義務者の尚保有する動産の売主の先取特権はその動産所在の借地又は借家の所有者その賃貸を得るため行うべき先取特権又は財産を封印し或はその目録を作りたる費用に付いての先取特権によって妨げらるる者とす但し喪式の費用に付いての先取特権によっては妨げらるること無し

第３２３１条　旅舎に於いて死去したる旅客の財産に付旅舎の主人の行うべき先取特権は喪式の費用又は裁判入費に付いての先取特権によってのみ妨げらるる者とす

第３２３２条　馬車を出したる者のその馬車の費用及びこれに附従の費用に付いて行うべき先取特権は売買の費用によってのみ妨げらるる者とす○船舶に積みたる商品の船賃に付いてもまた同じ

第３２３３条　若し義務者の動産すべての動産に付いて先取特権有る負債を弁償するに足らざる時は後の数条に記載したる規則に循い義務者の不動産又は奴隷をもってその不足を補うべし

第３２３４条　物件の売主、工丁及び供給者は己れの管係したる物件の代価に付いては義務者の他の権利者より先に義務を得べし但し財産を封印し又はその目録を作り或は物件を売却するに付いて要したる費用に管係する時は格別なりとす

第３２３５条　土地の売主はその土地に建築したる家屋又はその他の建造物に付いての費用を得べき工丁と共に義務を得べき時はその土地と建家を格別に評価し土地の売主はその土地の代価に平均する高に至る迄その土地に付いて義務を得べく又工丁はその建家の代価を得べき者とす

第３２３６条　売主、工丁及び材料を売りたる者の義務者の不動産に付いて行うべき特別の先取特権を除くの外すべての動産及び不動産に付いて先取特権を行うべき者は動産の不充分なる場合に於いて義務者の不動産より生じたる入額及び奴隷に付その義務者の他の先取特権有る権利者及び書入質の権有る権利者より先に義務を受べき者とす

第３２３７条　動産及び不動産に付先取特権有る者は前に記載したる順序に循い義務を受くべしフランス民法第２１０５条

　　　○第７章　先取特権を保ち及びこれを登記する方法

第３２３８条　不動産及び奴隷の売主はその高の多少に拘わらず売買の契約書を書入質の登記所に於いて法に適して登記するに非ざれば売渡したる物件に付先取特権を行うを得ずフランス民法第２１０８条

第３２３９条　築造者請負人、圬丁及びその土地の工丁、家屋及び他の建造物を築造し若しくは修繕するため所有者に材料を売りたる者堤防、橋梁、溝渠又は道路を作り或は修繕することを契約したる者請負代価、計算の高、又は負債の認め書の５００ドル以上の金額なる時はその請負の証書、計算書。又は負債の認め書を書入質の登記所に登記するに非ざれば法律上より与えられたる先取特権を保つことを得ずフランス民法第２１１０条

第３２４０条　前の２条に記載したる先取特権は契約書を登記すべき書入質の登記所所在の地に於いて契約書を記したるに於いてはその契約書の日付より６日以内に法に適して登記したるに非ざれば第三の人に対しその契約書の日付より効を生ずること無し

第３２４１条　若し契約書を前条に記載したる期限中に登記せざるに於いては先取特権の効無く唯契約書を登記したる日より第三の人に対し書入質の効のみ有る者とすフランス民法第２１１３条

第３２４２条　フランス民法第２１１１条に同じ

第３２４３条　第６章に記載したる義務にして動産と不動産とに管する時は登記法を行うに及ばず

　　　○第８章　先取特権の登記

第３２４４条　先取特権の消滅するは左の如し

　１　先取特権に属する物件の滅尽する時

　２　権利者が先取特権に属する物件を得たる時

　３　先取特権を生ぜしめたる義務の滅尽したる時

　４　権利期満得免となりたる時