荷蘭国民法

　　　　目次

　　　○附言

　　　○総則

　　○第１篇　人事

　　　○第１巻　民権を有する事、民権を失う事

　　　○第２巻　内国人及び外国人

　　　○第３巻　身分證書

　　　　○第１款　一般於身分證書の簿冊

　　　　○第２款　出産の證書

　　　　○第３款　婚姻の中述及び公告

　　　　○第４款　婚姻及び離婚の證書

　　　　○第５款　死去の證書

　　　　○第６款　姓名の変更

　　　　○第７款　身分證書の改正

　　　○第４巻　住所

　　　○第５巻　婚姻　総則

　　　　○第１款　婚姻の契約をなすに必要ある諸件

　　　　○第２款　婚姻を行う前になす可き法式

　　　　○第３款　婚姻の故障

　　　　○第４款　婚姻を行う事

　　　　○第５款　外国において契約したる婚姻

　　　　○第６款　婚姻の取消

　　　　○第７款　婚姻の存立の登録

　　　○第６巻　夫婦の権利及び義務

　　　○第７巻　適法の財産共通及びその効

　　　　○第１款　適法の財産共通

　　　　○第２款　共通財産の管理

　　　　○第３款　財産共通の解除及びその共通を肯せざるの権利

　　　○第８巻　婚姻の契約

　　　　○第１款　一般の婚姻の契約

　　　　○第２款　損得、利益及び入額の共通

　　　　○第３款　婚姻を為さんと欲する者の互になす贈遺

　　　　○第４款　婚姻を為さんと欲する夫婦及びその婚姻に因て生ず可き子のためになす所の贈遺

　　　○第９巻　再婚を為したる時の財産共通及び婚姻の契約

　　○第１０巻　財産分派

　　○第１１巻　婚姻を解く事

　　　○第１款　一般に婚姻を解く事

　　　○第２款　夫婦分居の後に婚姻を解く事

　　　○第３款　離婚

　　○第１２巻　夫婦分居

　　○第１３巻　父たる事及び子たる事

　　　○第１款　摘出の子

　　　○第２款　私生の子を摘出の子となす事

　　　○第３款　私生の子を我子なりと認むる事

　　○第１４巻　血統及び姻族親　

　　○第１５巻　親の権　

　　　　○第１款　子たる者対する親の権の効

　　　　○第２款　子の財産に関する親の権の効

　　　　○第３款　尊属親と卑属親との間の相互の義務

　　○第１６巻　幼年の事及び後見の事

　　　○第1款　幼年の事　

　　　○第2款　一般の後見の事

　　　○第3款　父母の後見　

　　　○第４款　父母より任したる後見

　　　○第５款　治安裁判官より任したる後見

　　　○第６款　救育院に在る子の後見

　　　○第７款　後見人の監察者

　　　○第８款　後見及び後見人の監察者の職を辞することを得可き原因

　　　○第９款　後見の職に任するあたわざること、後見の職に参せしめざる事、後見の職を退かしむる事　　

　　　○第１０款　後見人幼者の身柄を監督する事

　　　○第１１款　後見人の支配

　　　○第１２款　後見人の算計

　　○第１７巻　幼者後見を免がるる事　　

　　○第１８巻　治産の禁の事

　　　　○最終の規則

　　○第１９巻　失踪

　　　○第１款　失踪を思料する事及び失踪を思料する事の処置

　　　○第２款　死去を思料する事の公告

　　　○第３款　死去を思料する事を公告せし後ち最親の財産相続人の行う可き権利及び義務

　　　○第４款　生存の分明ならざる失踪者に属す可き権利　

　　　○第５款　婚姻及び子に関する失踪の効

　○第２篇　財産

　　○第１巻　財産及びその区別

　　　○第１款　一般の財産

　　　○第２款　財産の区別　　

　　　○第３款　不動産

　　　○第４款　動産　

　　　○第５款　財産とこれを所有する者との関係

　　○第２巻　保育権

　　　○第１款　保育権の種質及び保育することを得可き物件

　　　○第２款　保育権を得可きこと、これを保存す可き事及び失う事の方法

　　　○第３款　保育権より生ずる権利

　　○第3巻　所有権　

　　　○第１款　総則

　　　○第２款　所有権を得るの方法

　　○第４巻　相隣する土地を所有する者の間の権利及び義務

　　○第５巻　土地の義務

　　　○第１款　土地の義務の本義務と諸種類　

　　　○第２款　土地の義務を定むる事　

　　　○第３款　土地の義務の終る方法

　　○第６巻　土地の表面使用の権

　　○第７巻　長期の賃貸　

　　○第８巻　年金又は土地の賃税

　　○第９巻　入額所得の権　　　　

　　　○第１款　入額所得権の本義及びこれを得可き方法

　　　○第２款　入額を所得となす者の権

　　　○第３款　入額を所得となす者の義務

　　　○第４款　入額を所得となす権の終る方法

　○第１０巻　受用の権及び居住権

　○第１１巻　遺嘱なき財産相続

　○第１款　総則

　　○第２款　卑属の親、尊属の親及び傍系の親の財産相続をなす事

　　○第３款　私生の子ある時の財産相続

　○第１２巻　遺嘱の贈遺

　　　○第１款　総則　

　　　○第２款　遺嘱の贈遺として人に財産を贈興し又はこれを受収するに必要なる要件

　　　○第３款　当然以相続す可き財産及び贈遺と為したる財産を減する事

　　　○第４款　遺嘱贈遺の法式　　

　　　○第５款　財産相続人を選任する事　

　　　○第６款　遺嘱贈遺の財産

　　　○第７款　宗系の卑属親又は傍系親のためになすことを得可き「フヒデコンミッセール」の「シュブスチ　チュション」

　　　○第８款　財産相続人又は遺嘱贈遺を受けたる者の相分離し且つ他に譲渡すことを得可き財産の「シュブスチ　チュション」

　　　○第９款　遺嘱贈遺の證書を取消す事及び遺嘱贈遺の證書の効なき事

　　○第１３巻　遺嘱者の託を受け遺嘱の諸事を管理する者

　　○第１４巻　財産相続の事に附て商議するの権及び相続する財産の価額に至る迄の外負債を償はざる特権

　　○第１５巻　財産相続を肯する事及び肯せざる事　　　

　　　○第１款　財産相続を肯する事

　　　○第２款　財産相続を肯せざる事

　　○第１６巻　財産相続の分派

　　　○第１款　分派、効及び財産相続人の分派したる部分を互に保証する事

　　　○第２款　返還の事　　　

　　　○第３款　財産相続に附き担当す可き負債を払う事

　　　○第４款　相続をなす財産の分派を取消す事

　　　○第５款　父母又はその他の尊属の親その財産を卑属の親に分派する事

　　○第１７巻　財産相続人の慮欠したる財産

　　○第１８巻　先取特権

　　　○第１款　総ての先取特権

　　　○第２款　別段定まりたる財産に附ての先取特権

　　　○第３款　動産及び不動産の全部に附ての先取特権

　　○第１９巻　質入の事

　　○第２０巻　書入質の権

　　　○第１款　総則　

　　　○第２款　書入質の権の記入及びその法式

　　　○第３款　書入質の権の記入を塗抹する事

　　　○第４款　義務者の不動産を及び所有と為したる者に附き書入質の権の効

　　　○第５款　書入質の権の消滅する事

　　　○第６款　書入質の簿冊を公けにする事及び書入質の管轄者の責任

○第３篇　義務

　○第１巻　総ての義務

　　○第１款　総則

　　○第２款　物を興う可き義務

　　○第３款　或事を為し又はなす可からざる義務

　　○第４款　義務を行わざるより生ずる損失の償

　　○第５款　未必の条件に関する契約の義務

　　○第６款　執行の期限ある義務

　　○第７款　二個中の一を択むを得可き義務

　　○第８款　連帯の義務

　　○第９款　分つ可き義務及び分つ可からざる

　　○第１０款　契約の如く行わざる時は過代を出す可き約束ある義務

　○第２巻　契約上の義務又は約束

　　○第1款　総則

　　○第2款　契約を法に適する者となすに必要なる条件

　　○第3款　義務の効

　　○第4款　契約書を解釈する事

　○第３巻　法律より生ずる義務

　○第４巻　義務の消滅する事

　　○第１款　義務を尽す事

　　○第２款　物件の提供及びこれを預かり役所に預くる事　　

　　○第３款　義務の更改する事

　　○第４款　二個の義務互に相殺する事

　　○第５款　権利と義務と相混同する事

　　○第６款　権利者の意をもってその義務を釈放する事

　　○第７款　引渡す可き物の滅尽する事　

　　○第８款　契約を取消す事　

　○第５巻　売買　　　

　　○第１款　総則

　　○第２款　売主の義務

　　○第３款　買主の義務　

　　○第４款　買戻の権　

　　○第５款　義務を得可きの権利及びその他の権利を人に移す事

　○第６巻　交換の事

　○第７巻　賃貸

　　○第１款　総則　

　　○第２款　家屋及び土地の賃貸の契約に通し用う可き規則

　　○第３款　家屋の賃貸に関する別段の規則

　　○第４款　土地の賃貸に関する別段の規則

　　○第５款　下僕下女及び職工を雇う事

　　○第６款　工作の請負

　○第８巻　「ぺリランマン」と称する権利

　○第９巻　曾社の契約

　　○第１款　総則　

　　○第２款　社中各人の間に互に行う可き義務

　　○第３款　曾社中の者曾社外の人に対して行う可き義務

　　○第４款　曾者の終る可き義務

　○第１０巻　団結

　○第１１巻　贈遺　

　　○第１款　総則

　　○第２款　贈遺を為し又はこれを受くるこれを得可きこれに必要なる諸件

　　○第３款　贈遺をなすの法式

　　○第４款　贈遺を取戻す事及び贈遺に効なき事

　○第１２巻　附託

　　○第１款　総ての附託及び附託の種類

　　○第２款　附託の契約の本義

　　○第３款　双方相争う物を人に附託する事及びその種類　　

　○第１３巻　耗尽せざる物の貸借

　　○第１款　総則

　　○第２款　借主の義務

　　○第３款　貸主の義務

　○第１４巻　耗尽す可き物の貸借

　　○第１款　総則

　　○第２款　貸主の義務

　　○第３款　借主の義務　　

○第４款　息銀ある貸借

　　○第５款　無期の年金を設定する事

　○第１６巻　偶生の事に関する契約

　　○第１款　総則

　　○第２款　畢生間の年金の契約及びその効

　　○第３款　遊戯及び賭博

　○第１７巻　名代の証書　

　　○第１款　名代の証書の本義

　　○第２款　名代人の義務

　　○第３款　本人の義務

　　○第４款　名代の任の終る方法

　○第１８巻　保証

　　○第１款　保証の定言

　　○第２款　権利者と保証人との間に生ずる保証の効

　　○第３款　本人と保証人との間及び保証人敷人の間に生ずる保証の効

　　○第４款　保証の義務の消滅する事

　○第１９巻　和解

○第４篇　証憑及び期満得免

　○第１巻　総ての証憑

　○第２巻　証書

　○第３巻　証人　

　○第４巻　思料の事

　○第５巻　自認　

　○第６巻　裁判所においてなす所の誓

　○第７巻　期満得免

　　○第１款　一般の期満得免

　　○第２款　所得権を得るの方法とみなす可き期満得免

　　○第３款　義務の釈放を得るの方法とみなす可き期満得免

　　○第４款　期満得免の権を得可き期限の既に経過したる時間を除棄する原因

　　○第５款　期満得免の権を得可き期限の経過を一時停止する原因

　　

○　総則

第１条　如何なる法律を問はず適法の布告有るの後に非ざれば循守す可からず

第２条　フランス民法第１条に同じ

第３条　慣例は法律上に記したる場合においてのみその権利を生す可し

第４条 フランス民法第２条に同じ

第５条 法律はその後の法律の如何に困るに非ざればその全部又はその一部を廃棄するを得

ず

第６条、第７条、第８条　フランス民法第３条に同じ

第９条　荷蘭王国の民法は之に反する特定の法律の設け無き間は内外人の別なしこれを適用す

第１０条　諸証書の書式はこれを記し又は差出したる各国各所の法律に照してこれを規定す

第１１条　裁判官は必ず法律に照して裁判を言渡す可し如何なる場合を論ぜず法律の功績又は公義に関して是非することを得ず（フランス民法第４条）

第１２条　フランス民法第５条に同じ

第１３条　フランス民法第４条に同じ

第１４条　フランス民法第６条に同じ

○第１篇　人事

○第１巻　民権を有する事、民権を失う事　　　　　　

第１条　民権を有するは政権に相関すること無し但し政権は憲法に因てのみこれを有することを得可し（フランス民法第７条）

第２条 　売奴その他奴隷の取扱いはその種質又は名義の如何を問はず王国内においてはすべてを廃止しそうして国内に在る人民は総て民権を有すること自由にして又これを有するの権あり

第３条 　懐胎中の子はその子の有用なる時においてはこれを産れたる者とみなす可し

死して産れたる子は嘗て生存せしこと無き者とみなす可し（フランス民法第７２５条）

第４条　如何なる刑といえども准死に優るもの無し又此刑に因て民権を失ふに至る可からず

民権を有する事は天然の死去に因るに非ざれば停止す可からず（フランス民法第２２条、差異）

○第２巻　内国人及び外国人

第５条　オランダ国人民たる者は左に列記す

　第１　両親の王国内又は属国内に住居して産みたる子

　第２　両親は荷蘭人にしてその外国において産みたる子（フランス民法第１０条）

　第３　王国内に住所を定めざる両親その王国内において産みたる者己れの住所をその王国内に定むる時（フランス民法第９条、差異）

第４　両親は素と外国人なるも王国内に住所を定め一時の不在又は公務のため不在中外国において産みたる子

　第５　オランダ国に帰化し又は土人たるの権利を得る者

第６条 　フランス民法第１２条に同じ

第７条 　第５条と第６条に適せざる者又オランダ人たるの分限を失いたる者は外国人たり

第８条 　左に列記したる二箇の場合においては外国人たりもオランダ人と看放す可し　　

第１　王の允許受け王国内に住所を設けて邑庁にその允許を證明せし者

第２　王国の邑内に住所を設けてその邑内に六年間住居しその住所の邑庁に王国内に住所を定む可きの意を申述せし者（フランス民法第１１条及び第１３条、差異）

第９条　オランダ人民たるの分限を失ふ者は左のごとし

　第１　外国の戸籍に入る者

　第２　王の允許なく外国政府より官職を受け又は外国において兵籍に入る者　　

　第３　帰国の意なく外国に居住を定むる者但し商業のため外国に居住する者は帰国の意無くして外国に居住する者とみなす可からず（フランス民法第１７条）

第１０条　前条の原因に因て荷蘭人たるの分限を失ひし者は本巻第８条に依遵するに非ざればオランダ人たるの分限を復することを得ず

第１１条　フランス民法第１９条第１項に同じ婚姻解除の後その女既に王国に居住し又は王国に住所を定む可き旨を邑庁に申述べて王国に帰る者はオランダ人たるの分限を復す可し（フランス民法第１９条第２項）

第１２条　オランダ人たるの分限を復せんと欲する者はその帰国の後に得る権利に非ざればその分限に附き利益を得可からず（フランス民法第２０条）

○第３巻　身分証明書

○第１款　一般の身分証書の簿冊

第１３条　各邑庁においては出産、婚姻の申述、その公告及びその執行離婚（死去等の簿冊を設く可し

此等の簿冊は各種に分けその地方の官吏中より撰びたる身分證書の官吏一名又は数名をもってこれを担当す

第１４条　簿冊は婚姻の申述及び公告の簿冊を除くの外各二冊を備へ置く可し

第１５条及び第１６条　フランス民法第４１条及び第４２条に同じ

第１７条及び第１８条　フランス民法第３５条及び第３４条に同じ

第１９条　本人自ら出頭するに及ばざる時は特別又は公正の証書をもって委任せし名代人を出だすことを得可し

第２０条　フランス民法第３０条追加　証人は王国内に住居する者を要す又本人の血族親はその証人と為ることを得可し

第２１条　フランス民法第３８条第３９条に同じ

第２２条ないし第２４条　フランス民法第４３条ないし第４５条に同じ

第２５条　フランス民法第４９条に同じ

第２６条　もしその簿冊の未だ備わらざる時又は亡失せし時は本人より証書又は証人をもってその旨を証することを得可し

もし身分証書を偽造、変更、破損又は滅失せしに因り刑事の裁判言渡をなす時はその言渡は法律により刑事裁判に属する所の控訴す可からざるに至りし裁判を経たるの力あり（オランダ民法第１９５５条見合せ）（フランス民法第４６条）

第２７条　フランス民法第５０条ないし第５２条に同じ但し罰金は百フランより超過することを得ず○訴訟手続は訴訟法第８３４条によりてこれを規定す○身分証書の官吏規則に背く事ある時は註誤の裁判を受く可し

第２８条　フランス民法第５３条追加　又検事は邑庁に保蔵したる二個の簿冊を検視す可し

○第2款　出産の証書

第２９条　フランス民法第５５条及び第５６条第２項に同じ但し第５５条の末項を変更せしこと左のごとし身分証書の官吏はその生れたる子を己れに示す可しと要求することを得可し

第３０条及び第３１条　フランス民法第５６条第一項及び第５７条に同じ

第３２条　もし未だ婚姻せずして子を産む時は出産証書にその父の姓名を記す可からず但しその父己れの子なりと認めたる時は格別なりとす

第３３条　フランス民法第５８条に同じ

第３４条　もし公舎において棄児を読取る時はその公舎の長又は役員前条の申述をなす可し

第３５条ないし第３７条　フランス民法第５９条ないし第６１条に同じ

第３８条　フランス民法第６２条追加　もし公正の証書をもって我子なりと認めたる時その本人は出産の証書の端にその認めし旨を記入せんことを求むるを得可し

如何なる場合を問はずその出産の証書の端に子を認めたることの記載無しといえどもその認めたる子の身分を確証するの妨げと成る可からず（フランス民法第３３４条）

○第3款　婚姻の申述及び公告　

第３９条　身分証書の官吏は婚姻の申述のために備へたる簿冊中に第１０５条及び第１０６条に照して為したる婚姻の申述を證記す可し

第４０条　その申述には夫婦たらんと欲する者の姓名、年齢、職業及び住所を示しもし筆記して申述をなす時は身分証書の官吏はこれを謄写して簿冊に添加せし後その簿冊に姓名を署す可し

第４１条　もしその申述をなす者の間に婚姻を禁ず可きこと無き時は身分証書の官吏は直に

第１０７条、第１０８条及び第１０９条に規定したる公告をなすべし

第４２条　フランス民法第６３条の終尾に同じ

第４３条　フランス民法第６７条に同じ

○第4款　婚姻及び離婚の証書

第４４条　フランス民法第７５条終尾に同じ

第４５条　フランス民法第７６条に追加　必要の時は私生の子を認めたる事

第４６条　もし検事の媒介によりて婚姻の契約を結び又は自宅においてその婚姻を行ひたる時は婚姻の証書にその旨を明載す可し

第４７条　外国において行ひし婚姻の証書は夫婦のその住所の地の簿冊に證記す可し（フランス民法第１７１条）　

第４８条　離婚の証書には離婚を為したる夫婦の姓名、住所、職業、離婚の裁判言渡又は法律上如何なる方法をもつてすといえどもその裁判言渡を排撃し得可からざる旨を確証せる裁判所附きの書記の証書を證記す可し但し裁判言渡のは離婚の簿冊に添加す可し

第４９条　婚姻の証拠に適用することを得可きフランス民法第４６条に同じ

○第5款　死去の証書

第５０条　フランス民法第７８条第１項追加　もし使者自己の住所外において死去したる時はその地の身分証書の官吏はその死者の最終の住所ある地にその死去の証書の写を送達し身分証書の簿冊に證記せしむ可し（フランス民法第８０条第２項）

第５１条　フランス民法第７９条追加　死去の日及び時を記す可し

第５２条　身分証書の官吏は出産の簿冊にその出産の記載有るに非ざれば棄児の死去の証書を記す可からず○もしその記載無き時は既に死去せし棄児を検視せし旨を申告し又その棄児を己れに示す可きことを求むるを得可し○その他両親の姓名、年齢、住所及びその棄児の出産の時限に関して証人の申述を受く可し

その証書はその子の生存したるや否や知るに誤謬を生ず可きこと無くその当日死去の簿冊に證記す可し

第５３条　身分証書の官吏の允許状有るに非ざれば埋葬をなす可からず

身分證書の官吏は死去を確証せし後又は死去の後三十六時間を経るに非ざればその允許状を渡す可からず但し警察規則に予定したる場合においては此例に在らず（フランス民法第７７条）

第５４条　フランス民法第８０条に同じ

第５５条　フランス民法第８１条に同じ但し取調の法は千八百十八年七月十五日の官例に規定あり

第５６条ないし第６０条　フランス民法第８０条、第８３条及び第８５条ないし第８７条に同じ

第６１条　軍人の死去を通常の身分証書の簿冊に記載する方法は特別の規則をもってこれを定む（フランス民法第２巻第５章）

第６２条　死去の証書に適用するこれを得る可きフランス民法第４６条に同じ

○第６款　姓名の変更

第６３条　何人に限らず王の允許を受くるに非ざれば自己の姓を変更し又は自己の姓に他の姓を添加することを得ず（フランス国共和第十一年「ゼルョナ−ル」月十一日の法律）

第６４条　その願はこれを公開新紙に掲載せし日より起算し満一年を経るに非ざれば許可せざる可し

第６５条　前条の時間においては姓を変更せざるを得ざる故障の原因を記したる願書を国王に奉呈することを得可し

第６６条　名の変更に関する官令は出産の証書の端とその簿冊とに記載す可し

第６７条　国王の乃允許を受けたる名の変更又は添加は決して系統を確証するための用に供することを得ず

第６８条　名の変更又は添加をなすためには裁判所にその願書を出すを要とす

第６９条　允許を受けたる時は第６６条に於けるが如く簿冊に記載す可し

○第７款　身分の証書の改正

第７０条　身分の証書の簿冊無き時或いはその証書を枉害せん時あるいはその証書に誤謬、脱漏又は他の欠点有る時はこれを改正す可し

第７１条　証書の改正は裁判所に願出す可し裁判所は検察官又は必要の時は身分証書に関する者の中立を聴きし後改正の言渡をなす可し（フランス民法第９９条）

第７２条　改正の裁判言渡はこれを改正することを願出せし者のため又は之かため裁判所の呼出を受けたるもののために非ざればその効無き者とす（フランス民法第１００条）

第７３条　控訴す可からざるに至りし裁判を経たるの力ある改正の裁判言渡書は日用の身分証書の簿冊に證記し又改正せし証書の端に附記す可し（フランス民法第１０１条）

○第４巻　住所

第７４条ないし第８２条　フランス民法第１０２条ないし第１０６条及び第１０８条ないし第１１１条に同じ

○第５巻　婚姻　

　　　　　○総則

第８３条　法律においては婚姻をもつて民法上の者とみなす可し

○第一款　婚姻の契約をなすに必要なる諸件

第８４条　男は唯一人の女と女は唯一人の男とのみに非ざれば婚姻をなすを得ず（フランス民法第１４７条）

第８５条　フランス民法第１４６条に同じ

第８６条　満十八歳に至らざる男満十六歳に至らざる女は婚姻の契約をなすを得ず（フランス民法第１４４条、差異）自余はフランス民法第１４５条に同じ

第８７条　フランス民法第１６１条及び第１６２条に同じ

第８８条　フランス民法第１６３条追加　前条に記したる婚姻制禁の外義兄弟と義姉妹との間においては国王よりその婚姻をなすことを許すを得可し（千八百三十二年四月十六日のフランス蘭西法律）

第８９条　姦通の原因に因て処刑を受けたる夫又は婦はその姦夫姦婦と決して婚姻をなすことを得す（フランス民法第２９３条）

第９０条　フランス民法第２９５条に同じ

第９１条　フランス民法第２２８条に同じ但し十ヶ月は三百日とす

第９２条　摘出の子その幼年の間は以下フランス民法第１４８条及び第１４９条に同じ但し婚姻の契約をなす可からず以下追加すること下のごとし　意義ある場合においてその母己れの所存の意を表せざる時はその父許諾の証書に因り或いは身分証書の官吏の面前においてその母に一部許諾を求めしことを中述す可し

第９３条　もし父母に既に死去したる時又はその意を表することあたわざる時は父母の祖父之に代る可し又その父方の祖父無き時は母方の祖父の許諾を受く可し（フランス民法第１５０条）

第９４条　父方又は母方の祖父無き時は父方の祖母の許諾を要し又父方の祖母無き時は母方の祖母の許諾を要す

第９５条　もし父母又は祖父母無く或はその父母又は祖父母その意を表することあたわざる場合にて未だ丁年に達せざる摘出の子は後見人及び後見人の監察者の允許を得るに非ざれば婚姻を契約するを得ず○その後後見人及び後見人の監察者或はその一方の者にてもこれを拒絶するにおいてはその允許は必ず治安裁判官に求む可し蓋し治安裁判官は後見人及びその最近の血族親四名の申立を聴きし後に非ざればその允許をなすを得可からずそうしてその最近の血族親は王国内に居住する丁年者にして成る可く父方より二名母方より二名を探る可し（フランス民法第千六百条、差異）

第９６条　治安裁判官の所為に関しては書面をもって初審裁判所に願訴することを得可し又初審裁判所は婚姻を為さんとする双方の者及び検察官の申立を聴きし後確然允許を為し又は拒絶することを得可し

第９７条　私生の子幼年の時法律上においてその父より我子なりと認められたる時はその父の允許を受くるに非ざれば婚姻を契約するを得ずもしその父無き時は母の許諾を受くるを必要とす（フランス民法第１５８条）

第９８条　私生の子の未だ我子なりと認めらるること無き時或は既にその父母を喪ひし時は満二十三歳に達せざる間は後見人及び後見人の監察者の允許を得或はその後見人等の者無き時は治安裁判官の允許を得るに非ざれば婚姻を契約するを得ず（フランス民法第１５９条、差異）

第９９条　丁年に達せる摘出の子も満三十歳に達せざる者は必ず婚姻の契約をなす以前に父母の許諾を求む可き者とすそうしてその許諾を得ざる時は次に記する敷条に依遵しその父母の住所を管轄する治安裁判官に訴ることを得可し（フランス民法第１５１条より第１５４条に至る差異）

第１００条　その訴を為せし日より三週間の期限中には治安裁判官その父を呼出しその父無き時は母及び子を呼び出して勧解を為しその呼出の調書を簡略に製す可し但し婚姻を為さんとする双方の者より申出たる原因はこれを記載す可からず

第１０１条　その父を呼出し又はその父無き時はその母を呼出しもし出頭せざる時は婚姻を行ふことを得可し

第１０２条　もしその子出頭せざるにおいては婚姻を行ふことを得ず但し更に和解の訴をなす時は格別なりとす（和解の訴は治安裁判官になす可し）

第１０３条　もしその父又はその母の許諾せざるにおいては裁判所に出頭せし後三ヶ月を経るに非ざれば婚姻を行ふことを得ず

第１０４条　前に列記したる諸規則は第９７条により許諾を得るを要する私生の子に適用することを得可し（フランス民法第１５８条）

○第２款　婚姻を行ふ前になす可き法式

第１０５条　婚姻を契約せんと欲する双方の者はその一方の者の住所の身分証書の官吏に婚姻を為さんとする申述をなす可し

第１０６条　婚姻をなすの証書は身分証書の官吏これを製す

第１０７条　フランス民法第６３条に同じ

第１０８条及び第１０９条　フランス民法第１６６条及び第１６７条に同じ

第１１０条　フランス民法第６４条に同じ但し左の文を減省す

婚姻は後に公告を為せし日より三日を過ぎさる前に行ふ可からず

第１１１条　フランス民法第１６９条に同じ

第１１２条　フランス民法第６５条に同じ

第１１３条　婚姻を約束してこれを実行せざる時といえどもその婚姻を実行す可き訴訟を為しまたは損失の償を求むるこれを得ずそうして右に反する約条はその効無き者とす

しかれも身分証書の官吏にその婚姻の申述を為し且つその公告を為したる時は双方の中その一方の拒絶に因て生じたる実際の損失の償を受く可き訴訟をなすことを得可し但しその拒絶に因て失ひたる利得は決してこれを算入するを得ず

此訴訟第一次の公告の日より十八ヶ月を経る時は期満免除に帰す可し

○第３款　婚姻の故障

第１１４条　婚姻の故障を申述語するの権は唯左の数条に示したる人及び予定したる場合に属す可し

第１１５条　フランス民法第１７２条追加　及びその結婚に因て生じたる子に属す可し

第１１６条　父又は父無き時はその母左の諸件に因て故障を申述することを得可し

　第１　幼年の子にして必要なる許諾を得さる時

　第２　未だ三十歳に達せざる丁年の子の第９９条に規定したる和解の訴を治安裁判官に為さざる時

　第３　無能力なるに因り治産の禁をなす可き訴えある時

　第４　婚姻を為さんとする双方の者の中一方の者此巻の第一款に基づき婚姻の契約をなすに必要の身分たらざる時

　第５　その子と婚姻の契約を為さんとする者刑法上の訴を受け又は処刑を受けたる時

　第６　必要の公告を為ささる時

　第７　浪費を為したるに因り治産の禁を受けたる子のその産を傾るに至る可き婚姻を為さんとする時

第１１７条　父母共に無き時はその祖父母前条の第１、第２、第３、第４、第５、第６、第７の諸項に記したる原因のためにはその孫子の婚姻に故障を申述することを得可し（フランス民法第１７３条）○右の原因に関する故障は第９３条及び第９４条を循守してこれをなす可し

第１１８条　祖父母無きに因りその兄弟、姉妹、叔父、伯母、後見人及び後見人の監察者等のその婚姻の故障を申述することを得可き時は左に記列す

　第１　第９５条及び第９８条によりてなす可き法式を循守せざる時

　第２　第１１６条の第３、第４、第５、第６の諸項に記したる場合の時

第１１９条　離婚したる夫はその婚姻解除の後満十八ヶ月前に婦の再婚を契約せんとせばその故障を申述することを得可し

第１２０条　検察官は第８４条より第９１条に記したる場合においては婚姻の故障を申述す可し

第１２１条　婚姻を行ふ可き邑を管轄したる初審裁判所は婚姻の故障に関する裁判をなす可し（フランス民法第１７７条）

第１２２条　故障の證書にはその故障を生せじ原因を記す可しそうしてその故障を申述せじ後に生じたる原因はこれを漸次申述することを得可し（フランス民法第１７６条）

第１２３条　婚姻の故障及びその故障を除去せんとする訴訟の法式は訴訟法に詳かなり

第１２４条　もし婚姻の故障を申す述したる者の敗訴と成りし時はこれを申述したる者の尊属親を除くの外卑属親及び検察官は損害を償う可き言渡を受く可し（フランス民法第１７９条）

第１２５条　フランス民法第６８条に同じ

○第４款　婚姻を行ふ事

第１２６条　身分証書の官吏は夫婦と為らんと欲する双方の者をして婚姻を行はしむる前に左に記したる如き証書を差出さしむ可し

　第１　フランス民法第７０条第１項に同じ

　第２　フランス民法第７３条追加　婚姻の許諾の事もまた婚姻の証書中に記す可し

　第３　必要の時は治安裁判官の勧解を確証する証書

　第４　再婚の時は先の配偶者の死去の証書或は離婚ノ証書又は配偶者の失踪せしにより裁判所より再婚の允許を受けたる時はその允許状の為

　第５　婚姻の許諾を為せし者の死去の証書

　第６　フランス民法第７６条に同じ　

第１２７条　フランス民法第７０条第２項及び第７１条に同じ但し七人の証人は五人とす又追加すること左のごとし

出産の証書無き時は婚姻の証人又は婚姻を為さんと欲する男子誓分を作りて出産の証書又は事実公認の証書を得ることあたわざる旨を確証する申述を為しもつてその出産の証書の欠を補ふ事を得可し

第１２８条　婚姻を為さんと欲する双方の者の許諾を求めたる人の死去の証書を差し出すことあたわざる時は前条の如き申述をなす可し

第１２９条　もし書類及び証書の不足により身分証書の官吏より婚姻を行ふことを拒む時はその婚姻を為さんとする双方の者より願書を作りて初審裁判所に訴ることを得可しそうして此初審裁判所は検察官の申立を聴きし後簡略の裁判言渡をなす可し此言渡はこれを控訴することあたわざる者とす

第１３０条　フランス民法第６４条第２項に同じ

第１３１条　フランス民法第７５条第１項に同じ但し書類を読聞かすを婚姻を行はしむに換ふ可し

第１３２条　婚姻を為さんと欲する双方の者の中一方の者正当の故障あるにより邑庁に至ることあたわざる形情ある時は同邑内の自宅に証人六名の面前にて婚姻を行ふことを得但しその旨を婚姻の証書に證記す可し

第１３３条　婚姻をなす夫婦は必ずその当人出頭す可きものとす

第１３４条　国王は婚姻をなす双方のものに就て重要の理由ある時は公正の証書により特別の代人をもって婚姻をなすを允すことを得可し

もし代人を出すものその婚姻を行ふ前既に他の人と適法の婚姻を為せし者たるにおいては代人をもつて行ひたる婚姻は無効の者とみなす可し（フランス民法第７５条、差異）

第１３５条　フランス民法第７５条第３項に同じ

第１３６条　法教上の礼式は婚姻をなす双方のものその宗派の僧官に民法上の婚姻の礼式を為したる旨を告証せし後に非ざれば行ふことを得す

第１３７条　フランス民法第５０条に同じ但し百〔フランク〕 は百フランに作る可し又損失の償は格別なりとすを追加す可し

○第５款　外国において契約したる婚姻

第１３８条　フランス民法第１７０条に同じフランス蘭人は荷蘭人と読め可し

第１３９条　フランス民法第１７１条に同じ但し簿冊に登記する期限は三ヶ月を一年内とす

○第６款　婚姻の取消

第１４０条　裁判官に非ざれば婚姻の取消を言渡すことを得ず

第１４１条　第８４条に背きて契約したる婚姻は先にその夫又は婦と婚姻の契約を為したる夫、婦、尊属親、婚姻に関係ある各人及び検察官よりその取消の訴をなすことを得可し（フランス民法第１８４条）自余はフランス民法第１８９条に同じ

第１４２条　フランス民法第１８０条及び第１８１条に同じ但し六ヶ月の期限を三ヶ月とす

第１４３条　治産の禁を受けたる者の契約したる婚姻はその治産の禁を受けたる者、その父母、四等迄の傍系の親、管財人又は検察官よりその取消を訟求することを得可し○治産の禁の止みし後においてはその治産の禁を受けし者に非ざればその取消を訟求することを得ず但し治産の禁止みし日より六ヶ月の間夫婦同室したる後はその取消を訟求することを得ず

第１４４条　フランス民法第１８４条及び此民法第８６条に同じ但し追加すること左の如し

夫婦又はその一方の者婚姻をなすに必要なる年齢に至りし時又はその婦の未だその年齢に至らずといえども取消を訟求する前に懐胎したる時は婚姻の取消を訟求することを得ず（フランス民法第１８５条）

第１４５条　第８７条、第８８条、第８９条、第９０条に背きて契約したる婚姻は夫婦又はその婚姻に関したるもの又は検察官よりその取消の訴をなすことを得可し

第１４６条　フランス民法第１８２条及び第１８３条第１項に同じ但しフランス民法第１８３条の婚姻取消の訟求をなすことを得可き一ヵ年の期限を六ヶ月間とす又追加すること下のごとし　外国人と契約したる婚姻取消の訴はその婚姻の証書を未だ簿冊に登記せざる間はその血族親これをなすことを得可し

第１４７条　フランス民法第１９０条及び第１９６条追加　もし諸証人の第１３１条に必要なる身分なき時は婚姻は当然無効となす可き者に非ず即ち裁判所においてその時の模様によりその婚姻の効あるや否やを裁定す可きものとす

第１４８条　フランス民法第１８７条に同じ

第１４９条　婚姻の解けたる時は最早検察官はその婚姻取消の訴をなすことを得ず

第１５０条　フランス民法第２０１条に同じ

第１５１条　フランス民法第２０２条追加　夫婦中一方の者他の一方の者を欺きたる時は損失の償をなす可き裁判言渡を受く可きものとす

第１５２条　第１５０条及び第１５１条の場合においては婚姻取消の言渡有りし日よりその婚姻の効を生ずること無し

第１５３条　婚姻を取り消すといえどもその夫婦と正意をもって契約を結びたる第三の人の権利を害することを得ず

第１５４条　第９１条、第９９条、第１０３条、第１０７条、第１３０条の規則に背きたる場合においてもその婚姻は無効の者に非ず若又第１３２条に基づきて未だ公けに婚姻を行はざる時は身分証書の官吏に関する第１３７条の規則のみを適用す可し

○第７款　婚姻の存立の証拠

第１５５条　フランス民法第１９４条に同じ

第１５６条　婚姻の簿冊無く又は紛失せし場合においてももし現に夫婦たるの景状ある時は裁判官の裁判をもつてその婚姻の証拠に充分なりとす

第１５７条　フランス民法第１９７条に同じ

○第６巻　夫婦の権利及び義務

第１５８条　フランス民法第２１２条に同じ

第１５９条　フランス民法第２０３条に同じ

第１６０条　フランス民法第２１３条追加　夫は善良の家父に等しくその婦の財産を管理し又その婦の過失の責に任す可し○夫はその婦の許諾を得るに非ざればその婦の不動産を売却し又は抵当となすことを得ず

第１６１条及び第１６２条　フランス民法第２１４条に同じ

第１６３条　フランス民法第２１７条追加　もし婦はその夫より或証書を記し或は契約し為すの許諾を受けたる時といえどもその夫の特定の許諾を得るに非ざれば白も弁償を受け或は読取証書を興ふることを得ず

第１６４条　婦の毎日家事に関する費用のため証書を記し或は契約をなす時は法律上に於てその夫の許諾有りと思料す

第１６５条　フランス民法第２１５条に同じ

第１６６条　フランス民法第２１６条に第２項を追加す

　第２　離婚或は夫婦分居或は財産分離のためその婦の訴訟を受けたる時

第１６７条　フランス民法第２１８条に同じ

第１６８条　フランス民法第２２０条追加　もし夫自己の許諾を取消す時は（その婦に公けの商買たるを允したる許諾を云ふ）則ちその取消を公にす可し

第１６９条　もしその婦に允許を興へす或は之がために損害を蒙るべき時において裁判所はその婦に他人と契約を為し或は財産を管理し或はその他の証書を記することを裁判所に訴ふるの権利を附興することを得可し（フランス民法第２１９条）

第１７０条　フランス民法第２２３条に同じ

第１７１条　フランス民法第２２５条に同じ

第１７２条　もし婚姻の解けたる後ち婦必要なる允許無く証書を記せし時はその証書を取り消さんと求むることを得ず

第１７３条　フランス民法第２２６条に同じ

○第７巻　適法の財産共通及びその効

　○第１款　適法の財産共通

第１７４条　婚姻の契約により特別に処分せし財産を除くの外夫婦同室せし日よりその夫婦の間に適法の財産共通有りとす○婚姻を行ひし後は契約によりその財産共通を変更し又は取消すことを得ず（フランス民法第１３９９条及び第１３９５条）

第１７５条　財産共通の利得となる可き物は恩恵の契約によりて得たる物といえども総て現今又は将来の動産、不動産とす但し恩恵の契約をなす時遺嘱者又は贈遺者の意に従て財産共通の利得となす可からざる旨を証書に記したる時は格別なりとす（フランス民法第１４０１条より第１４０８条に至る差異）

第１７６条　共通財産の負債と成る物は婚姻をなす前又は婚姻をなす時配偶者の為したる諸負債とす（フランス民法第１４０９条）

第１７７条　利益、入額及び損得は婚姻の永続する間悉く共通の財産中に算入す可し

第１７８条　配偶者の死去の後に返済期限に至る可き負債はその財産相続人独りこれを負担す可し

○第２款　共通財産の管理

第１７９条　フランス民法第１４２１条及び第１４２２条に同じ但しフランス民法第１４２２条第２項の「贈遺することを得可し」を「得ず」とす（第１９５条を看る可し）

第１８０条　夫の失踪するか又は急速を要する時においてはその婦裁判所の允許を得て後共通の財産を抵当となすことを得可し

○第３款　財産共通の解除及びその共通を肯せざるの権利

第１８１条　財産共通は左の諸件によりて当然に解除す

　第１　死去

　第２　前配偶者の失踪せし時裁判官の允許を得たる再婚

　第３　離婚

　第４　夫婦別居

　第５　財産分離

　再婚、離婚又は財産分離に因り財産共通を解除する特別の効は此等の事に冠する諸巻に定則あり（フランス民法第１４４１条）

第１８２条　夫婦中一方の者死去してもし幼年の子有らば一方の生存したる者後見人の監察者の面前において共通財産の目録を記す可し○もし共通財産の目録無き時はその共通は幼者の利益のため継続するものとす（フランス民法第１４４２条、差異）

第１８３条　財産共通の全部を解除せし後は総てその財産の夫婦の間に何れより来りしを問はずその夫婦の間又はその財産相続人の問に折半す可し

財産分派に関して第２篇第１６巻に設けたる規則は適法の共通財産の分派に適用することを得可し（フランス民法第１４７６条）

第１８４条　衣服、金銀賓玉類、夫婦中一人の職業に属する器械、書庫、芸術又は理学に関する諸物件は前条の規則の例外とす○夫婦の中後に生存したる者は協議により又は評価人をもつて定むる相当の代価を要求することを得可し

第１８５条　フランス民法第１４８４条に同じ

第１８６条　共通財産の全部を分派せし後夫婦中の一人は他の一人と婚姻する以前に契約したる負債のためにその権利者より訴訟を受くること無しそうしてその負債はその契約を為したる夫婦中の一人又はその財産相続人これを担任す可き夫婦中の一人は他の一人又はその財産相続人に封し半分の償還の訴をなすことを得可し

第１８７条　婦は財産共通を肯せざるの権利を有す但し之に反する契約はその効ながる可し○その婦財産共通を肯せざりし後は嫁資を取戻すを得ずしかれも麻布類及び衣服類を自己の須用のために所得となすことを得可し

財産共通を肯せざる婦は共通の負債を分担す可き義務を免がる可し但し公けの商買たる時は格別なりとす

財産共通に関して権利者の権利を害せざるために婦は公けの商買たる名義により又は婚姻をなす以前に契約したる負債を継続してこれを担当す可し但し右二個の場合においてはその夫又はその夫の財産相続人に封し償還の訴をなすことを得可し（フランス民法第１４５３条、第１４９２条、第１４９５条）

第１８８条　財産共通を肯せざるの権利を得んと欲する婦は財産を共通せし最後の住所を管轄したる裁判所の書記局に婚姻を解除せし後一ヶ月以内に財産共通を肯せざる証書を出す可しその夫の死去によりて財産共通を解除する時はその権利を失ふ可し○その権利を失ふの期限は婦その夫の死去を知り得し日より起算す可し（フランス民法第１４５７条、差異）

第１８９条　もし婦の財産共通を肯せざる証書を出さずして前条の期限間に死去せし時はその財産相続人はその死去を知り得し後一ヶ月の期限間にその婦に代り前条に記したる方法に従ひ財産共通を肯せざる証書を出すことを得可し

婦の財産相続人はその婦の衣服類及び諸道具を請求することを得ず（フランス民法第１４６１条）

第１９０条もし婦の財産相続人二人以上有りて或は共通の財産を受くることを肯し或は之を肯せざることに附きその意各相同じからざる時はこれを受くることを肯する者自己の相続す可き部分のみを収取することを得可し○残余の財産は皆これを夫に属しそうしてその夫又はその夫の財産相続人は婦の財産共通を肯せざる財産相続人に封じその婦の要求することを得可き弁償を担任す可きものとす但しその財産共通を肯せざる者の得可き部分のみに関す可し（フランス民法第１４７５条）

第１９１条　フランス民法第１４５４条に同じ

第１９２条　フランス民法第１４６０条に同じ

第１９３条　フランス民法第１４６６条に同じ

○第８巻　婚姻の契約

　○第１款　一般の婚姻の契約

第１９４条　婚姻を為さんと欲する夫婦は国の風俗又は安寧を乱ること無く且つ後の数条に列記したる規則に循う時は適法の財産共通のために設けたる規則に循うに及ばず（フランス民法第１３８７条）

第１９５条　フランス民法第１３８８条追加　夫婦は適法の財産共通をなすと否とに関せず婦の持参せし不動産、公債証書か又は結婚の間に得たる債券及び動産は共通の財産と為さず且つその婦の許諾無き時は此等を売却し或は書入質となすことあたわざる旨を契約することを得可し

第１９６条　婚姻を為さんと欲する夫婦は婚姻の契約に因り法律上その卑属親の財産相続を為し得可き規則を放棄し又はその卑属親の財産相続を規定することを得す（フランス民法第１３８９条）

第１９７条　婚姻を為さんと欲する夫婦はその一方の者共通財産の利益を得可きことを契約するを得ず

第１９８条　夫婦は外国の法律に循び婚姻の契約をなす可きことを汎博に定むることを得ず○自余はフランス民法第１３９０条に同じ

第１９９条　財産共通を除去するをもつて損得の共通を除去せし者となす可からず但し損得の共通は別段の契約をもつて除去す可し○損得の共通は本巻の第２款中に一定の規則あり（フランス民法第１３９２条）

第２００条第三共通を除去し又は制限することを契約する時は更に又婦の毎歳家事の費用と子の教育の費用とに供す可き金額を確定することを得可し

第２０１条　特別の契約無き時は夫は総てその婦の入額を支配す

第２０２条　フランス民法第１３９４条追加　婚姻の契約は婚姻を為せし日よりその効を生ずることを契約す可からず

第２０３条　フランス民法第１３９６条に同じ

第２０４条　フランス民法第１３９５条に同じ

第２０５条　適法の共通財産を分派するにおいて公債証書又は法律上一定の価頤ある証券を除くの外に共通の動産を分派する時は婚姻の契約書に共通の動産を證記し或は夫婦の筆記し且つ公証人の姓名を手署したる目録を契約書の変に附加しもって動産共通の証拠となす可し

第２０６条　フランス民法第１３９８条追加　もし第９５条及び第９８条の規則に基づき婚姻をなす時は婚姻契約書の草案を婚姻の願書に添加す可し

第２０７条　適法の財産共通に違戻す可き婚姻契約の条款はその婚姻を行ひし地を管轄したる初審裁判所又は外国において行ひし婚姻の証書し證記せし地を管轄したる初審裁判所の書記局において公けの簿冊に證記せし日より第三の人のためにその効を生す可し

第２０８条　適法の財産共通に関する規則は婚姻の契約に反せざる場合においては常に適用することを得可し○如何なる方法をもつて財産共通をなすを問はず婦又はその財産相続人は前巻の規則に基づきて財産共通を肯せざるの権を有す可し（フランス民法第１３９３条、第１４５３条、第１５２８条）

第２０９条　婚姻の契約及び総て婚姻のためにためしたる贈遺はその婚姻を実行せる時はその効なかる可し（フランス民法第１８１８条）

○第２款　損得、利益及び入額の共通

第２１０条　婚姻を為さんと欲する双方の者唯損得のみち共通す可き契約を為したる時は此契約は財産の全部に関する共通に非ずそうして婚姻解除の後は結婚中に生じたる損得をもつて配偶者に分派す可き（フランス民法第１４９８条）

第２１１条　婚姻の契約書中に共通の契約無き時は配偶者互に損得を折半してこれを負担す可き

第２１２条　得とは夫婦の財産の利益及び入額夫婦の職業又は入額の払出を節約せしにより結婚中夫婦の資産を増殖したるを云ひ損とは出費の入額に超過するにより資産を減却したるを云ふ（フランス民法第１４９８条）

第２１３条　結婚中に配偶者一方の者の財産相続、贈遺、又は遺嘱に因て得たる財産は之を得となす可からず但し第２２２条の規則は格別なりとす

第２１４条　結婚中に購求したる動産及び不動産は縦令ひ夫婦の中一方の名義によると雖も常に得とみなす可し但し反対の約束ある時は格別なりとす

第２１５条　夫婦の中一方に属する財産の価額の高下は得又は損とみなす可からず　

第２１６条　増成の地、流水による漸積の地、建築及びその他の物に因り不動産の良好に趣きたる時もまたこれを得とみなす可からず

第２１７条　火災洪水又はその他の事によりて生じたる損害はその不動産を所有したる夫は婦これを負担す可し

第２１８条　結婚中に共通の負債を為したる時は総てこれを共通して負担す可し○夫婦の中一方の者罪を犯せしによりて償還す可き負債は共通の負債となす可からず

第２１９条　夫婦の問に利益又は入額を共通す可き契約をなす時は黙許して適法の財産共通及び損得の共通を除きたるものとす

第２２０条　損得の共通及び入額又は利益の共通をなす時は（第２１０条より第２１９条に至る）夫婦に属する動産は婚姻の契約書中又は公証人及び夫婦の姓名を手署したる目録にして且つ共通の事を記載したる契約書の写に添へし目録中に示すを要とすそうしてもし此法式無き時は動産は得とみなす可し（フランス民法第１４９９条）

第２２１条　結婚中に夫婦の中一方の者財産相続、遺嘱又は贈遺によりて得たる動産は目録に記載す可しもし此目録又は他に充分の証拠無き時は夫はその動産をもつて己れに属するものとなすことを得ずといえども婦又はその財産相続人は結婚中に得たる動産に関して証人又は所要の時は公証人によりて己れの所有たることを確証するを得可し

第２２２条　弼生間の年金、毎歳、毎日、毎週の入額、遺嘱及び此種類の贈遺は利益及び入額となす可し

○第３款　婚姻を為さんと欲する者の互になす贈遺

第２２３条　フランス民法第１０９１条追加　但し贈遺の財産その贈遺者の随意になすことを得可き定分に過くる時は則ちその定分に減す可し（フランス民法第１０９０条）

第２２４条　證書中に確定したる現在の財産又は贈遺者の財産の全部又は一部は此種類の贈遺の目的となすことを得可し（フランス民法第１０８４条）

第２２５条　此種類の贈遺はこれを受くる者の別段の承諾無き時といえども有効の者たり（フランス民法第１０８７条）

第２２６条　此種類の贈遺をなすと否とは贈遺者の所好に任す可き約定をもってこれを行ふことを得可し（フランス民法第１０８６条）

第２２７条　證書中に確定したる現在の財産の贈遺は如何なる場合を問はずこれを取消しことを得ず但し贈遺に関する約定を行はざる時は此限に在らず（フランス民法第１０９６条、差異）

第２２８条　贈遺者のその財産の全部又はその一部を贈遺する時はその贈遺の財産中にて些少の部分を除くの外総をその財産を償うを得ずして更に他人に贈興ずることを得ざるに附てはその贈遺はこれを取消す可からざるものとなす可しといえども裁判官の処捌により又は償を為してその財産を更に他人に売フランスび又は質物となす類の事由なるに附てはその贈遺を取消すことを得可し（フランス民法第１０８３条）

約定したる条件を行はざるにおいては此贈遺を取消すことを得可し

第２２９条　フランス民法第１０９２条に同じ但し「且その贈遺」以下「法則に循ふ可し」迄を省く

第２３０条　婚姻の契約書により夫婦の中一方より一方に或は相互に財産の一部又は全部を贈遺してその贈遺を受けし夫又は婦のその贈遺を為したる者より先に死せし時はその婚姻によりて生じたる子にその贈遺の財産を伝う可からず

○第４款　婚姻を為さんと欲する夫婦及びその婚姻に因て生ずべき子のためになす所の贈遺

第２３１条　婚姻を為さんと欲する双方の者己れの財産を随意になすことを得可き時は婚姻の契約書又はその婚姻をなす以前公証人に出したる他の証署に因り自己の随意の贈遺を為すことを得可し但し随意になすを得可き財産の定分に過くる時は則ちその定分に減す可し（フランス民法第１８１１条及び第１０９０条）

第２３２条　もし此種類の贈遺を婚姻の契約書によりて為したる時は贈遺を受くる者の別段承諾無しといえども有効の者たり又他の證書によりて為したる時は別段の承諾有るの後に非ざればその効を生ぜず（フランス民法第１０８７条）

第２３３条　フランス民法第１０８２条第２項追加　贈遺を受けたる者「及び婚姻により生じたる子又は卑属親その贈遺者より先に死去せし時はその贈遺を無効のものとす（フランス民法第１０８９条）

第２３４条　此巻の第２２４条、第２６６条、第２７７条、第２２８条の規則もまた此款に記載したる贈遺に適用することを得可し　

○第９巻　再婚を為したる時の財産共通及び婚姻の契約

第２３５条　再婚の時もまた夫婦の間財産の全部の共通は当然に在る可きこととす但し之に反する婚姻の契約ある時は格別なりとす

第２３６条　フランス民法第１０９８条追加　前婚の子はその財産相続を始むる時再婚の配偶者に贈興す可き財産の部分を減せんことを求むるを得可し

第２３７条　フランス民法第２０９８条追加　又婚姻の契約によりても」

第２３８条及び第２３９条　フランス民法第１０９９条及び第１１００条に同じ

第２４０条　前婚の子有る時は共通の損得は配偶者の間に平頭の分派をなす可し婚姻の契約書により損得の共通を除き又は更改せし時は格別なりとす

○第１０巻　財産分派　

第２４１条　婦は左に列記したる場合に非ざれば裁判所に財産分派を訴ふることを得ず　　

　第１　夫の著き不規則なる所行により共通の財産を浪費し又は家事の衰退の恐れ有る時第２　夫の産業の衰敗せしにより夫の一身の財産をもって婦その権利を行い且つその嫁資を取戻すに足らざるの恐れ有る時（フランス民法１４４３条）

第２４２条　財産分派の請求は公けにこれをなす可し（フランス民法第１４４７条）　

第２４３条　夫の権利者は財産分派の訟求を県検証するために之に干渉することを得可し（フランス民法第１４４７条）

第２４４条　財産分派はこれを公けにせし後に非ざれば行ふことを得ず但しこれを公けにせざる時はこれを行うもその効無きものとす　以下フランス民法第１４４５条第２項に同じ

第２４５条　婦は財産分派の訴訟中裁判官の許可を受け財産の減少及び消失を防ぐためその財産保全の処置をなすことを得可し（フランス民法第２７０条）

第２４６条　フランス民法第１４４４条に同じ但し裁判言渡の如く執行うために手続を為す期限は一ヶ月とす

第２４７条　夫その権利者の権を害せんがため裁判所より夫婦財産を分つ可きの言渡を得たる時と既にその言渡の如く執行い始めたる時とし別なく権利者その言渡の執行を止めしむることを訴うるを得可し（フランス民法第１４４条第１項）

第２４８条　フランス民法第１４４８条に同じ

第２４９条　夫と財産を分ちたる婦は自由にその財産を支配するの権を復し且つ第１６３条の規則に関せず自己の動産を随意になすことに附ては裁判所より一般の許可を得可し（フランス民法第４４９条）

第２５０条　もし夫その婦承諾により且つその婦の面前においてその婦の財産を売却しもつてその代金を己れに受取り又は己れの利益と為したるの證ある時その代金を利益となる可き方法に用いず或は更に他の財産を買入れざるにおいてはその責に任す可し（フランス民法第１４５０条第２項）

第２５１条及び第２５２条　フランス民法第１４５１条に同じ

第２５３条夫婦財産の共通を復する時は必ずこれを公布す可しそうしてその公布を為さざる間は第三の人に対し共通を復したるの効有りとなすことを得ず（フランス民法第１４５１条）　

○１１巻　婚姻を解く事

　　○1款　一般に婚姻を解く事

第２５４条　婚姻は左の数件によりて解除す

　第１　死去

　第２　夫婦中一方の者十ヵ年間失踪したる事及び第１９巻第１款の規則に循ひ更に他の人と婚姻をなす事

　第３　此巻第２款の規則に循ひ夫婦分居又は財産分派の裁判言渡を受けし事

　第４　此巻第３款に循ひ離婚をなす事(フランス民法第２２７条)

　　○２款　夫婦分居の後に婚姻を解く事

第２５５条　第２８８条に記したる原因中の一により或は相互の訟求によりて夫婦分居し及び財産分派を為せし時又は夫婦和解すること無く五年間継続して分居したる時は婚姻解く可き裁判言渡を受けんがため夫婦の中一方の者他の一方の者を裁判所に呼出すことを得可し(フランス民法第３１０条)

第２５６条　夫又は婦の月を追ひて三度呼出状を受けてなお出頭せざる時又は婚姻を解く可き訟求に抗拒し又は和解をなす可き旨を申述する時は婚姻を解く可き訟求書は却下せらるるとす(フランス民法第３１０条)

第２５７条　呼出を受けたる夫又は婦の婚姻を解く可き訟求を許容す可き旨を承諾する時は夫婦共に裁判所において専任されたる裁判所の面前に出頭す可し然る時は該裁判官は夫婦をして和解せしめんことを企謀す可き者とす(フランス民法第２８２条)もし該裁判官夫婦を和解せしむることあたわざる時はその夫婦は初度裁判所に出頭せしより三ヶ月ないし六ヶ月中に最近の尊属親を同件し更にその裁判官の面前に出頭す可し

第２５８条　もし夫婦再度出頭すといえども和解せざる時は裁判所においては専任の裁判官及び検察官の申立を聴きし後婚姻を解く可き訟求に判決を下す可し又裁判所においてもし夫婦を和解せしむ可き意見有る時六ヶ月間裁判所言渡を延期することを得可し

第２５９条　此裁判言渡を控訴せんとする時は一ヶ月以内にこれをなす可し(フランス民法第２９１条)

第２６０条　裁判言渡書は第２７６条に循い身分証書の簿冊に證記す可し

第２６１条　第３０１条及び第３９２条の規則は婚姻を解きし後に執行することを得可し

○第３款　離婚

第２６２条　離婚の訟求は裁判上においてこれをなす可き者たれは夫の住所を管轄したる初審裁判所に訴う可し但し第２６６条に記したる場合においては格別なりとす(フランス民法第２３４条)

第２６３条　離婚は夫婦相互の承諾によりてなす可し(フランス民法第２３３条差異)

第２６４条　離婚の原由は左に列記したるがごとし

　第１　姦通(フランス民法第２３０条)

　第２　夫又は婦の残忍なる棄去○他はフランス民法第２３１条及び第２３２条に同じ蓋し苛虐及び不良の取扱に因て一方の者生命を失うの恐れあるか又は危険の負傷有るを要す

第２６５条　フランス民法第２６１条追加　夫婦の中一方の者の姦通を検証する裁判に関する時もまた同様の法式をもつてす可し

第２６６条　夫婦中一方の者の残忍なる棄去に関する離婚の訴訟は夫婦同居せし最後の住所にしてその棄去の為せし時の住所を管轄したる裁判官の面前においてなす可しそうしてその離婚の訟求は同居せし住所を至当の原因無くして去りたる一方の者他の一方の者と断然一致することを拒みたる場合に非ざれば許可することを得ず離婚の訴訟は如何なる場合を問わず夫婦中一方の者のその同居せし住所を棄去せし日より起算し五ヵ年を経過せす後に非ざれはなすことを得ず

もし至当の原因あるによりて夫婦離散せし時は五ヵ年の期限はその原因の止みし時より起算す可きものとす

第２６７条及び第２６８条　フランス民法第２６８条及び第２６９条に同じ

第２６９条　フランス民法第２６７条に同じ

第２７０条　フランス民法第２７０条及び第２７１条に同じ

第２７１条　フランス民法第２７２条追加　もし婦のその夫と同居せし住所を裁判所の許可によりて去りたる後夫婦再び同室せし時は法律上において夫婦和解せりと思料す

第２７２条　フランス民法第２７３条に同じ

第２７３条　残忍なる棄去を原因としたる離婚の訴訟はその離婚の言渡ある前に夫又は婦のその住所に帰来するによりて消滅す可し此訴訟の消滅する期限は裁判所中国外に在りたる夫又は婦の帰来せし日より起算す可し

又もし夫婦中一方の至当の原因無くして再び同居せし住所を棄去する時は他の一方の者はその一方の者の失踪の後六ヶ月を経て更に離婚の訴訟を為しその訴訟を維持するためには奮来の原因を用いることを得可しそうして此場合においての離婚の訴訟は縦令いその一方の者再び帰来すといえども消滅すること無し

第２７４条　第２６５条の二個の場合においてもし夫婦中一方の者裁判言渡に控訴す可からざるの力を生ぜし日より六ヶ月を過ぐる時は離婚の訴訟をなすことを得ず

もし夫婦中一方の者の離婚の裁判言渡を受けたる時他の一方の者の王国内に在らざる時は六ヶ月の期限はその者の帰来せし日より起算す可し

第２７５条　離婚の訴訟は離婚の裁判言渡ある前に夫婦の死去するによりて消滅す可し

第２７６条　離婚の裁判言渡書は此裁判言渡を最早控訴することを得ざるに至りし日より起算し遅くとも六ヶ月以内に夫婦又は夫婦中一方の者の願によりてその夫婦の住所ある場合の身分証書の簿冊に證記するを要とす○もし然らざればその裁判言渡は無効に属し更に新　たなる原因有るに非ざれば離婚の訴訟をなすことを得ず(フランス民法第２６４条及び第２６６条)

第２７７条　フランス民法第３００条に同じ

第２７８条　離婚を受けし被告の夫又は婦以下フランス民法第２９９条に同じ

第２７９条　離婚を為せし時は夫又は婦たるを問わずその一方の者より後に生存したる者の得可き権利を行ひ或は利得を得くることを得ずしかれも夫婦中離婚を為したる原告者は他の一方の者の死去せし後においてはその権利を行い或は利得を受くることを得可し(フランス民法第１１５２条)

第２８０条　被告人の入額の三分の一に過ぐ可からず乞フランス民法第３０１条に同じ

第２８１条　養料は夫婦中一方の者の身分と資産とに準じてその額を定めもしその養料を与うる一方の者の資産滅却するにおいてはその養料もまた滅却し又もしその養料の必要ならざる時はこれを停止することを得可し(フランス民法第２０９条及び第３０１条)

第２８２条　養料を与う可き義務は夫婦中一方の者の死去するによりて消滅す可し

第２８３条　第三の人婚姻の契約書中に約定したる養料は離婚の後といえどもその約定を受けた夫又は婦の用に供することを得可し

第２８４条　フランス民法第３０２条追加　子を養育する所の夫又は婦の死去する時は裁判所よりその子を養育するために他人にこれを託することを得可し

第２８５条　父母は親の権及び後見に属する権利を保つ可し○他はフランス民法第３０３条に同じ

第２８６条　フランス民法第３０４条に同じ

第２８７条　財産共通を為したる夫婦の離婚する時は適法の財産共通及びその効の巻に依遵してその財産を分派す可し

○第１２巻　夫婦分居

階２８８条　フランス民法第３０６条に同じ

第２８９条　夫婦分居の訴訟は離婚と同一の方法をもってこれを為し且つこれを吟味してそのその裁判所をなす可し(フランス民法第３０７条)

第２９０条　夫婦分居の訴訟を為したる夫又は婦は之と同一の原因をもつて離婚の訴訟をなすことを得ず

第２９１条　夫婦相互共に分居の訟求をなす時は裁判官は確定の原因を挙げずしてその裁判をなすことを得可し

婚姻を為せしより二ヵ年の後に非ざれば此訟求を許可せざるごとし

第２９２条　相互に夫婦分居を訟求せんと確定せし夫婦はその分居に附き先ず公正の証書によりて夫婦及びその子に関する約束を予定す可し○夫婦分居を訴訟するより裁判言渡の如くに為さざるを得ず(フランス民法第２７９条及び第２８０条)

第２９３条　夫婦分居の訟求はこれを願書に認めて同居せし住所を管轄したる初審裁判所に出たす可し

第２９４条　裁判所は此裁判所附きの裁判官一名又は数名の面前に夫婦相共に自から出頭す可き旨を命令しそうして該裁判官はその相当の説諭をなす可し裁判官は六ヶ月の期限を経てその夫婦に再び裁判所に出頭す可きを命令す(フランス民法第２８１条及び第２８２条)

第２９５条　夫婦の再び裁判所に出頭せしより六ヶ月を経て後に裁判所はその夫婦の最近の尊属親を呼出し且つ検察官の申立を聴きし後訟求の裁判言渡をなす可し

第２９６条　もしその訟求を却下せらるる時は夫婦は更に願書を認め遅くとも一ヶ月以内に控訴す可し

第２９７条　夫婦分居は敢て婚姻を解くこと無しといえども夫婦同室をなすの義務を絶止す

第２９８条　フランス民法第３１１条追加　夫婦分居は婚姻を解く場合に於けるが如く共通の財産を分派するに至らしむ可し

第２９９条　婦の財産を支配する夫の権力は夫婦分居によりて消滅す可し

婦は自由にその財産を支配する権を復し且つ裁判官より自己の動産を随意になすために一般の允許を受くることを得可し(フランス民法第１４４９条)

第３００条　夫婦分居の裁判言渡は必ずこれを公布す可し○此法式を行はざる間は夫婦分居の裁判言渡も第三の人に対してその効なかる可し

第３０１条　婚姻を解く事の巻の第２６５条、第２６６条、第２６７条、第２６８条、第２６９条、第２７０条、第２７１条、第２７２条、第２７３条、第２７４条、第２７５条、第２７６条、第２７７条、第２７８条、第２７９条、第２８０条、第２８１条、第２８２条、第２８３条、第２８４条、第２８５条及び第２８６条の規則は夫婦中一方の者の他の一方の者に対して訟求する夫婦分居に適用することを得可し但し離婚することを得可き数個の原因中の一によりて夫婦分居をなす時のみとす○第３７２条もまた適用する事を得可し

第３０２条　第２９２条の規則に循い夫婦の間に決定したる約束は行好意によりて夫婦分居をなす可き許可を得し時に執行することを得可し

第３０３条　夫婦分居はその夫婦の和解によりて当然消滅して総て婚姻の効を再生す可し但し夫婦分居せし期限の間に第三の人に対して記したる証書の効は此限に在らず○又夫婦の意に反する約束は無効たる可し(フランス民法第２７２条)

第３０４条　夫婦分居の裁判言渡を公布せし時はその夫婦は第三の人に対して和解の効ありと述ることを得ず又夫婦分居を止めたる旨を公布せざる時も同然たる可し

○第１３巻　父たる事及び子たる事

　　○第1款

第３０５条　夫婦結婚の間に懐胎し又は生まれたる子はその夫をもって父とす(フランス民法第３１２条第１項)

第３０６条　フランス民法第３１４条に同じ

第３０７条　フランス民法第３１２条第２項及び第３１３条第１項に同じ

第３０８条　フランス民法第３１３条第２項に同じ

第３０９条　夫婦分居の裁判言渡に控訴す可からざるの力ある日より三百日を経て後に生れし子はその夫より我子に非ずとするを許可し但し婦はその夫のその子の父たることを明証するに適当する諸実事を挙ぐるを得可し

夫はその子をもつて我子に非ずとすることを得し後は夫婦和解の後といえどもその子をもつて嫡出の子となすことを得ず

第３１０条　婚姻を解きし時より三百日の後に生まれし子は当然嫡出の子に非ずとなす可し(フランス民法第３１５条差異)

第３１１条ないし３１３条　フランス民法第３１６条、第３１７条、第３１８条に同じ但し第３１２条の期限はフランス民法第３１８条の一ヶ月の期限をもつて二ヶ月とす又３１３条に左の別項ありこともし夫はその子を我子に非ずとなすためを訴ふるを得可き定期内にその訴をなすして死去せし時はその財産相続人は３０７条に記したる場合においてのみ嫡出の子に非ざることを訴え出づるを得可し

第３１４条　もし財産相続人中一人又は数人欧州内王国外の国に住居したる時は前条の訴をなすことを得可き期限を六ヶ月とす又もしその一人又は数人欧州外に住居したる時はその期限を一ヵ年とす

海戦ある場合においてはその期限を二倍す

第３１５条　夫の我子に非ずとなすの訴訟はその子の後見人に対して為しそうしてその母もまた当然呼出を受く可し(フランス民法第３１８条)

第３１６条ないし３２２条　フランス民法第３１９条ないし第３２６条に同じ

第３２３条　フランス民法第３２７条追加　出産の証書を枉害したる罪に附ての刑事の訴訟は之に関する者に秘して証拠の端緒を記せんがために検察官はこれをなすことを得可し此場合においては民事の訴訟に因て刑事の訴訟を停止すること無し

第３２４条　フランス民法第３２８条に同じ

第３２５条　フランス民法第３２９条に同じ但し五ヵ年の期限は三ヵ年とす

第３２６条　フランス民法第３３０条に同じ

○第２款

第３２７条　フランス民法第３３１条に同じ

第３２８条　王より允許を受くるに非ざれば婚姻をなすことを得ざる者の間に生まれたる子は婚姻を行う証書に我子なりと認めたる後に嫡出の子となす可し

第３２９条　もし婚姻をなす以前又は婚姻の証書中に嫡出の子と為さざる時は嫡出の子となす可き書而を王より受けてもって嫡出の子となすことを得可し

第３３０条　もし父母の中一方の者の死去せしに因り婚姻をなすことあたわざる時は嫡出の子となす可き書而をその子に不与することを得可し

第３３１条　右二個の場合において王は大審院の意見によりてこれを処置し大審院は最近の血属親の申立てを聴き且つ新聞紙上に嫡出の子となす可き旨を公告す可し

第３３２条　フランス民法第３３３条追加　第３２９条の場合においてもまた同じ

第３３３条　第３３０条の場合に因り嫡出の子となす事は王よりその書而を受けし日よりその効を生ず可ししかれも嫡出の子となす事により第三の人の財産相続の権利を害することを得ず且つ嫡出の子と為りたる者はその父の血属親にして嫡出の子となすことを承諾せし者の財産相続に非ざればこれをなすの権利を得可からず

第３３４条　フランス民法第３３２条に同じ

○第３款　私生の子を我子なりと認むる事

第３３５条　私生の子を我子なりと認むる事は私生の子とその父母との間に民法上の関係を規定す

第３３６条　私生の子を我子なりと認むる事は公正の証書の種類によりてなすことを得可し(フランス民法第３３４条)

第３１８条に循い身分証書の簿冊に證記したる証書を身分証書の官吏の請取りたる時もまた私生の子を我子なりと認むることを得可し

第３３７条　幼年の男子にして私生の子を我子なりと認むる事は満１９歳の年齢に達し且つ暴行、錯誤、詭詐又は騙術に出てざる時に非ざればその効無きものとす幼少の女子は縦令いその年齢１９歳に達せざる時といえども私生の子を我子なりと認むることを得可し

第３３８条　フランス民法第３３５条に同じ

第３９９条　母の生存中その母の承諾無き時はその父のみにて私生の子を我子なりと認むることを許さず母の死後にて私生の子を我子なりと認むる時はその父のみに附きこれを認むるの効有りとす(フランス民法第３３６条)

第３４０条　フランス民法第３３７条に同じ

第３４１条ないし第３４３条　フランス民法第３３９条ないし第３４１条に同じ

第３４４条　フランス民法第３４２条に同じ

○第１４巻　血統及び姻属親

第３４５条　血統とは此一方又は彼一方より所出の者或はその所出の者より出たる者の関係を云う○爾余はフランス民法第７３５条に同じ

第３４６条ないし第３４９条　フランス民法第７３６条ないし第７３８条に同じ

第３５０条　姻属親とは婚姻を結ぶにより夫婦中の一方と他の一方の血属親との間に互に生ずる関係を云う○夫婦の血属親相互の間には決して姻属親の関係無し

第３５１条　姻属親の級を算するは血統の級を算するの方法と異なること無し

第３５２条　婚姻を解くも夫婦中の一方と他の一方の血属親との間の姻属親の関係は止むこと無し

○第１５巻　親の権

　　○第１款　子たる者に対する親の権の効

第３５３条　フランス民法第３７１条追加　父母はその幼稚の子を養育し、保護し及び教育するの義務あり○丁年の子に関しては此巻第３款の規則に依遵す可し(フランス民法第２０３条)

第３５４条　子は丁年に至る迄父母の権に従う可し(フランス民法第３７２条)

第３５５条　フランス民法第３７３条追加　もしその父これを行うことあたわざる時はその母代りてこれを行う可し

第３５６条　幼者にして未だ後見を免がれざる子はその父の允許を得るに非ざれば親の家を離去することを得ず(フランス民法第３７４条)

第３５７条　フランス民法第３７６条ないし第３７８条に同じ但しその子の年齡未だ満１３歳に達せざる時はその禁錮を三ヶ月とし又その年齡満１５歳以上なる時はその禁錮を一ヵ年とす

第３５８条　フランス民法第３８１条に同じ

第３５９条　フランス民法第３７９条第１項に同じ

第３６０条　禁錮を受けたる子は上等裁判官にその禁錮の宥赦を請う書を出だすことを得可しそうして該裁判官はその父母及び検察官の申立てを聴きし後速かに裁判をなす可し(フランス民法第３８２条第項)

第３６１条　フランス民法第３８３条に同じ

○第２款　この財産に関する親の権の効

第３６２条　フランス民法第３８９条大項追加　此規則は父の支配に係らず全く特別の支配に係る可き確定の約定をもってその子の得たる財産に関してこれを適用することを得ず○もしその特別の支配を止めたる時はその父その財産を支配し又はその子の幼年の間に財産を支配せし者にその財産を還す可き求めをなすことを得可し

子のために任せられたる支配人はその子の幼年の間の財産をその父に還す可きものとす

第３６３条　フランス民法第３８９条第２項追加　法律上にてその父の所得となす可き財産に附てはその所有の権のみを還す可し

第３６４条　父は後見の巻において幼者の財産を売却することに関して設けたる規則を循守するに非ざれば自己の幼年の子の財産を随意になすことを得ず

第３６５条　父の利益と成りてその幼年の子の利益と成らざる場合においては初審裁判所より任せられたる管財人をもつてその子の代理を為さしむ可し

第３６６条　フランス民法第３８４条を変更する左のごとし

満２０歳に至る迄又は結婚をなす時迄

第３６７条　フランス民法第３８５条に同じ

第３６８条　フランス民法第３８７条に同じ

第３６９条　子の死去する時はその父その子の財産の入額を所得とすること無し

第３７０条　夫婦中の後に生存したる者適法の財産共通の巻第３１６条に依遵して目録を製することを怠りたる時はその幼年の子の諸財産の入額を得る権を失う可し

第３７１条及び第３７２条　フランス民法第３８６条追加　もし父離婚の裁判言渡を受けたる時はその母はその父の死去せし後に非ざれば子の財産の入額を得ることを得ず

第３７３条　父母その子の財産の入額を得るの権なき時はその父母に興ふるため及びその子の教育に充つるために裁判所においてはその子の財産中より取る可き年金を確定することを得可し

第３７４条　法に適して我子なりと認められたる私生の子の父母はその子の財産の入額を得るの権無きものとす

○第３款　尊属親と卑属親との間の相互の義務

第３７５条ないし第３８２条　フランス民法第２０４条ないし第２１１条に同じ

第３８３条　法に適して我子なりと認められたる私生の子はその父母に養料を与う可きの義務ありとす(フランス民法第７６２条)此義務は親子相互の事なり

第３８４条　養料を受くるを辞する約束は都て無効に属す可し

○第１６巻　幼年の事及び後見の事

　　○第１款　幼年の事

第３８５条　年齡の未だ満２３歳に達せざる者及び此年齡に達する以前に婚姻せざる者は幼年とす○もしその幼者満２３歳に達せずして婚姻を解く時は再び幼者の身分となる可からず父母無き幼者は此巻の第３款、第４款及び第５款に記載したる方法に因り後見を受く可きものとす

○第２款　一般の後見の事

第３８６条　後見は総て一人にてなす可きものとす但し此巻の第４０６条及び４１８条の規則は格別なりとす

第３８７条　後見の職に預かることを得可き者又は後見人たるを免がれざる者は後見の職を承諾す可き者たり

もしその後見人その職を行うを拒み又は遅延するにおいては初審裁判所はその後見人の代わりにその後見人の費用をもって管理人を任して後見とす可し

此場合において後見人その管理人の責に任ず可し但し管理人よりその管理を取戻すことを得可し

第３８８条　後見人はその管理を安全ならしめんがためには自己の管理を任したる財産の償額に平均する迄の書入質を出す可き者とす

治安裁判官は後見人に後見人の監察者及び最近の血属親の申立て聴きし後幼者の財産の種質、その入額及び後見人の任ず可き責に関する後見人の担保を確定す○治安裁判官は後見人の担保に関してその監察者の仮りに執行したる評議の調書を製す可し但し後見人は控訴することを得可し

もし幼者の血属者又は姻属親の王国内に居住したる人員不充分なる時は治安裁判官はその王国内に居住したる者のみの申立て聴く可し(フランス民法第２１４１条及び第２１３５条、差異)

第３８９条　フランス民法第４１２条及び第４１３条に同じ

第３９０条　後見人は都で己れの担任す可き財産の価額に充つる迄自己の財産を書入質となす可し

治安裁判官は後見人、後見人の監察者及び最近の血属者と評議し後見人の出す可き書入質の高を確定してその調書を製す可し但しその後見人の出す可き書入質の高は後見人の監察者主として仮りにこれを確定す可し

第３９１条　後見人の求めによりては血属親の意見を請いし後幼者より預りたる財産を預り官署に預くることを得可しそうして此場合においては後見人の差出したる書入質もまた官署に預けたる財産の高に応じて滅却す可し

第３９２条　もし後見人その職をなすことを承諾すといえども書入質を出ずに充分の財産を有せざる時はその財産を得る時にその書入質を出ず可し

第３９３条　第３９０条に規定せる書入質の確定を受けたる人は治安裁判官の決裁に対し初審裁判所に願訴することを得可し○初審裁判所はその願書を会得し検察官、後見人、後見人の監察者及び血属親の申立て聴きし後抵当となす可き金額に附き終審の裁決をなす可し

第３９４条　幼者の財産を増加し又は後見人の過失によることなくしてその財産を滅却せし場合においては後見人の書入質もまた同一の手続によりて増加することを得可し

第３９５条　治安裁判官は第３９０条に記したる諸人の申立を聴きし後書入質となす可き財産を確定す可し但し此確定に関しては第３９３条に依遵し初審裁判所に願訴するは格別なりとす

第３９６条　書入質は後見人を任ずる時或は後見人の誓詞をなす時その他公正の証書によりて設くるを要とす

第３９７条　後見人は幼者のため第三の人の財産又は公債証書をもって自己の抵当と為したる財産に換えて書入質となすことを得可し

第３９８条　後見人の担保はその後見を為したる間の計算を了り後見人たるの名義を解き計算の残額を弁償せし後において止む可しそうして書入質及び公債証書の證記は幼者の入費をもつてこれを塗抹す可きものとす

第３９９条　前数条によりて為したる書入質を設け或は解くことに関する証書を簿冊に證記するもその證記料を得ることあたわず但し幼者よりその証書を保存したる者に謝金を出すは格別なりとす

○第３款　父母の後見

第４００条、第４０１条、第４０２条　フランス民法第３９０条ないし第３９２条に同じ

第４０３条及び第４０４条　フランス民法第３９３条及び第３９４条に同じ

第４０５条　フランス民法第３９５条追加　蓋し此場合において裁判官は再婚の夫に後見を任するを得可し

第４０６条　フランス民法第３９６条に同じ但し此条においてもまた母は治安裁判官より後見の任を受け敢て親族会議よりこれを受くるに非ず且つ左の一項を追加す

もし母の後見を止めし時はその夫もまた後見を止む可し○その夫後見をなすの才力無く又は後見をなすを拒絶されたる時はその母最早後見をなすを得ず但し幼者禁治産の禁を受けたる者なるか又は狂暴の者なるによる時は格別なりとす○再婚を解除せし場合においては母はは後見をなすの権を復す可し

第４０７条　父母は他に再婚を契約する前においてその幼年の子の資産たる財産の目録を後見人の監察者に出す可きものとす

もしその父母再婚をなす前において右の法式を行はざる時は後見をなすの権を失うがため他の人をもつて後見に任ず可し

第４０８条　父又は父無き時はその母法に適して我子なりと認めたる私生の子の後見をなすことを得可し○その父母幼者なる時は治安裁判官仮りに後見をなす可き者を択定す

○第４款　父母より任じたる後見

第４０９条　フランス民法第３９７条追加　父母の中後に生存する者は後見の必要の時その後見を連続せしめんがために数人の後見を任ずることを得可し

第４１０条　フランス民法第３９８条に同じ

第４１１条　フランス民法第３９９条追加　もしその父母第４０７条に因り後見の任を受けざる時はその子の後見を撰む可からず

第４１２条　フランス民法第４００条に同じ

○第５款　治安裁判官より任じたる後見

第４１３条及び第４１４条　フランス民法第４０５条及び第４０６条に同じ但し此二条中には親族会議を治安裁判官に換え且つフランス民法第４０６条中の又は幼者住所の治安裁判役よりその職務をもつて求むる所に従いて除く可し

第４１５条　もし治安裁判官親族人中の多数によりて確定したる人を示す時は則ち後見を任したる効ありもし治安裁判官親族の多数によりて確定せし人より他の人を選定する時はその席に列する血属親又は姻属親の中一人の求めに応じて直に初審裁判所にその調書を差出す可し又該裁判所においては親族の同人員を呼出しその申立を聞きし後確定の後見人を任ず可し(フランス民法第４０５条、差異)

第４１６条　もし王国内に血属親及び姻属親無く又は呼出を受けたる親族の人員中一人も出頭せざるにおいては治安裁判官は独断をもって後見人を任ず可し

王国内に在る血属親又は姻族親の申立を聴きし後に後見人を任ず可し（フランス民法第４０９条、差異）

第４１７条　フランス民法第４０６条第１項に同じ但しこれを集会す可しを後見人を任ず可しに変え又左の１項を追加す

身分證書の官吏は幼年の子を残したる者の死去せし事又は幼年の子ある親の再婚せし事を治安裁判官に報道す可きものとす

第４１８条　フランス民法第４１７条に同じ但しフランス蘭西を荷に変う可し

第４１９条　フランス民法第４１８条追加　後見人はその職務を行い始むる前に治安裁判官に対して躬から任ぜをれたる後見の職を善良に及び正実に担任す可き誓をなす可し

第４２０除　私生の子の後見人を任ずる時は治安裁判官は予め他の意見を請うこと無く之を任ず可し（フランス民法第４０５条、差異）

○第６款　救育院に在る子の後見

第４２１条　救育院に在る子はその入院の期限中該院の事務を管理する委員の後見を受く可きものとす○後見人は身元金を出すこと無し

○第７款　後見人の監察者

第４２２条　前条に記したる後見を除くの外如何なる後見ある時といえども治安裁判官は第５款の規則に基ずきその監察者を任ず可し（フランス民法第４２０条）

第４２３条　此巻の第３款及び第４款によりて任ぜられたる後見人はその職務を行い始むる前にその観察者を任ぜじめ又もし後見人に或る過失ある時はその職を退かじむ可し但し此規則は幼者に償額を償う可きこと相触るること莫かる可し（フランス民法第４２１条）

第４２４条　フランス民法第４２２条に同じ

第４２５条　法に適して後見の観察者たるを免がれ又は辞せざる観察者のその職を行うことを承諾せざる時は第３８７条に規定したる如く観察者の費用をもってその代理人に任ず可し

第４２６条　後見人の観察者はその職務を行い始むる前に治安裁判官に対して誓をなす可し

第４２７条　フランス民法第４２０条第２項に同じ

第４２８条　観察者は後見人のその後見をなすため財産を書入質と為せしや否やを監督し又はその書入質を自から取る可し但し此等の事を為さざるにおいては損失の償を出す可きものとす観察者は後見人をして幼者の得たる贈遺の財産の目録を製ぜじむもし之し製ぜじめざる時また損失の償を出す可し（フランス民法第４５１条）

第４２９条　後見人の観察者は父母を除くの外総て後見人たる者をして二ヵ年毎に事務を行いしに附ての計算の要略書に諸証書を登写して差出さしむ可し（フランス民法第４７０条、差異）

第４３０条　後見人の前条に記したる諸事を行うを拒み又は後見人の観察者その後見人の差出したる計算の要略書中に不良の事或は至重の怠慢あるを発見する時は後見人を退職せしむ可し（フランス民法第４４６条）

第４３１条及び第４３２条　フランス民法第４２４条及び第４２５条に同じ

○第８款　後見及び後見人の観察者の職を解することを得可き原因

第４３３条　フランス民法第４３２条に同じ但し４「ミリヤメートル」の距離を郡に変え可し

第４３４条　後見の職を辞することを得可き者は左のごとし

　第１及び第２はフランス民法第第４２８条に同じ

　第３　住居したる州の外において公務を掌る人又はその公務により確定の期限にその州を離れざるを得ざる人○他はフランス民法第４３１条第１項に同じ但し治安裁判官をして他の後見人を撰はしむるの差異あり

　第４　６０歳の年齡に達せし人○もし此年齢に達する前に後見を任ぜられたる人は６５歳にて後見の職を解くことを得可し（フランス民法第４３３条、差異）他はフランス民法第４３４条ないし第４３６条に同じ

第４３５条　後見の任を辞せんとする者はその住所の地に在る時は後見の任を受けし日より算し又その地に在らざる時は後見の職に任ずるの告知を得し日より算し八日以内に願書を認め自費をもって裁判所に願い出ず可し○裁判所はその辞退を允許し又は拒絶す可し但し後見人は控訴することを得可し（フランス民法第４３９条、差異）

　　　○第９款　後見の職に任ずるあたわざる事、後見の職に参ぜじめざる事、後見の職を退かじむる事

第４３６条　フランス民法第４４２条に同じ

第４３７条　後見の職に参ぜじめず又その職を退かしむ可き者は左のごとし

第１及び第２はフランス民法第４４３条、第４４４条及び第４４５条に同じ但し第４４５条親族会議の員中は後見人と作す可し又追加すること左のごとし

　家資分産の身分資力なき確然たる身分の人

第４３８条　後見の職を解くことに附いて後見人の監察者、幼者の血属親又は第は４級迄の姻属親の訟求又は検察官の依頼に従い裁判所よりその言渡をなす可し但し後見人は右の言渡に関して控訴することを得可し○後見の職を退く可き裁判言渡ある時は後見人その職を相続する者に幼者の財産を計算す可し（フランス民法第４４６条、差異）

第４３９条　後見人の監察者の職を退かしむることもまた前条の法式に依遵す可し

第４４０条　裁判所はその裁判中後見人又は後見人の監察者のその職を行うを停止す可し

○第１０款　後見人幼者の身柄を監督する事

第４４１条　フランス民法第４５０条第１項追加　幼者はその後見人を尊敬す可し

第４４２条　もし後見人幼者の行状に附き至重なる戻意の事ある時はその幼者を禁錮せんと訴うることを得可し○裁判所に於いては後見人の監察者、幼者の血属親又は姻属親の申立を聴きし後に非あればその禁錮を允許することを得ず（親の権の巻を看る可し）（フランス民法第４６８条）

裁判所においては必ず後見人の監察者、幼者の幼者の血属親又は姻属親の申立を聴く可し

○第１１款　後見人の支配

第４４３条　フランス民法第４５０条に同じ但し追加する左のごとし

もし一人又は数人の管理を受けたる幼者財産を得又は贈遺を受くる時は第３６２条の規則を適用す可し

第４４４　フランス民法第４５１条第１項に同じ追加する左のごとし

目録は私にこれを製し後見人及び後見人の監察者之に手署し治安裁判官の面前において誓を為しその目録の公正確実なる旨を確証せし後裁判所の書記局に置く可し

第４４５条　フランス民法第４５１条第２項を変更すること下のごとし　幼者より後見人に償う可き物件ある時もし後見人証書人の間に答えてその幼者より得可き物件ある旨を述べざる時は幼者の丁年に至る前においてはその物件を要求することを得ず且つ幼者の丁年に至る時間にその物件に附て生じたる利益を失う可し○期満得免の期限は幼者の丁年に至る迄経過す可からず

第４４６条　フランス民法第４５４条に同じ但し親族会議を治安裁判官に変う

第４４７条　治安裁判官より後見人の監察者及び血属親の意見を聴きし後品物の儘保を置可きことを允許せし財産を除くの外後見人はその監察者の面前において幼者の財産を悉く　競売することを得可し

裁判所は評価人をして物件の眞買を算定し且つ後見人の申立てを聴きし後を確定の物件及び品物の担保を置く可き物件を随意に売却するを允すことを得可し

商品及び穀物は株式取引所又は市場の相場によりて売却す可し（フランス民法第４５２条に同じ）

第４４８条　フランス民法第４５３条に同じ

第４４９条　幼者の通常の入額その費用の額より多きこと四分の一に至る時は後見人その過剰の金額を幼者の資益となる可き方法に用いざるを得ず

後見人は王国の公債証書、不動産、不動産を書入質とし息銀を生ず可き義務の証券を購求する時に非ざれば幼者の金額を用うることを得ず但しその抵当の不動産の全部は書入質を取りて出す可き金額に比して三分の一より高価なるを要とす

もし後見人その金額を幼者の資益となる可き方法に用いざる時は一ヵ年内に適法の息銀を償う可し（フランス民法第４５５条、差異）

第４５０条　後見人は幼者の名義をもって公債証書をその簿冊に證記せしむ可し

第４５１条　フランス民法第４５７条１項、第２項及び第４５８条に同じ但し幼者のために金額を借受け或は幼者の不動産を他人に売却するに附ては親族会議においてその允許をなすに非ずオランダ国においては必ず裁判所において後見人、その監察者及び血属親の申立を聴きし後その允許をなす可きものとす

第４５２条　幼者の財産を売却する場合においては後見人その願書に幼者の財産の形状を記したる書面を添え且つ売却せんと欲する財産を示す可し○裁判所においては書面中に示したる財産又は売却高の一層少なき他の財産を売却す可し允許をなすことを得可し

第４５３条　フランス民法第４５９条に同じ

第４５４条　必要の時は裁判所においては幼者の不動産を売却す可き原因を記したる後見人の願書とその監察者及び幼者の血属親又は姻族親の意見と相同じき時はその意見に循い随意に幼者の不動産を売却す可き允許をなすを許可し三名の評価人をもつて法律上の眞価を確定するに非ざれば売却をおこなうことあたわず

第４５５条　フランス民法第４６０条に同じ

第４５６条　裁判所においてだし４５１条に原つき幼者の財産を売却す可き允許をなす時相当の代償にて買主数多ある可きを確証する時は売買世話人をもってその財産を売却す可きことを命ず可し

第４５７条　後見人は幼者の不動産を公けに売却する時に非ざればこれを購求するを得ず但し此場合においても第４５４条に原つき裁判所より許可を得るに非ざれば売買の効なかる可し（フランス民法第１５９６条、差異）

第４５８条　後見人は幼者の土地又は財産を賃借することを得ず但し治安裁判官のその幼者の血属親又は姻族親及び何事に拘はらず後見人と常に約定をなすの允許を得たる監察者の申立を聴きし後土地又は財産を賃借す可き条件を認可する時は格別なりとす又後見人は右に等しき允許を得るに非ざれば幼者に対する権利の譲渡を受くるを得ず

第４５９条　後見人は贈遺の財産の目録を記してその贈遺の財産の償額に至る迄の外負債及び費用を償はざる特権をもってするに非ざれば幼者の贈遺の財産相続を承諾するを得ず又裁判所より允許を得るに非ざれば幼者の贈遺の財産相続を受くるを拒むことを得ず（フランス民法第４６１条）

第４６０条　フランス民法第４６３条に同じ

第４６１条及び第４６２条　フランス民法第４６４条に同じ但し親族会議を治安裁判官に変え又追加すること下のごとし　もし後見人充分の原因無くして治安裁判官の許諾を得るを怠りたること明亮なるか又は実事を隠蔽してその許諾を得たる時は訴訟入費を負担し且つ損害の償をなす可き言渡を受く可し

第４６３条　フランス民法第４６５条に同じ

第４６４条　幼者の関係する財産分派の規則は第２編第１６巻に記したる財産相続の分派に明亮なり

第４６５条　後見人は第４５１条に循い裁判所の允許を得るに非ざれば幼者に代りて和解を為し又は判断人と為る可きを承諾するを得ず（フランス民法第４６７条、差異）

第４６６条　夫婦の中後に生存したる者はその夫婦の中一方の者と幼者との間に存立した　　る所の商業上又は職業上の共通を継続す可き訟求をなすを得可し○裁判所においてはその共通の有益なるや否やを検証し且つ最近の血属親及び検察官の訟求に因て取りけすことを得可し

○第１２款　後見人の計算

第４６７条及び第４６８条　フランス民法第４６９条及び第４７１条に同じ

第４６９条　後見人は幼者の金額を白も謝金の名義をもって費やすことを得ず但し幼者の死後に効を生ず可き証書又は第４１０条に記したる公正の証書によりて金額を得たる時は格別なりとす

第４７０条　フランス民法第４７２条に同じ

第４７１条及び第４７２条　フランス民法第４７４条及び第４７５条に同じ

○第１７巻　幼者後見を免がるる事

第４７３条　幼者後見を免がるる時は丁年者の権利の一部又は全部を得可し

第４７４条　幼者後見を免がれ丁年者となれば国王の許可せる後見を免るるの証書又は丁年に達したる書面を大審院より得て後見を免がるることを得可し（フランス民法第４７７条及び第４７９条、差異）

第４７５条　満２０歳に達したる幼者は後見を免がれんと訟求することを得可しそうしてその訟求書には出産の証書又は後見を免がるるに必要の年齡を確証する証書を添う可し

第４７６条　大審院においてはその訟求を裁定する前に幼者の父、その父なき時は母、その母なき時は後見人、その監察者及び血属親又は姻族親の申立を聴く可し

第４７７条　大審院は初審裁判所又は治安裁判官をもって前条の規定を為さしむることを得可し

第４７８条　幼者は後見を免がれ丁年者となるといえどもその父母又は祖父母の許諾を得るに非ざれば満２３歳に達せざる前に婚姻を結ぶを得ず（フランス民法第１４８条、差異）

第４７９条　大審院は幼者に後見を免がるる事を允すといえども裁判所の允許を得るに非ざればその不動産を売却し又は抵当となすことを禁ず可し（フランス民法第４８４条、差異）

第４８０条及び第４８１条　フランス民法第４７７条及び第４７８条に同じ但しフランス民法第４７７条の１５歳に換え又第４７８条に追加する下のごとし　但し治安裁判官の決議に対して控訴することを得可し○検察官は此事に関して申立をなす可し

第４８２条　後見を免がれたる者の権利は特別に指示するを要とす

第４８３条　フランス民法第４８１条に同じ

第４８４条　後見を免がれたる者の行うことを得可き権利はその入額を自由に取扱う事不動産を賃渡す事、土地を耕耘する事、職業を行う事とす○此場合において後見を免がれたる者は職業に関する条件に附いては契約を結ぶことを得可しといえども自己の不動産を売却し又は書入質となすを得ず（フランス民法第１８１条無いし第４８４条）

第４８５条　裁判所においては前条の権利を行う可し允許を取消すことを得可しそうして此決議は控訴することを得ず（フランス民法第４８３条）

第４８６条　後見を免がれし事は幼者の住居する方の公開新聞上に掲載す可し

○第１８巻　治産の禁の事

第４８７条　フランス民法第４８９条追加　丁年者もまた浪費を原因として治産の禁を受く可し

第４８８条　フランス民法第４９０条追加　宗系の親又は第４級迄の傍系の親に非ざれば浪費を原因として治産の禁をなすを得ず自己の事務を司るの力無き者は管財を受く可き訟求をなすことを得可し（フランス民法第５１３条、差異）

第４８９条　フランス民法第４９１条に同じ

第４９０条　フランス民法第４９２条追加　治産の禁を受く可き者の住居する地の初審裁判所にこれをなす可し

第４９１条　フランス民法第４９３条に同じ

第４９２条　裁判所において治産の禁を受けしむ可き訴訟に関する事柄の治産の禁をために充分重大なりと判決する時は訴訟の原因に附き血族親又は姻族親の申立て聴く可し（フランス民法第４９４条）

第４９３条　フランス民法第４９６条に同じ但し親族会議を血属親に換え又追加すること下のごとし　治産の禁をなす可き訴訟又は血属親の申立を記せる調書を治産の禁を受く可き者に読聴かせし後に非ざれば問糺をなす可からず

第４９４条　もし裁判所において前条の法式を行うといえども事実の明亮に至らざる時はその訴訟の篠目たる事柄を確証するために証人吟味をなす可きを命ず可し

第４９５条及び第４９６条　フランス民法第４９７条及び第４９８条に同じ但しフランス民法第４９８条に同じ但しフランス民法第４９８条の一方の者呼出を受けてなお出席せざる上の下に及び検察官の決議の上を追加す可し（フランス民法第５１５条）

第４９７条及び第４９８条　フランス民法第５００条及び第５０１条に同じ

第４９９条　もし躬から他人の管財を受けんことを訟求する者ある時は裁判所はその血族親、姻族親及び配偶者の申立を聴き且つ第４９３条より第４９６条に至る迄の規則に依遵す可し○検察官はその裁判言渡新聞紙上に掲載せしむ可し（フランス民法第４９８条）

第５００条　フランス民法第５０２条追加　但し浪費をなすをもって治産の禁を受けたる者は自己の死後に至り効て生ず可き証書を記する権を保育す可し

第５０１条　フランス民法第５０３条に同じ

第５０２条　フランス民法第５０４条追加　死後に効て生ず可き規則は格別なりとす

第５０３条　フランス民法第５０５条に同じ但し親族曾議を治安裁判官に換う可しそうして該裁判官は第１６巻第５款に規定せる法式に循うを要とす

第５０４条　フランス民法第５０６条に同じ

第５０５条　婦はその夫の管財人の職に任することを得可し○此場合においては治安裁判官治産の禁を受けたる者の血族親又は姻族親を呼び出し又はその申立を聴きし後管財人の監察者を任し且つ管財の方法又は条件を規定す可し但し婦は治安裁判官の判決に因て損害を受くるの恐れ有る時は初審裁判所にその旨を訴うることを得可し（フランス民法第５０７条）

第５０６条　治産の禁を受けたる者は幼者と同様の者たり○浪費を為して治産の禁を受けたる者の婚姻を為さんと欲する時は第９５条及び第２０６条を適用す可し又幼者の後見人に関して第１６巻第１１款及び第１２款の第３８６条より第３９９条迄、第４２４条より第４４６条迄、第４４９条以下敷条に保含する規則もまた管財をなす事に適用す可し

第５０７条　もし治産の禁を受けたる者に幼年の子有りてその配偶者の死去し又は後見を行うことあたわざる形情なる時は幼者の後見人をもって治産の禁を受けたる者の管財人を兼勤せしむ可し

第５０８条　癪疾、白痴、又は狂疾に因て治産の禁を受けたる者の入額はその養生の方を厚くし且つその疾を速かに平癒せしむるの用に供す可し（フランス民法第５１０条）

第５０９条　フランス民法第５１０条第２項追加　前条の病疾に因て治産の禁を受けたる者の身分と公けの身分と公けの安寧に関して必要の時は裁判所より（親族会議に非ず）その者を一時又は一ヵ年より多からざる期限間病院又は狂病院に送る可きことを命ず可し

第５１０条　公けの安寧に関する時は裁判所より血族親又は検察官の求めに循い治産の禁をなす可き者を一カ年間禁錮す可きことを命ず可し○裁判所は管財人の訟求に循い且つ検察官の申立を聴きし後毎歳その禁錮を延期するの権あり

第５１１条　浪費者の安全、その不行状又は一般の安寧に関して必要の時は裁判所より浪費者に管財人を附す可き裁判言渡をなす時又はその年の中に浪費者を懲治檻に禁錮す可き言渡をなす可し○浪費者の糺問中必要の時は裁判所よりその浪費者に関する予防の処置を為さしむ可し（フランス民法第５１３条、差異）

第５１２条　浪費者を禁錮せんとする訴訟はその浪費者の配偶者、尊属親、卑属親及び第二級迄の傍系の親これを裁判所になすことを得可し○検察官は常に訴訟に関して事実の申立をなす可き者とすそうして右に列記したる親族は尽く控訴するの権あり（フランス民法第５１５条）

第５１３条　浪費者を禁錮し又はその禁錮の期限を延さんとする訴状はその浪費者に読聴かす可し但し該浪費者は裁判所において自己の意見を述へ且つ控訴することを得可し○裁判所においては予めその裁判言渡の如く執行す可き旨を言渡すことを得可し但し浪費者は前条に循い禁錮の訴訟をなすの権を有する者と対審の上禁錮を免がれんと訴うることを得可く又此決議に関しては控訴することを得可し

第５１４条　治産の禁を受けたる者の子の婚姻を為さんとする時は第９５条及び第２０６条に依遵す可きものとす（フランス民法第５１１条、差異）

第５１５条　夫婦、尊属親又は卑属親を除くの外何人に限らず八ヵ年を経過する時は治産の禁を受けたる者の管財をなすことを免がるるを得可し面して該八ヵ年を経過する時は管財人その交代を得んと求むることを得可し（フランス民法田尾５０８条、差異）

第５１６条　フランス民法第５１２条に同じ

第５１７条　治産の禁を解く時は第４９８条に原つきその旨を公告す可し

○最終の規則

第５１８条　癪疾、白痴又狂疾の身分なる幼者はその父母又は後見人の支配を受く可きものとす但しその父母又は後見人此巻の規則に循い裁判所より允許を得るに非ざればその幼者を救育院に送るを得ず（千八百三十八年六月三十日布告のフランス蘭西法律）　　　

○第１９巻　失踪

　　○第１款　失踪を思料する事及び失踪を思料する事の処置

第５１９条　自己の住居より失踪せし者名代人を任せざるによりその遺留したる財産の全部又は一部を支配す可きよう意をなすの必要なる時又は名代人を任したる時といえどもその名代をなす可き期限の既に満ちたるによりその者の財産の全部又は一部を支配す可き用意を為し或は名代人を任する事の必要なる時は失踪者に関係する者又は検察官の訴訟の上その失踪者の住所を管轄したる初審裁判所より管財人を任す可し（フランス民法第１１２条、差異）

○失踪者の家資分産を為し又は負債を償うの資力無きことを確然たる時は特別の規則を適用す可し

第５２０条　管財人は己れの支配す可き財産の目録を製しそうして金銀貨は裁判上の預り役所にこれを預け置く可し○向後管財人は幼者の財産を支配することに関する規則を履行す可し

第５２１条　管財人は己れを管財の職に任したる裁判所に毎歳計算の要略書を差出す可し

○もし検察官失踪者の利益となることを認むるに就ては則ちその利益となる可き取計を為す可し（フランス民法第１１４条）そうして裁判所において右の計算書を正確の者と認むといえども是によりて失踪者又は管財人に関係の者のその管財人に対して行うことを得可し

第５２２条　管財人はその職の報酬として入額分の二分半及び費用の価額百分の一分半を得可し

○第２款　死去を思料する事の公告

第５２３条　もし失踪者その名代人を任すること無く自己の住所を棄去して失踪せし時又は最終の消息有りし時より五ヵ年を経過するにおいては有権者の訟求と失踪者の住所を管轄したる裁判所の許可とによりて失踪者の配偶者はその失踪せし配偶者に対して遅くも三ヶ月以内に裁判所に出頭す可き呼出の公告をなす可し○もし失踪者又はその名代人呼出を為したる定日に出頭せざるにおいては前に記したる期限を設けて第二回又は第三回の呼出の公告をなす可し○居したりし家屋の表戸に貼附す可し（フランス民法第１１５条、差異）

第５２４条　もし第三回の呼出の公告をなすも失踪者又はその名代人の出頭せざる時は裁判所においては検察官の申立を聴きし後ち失踪者を死去せし者と思料す可し但し死去せし者と思料す可き時日は失踪者の失踪せし時又はその消息の止みし時より起算す可し○その起算す可き時日は裁判言渡書に確定す可し

第５２５条　裁判所において裁判言渡をなす前に必要の時は検察官の面前において吟味をなす可し○裁判所は失踪の原因と消息の送達に障害ある所以とて穿鑿す可し○裁判所は第５２３条に確定せし期限の外更に五ヵ年をなお予して裁判言渡為し且つ新聞紙上に呼出の公告をなす可き言渡をなすことを得可し（フランス民法第１１６条）

第５２６条　もし失踪者その名代人を任し又は命令を遺留して失踪せし時は縦令いその名代人をなす可き期限の十ヵ年以内に満つ可き時といえども失踪者の失踪せし時又はその消息の止みし時より十年を経過せし後ち前三ヶ条に記したる規則に循い死去を思料する事の裁判言渡をなす可き者とす○名代人のその名代をなす可き期限の十年以内に満つ可き時は此巻第一款に記載したる方法をもって財産を支配す可き用意をなす可し（フランス民法第１２２条）

第５２７条　死去を思料す可き事の公告は呼出の公告を掲載せし新聞紙をもってなす可し

○第３款　死去を思料する事を公告せし後ち最親の財産相続人の行う可き権利及び義務

第５２８条　失踪者の最親の財産相続人は第５２４条に確定せる時日に贈遺の名義又は相続の順序によりて財産相続をなす可き権利を有するがためその財産の保育権を得んと欲するにおいては失踪者の管財人に対して財産の計算又は引渡を訟求することを得可し○最親の財産相続人はその財産を破損し又は減尽せしむ可きこと無き方法をもつてこれを保育しそうしてもし失踪者の帰来し又は自己に優る権利を有する財産相続人ある時はその財産を品物の儘にて返還し又は財産の種類によりその代価を渡さんため裁判所より認可せる保証人又は身元金を出す可きものとす（フランス民法第１２０条）　

第５２９条　保証人又は身元金無き時は他人をもって失踪者の財産を管理せしめ不動産は第８３３条及び第８３４条の規則を循守してもつてこれを売却することを得可し（フランス民法第１２９条及び第６０２条）

第５３０条　失踪者の最親の財産相続人は入額を所得となす可き権利を有する者たりゆえに又之に関する義務を尽す可きものとす但し此巻に記載したる例外は格別なりとす

第５３１条　前の三ヵ条は贈遺を受く可き者及び失踪者の死後その財産に附て行う可き権利を有する者に適用することを得可し

第５３２条　失踪者の財産を仮りに保育したる者はその失踪者の帰来するか若くは己れに優る権利を有する財産相続人ある時は失踪者又はその財産相続人に財産を管理したる計算を為し又は曾て受取りたる財産を返還するを要とす（フランス民法第１３０条）

第５３３条　失踪者の財産を仮りに保育したる者は財産の目録を製す可し面してその財産の目録を記してその財産の償額に至る迄の外負債又は費用を償わざる特権を得るに非ざれば財産を仮りに保育す可きことを承諾をせざるを得可し○財産の目録無き時又は第１０７７条の場合において財産を保育したる者は財産の目録を記してその財産の償額に至る迄の外負債又は費用を償わざる特権を失うがため前条に規定せる義務を尽さざるを得ず（フランス民法第１２６条）

第５３４条　失踪者の最親の財産相続人は財産分派に関する規則に循い仮りに財産を分派することを得可し○しかれも不動産を売却することを得ず但し此不動産は双方相争う物を人に附託せし者と看做し又は既に分配せし入額とみなす可し（フランス民法第１３０条）第５３５条不動産の分配を受けたる者又はその不動産を支配したる者はその不動産に関する特別の証書を製せんことを裁判所に願うを得可しそうして此証書は裁判所の書記局に保蔵す可し（フランス民法第１２６条）

第５３７条　此不動産は至重の原因あるに非ざれば第第５４０条に確定せる期限前に売却するを得ず但し裁判所の允許を得る時は格別なりとす（フランス民法第１２８条）

第５３８条　もし失踪者の第５２４条に確定せる日より起算して十五年以内帰来するに於てはその失踪者の財産より生じたる利益の半分を失踪者に返還し又十五年を過くるも三十年以内に帰来するにおいては四分の一返還す可し○もし財産の価額僅少なる時は裁判所において失踪者の財産を仮りに保育したる者のため此規則を変更することを得可し（フランス民法第１２７条）

第５３９条　財産を共通したる失踪者の配偶者なおその財産の共通を継続せんと欲する時は裁判言渡書に示したる死去を思料す可き日より起算し十年の間第５３３条に確定せる日より財産の目録を製す可き約定をもつて失踪者の相続人の仮りにその財産を保育するを拒む○又その配偶者以下フランス民法第１２４条に同じ

第５４０条及び第５４１条　フランス民法第１２９条及び第１３０条に同じ

第５４２条　もし失踪者の帰来する時又は死去を思料せし日より三十年を経てその生存の証を得たる時以下フランス民法第１３２条に同じ但し失踪者は利益又は既に収入せし入額を取戻すの権なしを追加す

第５４３条　前条の規則は第５４０条に確定せる日より起算して三十年以内に失踪者の子及び卑属親の帰着する時もまた適用することを得可し（フランス民法第１３３条）

第５４４条　もし死去を思料す可き事の裁判言渡ある時は失踪者の最親の財産相続人に対して訴訟をなすことを得可し但しその財産相続人の目録を記してその相続する財産の償額に至る迄の外負債又は費用を償わざるの特権を得可き訴えをなすことを得可し（フランス民法第１３４条）

○第４款　生存の分明ならざる失踪者に属す可き権利

第５４５条　フランス民法第１３５条に同じ

第５４６除　フランス民法第１３６条追加　生存の分明ならざる失踪者に属す可き権利を己れに得んと訴うる者はその失踪者の死去を確証するに及ばずといえどもまた失踪者の住所を管轄したる裁判所より予め訴をなすことを得可き允許を得るを要とす面して裁判所はその権利を保全す可き公告及びその処置をなす可きを言渡す可し

第５４７条　フランス民法第１３７条

第５４８条　もし失踪者の帰来する時は第５３８条の期限中に財産の取戻を訟求するを得可し

○第５款　婚姻及び子に関する失踪の効

第５４９条　故意をもって失踪せし場合を除くの外失踪者の配偶者はその失踪の時又は消息の止みし時より十年後を第５２３条及び第５２４条に循い失踪せし配偶者に裁判所に出頭す可き呼出の公告を三次になすことを得可し

第５５０条　もし失踪者の帰来せず又は失踪者の生存を確証す可き人無き時は裁判所に於て第５２５条に基づき失踪者の配偶者に再婚をなす可き許可をなす得可し（フランス民法第１３９条及び第１４０条、差異）

第５５１条　もし失踪者の配偶者のその再婚をなす前該失踪者の帰来し又は生存の確証あるにおいては再婚を許可するの裁判言渡は無効に属す可し○しかれももし配偶者の再婚を為せし後ち失踪者の帰来するにおいてはその失踪者もまた再婚をなすことを得可し

第５５２条　もし父の予め処置すなすこと無く幼年の子を遺留して失踪したる時はその母その子の教育及び財産を支配するに附き父の権を行う可し○しかれも父の最近の血族親は右に　附き故障を述ることを得可きそうして治安裁判官はその故障の判決をなす可し但し血族親はこれを控訴することを得可きものとす（フランス民法第１４１条）

第５５３条　もし一方の配偶者前婚の子を遺留し又は鰥夫或は寡婦のその幼年の子を養育す可き手当すこと無く自己の住所を去りし時は治安裁判官は第１６巻第５款の規則に基づき仮りに後見人を任す可し（フランス民法第１４２条）

第５５４条　私生の子又は幼年の子の生存したる時その父又は母失踪し或は一方の配偶者その子の養育の処置をなすこと無く失踪せし後ち他の一方の配偶者の死去する時も間また前条の如く後見人を任す可し

○第2編　財産

　○第1巻　財産及びその区別

　　○第１款　一般の財産

第５５５条　所有権の目的と成るべき物は挙げて法律上において財産と云う

第５５６条　主に因て従を併すの権に因り財産に属する諸物及び天然又は人工に因り枝及び根より生ずる利益は財産の部分とす（フランス民法第５４７条）

第５５７条　法律上にて財産より得べき利益は人よりこれを引渡すべき求めを受くべからざる間は財産とみなすべし但し反対の契約ある時は格別なりとす

第５５８条　天然の利益は左に記したるが如し

　第１　自然に地より生ずる利益

　第２　入額及び蕃殖したる獣類

　耕耘に因り得べきものはこれを人工に因り生ずる利益と称う

　土地又は家の賃貸、金額の息銀及び年金はこれを法律上にて財産より得べき利益と称う（フランス民法第５４７条）

○ 第２款　財産の区別

第５５９条　財産は有形又は無形の者とす

第５６０条　フランス民法第５１６条に同じ

第５６１条　動産は度量することを得べき物又は度量することを得べからざる物とす

　度量することを得べき財産とは人これを使用する時は耗尽すべき物を云う

○ 第３款　不動産

第５６２条　フランス民法第５１８条ないし第５２３条に同じ

第５６３条　フランス民法第５２４条及び第５２５条追加

　建家を繙解せし材料を再び建築すべきために用うる時は用法に因ての不動産とす

第５６４条　フランス民法第５２６条追加　土地の表面使用の権、長期の賃借

○ 第４款　動産

第５６５条　フランス民法第５２８条に同じ

第５６６条　フランス民法第５３１条の始めに同じ

第５６７条　フランス民法第５２９条に追加すること左の如し

　第５　公債について権利即ち公債証書「セルチフヒカー、ド、レコン子ツサンス」目認の証書の意「チブリガーション」義務の証券の意その他公債に管する証券並に年金の「クーポン」小割証書の意又は年金の証書は総てこれを動産とす

　弟６　内外国の募集に応せし募金の種類如何を問わず総て「ヲブリガーション」の株敷及び「クーポン」はこれを動産とす

第５６８条　「ビヤンミユウブル」動産の意にてその義の広きを云う「モビリエー」同上の意「エッフェー、モビリエー」同上の意「ミユウブル」動産の意にてその義の狭きを云う又は「メーゾン、アベツク、ツー、ス、キー、ス、トローブ」家屋及びその付属品を云うと云える語意は相対する語なく且つ添辞を用うる事無く或はその語意を拡張し又は狭縮する事無くこれを法律上又は公の証書に付き用うる時は総て左の敷条に記したる者を保含すべし（フランス民法第５３５条）

第５６９条　「ビヤンミユウブル」と云える語は相対する語なく且つ添辞を用うる事無くこれを法律上又は人事の規則に付き用うるときは既に前に設けたる規則に循い総て動産とみなすべき物を保含すべし

第５７０条　「モビリエー」又は「エッフェー、モビリエー」といえる語は金額、株敷、一般の権利又は第５６７条に記したる権利、商品、氷た製造せざる物、製造、鋳造及び耕作に属する器械建築に用うべき材料又は家を解きたる木材を除く外総て前敷条の規則に循い動産とみなすべき物を保含すべし（フランス民法第５３３条）

第５７１条　「ミユウブル」と云える語は前条に循い「モビリエー」の部分に属すべき諸物件を保含すべし但し馬匹及びその他の獣類、馬車及び馬具、賓石、書籍、刷版の図書、偏額、立像、賞牌、学芸の器械、その他貴重すべく及び稀有の物件、麻布類、兵器、穀類、酒類その他の糧食は格別なりとす（フランス民法第５３３条）

第５７２条　「メーゾン、アベツク、ツー、ス、キー、ス、トローブ」と云える語は金額、貸金及び家屋内に在るその他の権利を得べき証券を除くの外第５６９条に循い家屋内に在て「ミユウブル」とみなすべき物を保含す（フランス民法第５３６条）

第５７３条　フランス民法第５３４条に同じ

第５７４条　「メーブン、ミユウブレー」室内等を装飾せる家屋を云うと云える語は「ミユウブル、ミユウブラン」のみを云う（フランス民法第５３５条）

○ 第５款　財産とこれを所有する者との管係

第５７５条　財産中には毫も人に属せざる財産あり或は政府に或は邑に或は私の所有に属する財産あり（フランス民法第５３７条、第５３９条及び第５４２条）

第５７６条及び第５７７条　フランス民法第６３９条及び第５３８条追加　大小の島嶼　及び水面に冐出したる州は公領の属有とす但し格人又は邑にて証書或は保有権に因り得たる権利ある時は格別なりとす

第５７８条　前条に記したる船揖を通すべき河川の河岸とは河川又は湖水に沿う所の地にして平素満水の時その水の浸す所と成るべき地を云い溢水の時水に沈むべき地を云うに非ず

第５７９条　フランス民法第５４１条に同じ

第５８０条　左に記したるが如き政府の城堡中に在る地面は軍事に属する地と為すべし

　第１　覆道(シュマン、クーベル)及び斜地(グラッシー)の設備ある城堡においては重立ちたる堡壘の内部の斜地の下より覆道の端に至る迄の地

　第２　覆道及び斜地の設備なき城堡においては重立ちたる城壁(ミユール)の内部の下より要塞地(ブラス)を囲繞したる溝渠(フヲーヤー)の外部の岸に至る迄の地但し軍兵の駐屯する城堡には前条の規則を適用することを得べし

　第３　毫も外部の土工(ウーブラージュ)なき城堡においては台地(テールブラン)の内部の下より要塞地を囲繞したる溝渠の外部の岸に至る迄の地

　第４　台地の後部に塹壕(トランセー)又は台地に至るべき狭路(ベルム)等ある時はその土地を以て植附物又は建築物と共に軍事に属する土地とみなすべし

第５８１条　軍兵の駐屯せざる城堡、前置の小堡(ロヂート)及び前哨兵を置くべき地は総て軍事に属する土地とす

第５８２条　邑の財産とは一団結に属する財産を云う（フランス民法第５４２条

第５８３条　私有に属する財産とは１人又は数人の各自に所有する財産を云う

第５８４条　人は財産に付きその所有権又はその保有権を有するあり或はその財産を相続するの権又はその入額を所得とするの権を有するあり或は土地の義務を得べきの権又は質入、書入の権えを有するあり（フランス民法第５４３条）

○ 第2巻　保有権

○第1款　保有権の種類及び保有することを得べき物件

第５８５条　フランス民法第２２２８条に同じ

第５８６条　保有権は正実又は不正実に管することあり

第５８７条　人より財産の譲渡を得し証券の不良なるを知らずしてその財産を譲受けこれを己の有と為したる時は正実にこれを保有したる者と為すべし（フランス民法第５５０条）

第５８８条　物件を保有したる者その物件の己れに属せざる事を熟知したる時は不正実にこれを保有したる者と做すべし

　不正実の保有たるは裁判所に訴えし後ちその判決に因て確定すべし

第５８９条　保有者の正実は常に思料することを得べしと雖もその不正実は証拠を挙ぐるを要とす（フランス民法第２２６８条）

第５９０条及び第５９１条　フランス民法第２２３０条及び第２２３１条に同じ

第５９２条　フランス民法第２２４０条に同じ

第５９３条　フランス民法第２２２６条に同じ

○ 第２款　保有権を得べき事、これを保存すべき事及び失うことの方法

第５９４条　保有権は物件を保有すべき心意を以てその物件を受けたる所為に因てこれを得べし

第５９５条　道理の弁別なき者は自分に保有権を得ることを得ず

道理の弁別するの力ある幼者及び夫の支配を受けたる婦は自分の所為に因て保有権を受くることを得べし

第５９６条　人は自分又は自分の名義を以て物件を受取ることを得べき他の人これを受取るに因て保有権を得べし

　自分の名義を以て物件を受取ることを得べき他の人これを受取るに因て保有権を得べし場合においては自分にてその受取たる旨を知得ずる以前にその保有権を得べし（フランス民法第２２３０条及び第２２３１条）

第５９７条　死者の有せし保有権はその死去の時よりその死者の財産相続人に転移すべし○この保有権はこれに管する名義及び過失と共に転移すべし

第５９８条　人は保有権を他人に移し又は尋常に放棄する迄これを保存せざるを得ず

第５９９条　保有権を他人に移す時は己れの所好の意に因てこれを失う者とす

第６００条　もし人の尋常に保有権を放棄する時は他人にこれを転移するの意に出ること無くこれを失う者とす

第６０１条　人は己れの所好の意に反して贈遺の財産の保有権を失う事あり左の如し

　第１　保有権を有したる者の所好の意に反して他の人公けの安寧を妨ぐること無く１箇年間これを所得と為したるとき（フランス民法第２２４３条）

　第２　贈遺の財産の偶生の事に因て水に沈没せし時

　隘水一時土地を覆浸すと雖もその保有を失うべき者に非ず○この条の第１に示せし方法に因ては動産の全部の保有権を失うべし

第６０２条　人は己れの所欲の意に反し動産に属する物件の保有権を失うことあり左の如し

　第１　欺詭又は盗取に因て物件を失う時

　第２　物件を遺失してその所在の知れざる時

第６０３条　無形に属する財産の保有権を他の人の１箇年間平穏に所得と為したる時はその権を失う者とす

○ 第３款　保有権より生ずる権利

第６０４条　正実に物件を保有する者は左に記列したるか如き権利あり

　第１　物件を返還すべき時迄仮りにその所有者と看做ざる事

　第２　期満得免に因て物件の所有権を得る事

　第３　物件を返還すべき時迄その物件より生ずる利益を己れの所得と為す事

　第４　物件の保有権を害せんとする者に対してその保有権を維持する事及びその物件を遺失せし時取戻の請求を為す事（フランス民法第５４９条）

第６０５条　不正実に物件を保有したる者は左に記列したるが如き権利あり

　第１　物件返還の請求を受くる迄仮りにその所有者とみなざるる事

　第２　物件より生ずる利益を所得と為す事但し正実の保有者にその利益を返還すべきの責あり

　第３　前条の第４に記載したるが如く物件の保有権を維持し及びその物件を遺失せし時これを取戻すべき請求を為す事

第６０６条　保有権に付ての訴訟は土地、家屋又は建家、対物権及び動産全部等の保有権を妨ぐる者ある時にこれを為すべし

第６０７条　保有権に付ての訴訟は現に物件を保有したる者の不正実なる時もまたこれを為すべし

第６０８条　土地の義務を得べき権利を妨ぐる者に対してはその保有権に付ての訴訟を為すことを得ず但し間断なく且つ人目に触るべき土地の義務に管する時は格別なりとす

第６０９条　然れどももし間断あるか又は人目に触れざる土地の義務を設立すべき証書の法に適したるや否やに管して紛議ある時の如きはその土地の義務を得べき権利を有する者保有権に付ての訴訟中その権利を保有することを得べし

第６１０条　もし原告人法に適して保有し能わざる物件を目的とする時は保有権に付ての訴訟を為すを得ず

第６１１条　有形の動産は保有権に付ての訴訟の目的と為すことを得ず

第６１２条　借主及び他人のため物件を保有したる者は保有権に付ての訴訟を為すを得ず

第６１３条　保有権に付ての訴訟は物件を保有したる者の権利を害する人及びその物権の所有者に対して為すべし又所有者はその物件取戻の訴を為すこと得べし○又は人の物件を随意に又は法に違戻し又は暴行に因て保有したる者はその保有権を奪われたる者に対して保有権に付ての訴訟を為すことを得ず（フランス民法第２２３３条）

第６１４条　保有権に付ての訴訟は物件を保有したる者その保有権を妨げられし日より起算し１年の期限内に為すを要とす（フランス訴訟法第２３条）

第６１５条　この訴訟は物件を保有したる者人より妨げを受くることを妨ぎ且つ損害の償いを得て保有権を維持するために為す者とす

第６１６条　保有権を失わざる者及び裁判官の判決に因りこれを維持したる者は常に保有権を有したる者とみなすべし但し保有権より生じたる利益に管する事は格別なりとす

第６１７条　保有権に付ての訴訟あるに方りその裁判官原被両造の間果してその保有権の何れに属すべきやの確証を得ざる時においては保有権に付て判決を為す前に先ずその訴訟の目的たる物件を他人に預け又は双方の者に所有権に付ての取調べを為すべき旨を言渡し又は仮にその一方の者に保有権を与うることを得べし

　仮に保有権を得る者は所有権に付ての取調中唯唯その訴訟の目的たる物件を保有するの権利のみを得し者たれば判決の後はその保有権より生じたる利益を与うべき者とす

第６１８条　もし土地又は建家の保有者暴行を受くること無くその保有権を失いし時はこれを保有したる者に対してその権を取戻し自己の保有権を維持するの権利を有すべし

第６１９条　もし物件の保有者暴行に因りその保有権を奪われし時はその暴行を為せし者及びその暴行を為さしめし者に対して物件取戻し訴訟を為すべく而してその暴行を為せし者等は総てために連帯の義務を負う者とす

　この訴訟を為すには原告人よりその暴行の所為を証するを以て足れりとす

第６２０条　右取戻の訴訟は総て不正実に物件を保有することを止むべき者に対して行うことを得べし

第６２１条　第６１８条に記したる取戻の訴訟及び保有権に付ての訴訟は保有権を害せられし日より起算して１年の期限内にこれを為すを要し又暴行に因り物件を奪われたる時その取戻の訴訟もまたその暴行の止みし日より起算して１年の期限内にこれを為すべき者とす

　所有権に付ての訴訟ある時は取戻の訴訟及び保有権に付ての訴訟を為すことを得ず（フランス訴訟法第２６条）

第６２２条　取戻の訴訟は如何なる場合を問わず従来の保有者のその保有権を維持し又は回復し嘗てこれを失いしこと無き者とみなすために為す者とす

第６２３条　物件より生ずる利益及び費用に管しては第３巻の所有権の規則を以て保有者に適用することを得べし

第６２４条　取戻の訴訟期限を経過せし時は暴行を受けたる者は通常の訴訟を為し嘗て暴行を為せし者をしてその暴行に因り奪いたる物件を返還せしめ且つ損害の償を出すべき言渡を受けしむることを得べし

○ 第３巻　所有権

　　　○第１款　総則

第６２５条　フランス民法第５４４条及び第５４５条に同じ

第６２６条　フランス民法第５５２条に同じ

第６２７条　所有権は総て自由にこれを為すこと得べき者とみなすべし○人の所有権を得んと求むる者はこれを求むべき権利あることを証するを要とす

第６２８条　数人に属したる所有権を分派する時は贈遺の財産に管して設けたる規則に依

遵すべし（フランス民法第１８７２条）

第６２９条　人は己れの物件を保有したる者よりその物件の有形の侭にて取戻すことを得べし

第６３０条　正実に物件を保有したる者のその物件を返還すべき求めを受くる時はその求めを受けし日より以後においてその物件より生ずる利益のみを返還し又耕耘、労働、種子の費用及びその物件を保存し又は使用するに付き要せし他の費用をその利益より乗除すべき求めを為すを得べし○物件の保有者は本条に記したる費用の弁償を得る迄その物件を留置くことを得べし（フランス民法第５４８条及び第５４９条）

第６３１条　又前条の保有者のその物件を返還すべき求めを受けたるに因りこれを返還するにおいては入額を得るために要したるその時未だ地を離れざる費用の弁償を求むることを得べし（フランス民法第５４８条）

第６３２条　正実なる保有者は己れに利益を得んと欲して冗費せし価格の弁償を要求するの権なし

第６３３条　またその保有者は物件を保存するために生ぜし費用をその物件を返還する時更めて増加する権なし（第６３０条）

　右に付き紛議の生ずる時は入額所得権に管する規則に依遵すべし（第６４０条）

第６３４条　不正実なる保有者の行うべき義務は左に記列す

　第１　返還すべき求めを受けたる物件より生じたる利益を返還する事及びこの保有者の得ざる利益と雖も富に所有者のこれを得べき時はその利益を返還する事但し耕耘に付て要したる費用を得んと求むることを得べし（第６３０条）

　第２　損失の償いを為す事

　第３　もし物件を返還し能はざる時は縦令にその物件に滅尽せし時と雖もその代価を償う事但しその物件の所有権の手に在る時もまた滅尽すべき徴証ある時は格別なりとす

第６３５条　暴行に因り物件を保有したる者はその物件に付て要せし費用を得んと求むることを得ず

第６３６条　有要に管する費用及び贅沢に管する費用は不正実なる保有者の損失たるべし但し分つことを得べき者は保有者これを取ることを得べき

第６３７条　フランス民法第２２８０条に同じ

第６３８条　海中に沈没せし物件はこれに管する法律の規則に循いその物件取戻しの求めを為すことを得べし（フランス民法第７１７条）

　　　○第２款　所有権を得るの方法

第６３９条　物件を所有するの権はこれを己れの所有と為すことを得べきに権、連合すべきを得るの権、適法及び贈遺の財産相続、所有権の転移に因り又は所有権を随意に為すことを得べき権利を有する者のその所有権を引渡すべき証書を記してその所有権を引渡すに因り得べき者とす

第６４０条　人に属せざる動産は第一にこれを占有せし者の所有に属すべし（フランス民法第７１３条）

第６４１条　食すべき(ジピエー)野獣及び魚類を所有するの権は全くその獣類及び魚類の所在の地を所有したるに属すべし但し現にこれ等の物を得べき権利を有したる者あるか又は法律或は至重なる規則ある時は格別なりとす（フランス民法第７１５条）

第６４２条　フランス民法第７１６条に同じ

第６４３条　フランス民法第５５１条に同じ

第６４４条及び第６４５条　フランス民法第５６１条及び第５６２条に同じ

第６４６条　河川を所有する者の権はその水の流下する土地を所有する者の権に優る者とす

第６４７条　フランス民法第５６３条に同じ

第６４８条　河川の流水一時暴張すれども所有権に変更を生ずること無し

第６４９条　溢水に没したる土地は尚おその溢水の前に所有したりし者の所有とす

　然れどももし国王の公けの利益に原由し又は近傍の所有権を安全ならしむるためその土地を乾かすことを必要なりと認むるにおいてはその所有者にその土地を乾かし及び堤防を築くべきことを命令し又は河川の所有者と連合してこれ等の事を為すべきを命令することあり然るにもし双方の所有者これを為すを拒み又は紛議を生ずるにおいてはその所有権を剥奪せらるべし

　その土地の代償は溢水の形況に由てその真償を定むべし

第６５０条　砂阜(ヂュンヌ)の所有者は即ち土地の所有者なり

　砂阜(ヂュンヌ)のため覆われたる土地はその砂阜の所有者に属すべし但し５箇年内にその限界を定むる時は格別なりとす

第６５１条　フランス民法第５５６条に同じ

第６５２条　漸積(アリュビヨン)に地は海又は舟を泛ぶべき湖水又は潮の満干ある川に河岸を所有したる者の利益とすべし（フランス民法第５５７条）

第６５３条　フランス民法第５５８条に同じ

第６５４条　フランス民法第５５９条に同じ但し河川のために失いし土地は３年の期限内にこれを訴求するを要とす

第６５５条及び第６５６条　種子、植附物及び建築物はその土地に所有者に属すべし但し第６５８条及び第６５９条の規則は格別なりとす

第６５７条ないし第６６０条　フランス民法第６５８条及び第６５９条に同じ（フランス民法第５５３条）

第６６１条　何人を問わず己れに属せざる品物を用いて真に物を造りたる時はその品物の代償と時に因りては必要の費用とを払いその品物を己れの所有と為すことを得べし（第５７０条、差異）

第６６２条　１人に所為に因ること無く新に物を造りし時はその物の所有者数人各々自己に属すべき価額に割合を以てその物を共有すべし（フランス民法第５７３条）

第６６３条　もし数人の所有者に属する物をその中の１人にて使用したる時はその物を使用されたる人の所有する部分に応じて各所有者にその物を返還し又は償を為すべし

第６６４条　その物を分派することを得べき時はその数人の所有者各自にその物を分派すべし

第６６５条　所有権は第４編第７巻に循い期満得免に因りて得べし（フランス民法第２２１９条）

第６６６条　財産相続に因り所有権を移す事はこの編の第１１巻及び第１２巻に一定の規則あり

第６６７条　有形動産の引渡しはその動産を引渡し又はその動産を入れ置きたる家屋の鑰を渡すに因りこれを為了すべし○もし動産の引渡を受くべき者の既に他の名義を以てその動産を所有したる時は引渡を為すに及ばず（フランス民法第１６０６条）

第６６８条　義務を得べき証書を現に有したる者のこれを使用するもその効果を生ぜざる証書及び他の権利に管する証書は公正の証書又は私の証書に因て譲渡すべし○この譲渡を為す時はその旨を義務者に申述し又は義務者の承諾者を送り時よりその義務を更改すべし○何人に限らず現に証書を有したる者の得べき権利はその譲渡を為すに及ばず（フランス民法第１６８９条）

第６６９条　公債証書の譲渡はその規則に因てこれを為し又会社の規則なき時は商法の規則に因てこれを為すべし

第６７０条　右２箇条の規則は法律又は商業上に付て執行する慣例に抵触すること無し

第６７１条　不動産の譲渡は公けの簿冊に謄記してこれを為すべし

○ 第４巻　相隣する土地を所有する者の間の権利及び義務

第６７２条ないし第６７４条　フランス民法第６３９条ないし第６６１条に同じ

第６７５条ないし第６８０条　フランス民法第６４３条ないし第６４８条に同じ

第６８１条　家屋、野田及び庭園を分界したる墻壁とみなすべし但しこれに反する証書又は憑拠ある時は格別なりとす

　もし家屋に高低ある時はその低き家屋に棟上に至る迄双方の所有に属する分界の墻壁とみなすべし

第６８２条　フランス民法第６５４条追加　もし家屋又は築山(テーラス)を支持するための墻壁の一方に他の家屋又は造営なき時は双方の所有に属する分界の墻壁に非ざる憑拠なりとす

第６８３条　フランス民法第６５５条及び第６５６条追加

　又都府、都府の郭外(フォブール)又は村邑内において家屋、庭園又は公園を分界するための墻壁に管する時は格別なりとす

第６８４条　分界の墻壁を所有する双方に者はその墻壁に傍いて物を造作し且つ梁椽鉄鎹(アンクル)及びその他鉄具又は木材を鑿入することを得べし但しその墻壁を損うこと莫からしめんがためその厚さの半に至る迄に非ざれば穿つことを得ず（フランス民法第６５７条）

第６８５条　フランス民法第６５８条及び第６５９条に同じ」

第６８６条　双方の所有に属する分界の墻壁を所有する者は己れに属する一方に承霤(グーチェール)を設け自宅又は公けの通路にその雨水を流すことを得るべし但しこれを禁ずる法律又は規則ある時は格別なりとす

第６８７条　フランス民法第６６０条に同じ

第６８８条　墻壁はその所有者の承諾あるに非ざれば双方の所有に属する者と為すべからず

第６８９条　フランス民法第６６２条追加　新に造営為して隣人の権を害する時はその償を為すべし但し双方の所有に属する分界の墻壁を改良するに因り生じたる損失はこれを償うに及ばず

第６９０条　フランス民法第６６３条の始めに同じ

第６９１条　格隣人はその分界の木製の囲繞に換うるため自費を以て墻壁を築造することを得べし但し木製の囲繞を以て墻壁に換うることを得ず

第６９２条　フランス民法第６７５条追加　但し隣人の自費を以て墻壁を高く為す時にはその高く為せし墻壁の部分中に次の２箇条に記したる方法に循い自由に窓又は穴を穿つことを得べし

第６９３条ないし第６９７条　フランス民法第６７６条ないし第６８０条に同じ

第６９８条　第６８１条より第６９７条に保含したる規則は家屋及び庭園の分界となる木製の囲繞に適用することを得べし

第６９９条　もし家屋を修繕するため隣地に足場(エシヤフォダーヂュ)を設け又は材料を運搬するため隣地を通行せざるを得ざる時はその隣地の所有者は償を得てこれ等のことを為すを承諾すべき者とす

第７００条　フランス民法第６８１条に同じ

第７０１条　何人に限らず他人の溝渠に自己の所有したる土地の水又は穢物を流すを得ず但しこれを流すの権利ある時は格別なりとす

第７０２条　家屋、墻壁、板塀及びその他の囲繞の年をたるに因り又は他の原由に因り頽破すべき形状に至りその隣地の危険なる時又はその隣地に壊倒すべき時はその隣地の所有者の初めの請求に応じ直にこれ等の物を毀撒して更に建築し又は修理するを要とす（フランス民法第１３８６条）

第７０３条　フランス民法第６７４条

第７０４条　溜水、井、流水、厠●、溝渠及びこれ等に類似の物にして相隣する双方の所有者の共通に属すべき物は双方の所有者の費用を以てこれを保持すべし

第７０５条　共通の厠●を浚うことは双方の所有者相互に輪番を以てこれを為すべし

第７０６条ないし第７０８条　フランス民法第６６６条ないし第６６９条に同じ

第７０９条　河岸を所有する双方の者はその河川に魚猟し舟行し又は自己の家畜の獣類にその水を飲して或は自己の用に共せんがためその水を汲み取ることを得べし

第７１０条　フランス民法第６７０条及び第６７３条に同じ

第７１１条　相隣する双方の所有者もし従前より双方に属したる生籬を以て所有地の分界を畫するために共したる時その一方の者共通の費用を以て更に生籬を植附んことを欲するにおいては他の一方の者もまたこれに応ずべき者とす

第７１２条　もし一方の所有地のみの囲繞となるべき時はその囲繞を以て双方に属する者と為すべからず

第７１３条　フランス民法第６７１条に同じ

第７１４条　フランス民法第６７２条追加　隣人の樹枝を己れの土地内に翳入せしめざらんがため１回にその樹枝を伐るべき求めを為せし時その隣人これを伐ることを阻む時は即ちこれを伐ることを得べし

第７１５条ないし第７１７条　フランス民法第６８２条ないし第６８５条に同じ

第７１８条　通行の権利は既に通行するを要せざるに至りし時に非ざれば消滅すべからず而して期限の長短を問わずその権利は期満得免有ること無し

第７１９条　狭路(サンチエー)及び数人の共通する道路にして且つ公道の一端となるべき道路はその隣人共通の承諾あるに非ざればこれを滅尽することを得ず

第７２０条　舟艇の牽路、道路、堤防及び公け又は共通の土工に管しては特別の規則あり

　　○第５巻　土地の義務

　　　○第１款　土地の義務の本義及び諸種類

第７２１条　フランス民法第６３７条追加　土地の義務は人に付きこれを生ずることを得ず（フランス民法第６８６条）

第７２２条　土地の義務は総て或事を為し或事を為さざることに管す

第７２３条　フランス民法第６３８条に同じ

第７２４条及び第７２５条　フランス民法第６８８条及び第６８９条に同じ

第７２６条　墻壁又は家屋を改造する時はその新造の墻壁又は家屋に付きこの地より彼地に対する義務及び彼地よりこの地に対する義務は皆な以前に等しく継続すべしこれをして前より重劇ならしむべからず然れども期満得免の権を得し後にその改造を為す時は格別なりとす（フランス民法第６６５条）

第７２７条　瞭望窓に管する土地の義務を得べき権利を有する者は己れの欲する所に窓又は穴を穿明することを得べし但し造営を為せし後ち又は既に権利を行いし後は引続きてその窓等の数を増加するを得ず

　窓は瞭望に管すること無く専ら光線のみを延くための者とす

第７２８条　隣人のため家屋を高く造営することの禁止ある時を除くの外何人に限らず己れの欲する高さに造営することを得べし○もし隣人のため家屋を高く造営することの禁止ある時は土地の義務を得べき隣地の所有者は証書に因て禁じたる建築又は高造を止め或は除去せしむることを得べし

第７２９条　水流に管して土地の義務を得べき権は全く清水のみに管して敢て穢芥物を流すの権に管すること無し

第７３０条　溝渠に管して土地の義務を得べき権とは水及び穢芥物をその溝渠に流すことを得べき権を云う

第７３１条　他人の墻壁に梁椽又は鉄鎹を鑿入するの権利を有する隣人はその梁椽又は鉄鎹の破損する時これを換ふることを得べし○然れどもその数を増加し又は鑿入すべき場所を変することを得ず

第７３２条　隣地の河川に舟を泛べて通行するの権利を有する者は何れの時を問わずその河川をして舟楫を通づることを得べく作すために必要なる費用を分担するを要とす但し通行の権利を抛棄する時は格別なりとす

第７３３条　「サンチエー」狭路の意に管して土地の義務を得べき権利とは徒歩にて他人の土地を横ぎり通行することを得べき権利を云う」

　「ウオワ」「サンチエー」の大なるを云うに管して土地の義務を得べき権利とは馬上にて通行し且つ家畜の獣類を通行せしむるの権利を云う

　「シユマン」「ウオワ」の大なるを云うに管して土地の義務を得べき権利とは馬車等にて通行することを得べき権利を云う

　もし「サンチエー」、「ウオワ」、「シユマン」の幅土地の義務の証書に確定なき時は特別の規則又は地方の習慣に循いこれを確定すべし

　「ウオワ」に管する土地の義務を保含し又「サンチエー」に管する土地の義務は当然に「サンチエー」に管する土地の義務を保含し又「サンチエー」に管する土地の義務は当然に「シユマン」に管する土地の義務を保含すべし

　第７３４条　筧樋(アクジュク)に管して土地の義務を得べき権利とは隣人の土地を横ぎり自己の土地に水を引くことを得べき権利を云う

第７３５条ないし第７３７条　フランス民法第６９７条ないし第７００条に同じ

第７３８条　フランス民法第７０２条に同じ

第７３９条　フランス民法第７０１条に同じ

第７４０条　フランス民法第６９６条に同じ

第７４１条　もし土地の義務ある土地を数人の所有者に分派する時は土地の義務を得べき権利を行うことの必要なる時迄各所有者の分派せし部分に応じて土地の義務ありとす

○ 第２款土地の義務を定むる事

第７４２条　土地の義務は証書又は期満得免に因り定むべき者とす

第７４３条　土地の義務を設くべき証書はこれがために備えたる公けの簿冊に謄記すべし

第７４４条　フランス民法第６９０条に同じ

第７４５条　高阜の地の水源を使用したる低下の地の所有者は自己の土地内に水の流下するを便易ならしむるため人目に触るべき造営土工を為し終りし時より期満得免の権を得べし（フランス民法第６４２条）

第７４６条　フランス民法第６９１条に同じ但し第２項の「然れども」より以下を除く

第７４７条及び第７４８条　フランス民法第６９２条ないし第６９４条に同じ

第７４９条　数人にて土地を所有するに方りその共通の土地の利益となるべき時においてはし所有者中１人の所為にて他の所有者に通知すること無く土地の義務を受くることを得べし

○ 第３款　土地の義務の終る方法

第７５０条　フランス民法第７０３条に同じ

第７５１条　土地の義務を行い或は受くべき土地の滅尽又は破壊せざる間はその土地の位地に循いその義務を継続すべし

第７５２条及び第７５３条　フランス民法第７０４条及び第７０５条に同じ

第７５４条　フランス民法第７０６条追加　３０年の期限は人目に触れ又は土地の義務に反する所為ある時より起算すべし（フランス民法第７０７条）

第７５５条　然れどももし義務を得べき土地のその義務を得ること能わざる形状と成りしに因り再びその土地をして義務を得べき形状に復する時は則ちその時より起算し３０箇年を経て期満得免の権を得べし

第７５６条及び第７５７条　フランス民法第７０８条及び第７０９条に同じ

○ 第６巻　土地の表面使用の権

第７５８条　土地の表面使用の権とは他人に属する土地に家屋、土工及び植附物を有するに付ての対物権とす

第７５９条　土地の表面使用の権を有する者はその権を売却し又は書入質と為すことを得べし○又その権の目的となる財産を質入と為すことを得べし但しその権の継続する時迄とす

第７６０条　土地の表面使用の権を設くる証書はこれがために備えたる公けの簿冊に謄記すべし

第７６１条　土地の表面使用の権を有する者のその権を得るために代償を払い或は躬から家屋を建築し又は植附物及び土工を為し或は建築物又は植附物なき時の形状にてその土地を返還すべき時はその権の継続する時間その土地の所有者はその権を害して家屋及び土工を破却せしめ又は植附物を除去せしむるを得ず

第７６２条　土地の表面使用の権を有したる期限の経過する時はその土地の所有者は該権を有したる者に家屋、土工及び植附物の代償を払いこれ等の物を己れの所有と為すことを得べし但し該券を有する者は土地の所有者より代償を得る迄その家屋等を引留むる権あり

第７６３条　もし既に家屋、土工及び植附物ある土地の表面を使用するの権を有したる者その家屋等の代償を払わざるにおいては該権を行うべき期限の経過せし時土地の所有者は毫も償を為すこと無くその土地を取戻すべし

第７６４条　契約に触ること無き間はこの巻の規則に依遵すべし

弟７６５条　土地の表面使用の権は左の諸件に因て消滅すべし

　第１　混同(コンフェジョン)権利を有する地と義務を行うべき地と同人の所有者となり権利と義務と相混同するを云う

第２　土地の滅尽

　第３　３０年の期満得免

　第４　土地の表面使用の権を行うべき期限の経過

第７６６条　土地の表面使用の権を消滅すべき特定の契約なき時はその土地の所有者は３０年を経て後ちその権を有する者に予め１年前その権を取戻すべき旨を通報してその権を行うことを停止すべし

○ 第７巻　長期の賃貸(アンフィテヲス)

第７６７条　長期の賃貸とは他人に属したる不動産を当然に使用することを得べき対物権を云うこの権利を得るにはその不動産を所有したる者に対し償いをなすため金額又は天然の産物を以て毎歳借料を出すべき契約を為すべし

　この権を定むべき証書はこれがため備えたる公けの簿冊の謄記すべし」

第７６８条　長期の貸借を為したる者は土地の所有者の属する諸権利を行うことを得べし但しその土地の価額を滅すべき事を為すを得ず

　又長期の賃借えお為す者は石類、石油、泥炭(ツールブ)、陶土(アンジル)及びこれに類似の物にして土地の部分を為す物を鑿取することを得ず但し長期の賃借の権利を開始する時既に開鑿したる物は格別なりとす

第７６９条　賃借主は枯木又は賃借の権ある間に偶生の事に因り倒れたる木を己れの所得と為すを得べしと雖もまたその木の代りに他の木を植附たる物は随意にこれを取扱うことを得べし

第７７０条　賃貸したる不動産の所有者は毫もその不動産の修繕等に管することを得べし

　賃借主はその賃借したる不動産を保持し且つ尋常の修繕を為すの義務あり

　又建築を為し、荒野を墾耕し又は植附物を為して土地を改良することを得べし

第７７１条　賃借主はその賃借の権利を売却し又は書入質と為すことを得べく又賃貸の権利の継続する間は賃借の土地を質入と為すことを得べし

第７７２条　賃借の権利を行うべき期限の経過するにおいては特別の契約の因ること無く且つ躬から為したる建築物又は植附物を除去することを得べしと雖もこれを除去する時土地に損害を加うるにおいてはその修理を為すべし

　又土地の所有者は賃借主より義務の弁償を得る迄建築物又は植附物を引留むることを得べし

第７７３条　賃借主は家屋、土工、建築物及び自分にて職附たる物にして賃借の権を行うべき期限の経過せし時現にその土地に在る植附物等の代償を　をその土地の所有者に払わしむるを得ず

第７７４条　賃借主は土地に付て定まりたる通常、非常、毎歳又は１回のみ払うべき税を担任すべし

第７７５条　借賃を払うべき義務は分つべからざる義務とす故に賃貸せし土地の各部は借賃の全部の抵当とす

第７７６条　賃借主は仮令いその賃借の権を減殺し或は全くこれを失いし時と雖も借賃の釈放を受くるの権なし

　然れどももし５箇年間継続して賃借の権を全く失いたる時はその失いたる時間の借賃の釈放を受くべし

第７７７条　長期の賃借の権を変更する時は又は共通の賃貸の土地を分派する時は尋常に超過する借賃を払うに及ばず

第７７８条　もし賃借主の怠りの因り又は保持せざるに因り土地に損害を生じ或は期満得免の権に因りその土地に管する権利を他人に取られし時は賃借の権を行うべき期限の経過せし際においてその土地の所有者はその賃借主に対して損害の償を受くべき訴訟を為すの権を有すべし

第７７９条　賃借の権を行うべき期限の既に経過せしに因りその賃借を為すべき権の消滅する時は黙許を以てその権を更改することを得ず但しその権を取消すべき旨を申述せざる間は継続せざる間は継続して存在すべし」

第７８０条　賃借主の著しく不動産を損害し又は賃借の権を妄用する時はその賃借の権を失い且つ損害の償いを為すべし○５箇年間継続して借料を払わず而して６週間以前より怠りの咎ある(ミーズ、アン、ドシュール)時もまたその権を失うべし

第７８１条　賃借主は物件を損害し又は自己の権利を妄用せし時と雖もその物件を従来の形状に復し且つ後来のため担保を為すにおいては賃借の権を維持するを得べし

第７８２条　契約を結ぶ双方の者の契約の抵触せざる間はこの巻の規則に循うべし

第７８３条　賃借の権は土地の表面使用の権に等しき方法の因り消滅すべし（第７６５条及び第７６６条）

○ 第８巻　年金又は土地の貸税(ロドワンス、フヲンシエール)

第７８４条　年金又は土地の貸税とは不動産の所有者その所有権を他人に移す時金額又は天然の産物を以て得べき旨を定むる年税(ブレスターション)又は他人の不動産の付き得べき年税を云う○右に管する証書は公けの簿冊の謄記すべし

第７８５条　年金又は土地の貸税を受くべき旨を定め而して財産の所有者を他人に転移せし元所有者は仮令い年税の弁償を得ざる時と雖もその財産を取戻すの権利を有すること無し

第７８６条　年金又は土地の貸税の抵当たる不動産の所有者は1人にて義務を行うに及ばず○年金又は土地の貸税は全く不動産に附着する者なればその不動産を分派する時においてはその分派を受けし各人より年金又は土地の貸税を担任すべき者とす

第７８７条　もし利益の分量に応じて土地の貸税を出すべき時は毎歳収穫の後その年税を出すべし

第７８８条　利益の十分一(ヂーム)の税に付き又はその分量に応じて税を出すべき入額に付き特別の契約なき時はその土地の習慣の循い天然の産物の十分一を以て年税と為し又これに換うるに利益の十分一の金額を以て年税と為すべし

第７８９条及び第７９０条　土地の無耕地(アンジャセール)とし或は貸税を出さずして利益を得べきために用い或は秣草に用うるため麦を作りし時は毫も年税を出すに及ばず

第７９１条　年税を出すべき者は収穫の時その産物を一様の層さに積みて排列するの義務あり○その産物はこれを収穫せし侭にて毫も滅却すること無くこれを積み置くべし

第７９２条　年税を出すべき者はその積みたる侭にて２４時間事自己の田野の置くべし

第７９３条　前条の時間に権利者はその積みたる産物を己れの欲する所より取去ることを得べく但しこれを排列したる順序に従て引去るべし

第７９４条　もし権利者のその積みたる産物中己れの欲する所の物を示さざるにおいては年税を出すべき者に渡すべき部分を確定しこれをその侭にて残し置き権利者の随意に委すべきの権利あり

第７９５条　もし年税を出すべき者その義務を尽すこと無くその産物を取去るにおいてはその利益に応じて払うべき年税に２倍の価額を払うべし

第７９６条　もし獣類の頭数又はその蕃殖の分量に応じて年税を出すべき時はこれを出すべき者はその権利者に渡すべき部分の獣類を引渡し又はその代価を払うことを得べし但し年税を出すべき期限より６週間を過ぐる時は一層貴き代価を払うべき者とす

　右の如き年税は常に特別の契約を以てこれを定むべく而して十分一の税と同視すべき者に非ず

　十分一の税は最良の産物又は最悪の産物を以て払うべからざる方法を以てこれを出すべし

第７９７条　第７８７条以下次条に記したる年金はこれを要求することを得べき期限に至りし日より起算し１年の期限内に期満得免と成るべし

第７９８条　不動産の所有者を他人に移して年金又は土地の年税を受くべき者はその不動産を賠償することを得べし（フランス民法第１９１１条）○又契約を結ぶ双方の者は賠償の契約又はその条件を規定することを得べし

　双方の者は或は期限間即ち経過せざる期限内に非ざれば年金の元資を賠償すること能わざる旨を契約することを得べし但しこれに反する契約はその効なかるべし（フランス民法第５３０条）

第７９９条　もし契約書中の土地の年税等の元資賠償の代価を確定したること無く且つ契約を結びたる双方の者の相互のその代償を確定し能わざる時は左の規則の依遵すべし

　金額を以て払うべき土地の年税の元資賠償するにその年税の２０倍の賠償を払うべし○金額を以て払わざる年税の元資の代償はその年税の最後の１０箇年平均相場に２０倍の者とす

第８００条　もし最後の１５箇年間土地の入額を生ぜざる時は裁判官その賠償の代価を確定すべし

第８０１条　土地の年税を受くべき権利は左の諸件の因て失うべし」

　第１　混同

　第２　契約

　第３　賠償

　第４　１５年間権利を行わざる事

　第５　土地の滅尽

第８０２条　この巻の規則は後来に定むべき土地の年税等に管する時のみ適用することを得べし

　　○第９巻　入額所得の権

　　　○第１款入額所得権の本義及びこれを得べき方法

第８０３条　フランス民法第５７８条に同じ

第８０４条　フランス民法第５８７条に同じ

第８０５条　入額所得権は１人又は定限ある数人の相連合し又は相連続してこれを行うために設くることを得べし

　最初入額所得権を得し者のその権利を開始せし時存在したる人に非ざれば相連続して入額所得権を行うことを得ず

第８０６条　フランス民法第５７９条に同じ

第８０７条　不動産に付ての入額所得権の証書はこれがために備えたる公けの簿冊に謄記すべし

　動産に付て入額所得権を得るにはその動産の引渡を以て対物権を得べき者とす

　　　○第２巻　入額を所得と為す者の権

第８０８条　フランス民法第５８２条に同じ

第８０９条　フランス民法第５８５条に同じ

第８１０条　フランス民法第５８６条の始に同じ

第８１１条　フランス民法第５８８条追加　もし畢生間の年金の前払いを為すを得べき時はこの年金の付き入額所得の権を得たる者はその入額を所得と為す期限中に得べき入額の全部を所得と為すの権あり

第８１２条　フランス民法第５８９条に同じ

第８１３条　フランス民法第５９９条第１項に同じ

第８１４条及び第８１５条　フランス民法第５９１条及び第５９２条に同じ

第８１６条　フランス民法第５９３条追加　土地の入額を所得と為す者はその土地の木を伐りて薪木に用うるの権無しと雖もその土地の習慣と所有者の定則の循い毎歳又は時々生ずる物を採収することを得べし

第８１７条　フランス民法第５９０条第２項の同じ

第８１８条　フランス民法第５９４条に同じ

第８１９条　入額を所得と為すの権を有する者はその土地の習慣と所有者の定則とに循い且つ物権の用法を変更して所有者に損害を与うるが如きこと無くその権を自から保有し又は償を得て他人に貸与し又はその権を売払い又は償を得ずして他人に譲与することを得べく又はもしその土地の習慣なき時は家屋は４箇年土地は７箇年に超過せざる期限の間貸与すべし（フランス民法第５９５条、第１４２９条及び第１４３０条）

第８２０条　土地又は家屋の入額を所得と為すの権を行い始むる２年前のその家屋又は土地を借受くべき約定を為しもしその入額を所得と為すの権を行うを得べき期限の２年間にて終るべき時は所有者の求めに因てその約定を取消すことを得べし（フランス民法第５９９条、差異）

第８２１条　フランス民法第５９６条及び第５９７条に同じ」

第８２２条及び第８２３条　フランス民法第５９８条に同じ但し該条第１項「然れども官許」云々以下を除く

第８２４条　土地の入額を所得と為す者はその権を有する時間にその土地より他人の発見せし財貨を己れの益と為すの権なし（フランス民法第５９８条第２項）

　もし入額を所得と為す者自からその財産を発見する時は第６４２条に循い己れに受く部分を請求するの権あり

第８２５条　フランス民法第５９９条第１項に同じ

第８２６条　フランス民法第５９９条第２項追加　又物権を良好に為しその価の増加せしと否とは物件に損害を加えたるに因り生ぜし損失を算当する時に確定すべし

第８２７条　フランス民法第５９９条第３項に同じ

第８２８条　入額を所得と為す者は法律上において所有者の行うべき諸対物権を行うことを得べし

○ 第３款　入額を所得と為す者と義務

第８２９条　フランス民法第６００条追加　入額を所得と為す者はその権を行うべき期限の経過せし時物件をその形状の侭にて還附すべし但し第８２６条、第８２７条の規則及び所有者に損害を加えしに因りその償いを為すべき事は格別なりとす

第８３０条　フランス民法第６００条追加　入額所得の権を得るの証書を記すと雖も動産の目録及び不動産の模様書を記すべき義務を免がるることを得ず

　この目録及び模様書は所有者の面前において私にこれを記するを得べし」

第８３１条　入額を所得と為す者は家族の良父(ボンベールト、ファミーユ)の如く物件を保有するの保証を立つべし（フランス民法第６０１条）

　使用するに従い耗尽すべき物件に入額を所得と為す者もまた第８０４条に規定したるが如くその物件の返還を安全ならしむるため保証を立つべし

第８３２条　入額を所得と為す者のその権を得べき証書を記する時は前条の保証を立つるに及ばず○自余はフランス民法第６０１条に同じ但し追加すること左の如し

　他人の支配すべき物件の入額を所得と為す者もまた保証を立つるに及ばず但しその支配人は第８３６条の規則の依遵すべし

第８３３条　もし入額を所得と為す者保証を立てざるにおいては所有者は自から保証を立てその入額所得の権に属する財産を支配する権利ありと雖ももし保証を立つること能はざる時はその財産を賃貸し又は他人に託して支配せしむべし○自余はフランス民法第６０２条に同じ

第８３４条　もし入額所得の権に管する物件の一部又は全部動産にしてこれを使用数に従い滅却すべき時は入額を所得と為す者の仮令い保証を立つること能はずと雖もその物件の入額を所得と為すの権を失うこと無し但しその入額を所得と為す者は保証を立つること能はざる誓を為し且つその権を行うを得べき期限を経過せし時その物件の代りを償うべき旨を契約すべし

　又所有者は入額を所得と為す者をしてその使用の必要なる財産の部分のみを残し置きその残余を売却せしむることを得べく而してその代価は前条に原つきこれを使用すべし

第８３５条　フランス民法第６０４条に同じ

第８３６条　入額所得の権に属する財産を支配すべき任を受くる者はその支配を始むる前に充分の保証を立つるを要とす而してその保証なき時は当然支配を止むべし

第８３７条　財産の支配人は入額を所得と為す者に毎歳計算の報告を為し且つ過剰金を引渡すべし

　財産の支配人その支配を止む時は所有者及び入額を所得と為す者に計算に報告を為すべし

　所有者は第８２１条第１項に記載したるが如く財産を支配し且つ前項の等しき方法を以て入額を所得為す者に計算の報告を為すべし

第８３８条　財産を支配する者の職は後見人に等しき原由を以てこれを解くべし

第８３９条　もし或る原由に因り財産の支配を止むる時は入額を所得と為す者その権を復すべし

第８４０条ないし第８４４条　フランス民法第６０５条ないし第６０９条に同じ

第８４５条　フランス民法第６１２条に同じ

第８４６条　フランス民法第６１１条に同じ

第８４７条　フランス民法第６１０条に同じ

第８４８条　フランス民法第６１３条追加　もし所有者入額を所得と為す者と共に訴訟の管係する時は裁判所の定むる権利即ち双方相互に得べき権利の割合を以て訴訟入費を分担すべし

第８４９条　フランス民法第６１４条に同じ

第８５０条　財産を支配する者その財産を支配する時はその所有者及び入額を所得と為す者の権利を保守するの義務あり而してもしその義務を尽さざるにおいては損害の償を為さざるを得ず

　財産を支配する者はその所有者又は入額を所得と為す者の許諾を得るに非ざればその名義を以て訴訟の原告又は被告と為るを得ず

第８５１条　フランス民法第６１６条に同じ

第８５２条　獣群に付き入額所得に権を得ること無く唯唯１頭又は数頭の獣に付き入額所得の権を得たる後その者の過失に非ずしてその獣の斃るる時はその者よりその所有者にその皮又は皮の価を還与しその獣に代え他の獣を還与し又はその価を償うに及ばず（フランス民法第６０５条）

第８５３条　船舶に付き入額を所得と為す者の外国に旅行する時は必ず保証を立つべしもしその保証を等閑に附するのおいてはその所有者の損失の償を為さざるを得ず

○ 第４款　入額を所得と為す権の終る方法

第８５４条　フランス民法第６１７条に同じ

第８５５条　数人の利益のために設けたる入額所得の権は最後に生存したる者の死去する時に非らざれば終るべからず

　団結に与えたる入額所得の権はその団結の解散する時は滅尽すべし

第８５６条　フランス民法第６２０条追加　但し血属親の法に適して入額所得の権を得る事に管しこの民法第１編第１５巻に設けたる規則は格別なりとす

第８５７条　団結に与えたる入学所得の権はその期限３０年より多からざるべし（フランス民法第６１９条）

第８５８条　フランス民法第６２３条追加　入額所得の権は仮令い土地の水中に没する時と雖も消滅すること無き者たればその入額を所得と為す者は天然又は人工を以てその土地を乾すにおいてその権を保存すべし但し第６４９条の規則は格別なりとす

第８５９条　フランス民法第６２４条追加　頽壊したる家屋を再び建築し又はその土地内に在る他の家屋を修理するためにはその土地及び屋材に付き入額を得るの権あり

第８６０条　船舶の入額を所得と為すの権はその船舶の修理を加うること能わざる形状に至りし時消滅すべし

　船舶の入額を所得と為す者は破壊せしその船舶の材具を享有するの権なし

第８６１条　年金、権利又は義務の付き入額を所得と為す権は仮令いその元資を弁償すと雖も滅尽すること無し

　入額を所得と為す者はその元資を己れの利益のために用うべき求めを為すことを得べし

第８６２条及び第８６３条　フランス民法第６１８条追加　裁判官は第三の人を以て財産を支配すべき旨を言渡すことを得べし

第８６４条　入額所得の権の消滅する時と雖も第８１９条に循い約定したる賃貸は停止すること無し

○ 第１０巻　受用(ユサージュ)の権及び居住(アビツターション)の権

第８６５条及び第８６６条　フランス民法第６２５条及び第６２６条に同じ

第８６７条　フランス民法第６２８条及び第６２９条に同じ

第８６８条　フランス民法第６３０条第１項に同じ

第８６９条　度量すべき物は受用の権の目的の為すことを得ず○然れどももしこの権を与うる時は入額所得の権と同一にみなすべし

第８７０条　フランス民法第６３１条に同じ

第８７１条　獣類を受用するの権利を有する者はその獣類を使用し又はその乳汁を絞り又は自己の用に必要なる肥料を取るの権を有するのみとす

第８７２条　土地を受用するの権利を有する者はその土地にて獣猟又は漁猟を為すの権無しと雖も土地の義務を得べき権を有すべし

第８７３条　フランス民法第６３２条及び第６３３条追加

　居住の権と家屋受用の権とは相異なること無し

第８７４条及び第８７５条　フランス民法第６３４条及び第６３５条に同じ

第８７６条　樹木又は植附物を受用するの権を有する者は枯木を所得と為し又は自己及びその家族の用に必要なる木を截伐するの権なし

　　○第１１巻　遺嘱なき(アブ、インテスター)財産相続

　　　○第１款　総則

第８７７条　財産相続は人の死去に因て開発すべし

第８７８条　もし互に財産相続を為すべし者数人同日に又は同一の事にて死去しその中何れの者先に死去せしやを知るを得ざる時は総て同時に死去せし者と思料しその中の１人の利益のため財産相続の権を移したる者と為すべからず（フランス民法第７２０条ないし第７２２条、差異）

第８７９条　法律上にて財産相続を為すことを得べき者は左の如し

　第１　卑属親、尊属親又は次の数箇条に記載せる順序中に在る摘出及び私生の傍系親

　第２　卑属親、尊属親又は傍系の親なき時は夫婦中の生存したる者又血属親及び夫婦中生存したる者なき時はその財産を官署の徴収すべし但し死去せし者の負債ある時はその財産の代価を以て償うことを得べき価額に至る迄官署よりその負債を償わざるを得ず（フランス民法第７２３条）

第８８０条　フランス民法第７２４条第１項に同じ但し追加すること左の如し

　財産相続人たるの身分に付き紛議を生ずる時は裁判官より仮りにその贈遺の財産を支配すべき者を選任すべし

　財産相続人たるの身分に付き訴訟を為す者は裁判上にて官署にその財産の保有権を移し或はその財産を封印し又はその相続する財産の価に至る迄の外負債を償わざる特権を以て財産相続を為す事のために規定したる方式に循いその財産の目録を記すべく但しこれ等の事を為さざるにおいては損害の償を為すべし

第８８１条　財産相続人は贈遺の財産の一部又は全部を受くべき名義を以て財産を保有したる者又はその名義なく財産を保有したる者或は詐偽に因て財産の保有権を抛棄せし者に対しその贈遺の財産の所有権に付ての訴訟を為すことを得べし

　財産相続を為すべき者の己れ１人なる時はその財産の全部のため又数人ある時は己れの受くべき部分のため前記の訴訟を為すことを得べしこの訴訟はその名義如何を問わず総て相続すべき財産を取戻し又は所有権の取戻しに管してこの編の第３巻に設けたる規則に循い入額、利益及び損害の償を取戻すを以て目的とす

第８８２条　贈遺の財産の所有権に付ての訴訟はその財産相続を開始せし日より起算し３０年の期限を以て期満得免と為るべし

第８８３条　財産相続を為す者はその財産相続を開始する時現存するを要とす（フランス民法第７２５条）

第８８４条　フランス民法第７２６条に同じ

第８８５条　フランス民法第７２７条第１項及び第２項に同じ但し第３項を変更すること左の如し

　暴威暴行に因り死者に対しその遺囑書を記し又は取消すことの妨害を為せし者又は躬からその遺囑書を変更し或は滅尽せし者は財産相続を為すべからざる者とす

第８８６条及び第８８７条　フランス民法第７２９条及び第７３０条に同じ

第８８８条ないし第８９１条　フランス民法第７３９条ないし第７４２条に同じ

第８９２条　又死者の兄弟及び姉妹の子又は卑属親にして死者の血属親中最親の者たるに因り財産相続を為すべき者のためにはこれに代りて傍系の親の財産相続を為すことを得べし

第８９３条ないし第８９５条　フランス民法第７４３条及び第７４４条に同じ

第８９６条　フランス民法第７３２条に同じ

第８９７条　フランス民法第７３３条に同じ該条の第２項を除く

第８９８条　フランス民法第７３４条に同じ

○ 第２款　卑属の親尊属の親及び傍系の親の財産相続を為す事

第８９９条及び第９００条　フランス民法第７４５条及び第７４６条に同じ

第９０１条　人子孫無くして死去せし時その父母なお生存し且つその死者の兄弟又は姉妹の中１人生存したるにおいてはその父母は各自に死者の財産を３分の１づつを相続し他の３分の１はその１人の兄弟又は姉妹これを相続すべし

　もし死者の兄弟又は姉妹数人生存したるにおいてはその父母は各自の死者の財産の４分の１づつを相続し他の４分の２はその兄弟又は姉妹これを相続すべし（フランス民法第７４８条）

第９０２条　子孫無くして死去したる人に先だちその父又は母死去しその死者の兄弟又は姉妹１人生存したるにおいては父母の中なお生存したる者は死者の財産の半を相続しその兄弟又は姉妹２人生存したるにおいては３分の１を相続し又２人以上生存したるにおいては４分の１を相続し他の部分はその兄弟又は姉妹これを相続すべし（フランス民法第７４９条及び第７５１条）

第９０３条　フランス民法第７５０条第１項に同じ

第９０４条　右に記したる数条の規則に循い死者の兄弟又は姉妹の相続すべき財産はこれを相続する者の間に平等の分派すべし○自余はフランス民法第７５２条に同じ

第９０５条　フランス民法第７５３条追加　兄弟姉妹又は父方母方の卑属親なき時は父方及び母方の最親の血属親その死者の財産を折半してこれを相続すべし

第９０６条　子孫なく又は兄弟姉妹なくして死去せし者の父母なお生存したるにおいてはその子の財産の全部を相続すべし（フランス民法第７５４条、差異）

第９０７条　この款の兄弟姉妹と記したる者はその兄弟姉妹の摘出の卑属親もまた毎子に含蓄する者とす○フランス民法第９１４条に同じ

第９０８条　フランス民法第７５５条に同じ

○ 第３款　私生の子ある時の財産相続

第９０９条及び第９１０条　フランス民法第７５７条追加　もし財産相続を為すべき者死者と同級の血属親より他の一方の血属親の非ざる時はその死者の父方又は母方の最親の血属親より他の一方の血属親のためにも私生の子の相続すべき財産の部分を確定すべし

第９１１条　前条に記したる場合において尚お過剰せし贈遺の財産はこの巻の第２款に指示せし方法に因り提出の財産相続の間に分派すべし

第９１２条及び第９１３条　フランス民法第７５８条及び第７５９条に同じ

第９１４条　フランス民法第７６２条に同じ

第９１５条ないし第９１８条　フランス民法第７６３条ないし第７６６条に同じ

第９１９条　フランス民法第７５６条第２項に同じ

第９２０条　私生の子の血属親中の１人財産相続を為すべき等級の血属親なく且つ夫婦中後に生存したる者無くして死去するにおいてはその私生の子その財産を得んと求むることを得べし而してその財産は官署に徴収すべからず

　又もし私生の子の子孫、父母、兄弟、姉妹、夫婦中に生存したる者又は卑属親無くして死去せし時はその財産を官署に徴収すること無くその子を以て己れの子なりと認めたる父又は母の最親の血属親これを相続すべし又父母共にその子を己れの子なりと認めたる時はその財産の半分は父方の最親の者に属し他の半分は母方の最親の者に属すべし○父方及び母方の間に財産を分つ時は一般の財産相続を為す方法に依遵すべし

　　○第１２巻　遺囑の贈遺書

　　　○第１款　総則

第９２１条　死者の遺留したる財産はその死者の記したる遺囑贈遺の証書に因て法に適し他に贈与したる財産を除くの外総て正当の財産相続人に属すべし

第９２２条　遺囑贈遺の証書とは遺囑者の死去せし後を自己の財産を人に贈与するために記したる証書を云う但しこの遺囑贈遺の証書は遺囑者随意のこれを取消すことを得べし（フランス民法第８９５条）

第９２３条　フランス民法第１００２条追加　遺囑贈遺の証書は財産相続人を選任するの名義又は遺囑贈遺の名義を以てこれを為すを問わず総て本巻に因てこれを管理すべし

第９２４条　遺囑者の最親なる血属親のために記しその他の人のために記せざる遺囑贈遺の証書は法律にて財産を相続すべき者のためにきしたる者とみなすべし

第９２５条　諸貧窮者のために記しその他の人のために記せざる遺囑贈遺の証書はその貧窮者の信向する宗旨の�ﾍ派に別なくその財産相続を開始せし場所において公けの救助を受くべき貧窮者のために記したる者とみなすべし

第９２６条　フランス民法第８９６条第１項及び第２項に同じ

第９２７条　本巻の第７款及び第８款に認可せる「フヒデコンミッセール」他人に譲渡すべき黙許の約定を以て遺囑の贈遺を受くる者を云うの「シュブスチチュション」贈遺を受くる者その生存中その財産を保有しその死後に誓ってその贈遺を為したる者の定め置きたる者にその財産を譲与うべき契約を云うは第９２６条の例外とす

第９２８条　人に死去する時選任されたる財産相続人の未だその財産を他人に譲渡し又は耗尽せざる遺囑贈遺の財産又は財産相続の一部或は全部を受くべき人又はその摘出の子にして既に産れ或は産れ来るべき子のためには「シュブスチチュシヨン」を禁止すべからず

　然れども法律上に因り遺留すべき部分は右の規則に因て得ることを得ず

第９２９条及び第９３０条　フランス民法第８９８条及び第８９９条に同じ

第９３１条　贈遺の財産又は遺囑贈遺の財産の所有者を他に移すことを得ざる旨を記したる証書は無効の者とす

第９３２条　遺囑贈遺の証書の意味明亮なる時は他に解釈下し却てその意味を迂遠ならしむることを得ず

第９３３条　もしその意味の曖昧なるにおいては遺囑贈遺の証書の文意を採るより寧ろその遺囑の贈遺者の心意に循うべし（フランス民法第１０５６条）

第９３４条　前条の如き時は遺囑贈遺の証書の一言一語を講究しその証書に或る効を生ずべき方法を以て解釈すべし（フランス民法第１０５７条）

第９３５条　フランス民法第９００条に同じ

第９３６条　未必の条件の如く成らざるに付て利益を得べき者の自からその条件の如く成るべきを妨げし時なおその条件の如く成りたるに等しき者とみなすべし（フランス民法第１０７８条）

第９３７条　虚妄の原由を記載したる時はなおこれを記載せざる者とみなすべし但し遺囑の贈遺者のその原由の虚妄なるを知らずして遺囑贈遺の証書を記したる時は格別なりとす

第９３８条　その原由の誠実なると虚妄なるとを問わず法律又は一般の風儀に悖戻すべき原由を遺囑贈遺の証書に記したる時は財産相続又は遺囑の贈遺を無効の者とす

第９３９条　財産相続人又は遺囑の贈遺を受くる者数人にて担任すべき義務ある時その中の１人又は数人これを行うことを拒み或はこれを行うべき資力なきに因りその義務の全部を１人にて行いたる者は己れの受くべき財産を要求し且つその他の人のために行いたる義務を取り戻すべき権利あり

第９４０条　暴行又は詭欺に因り記したる遺囑贈遺の証書はその効無かるべし（フランス民法第１００９条）

第９４１条　もし遺囑の贈遺者及び財産相続人又は遺囑の贈遺を受くべき者又はその代理を為すべき者の同日に或は同事件にて死去しその中何れの者先に死去したるやを知ることを得ざる時は即ち同時に死去せし者と見做し遺囑の贈遺に付ての権利を転移せし者と為すべからず（フランス民法第７２０条以下次条、差異）

　　○第２款　遺囑贈遺として人に財産を贈与し又はこれを受収するに必要なる要件

第９４２条　遺囑贈遺の証書を記し又はこれを取消すには精神の●迷せざることを必要とす（フランス民法第９０１条）

第９４３条　フランス民法第９０２条に同じ

第９４４条　１８歳未満の幼者は遺囑贈遺の証書を記するを得ず（フランス民法第９０３条、差異）

第９４５条　遺囑贈遺のこれを為すことを得べき能力有ると否とはその遺囑贈遺の証書を記せし時の形状を以てこれを確定すべし

第９４６条　フランス民法第９０６条第１項及び第３項に同じ但し追加すること左の如し

　この規則は恩恵のために費すべき財産を相続する人に適用するを得ず

第９４７条　フランス民法第９１０条に同じ

第９４８条　もし婚姻を為すに付き必要なる承諾を受けずしてこれを為し且つなおその婚姻に付き訴訟を受くべき時その夫婦の中一方の者他の一方の者に遺囑の贈遺を為し而して死去せし時においてはその他の一方の者は遺囑贈遺を受くるを得ず

第９４９条　フランス民法第１０９８条に同じ

第９５０条　フランス民法第１４２３条に同じ但しこの規則は夫婦に管係すべし

第９５１条　フランス民法第９０７条に同じ但しフランス民法の１６歳は１８歳に作る

第９５２条　幼者はその住居を共にする自己の訓導者師傅たる男(ブレセブトール、グーウエルノール、グーウエルナント)又は女又は幼者の入塾せし所の教師たる男又は女には遺囑も贈遺を為すを得ず（フランス民法第９０７条）

　然れども右等の者の労働と贈遺者の権限とに准じその財産中別段指定めたる一部を酬謝として贈与する約定は前項の記する所の例外なりとす

第９５３条　フランス民法第９０９条ぶ同じ但し例外を追加する左の如し

　贈遺者の配偶者のために為したる贈遺は例外なりとす○フランス民法第９０９条３項を除く

第９５４条　公正の遺囑贈遺の証書を受取りし公証人及びその時に立会を為せし証人はその贈遺を受くるを得ず

第９５５条　もし摘出の子及び法に適して我子なりと認めたる私生の子を遺留してその父母の死去せし時はその私生の子は財産相続の巻にその得べき事を記したる財産の外遺囑の贈遺としてその父母の財産を受くるを得ず（フランス民法第９０８条）

第９５６条　遺囑の贈遺を為す者の死去する以前裁判言渡に因て姦通を為せし事の確証ある時はその姦父姦婦は相互に遺囑の贈遺を受くるを得ず

第９５７条　フランス民法第９１２条に同じ

第９５８条　フランス民法第９１１条に同じ

第９５９条　遺囑の贈遺者をして死に至らしめしに付きその裁判言渡を受けし者、遺囑贈遺の証書を盗取し、滅尽し又は変更せし者、暴行に因り遺囑者のその遺囑贈遺の証書を取消し又は変更することを妨げし者及びこれ等の者の配偶者及びその子は遺囑の贈遺として死者に財産を受くるを得ず（フランス民法第１０４６条）

○ 第３款　当然に相続すべき財産及び贈遺と為したる財産を滅する事

第９６０条　当然に相続すべき財産とは法律上において宗系の財産相続人の受くべき財産にして且つ死者の生存中の贈遺又は遺囑の贈遺の因り他の人に贈与すること能わざる財産を云う

第９６１条　フランス民法第９１３条及び第９１４条に同じ

第９６２条　各尊属親の当然に受くべき財産の部分は法律上において常に贈遺の財産と為すことを得べき財産の半とす（フランス民法第９１５条）

第９６３条　法に適して我子なりと認められたる私生の子の各自当然に受くべき財産の部分は贈遺なき財産相続(○○○○○○○○)に因り得べき権利を有する部分の半とす（フランス民法第９０８条）

第９６４条及び第９６５条　フランス民法第９１６条及び第９１７条に同じ

第９６６条　贈遺と為すを得べき財産の定分の全部又は一部は生存中の贈遺又は遺囑の贈遺として死者の子或はその他の財産相続人又はその他の人に贈遺することを得べし但し財産相続人のこの編の第１６巻に循いその財産を返還すべき時は格別なりとす（フランス民法第９１９条）

第９６７条　フランス民法第９２１条追加　又財産相続人は死者の権利者の権利を害して贈遺の財産を滅することを得ず

第９６８条　フランス民法第９２２条に同じ

第９６９条　畢生間の年金を受取るべき約束又は入学を得べき約束を以てその宗系の財産相続人中の１人の財産の所有権を譲渡したる時はこれを生存中の贈遺とみなすべし（フランス民法第９１８条）

第９７０条　贈遺を為せし者の生存中その贈遺を受けし者の過失の因ること無くその贈与せし物件の滅尽するにおいてはその物件を以て当然に受くべき財産中の算入すべからず

　もし贈遺を受けし者のその贈遺として得たる物件を他の人に譲渡しこれを取戻すの資力なき時はその物件を当然に受くべき財産中に算入すべし

第９７１条　フランス民法第９２３条の同じ

第９７２条　前条の場合のおいて不動産を取戻すべき時は必ずその現物を取戻すべし但し反対の規則ある時は格別なりてす

　然れども容易に分つこと能わざる贈遺の財産を滅すべき時は仮令い親族の在らずして贈遺を受けたる者と雖も当然の財産相続人の受くべき財産の部分を金額を以て償うことを得べし（フランス民法第８５９条）

第９７３条ないし第９７５条　フランス民法第９２６条ないし第９２９条に同じ

第９７６条　フランス民法第９３０条追加　買主の対する不動産取戻しの訴訟はその不動産の贈遺を受けし者のその贈遺の財産中の保含する他の財産を保有せざる時又は財産相続人の当然に相続すべき財産の定分の充分なる財産を保有せざる時又は第三の人に譲渡したる財産の価額を自己の財産を以て償うこと能わざる時に非ざればこれを為すことを得ず

　この訴訟権は如何なる場合の管せず当然に財産相続を為すべき者のその財産相続を為すべき旨を承諾せし日より起算し３年の期限の消滅すべし

○ 第４款　遺囑贈遺の法式

第９７７条及び第９７８条　フランス民法第９６８条及び第９６９条に同じ

第９７９条　遺囑贈遺の証書は遺囑者の自筆にてその全部を記し且つこれに姓名を手署するを要とす（フランス民法第９７０条、差異）

第９８０条　遺囑者は証書２人の立会にてその証書を公証人の差出し公証人はこれを諸証書書類中に保蔵すべし

　公証人は証人２人の面前において直に受諾の証書を記すべし但しその遺囑の証書を開きたる侭にて請取りし時は遺囑者の姓名を手署せし下に受託の証書を記し又は封印の侭にて請取りし時は別紙に証書をきすべく而して遺囑者はその公証人及び証人の面前のおいてその証書の包紙に遺囑の証書を包含する旨を記しこれに姓名を手署すべし

　もし遺囑の贈遺者その遺囑贈遺の証書又はその包紙に姓名を手署せし後ち公証人の受託の証書又はその包紙の手署し能わざるべき故障ある時は公証人その故障の原由を記すべし（フランス民法第９７０条）

第９８０条　前条に因り公証人に差出したる自筆の遺囑贈遺の証書は公正の証書と同一の効あり○遺囑贈遺の証書はその日附の如何に管せず常に受諾の証書と同日に記したる者とみなすべし

第９８１条　遺囑者は如何なる時を問わず公正の証書を以て公証人に附託を取消す旨を申述してその自筆の遺囑贈遺の証書を取戻すことを得べし○然る時は遺囑贈遺の証書を取消したる者とみなすべし

第９８２条　遺囑者の託を受け遺囑の諸事を管理する者を任じ、葬式の費用及びその方法を規定し、諸種の衣服及び室内の装飾物等を贈遺することは死者の自筆の証書にして唯唯　日附と姓名の手署のみある証書する証書を以てこれを為すことを得べし

　この贈遺を取消す時もまた私の証書を以てすることを得べし

第９８３条　前条に記したる種類の証書を遺囑者の死去せし後に看出だす時は治安裁判官はその証書にこれを差出し治安裁判官はその証書を開封し而してこれに管する調書を製して公証人に渡すべし又公証人はこれを証書類中に保蔵すべし（フランス民法第１００７条）

第９８４条　遺囑者手記の遺囑贈遺の証書を封印して公証人に附託したる時はその遺囑者の死去せし後のこれを治安裁判官に差出し治安裁判官は第９８９条の規則に依遵しこれを取扱うべし（フランス民法第１００７条第１項）

第９８５条　公正の遺囑贈遺の証書とは証人２人の面前において公証人の請取りたる証書を云う（フランス民法第９７１条）

第９８６条　公証人は遺囑者の申述せし心意を簡略且つ明白に記載し又は記載せしむべし

　もし証人の面前に在らざる時遺囑者自己の心意を申述し公証人の既にこれを筆記せし時の如きは遺囑者は公証人のその証書を朗読する前に再び自己の心意を申述すべし

　次に公証人はその遺囑贈遺の証書を遺囑者及び証人に読聴かせし後ち遺囑者の心意を全く記し了り毫も脱漏する所なきや否をその遺囑者の訊問すべし

　証人の面前において遺囑の贈遺を聴取り直にこれを筆記せし時もまた前項に同じ

　然して後ち遺囑者、公証人及び証人は遺囑贈遺の証書に姓名を手署すべし○もし遺囑者故障ありて姓名を手署することを得ざる時はその故障の申述とその原由及び遺囑の贈遺を為し終りし時は総て諸般の法式を行いし旨とを遺囑贈遺の証書に謄記すべし

第９８７条　フランス民法第９７６条に同じ

第９８８条　フランス民法第９７９条に同じ

第９８９条　秘密の遺囑贈遺の証書は遺囑者の死去せし後ちその遺囑の贈遺を開始すべき土地の治安裁判官の差出すべし○治安裁判官はその証書を開封し而してその証書を開封したる事、これを差出したる公証人に還付すべし（フランス民法第１００７条２項）

第９９０条　或る遺囑贈遺の証書を保有する公証人は遺囑者の死去せし時その遺囑を受くべき者にその死去を通報すべし

第９９１条　遺囑贈遺の証書を記する時その席に立会うべき証人はオランダ人にして且つ丁年に至りし男に限るべし○証人たるを得べき者は遺囑贈遺の証書、その表書及び受託の証書を記したる国語を解し得べきを必要とす（フランス民法第９８０条）○財産相続又は遺囑の贈遺を受くべき者、その者の第４級に至る迄の血属及び姻属親、その者の子又は孫及び同級の姻属親、証書を記したる公証人の従僕、施體加辱の刑を受けし者は公証人と為るを得ず（フランス民法第９７５条及び第９８０条）

第９９２条　外国に在るオランダ人はその国にれ用うる所の法式の循い記したる公正の証書を以て遺囑の贈遺を為すことを得べし（フランス民法第９９９条）

　外国に在る者は第９８２条に記したる諸件と方法とに付ては私の証書を以て遺囑の贈遺を為すことを得べし

第９９３条　戦時(タン、ド、ゲール)に当りて軍人及び軍属の陣地(カンパンニュ)又は囲を受けたる要塞(ブラス)地に在る時は中尉以上の士官及び証人２人の面前において遺囑贈遺の証書を記することを得べし（フランス民法第９８１条）

第９９４条　海上に在る者は船長もし有らざる時はこれに代るべき次官の記したる遺囑贈遺の証書うを以て証人２人の面前において遺囑の贈遺を為すを得べし（フランス民法第９８８条）

第９９５条　フランス民法第９８５条に同じ

第９９６条　前数条に記したる遺囑贈遺の証書のは遺囑者、遺囑の贈遺を受くべき者及び少なくも証人中の１人にて姓名を手署すべし

　もし遺囑者及び証人中の１人姓名を手署すること能わざる旨を述る時はその述る所とその手署すること能わざる原由とを証書に附記すべし（フランス民法第９９８条）

第９９７条　フランス民法第９８４条に同じ

第９９８条　第９９３条第９９４条及び第９９５条に記載したる人は私の証書を以て遺囑の贈遺を為すを得べし但し手記にてその証書の全部を記し又は日附を為し且つ姓名を手署するを要とす

第９９９条　もし遺囑者右３箇条に記したる原由なきに至りし後ち３箇月の期限内の死去する時はその遺囑贈遺の証書はその効なかるべし但し第９７９条に循いこの証書を公証人に附託したる時は格別なりとす（フランス民法第９９６条）

第１０００条　フランス民法第１００１条に同じ

○ 第５款　財産相続人を選任する事

第１００１条　財産相続人を選任する証書とは遺囑者の死去する時その遺留する財産の全部又は半分或は３分の１の分つ時の如きその一部を遺囑者より１人又は数人の贈与する遺囑贈遺の証書を云う（フランス民法第１００３条及び第１０１０条）

第１００２条　選任を受けたる財産相続人は遺囑者の死去する時法律上において正当の財産相続を受くべき者と共に当然にその財産を所得と為すを得べし（フランス民法第１００４条）

　第８８１条及び第８８２条は選任を受けたる財産相続人に適用することを得べし

第１００３条　財産相続人を選任せし事の法に適したる確証あるに方りもしその財産に付き紛議を生ずる時は裁判官これを第三の人に託し置くべき言渡を為すことを得べし

○ 第６款　遺囑贈遺の財産

第１００４条　遺囑贈遺の証書とは財産中別段指定めたる一部の贈遺の証書を云う而して遺囑者はこの証書に因り確定したる財産又は財産中の一部又は全部に付ての入額所得の権又は動産、不動産等の財産を１人或は数人に贈与することを得べし（フランス民法第１０１０条）

第１００５条　フランス民法第１０１４条第１項に同じ

第１００６条　遺囑の贈遺を受けし者は財産相続人又は贈遺の財産を現に保有したる他の贈遺を受けし者に対しその財産を請取らんと求むることを得べし

　遺囑の贈遺を受けし者の１箇年内にその財産を請取らんと求めし時はその求めを為すの権あり（フランス民法第１００５条、第１０１１条及び第１０１２条第２項）

第１００７条　フランス民法第１０１５条に同じ

第１００８条　遺囑贈遺の財産中より政府に上納すべき税はその名義如何を問わず遺囑の贈遺を受けたる者これを担任すべし但し遺囑贈遺の証書中に他の約定ある時は格別なりとす（フランス民法第１０１６条）

第１００９条　もし遺囑者より１箇の義務を遺囑の贈遺を受くる数人の者に賦課するにおいてはその数人の者各々その得たる割合を以てその義務を尽さざるを得ず但し遺囑者のこれに異なる約定を為したる時は格別なりとす（フランス民法第１０１７条）

第１０１０条及び第１０１１条　フランス民法第１０１８条及び第１０１９条に同じ

第１０１２条　フランス民法第１０２０追加　もし遺囑の贈遺を受けたる者嘗て書入質と成りたる義務を弁償するにおいては財産分派に巻の第１０５２条に循い正当の財産相続人に対しその義務取戻の訟求を為すを得べし

第１０１３条　もし遺囑者他人に属する財産を遺囑と為したる時はその財産の己れに属せざることを知らざりし時と雖もその贈遺の効なかるべし（フランス民法第１０２１条、差異）

第１０１４条　前条に管する財産の贈遺を受けし者又は財産相続人はその贈遺の財産の付き行うべき義務を法律上自己の財産を以て弁償せざるを得ず

第１０１５条　遺囑者その贈遺と為す財産の種類を定めその品物を定めざる時は仮令いその種類に属する物件を贈遺の財産中に含蓄すること無き時と雖もその贈遺は法に適したる者と為すべし

第１０１６条　フランス民法第１０２２条に同じ

第１０１７条　もし遺囑者入額所得権又は受用の権を贈与する等の語を用うること無く入額又は年金を人に贈与せし時はその入額又は年金の元資たる財産の所有権は財産相続人に属し而してこの相続人はその贈遺を受けし者に入額又は年金を払うべし

第１０１８条　フランス民法第１０２３条に同じ

第１０１９条　財産の不足なるに因りその財産相続人の一部又は全部を受くべき承諾を為す者なき時又はその相続する財産の価に至る迄の外負債を償わざる特権を以て相続を為すべき旨を承諾する者ある時又は死者の遺留せし財産遺囑贈遺の全部を償うに足らざる時は遺囑贈遺を受けし者の各その得たる財産の割合を以て遺囑贈遺の財産を減すべし但し遺囑のこれに異なる約定を為したる時は格別なりとす（フランス民法第１０１７条及び第１０１８条）

○第７款　宗系の卑属親又は傍系の親のための為すことを得べき「フヒデコンミッセール」の「シュブスチチュシヨン」この義解前に見へたり

第１０２０条　フランス民法第１０４８条第１項に同じ但し第２項を追加すること左の如し

　その子遺囑者より先に死去する時はその孫１人又は数人の財産を与えその孫の生みたる子及び生るる子に伝うべきの約定を為すを得べし

第１０２１条　フランス民法第１０４９条追加　遺囑者より先に死者せし兄弟姉妹の子１人又は数人の財産を与えその兄弟姉妹の子の生みたる子及び生るる子に伝うべき約定を為すことを得べし

第１０２２条　フランス民法第１０５１条追加　贈遺を受けたる者の子その者より先に死去してその孫のみ有る時もまた同然たるべし

第１０２３条　フランス民法第１０５０条に同じ

第１０２４条　フランス民法第１０５３条に同じ但し「債主」の下に「及びその抛棄せし後に生るる子の」を加ふべし

第１０２５条　フランス民法第１０５５条追加　この場合においては第８３６条、第８３７条第１項及び第２項第８３８条の規則を適用することを得べし○遺囑を管理する者は遺囑者の託を受け遺囑の諸事を管理する事(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)の巻に記したる方法に循い謝金(サレール)を得んと求むることを得べし

第１０２６条　もし遺囑の諸事を管理したる者の死去せし時は遺囑の贈遺を受けたる者又は有権者(エーヤン、ドロワー)又は検察官の求めに因り裁判官よりその人に代るべき者を任ずべし（フランス民法第１０５６条）

第１０２７条　遺囑贈遺を為したる者の死去せし時はその１箇月内に行政官又は有権者又は検察官の求めに因り通常の法式を以てその遺囑贈遺の財産の目録を記すべし○自余はフランス民法第１０５８条に同じ

第フランス民法第１０５９条に同じ但し「管照者」を「遺囑の諸事を管理する者」に作り又追加すること左の如し

　遺囑贈遺の財産の目録は管財人の面前においては私の証書にこれを製することを得べく而してこの目録は治安裁判官の書記局に差出すべし

第１０２９条　もし遺囑者のその遺囑の諸事を管理する者を任せざる時は己れの子の伝うべき約定を以て財産の贈遺を受けたる者保証を出してその財産を管理すべし但し遺囑者のその保証を出すに及ばざる旨を申述せし時は格別なりとす（フランス民法第１０５６条）

第１０３０条　もし己れの子に伝うべき約定を以て財産の贈遺を受けたる者その保証を出すこと能わざる時は有権者又は検察官の求めに因り裁判官において更に管理者を任ずべし○この管理者のためには幼者の後見人に管する諸規則及び第１０２５条終尾の規則を適用することを得べし

第１０３１条　己れの子に伝うべき約定を以て贈遺を受けたる者その財産を管理する時は必ず家族の良夫たるが如く丁寧にこれを管理するを要とす○その費用義務及び修理等に管しては入額を所得と為す者と同一にみなすべし

第１０３２条　不動産「フヒデコンミッセール」中に保含する年金及び権利は己れの子に伝うべき約定を以て贈遺を受けたる者の求めに因り及び真実の利益又は欠くべからざる要件あるに因り「シュブスチチュシヨン」を為す者及び検察官よりの申立ありし後ち初審裁判所の允許を得るに因るに非ざれば他人に譲渡すことを得ず

　この譲渡の允許は欠くべからざる要件又は真実の利益ある時己れの子に伝うべき約定を以て贈遺を受けたる者又は「フヒデコンミッセール」を為すに付き保証を出し自から財産を管理する者にして即ち「シュブスチチュション」を為す者のみに為すべし

　もし管財人のその財産を管理する時は後見人のために設けたえる方法に循いその入額を使用すべし（フランス民法題１０６５条）

第１０３３条　本款に付いて為すことを得べき「フヒデコンミッセール」の「シュブスチチュシヨン」は幼者より第三の人に対しこれを為すことを拒むを得ず「但し不動産」云々以下はフランス民法第１０６５条に同じ

第１０３４条　フランス民法第１０７２条に同じ

第１０３５条　遺囑の諸事を管理する者は第１０３３条を行うに付て監督するの義務あり而してもしこれを怠るにおいては損害の償を為すべき者とす

　諸有権人もまた第１０３３条を循守せんと求むることを得べし（フランス民法第１０７３条）

　　　○第８款　財産相続人又は遺囑贈遺を受けたる者の相分離し且つ他に譲渡すことを得べき財産の「シュブスチチュシヨン」

第１０３６条　第９２３条と同様の「シュブチチュシヨン」の場合においては己れの子に伝うべき約定を以て贈遺を受けたる者又は財産相続人は遺囑又は相続の財産を他人に譲渡し又はこれを費し又は恩恵に因り他人に贈与することを得べし但し特定の禁止ある時は格別なりとす

第１０３７条　己れの子に伝うべき約定を以て贈遺を受けたる者又は財産相続人は第１０２７条及び第１０２８条に循いその財産の目録を記せざるを得ず但しその保証を与うるの及ばず

第１０３８条　己れの子に伝うべき約定を以て贈遺を受けたる者又は財産相続人の死去せし時は「シュブスチチュシヨン」を為す者は天然の侭にて存在する財産を得んと求むることを得べし

　他に譲渡したる財産の種類及び入額の目録は財産相続人又遺囑贈遺を受けたる者の記録又は日用の帳簿又は贈遺或は相続の財産に管する他の証担に因て記すべし

　　　○第９款　遺囑贈遺の証書を取消す事及び遺囑贈遺の証書の効なき事

第１０３９条　フランス民法第１０３５条に同じ

第１０４０条　もし後に記したる遺囑贈遺の証書に前に記したる遺囑贈遺の証書を取消すことを明白に記したる時と雖も遺囑贈遺の証書を法に適したる者と為すべき法式の適せずして唯唯公証人の記したる証書を法に適したる者と為すべし又法式にのみ適する時は後に記したる遺囑贈遺の証書を以て前に記したる遺囑贈遺の証書を取消すの効なかるべし

第１０４１条　フランス民法第１０３６条追加　もし前に記したる遺囑贈遺の証書の仮令い公証人の記したる証書を法に適したる者と為すにはその法式に適すと雖も遺囑贈遺の証書を法に適したる者と為すの法式に適せずしてその効なき時はこの条を適用すべからず

第１０４２条　フランス民法第１０３７条に同じ

第１０４３条　フランス民法第１０３８条に同じ但し「但しその売払の効なくして売払人これを己れに取戻したる時もまた同一なりとす」を「但し遺囑者その売渡したる物件を己れに取戻したる時は格別なりとす」に作る

第１０４４条ないし第１０４６条　フランス民法第１０４０条ないし第１０４２条に同じ

第１０４７条　第三の人より得べき年金又は諸権利の遺囑贈遺はその遺囑者の生存中に第三の人より弁済を得たる部分に付てはその贈遺の効なかるべし

第１０４８条　フランス民法第１０４３条追加　もし遺囑贈遺の証書中の第三の人の利益となるべき者ある時は選任せれたる財産相続人又は遺囑の贈遺を受けたる者はその利益を払わざるを得ず但しこの財産相続人又は遺囑の贈遺を受けたる者は第三の人の利益のため全くその証書を抛棄するの権利あり

第１０４９条　フランス民法第１０４４条第１項の同じ但し「又はこれを受くること能わざる者あるのおいては」の下に「又はその数人中幾人歟のために贈遺の効なき時は」を加うべし

　第２項　右に記するフランス民法第２項に同じ

　第３項　部分(○○)なる語意は本条の記載したる所の連帯して遺囑贈遺を受くべき者の各人に指定めたる部分を保含する者とみなすべからず

第１０５０条　フランス民法第１０４５条に同じ

第１０５１条　人は遺囑者の死去せし後ち未必の条件の如くならざるを原由としてその遺囑贈遺の証書を効なき者と為すべき求めを為すを得べし○自余はフランス民法第９５４条第２項及び第３項に同じ

　　○第１３巻　遺囑者の託を受け遺囑の諸事を管理する者

第１０５２条　遺囑者は第９８２条に原つき私の証書又は公証人の記したる証書を以て遺囑の管理人１人又は数人を任することを得べし（フランス民法第１０２５条）

　遺囑者は甲の遺囑の管理者なき時乙の遺囑の管理者を以てこれに代うるため数人の遺囑の管理者を任ずることを得べし

第１０５３条　婚姻を結びたる婦、後見を免がれざる幼者、治産の禁を受けたる者及び総て契約を結ぶべき能力なき者は遺囑の管理者と為るを得ず（フランス民法第１０２８条、第１０２９条及び第１０３０条）

第１０５４条　遺囑者はその遺囑者の管理者に贈遺の財産の全部又は一部のみを委託することを得べし○財産の全部を委託する時は動産又は不動産の全部とす

　反対の規則なき時はその委託は遺囑の管理者その財産を保有せし日より起算し１箇年の期限に過くべからず（フランス民法第１０２６条に同じ）

第１０５５条　フランス民法第１０２７条に同じ但しフランス民法該条の始め「遺物相続人」は「諸財産相続人同意にて」に作るべし

第１０５６条及び第１０５７条　フランス民法第１０３１条第１項及び第２項に同じ

第１０５８条　フランス民法第１３１条第４項に同じ

第１０５９条　管理者は遺囑贈遺の契約の如く執行のため十分なる金高の有らざる時財産相続人又は裁判所の承諾を得て動産又は不動産を売払わしむることを得べし（フランス民法第１０３１条第３項）

　諸財産相続人相互の財産を売払うことを承諾する時は評価人をしてその財産の真価を評せしむること無くこれを売払うべし但し幼者又は後見人の規則に管する時は格別なりとす

第１０６０条　遺囑の管理者財産の委託を受けたる間の期限の経過せし義務ある時はその義務を得んと裁判所に出訴することを得べし

第１０６１条　遺囑の管理者は贈遺の財産分派を容易にするを目的としてその財産を売払うことを得ず○管理者はその財産相続人の求めに因り財産相続人を扶けて財産分派を容易にすべし○管理者はその管理を為すべき期限の経過せし時その行いたる諸事の計算を為し（フランス民法第１０３１条）且つその過剰を返付し諸財産相続人の間にこれを分配せしむべし

第１０６２条ないし１０６４条　フランス民法第１０３２条ないし第１０３４条に同じ

第１０６５条　遺囑者よりその遺囑の管理者に財産の目録を記し又はその行いたる諸事の計算を為すに及ばざる旨を約定したる証書は当然にその効なかるべし

第１０６６条　又入額所得の権、人に伝うべき約定を以て贈遺を受くる者、幼者又は治産の禁を受けたる者等の管係なき時は遺囑者その財産相続人又は遺囑贈遺を受くる者に遺留せし財産を管理すべからざる財産に管する規則はこの管理者に適用することを得べし○但し法に適して別段指定めたる管理すべからざる財産に管する規則ある時は格別なりとす

　第１０６３条の規則はこの管理者の適用することを得べし

第１０６７条　もし遺囑者の躬から選任せし遺囑の管理者なき時これに代うべき指定めされは裁判所よりこれを定むべし

第１０６８条　何人に限らず遺囑の管理者たる職務を承諾すべきの義務無しと雖も嘗てその職務を承諾したる者は全くその任を尽さざるを得ず

　もし遺囑者その遺囑の管理者の贈与するため確定したる謝金又は酬報として贈遺すべき財産を遺留せざるにおいてはその遺囑の管理者は第５２２条において失踪者の財産を管理する者に付き定めたる謝金に准してこれを得んと要むることを得べし

第１０６９条　遺囑の管理者及び第１０６６条に記したる財産の管理者は後見人と同様の原由の因てその職を退かざるを得ず

　　　○第１４巻　財産相続の事の付て商議するの権及び相続する財産の価額の至る迄の外負債を償はざる特権

第１０７０条　何人に限らず財産相続を為すべき者は尋常に財産相続を承諾し又は相続する財産の価額に至る迄の外負債を償はざる特権を以てこれを承諾し又は全くこれを抛棄することを決定するため評議するの権あり

　この評議を為すに付ての申述は財産相続を開始すべき地の初審裁判所の書記局のおいてこれを為し且つこの種類の証書を記すべきため別段設けたる簿冊の中にその由を謄記すべし（フランス民法第７９３条）

第１０７１条　財産相続人はその申述を為せし日より起算し４箇月中の財産の目録を記し且つその相続の事に付て評議を為すべし○自余はフランス民法第７９８条に同じ

第１０７２条　フランス民法第７９７条に同じ但し「この定期の終る時」云々以下を除き「財産相続を為すべき者は家族の良父たるが如くその財産を管理するの義務あり」を追加す

第１０７３条　財産相続の事に付て評議する財産相続人は保存し能はざる物件を売却し又相続の事に付き評議すべき期限に触るること無き所為をなすためその允許を得んと求むるっことを得べし

　物件売却の方法はその允許を得んと求むる証書に確定すべし（フランス民法第７９６条）

第１０７４条　裁判官は財産相続人に管係する者の訴求の因り財産相続の目的たる財産又は第三の人の利益を保全するに必要なりと認むる処置を制定することを得べし

第１０７５条　第１０７１条に記したる期限の経過せし後は財産相続を為すべき者その財産相続を抛棄し又は尋常にこれを承諾し又は相続せし財産の価額に至る迄の外負債を償わざる特権を以てこれを承諾せざるを得ず而して同上の特権を以て承諾せし時は第１０７０条に記載したる方法に因りその由を申述するを要とす

第１０７６条ないし第１０７８条　フランス民法第８００条ないし第８０２条に同じ

第１０７９条　フランス民法第８０３条第１項に同じ

第１０８０条及び第１０８１条　フランス民法第８０５条ないし第８０７条に同じ

第１０８２条　第１０７１条に記したる権利を行うべき期限の経過せし日より起算し３箇月中に財産相続人はその所在分明又は不分明なる権利者及び遺囑の贈遺を受けたる者に財産管理の報告を為し且つ相続したる財産の価額に至る迄負債又は贈遺物を弁償すべきのため官用新紙(ガゼットヲツフヒシェル)又は州の新紙を以てその由を公告すべし（フランス民法第８０８条及び第８０９条、差異）

第１０８３条　財産相続人はその財産の計算を為し終りし後ち当時その所在分明なる権利者にその相続したる財産の高に応じて負債を弁償し又はその負債の全部を弁償すべし

　財産相続人は既にその財産を分派せし権利者たる旨を申出つる者ある時はその順序に循い未だ売却せざる財産又は既に分派せし財産の剰余を以て負債を弁償すべし（フランス民法第８０８条及び第８０９条）

第１０８４条　フランス民法第８０８条第１項に同じ

第１０８５条　遺囑の贈遺を受けたる者は第１０８２条の記載したる期限の経過せし後及び第１０８３条に記載したる負債弁償の後に非ざればその遺囑贈遺の財産を得んと要むることを得ず○自余はフランス民法第８０９条に同じ

第１０８６条　フランス民法第８０３条第２項に同じ

第１０８７条　フランス民法第８１０条に同じ

第１０８８条　本巻の第１０７１条、第１０７７条以下次条の規則は財産相続を承諾し又は承諾せざることを評議するの権利を行うこと無く第１０７５条の終尾の記載したる申述を為してその相続する財産の価額の至る迄の外負債を償わざる特権を以て相続を為す者に適用を為す者に適用することを得べし（フランス民法第７９３条）

第１０８９条　財産相続を承諾し又は承諾せざることを評議するの権利を行い或は相続する財産の価額の至る迄の外負債を償わざる特権を以て相続を為すことを遺囑者の禁止せし遺囑贈遺の証書は無効の属すべし

　　○第１５巻　財産相続を肯する事及び肯せざる事

　　　○第１款　財産相続を肯する事

第１０９０条及び第１０９１条　フランス民法第７７４条及び第７７５条に同じ

第１０９２条　フランス民法第７７６条追加　貧院、貧者救助の倉庫(ケース、ド、ポウプル)その他公けの館舎(エタブリスマン、ブユブリツク)又は宗教上の館舎のために為したる遺囑の贈遺は国王の允許を受け且つ相続する財産の価額の至る迄の外負債を償わざる約定を以てこれを承諾すべき者とす

第１０９３条ないし第１０９５条　フランス民法第７７７条ないし第７７９条に同じ

第１０９６条　数人の財産相続人有りて財産相続を肯し又は肯せざる事を協議せざる時はその中の数人はこれを肯し他の数人はこれを肯せざるを得べし（フランス民法第７８２条、差異）○又財産相続を肯し又は肯せざる事の方法の付き数人の財産相続人協議を為さざる時はその相談する財産の価額の至る迄の外負債を償わざる約定を以てその財産相続を肯すべし（フランス民法第７８２条）

第１０９７条　フランス民法第７８１条に同じ

第１０９８条　己れの受くべき財産の部分のため財産相続を承諾せし者は財産相続を肯せざる者の受くべき財産の部分もまた受けざるを得ず但し第１１００条に予定したる場合のにおいては格別なりとす

第１０９９条　フランス民法第７８３条に同じ

第１１００条　一旦財産相続を肯し更にその相続を肯せざる者の受けたる財産の部分はその与に財産相続を為すべき者のこれを分派して己れの所有と為すことを肯する部分のみに非ざればその与に財産相続を為すべき者に分派すべからず

第１１０１条　財産相続を肯する権利を行うに付ての期限はその財産相続を開始せし日より起算し３０箇年を経過し而してその財産相続開始の以前又は以後に正当の財産相続人又は遺囑の贈遺を受けし者その相続財産を肯したる時は滅尽すべし然れども第三の人の１個の証書に因り遺留の財産を得べき権利を有したる時はその権利を害すること莫かるべし（フランス民法第７８９条及び第７９０条）

第１１０２条　フランス民法第７０９条に同じ

　　　○第２款財産相続を肯せざる事

第１１０３条及び第１１０４条　フランス民法第７８４条及び第７８５条に同じ

第１１０５条　フランス民法第７８６条追加　もし財産相続を為すべき階級の血属親なき時は後に生存したる配偶者その財産を相続すべし○もし前に記したる諸人財産相続を肯せざる時は官署のおいてその財産を収続すべし

第１１０６条及び第１１０７条　フランス民法第７８７条及び第７８８条に同じ

第１１０８条　財産相続を肯せざるの権利は期満免除と成ること無し（フランス民法第７８９条、差異）

第１１０９条及び第１１１０条　フランス民法第７９１条及び第７９２条に同じ

第１１１１条　詭欺又は暴行を受けしの因て一旦財産相続を肯せざりし時に非ざれば再び財産相続を肯せんと要むることを得ず

　　○第１６巻　財産相続の分派

　　　○第１款　分派、その効及び財産相続人の分派したる部分を互に保証する事

第１１１２条及び第１１１３条　フランス民法第８１５条及び第８１６条に同じ

第１１１４条　もし幼者又は治産の禁を受けたる者財産相続を為すべき時は自己の名義を以てその財産相続の分派を訴求することを得べし但し幼者又は治産の禁を受けたる者に管する巻に規定したる規則を循守すべき者とす（フランス民法第８１７条）

第１１１５条　フランス民法第８１８条に同じ但しフランス民法の「但し夫婦共通の所有」云々より以下を除き「夫婦の間に財産を共通せざる時はその婦は己れに得べき財産を分派せんと訴求することを得べし但しその訴求を為す時はその夫又は裁判官より允許を受くるを要とす」を追加す

第１１１６条　フランス民法第８１９条第１項に同じ

第１１１７条　死者及び贈遺を受けし者の権利者は己れの得べき財産の価額に至る迄財産相続の分派に対して故障を述ることを得べし（フランス民法第８８２条）

第１１１８条　フランス民法第８２２条に同じ

第１１１９条　もし相与に財産相続を為すべき者の中に幼者又は治産の禁を受けたる者ある時は左の５条に規定したる規則を循守するに非ざれば財産相続の分派を為すどもその効なかるべし（フランス民法第８１９条及び第８３８条）

第１１２０条　相続すべき動産及び不動産は一定の法式に循いその目録を記し且つその評価を為すべき者とす（フランス民法第８２１条第８２４条及び第８２５条）

第１１２１条　フランス民法第８２４条追加　公債証書はその日の相場を以て代償を定むべし

第１１２２条　もし容易に不動産を分派すること能はざるが又は財産相続を為すべき部分を定むる時その不動産の価に等しき動産を以てその不動産に換わること能わざる時は後見人の監察者又は管財人の監察者の目前において公売に(ワント、ピュブリツク)掛け初審裁判所より任ぜられたる検察官の意見に因り又はその土地の慣習に因りこれを糶売すべし（フランス民法第８２７条）

もしその与に財産相続を為すべき者の中その不動産の買主と為る時はその売買は財産の分派に等しき効ありとす

第１１２３条　フランス民法第８３１条に同じ

第１１２４条　財産分派は擢籖を以て為すべし

　財産分派及びその擢籖は諸財産相続人の任ずる公証人又紛議ある時は裁判所より任ずる公証人の面前において治安裁判官の紹介を以てこれを為すべし

　分派の証書は同上の公証人これを収領すべし○その与に財産を分派せし丁年者の間においてその財産を交換する時は分派の証書にその由を謄記すべし而してその交換は他の契約に等しき力ありとす（フランス民法第８３４条）

第１１２５条　当然に財産相続を為すべき者不在なる時又はその中の数人財産分派に臨席することを否む時は初審裁判所よりその財産相続に管係なき人を以てその代人と為すべしこの場合においては第１１２０条以下次条第１１２４条の規則を循守すべし（フランス民法第１１３条、第８１９条及び第８２３条）

第１１２６条　「分派を為せし後は各相続人に各々その所有と為したる財産に付ての証書を引渡すべし」以下フランス民法第８４２条第２項に同じ

第１１２７条　フランス民法第８４２条３項追加　又各相続人は自己の費用を以てその証書を写取るの権利を為すべし

第１１２８条　各財産相続人は己れの相続したる財産及び第１１２２の場合において得たる財産を嘗て財産相続人の開始せし時より己れ１人にて相続したる者と見做し相続すべき財産中の他の財産はこれを所有したること無しとみなすべし（フランス民法第８８３条）

第１１２９条及び第１１３０条　フランス民法第８８４条及び第８８５条に同じ

第１１３１条　フランス民法第８８６条に同じ但し５箇年の期限を３箇年とす

　　○第２款　返還の事

第１１３２条　各財産相続人のその財産相続に付ての負債を弁償し又はその負債の計算を為すの義務ある時を除くの外尚お左に記列したるが如く死者より受けたる生存中の贈遺の財産を返還せざるを得ず

第１　摘出又は私生の卑属親にして尋常に財産相続を承諾したるとその相続する財産の価額に至る迄の外負債を償わざる約定を以てこれを承諾したるとを問わず唯唯当然に受くべき贈遺の財産を相続したる者又は己れの受くべき財産の分外を相続したる者は遺囑の生存中に為したる贈遺の財産を返還せざるを得ず但し公正の証書又は遺囑贈遺の証書に因てその贈遺の財産を返還するに及ばざる事の明白なる時は格別なりとす

第２　生存中の贈遺者又は遺囑者の嘗てその財産を返還すべき旨を明かに定め置きたる時は前項に記したる他の財産相続人又は遺囑の贈遺を受けたる者もまたその贈遺の財産を返還せざるを得ず（フランス民法第８４３条）

第１１３３条　フランス民法第８４５条に同じ

第１１３４条　もし返還すべき物件相続すべき財産の部分より一層多量なる時はその財産相続人はその過剰の価額を返還するに及ばず但し前条に記したる事に付ては格別なりとす

第１１３５条及び第１１３６条　フランス民法第８４７条ないし第８４９条に同じ

第１１３７条　フランス民法第８５０条及び第８５７条に同じ

第１１３８条　フランス民法第８５８条に同じ

第１１３９条　不動産を返還すべき財産相続人は贈遺の時の相場を以てその不動産の代価を返還し又は返還すべき時の不動産の形状にて現物を返還することを得べし但し己れの過失に因り不動産の価の低下せし時はその算計を為し或はその不動産を抵当と為し又は書入質と為したる時はこれを請戻して返還するを要とす○自余はフランス民法第８６１条及び第８６２条に同じ

第１１４０条　贈遺として得たる金額はその贈遺の財産の金額にてこれを差引きて返還すべし（フランス民法第８６９条）

第１１４１条　動産の贈遺を受けたる者はその贈遺を受けし時の相場にてその不動産の代価を返還し又はその現物を返還すること自由たるべし（フランス民法第８６８条）

第１１４２条及び第１１４３条　フランス民法第８５１条及び第８５２条に同じ

第１１４４条　フランス民法第８５６条に同じ

第１１４５条　フランス民法第８５５条に同じ

　　　○第３款　財産相続に付き担当すべき負債を払う事

第１１４６条　フランス民法第８７０条同じ

第１１４７条　各財産相続人は書入質の権を有したる権利者の権利又は財産を分派する前にその財産の全部に付き有したる権利者の権利を害すること無く各己れに得たる財産相続の割合を以てその財産相続に付ての負債を担当すべし（フランス民法第８７３条）

第１１４８条　フランス民法第８７２条追加　もし年金を払うべきの受合として不動産のみを書入質の為し而して対人の義務なき時は各財産相続人その年金の元金を皆済してその不動産はその年金の元金高を差引き各自に分派して相続すべき財産中に算入すべし

第１１４９条　財産相続人中の１人書入質の義務を行わんかため己れの担任すべき負債の余分を払いたる時はその他の財産相続人に対し各自の担任すべき負債の部分を取り戻すべき訴を為すを得べし

第１１５０条　フランス民法第８７６条に同じ

第１１５１条　フランス民法第８７１条に同じ

第１１５２条　フランス民法第８７４条に同じ

第１１５３条　フランス民法第８７８条に同じ

第１１５４条　フランス民法第２１１１条に同じ

第１１５５条　フランス民法第８７９条に同じ

第１１５６条　相続すべき財産を分派する権利を行うべき期限は３箇年を以て定限とす（フランス民法第８８０条）

第１１５７条　フランス民法第８８１条に同じ

　　　○第４款　相続を為す財産の分派を取消す事

第１１５８条　フランス民法第８８７条に同じ

第１１５９条ないし第１１６１条　フランス民法第８０９条ないし第８９２条に同じ

第１１６２条　財産分派を取消すの付ての訴訟期限はその財産を分派せし日より起算し３箇年を以て定限とす

第１１６３条　フランス民法第８８８条に同じ

第１１６４条　フランス民法第８８９条に同じ

第１１６５条　財産分派の取消を為せし後ち更にその財産を分派する時は法に適して第三の人の得たる権利を害すべからず

第１１６６条　財産分派を取消すの付ての訴訟を抛棄するもその効なかるべし

　　　○第５款　父母又は他の尊属の親その財産を卑属の親に分派する事

第１１６７条　父母又はその他の尊属の親はその子又は卑属の親にその財産を分派することを得べし（フランス民法第１０７５条及び第１０７６条）

第１１６８条及び第１１６９条　フランス民法第１０７７条及び第１０７８条に同じ

第１１７０条　フランス民法第１０７９条追加　この条に付ての訴訟期限は遺囑者の死去せし日より起算し３箇年を以て定限とす

第１１７１条　フランス民法第１０８０条に同じ

　　○第１７巻　財産相続人の虧欠したる財産

第１１７２条　フランス民法第８１１条に同じ

第１１７３条　フランス民法第８１２条追加　もし死者遺囑の管理者を任したる時はその管理者は当然その財産の管財人と為るべし但しその死者他に管財人を任せんことを請求する時は格別なりとす

第１１７４条　フランス民法第８１３条追加　管財人に任せられたる者は新聞紙を以てその由を諸財産相続人に報道すべし

第１１７５条　財産相続を開始せし日より３年の期限間に財産相続人中１人も現出せざるにおいては官署にその財産の計算を為すべし而して官署はその財産を仮りに保有することを得べし（フランス民法第７７０条）

第１１７６条　第５２２条、第１０８２条、第１０８３条、第１０８４条、第１０８５条及び第１０８７条の規則は財産相続人の虧欠したる財産の管財人に適用することを得べし（フランス民法第８１４条）

　　○第１８巻　先取特権

　　　○第１款　総ての先取特権

第１１７７条ないし第１１７９条　フランス民法第２０９２条ないし第２０９４条に同じ但し第２０９４条に「質入の権(○○○○)」を追加す

第１１８０条　先取特権とは義務を得べき１人その義務の種類に因り他の義務を得べき者に先だちその義務を得べきことを法律上に認定する権利を云う

　質入及び書入質の権は先取特権に優る者とす但しこれに反する特定の法律ある時は格別なりとす（フランス民法第２０９５条、差異）

第１０８１条　フランス民法第２０９６条に同じ

第１１８２条及び第１１８３条　フランス民法第２０９７条及び第２０９８条第１項に同じ

第１１８４条　先取特権は格別指定めたる財産又は動産及び不動産の全部に付てこれを行うことを得べし○別段指定めたる財産に付ての先取特権はその財産の全部に付ての先取特権に優る者とす（フランス民法第２１００条）

　　　○第２款　別段定まりたる財産の付ての先取特権

第１１８５条　別段定まりたる財産に付ての先取特権は左に記列したるが如し

　第１　既に裁判を経たる財産の代価を以て義務者の購求せんとする動産又は不動産を奪う事に付き為したる訴訟入費に付き先取特権を行うべし

　第２　不動産の賃貸家の補理に管する権利及び賃貸の執行に管する諸権利に付き先取特権を行うべし

　第３　未だ代価を得ざる動産の代価に付き先取特権を行うべし

　第４　他人の品物を保全するため費用を出したる者はその費用に付き先取り特権を行うべし

　第５　品物を工作せしに因りその職工の得べき工作の代価に付き先取特権を行うべし

　第６　旅舎の主人は旅客に供せし品物の代価に付き先取特権を行うべし

　第７　馬車にて運搬せし入費及びこれに附帯したる費用に付き先取特権を行うべし

　第８　泥工(マソン)、木工(シャルパンチエー)及び他の職工長(メートル、ウーブリエー)の不動産を造営し又は補理せしに因り得べき代価に付き先取特権を行うべし但しその代価を得べき権利３０年を経過し且つその不動産義務者の所有に属せざる時は格別なりとす

　第９　官吏その職務を行うに付き不正の所為ありしに因り償を出ずべき時はその償額に付き先取特権を行うべし（フランス民法第２１０２条）

第１１８６条　土地及び家屋の貸主は枝又は根に連なる物の入額、既に収納せし入額、飾具、器具、獣類及びその土地内に在る諸種の物件に付き先取り特権を行うべし又仮令いその諸種の物件その借主に属せざる時と雖も先取特権を行うことを得べし○もし貸主より法に適してその土地の一部を他に転貸したる時は土地の所有者のその土地の全部中転貸したる土地の部内の在る物件を差押うることを得ず但し転貸主のその義務を行はざるにおいてはその物件もまた差押うることを得べし

第１１８７条乃及び第１１８８条　フランス民法第２１０２条第１の第４項「然れども種子の費用の償」以下及び第５項に同じ

第１１８９条　土地及び家屋の貸主は３箇年以降払い期限の過ぎたる土地及び家屋の賃貸及び総て毎年中に得べき金額に付き先取特権を行うべし（フランス民法第２１０２条）

第１１９０条ないし第１１９２条　フランス民法第２１０２条第４に同じ但し第４の第５項「この規則を以て商人の」以下を除く

第１１９３条　第１１８５条に記したる第４、第５、第６、第７、第８、第９の先取特権を行うは左の如し

　第４の先取り特権は保存するに因り入費を施用したる物件に付きこれを行い、第５は工作せし物件に付きこれを行い、第６は旅客の荷物に付きこれを行い、第７は運搬せし不動産の代価に付きこれを行い、第９は官吏のその職に任ずるに付き出したる保証金の元資と利子とに付きこれを行うべし（フランス民法第２１０２条第７）

第１１９４条　本款に記したるが如き先取特権を有する諸権利者の会合せし時物件を保存する為に施用したる入費に付いての先取特権は他の先取り特権より後に発生すと雖も優等の者とす（フランス民法第２１０２条第３項）

　　　○第３款　動産及び不動産の全部に付ての先取特権

第１１９５条　フランス民法第２１０１条及び第２１０４条追加　幼者又は治産の禁を受けたる者の権利者はその先取特権を行うべき事その幼者又は治産の禁を受けたる者の後見人又は管財人の所為より生じ而して書入質又は担保に因てその権利を得ること能わざる時はその後見人又は管財人に対して先取特権を行うべし

　　○第１９巻　質入の事

第１１９６条　質入とは権利者のその権利を保全ならしむるため義務者の名義を有する者より動産を受取るに付き得る権利にして質入を為す前の訴訟入費及び物件を保有するために施用したる入費を除くの外他の権利者に優る先取特権に因りその物件を以て義務の弁償を得べき権利を云う（フランス民法第２０９５条）

第１１９７条ないし第１１９９条　フランス民法第２０７４条ないし第２０７６条に同じ

第１２００条　フランス民法第２０７８条第１項に同じ

第１２０１条　質入の契約を結ぶ双方の者は特定の契約を以て質入を為したる義務者その負債を弁償せざるにおいては権利者その義務者に弁償の催促を為せし後ちその土地の習慣と常用の条件とに因り公けにその質物を売却しその価額を以て負債、諸入費及び利足総計を弁償せしむるに付き確乎たる権利を有すべき旨を約定することを得べし

第１２０２条　公債証書又は権利の証券を質入と為したる時もまた前条に等しくもし義務者のその質入の証書に付ての義務を行わざるにおいてはその公債証書又は権利の証券を売却することを得べし○株式取引所において代償を謄記したる証書はその株式取引の証券売人２名より負債弁償の催促を為せし翌日よりこれを売却することを得べく又代償を謄記せざる証書は慣習に循い公けにこれを売却することを得べし

第１２０３条ないし第１２０６条　フランス民法第２０８０条ないし第２０８３条に同じ

第１２０７条　フランス民法第２０８４条に同じ但し「但しこれ等の事に付ては」以下を「但しこの典舗等に管する商法又は規則中に別段設けたる規則ある時は格別なりとす」に作る

　　○第２０巻　書入質の権

　　　○第１款　総則

第１２０８条及び第１２０９条　フランス民法第２１１４条に同じ

第１２１０条　フランス民法第２１１８条に追加すること左の如し

　第３　土地の表面使用の権及び長期賃貸の権

　第４　金額又は天然の産物を以て払うべき土地の貸賃

　第５　入額十分一を得るの権

　第６　「ベクランマング」の権この権は土地の使用の権に類似する者にして全くオランダ国グロナンク州のみに用うる権なり

第１２１１条　書入質の権は向来に至りその書入質と為したる不動産を良好に為したる諸件又は不動産に付加する物及び造営物にもまた及ぼすべし（フランス民法第２０３３条）

第１２１２条　未だ分たざる共通の不動産もまた書入質と為すことを得べし○不動産を分派せし後は第１３７７条の例外を除くの外義務者の受くべき不動産の部分に付てのみ書入質の権を行うべし（フランス民法第８８３条の初め）

第１２１３条　フランス民法第２１１９に同じ

第１２１４条ないし第１２１６条に同じ

第１２１７条　書入質はこれを為すため法律上において別段設けたる方法ある時は除くの外公証人の記したる証書に因てのみこれを為すべし（フランス民法第２１２７条）

　書入質の権は公正の証書に因てこれを得べし

　後見人、管財人、夫又は法律上或は契約上書入質を為すべき者は質物としてその簿冊に謄記すべき財産を別段指定めたる裁判言渡書に循いその書入質を為べし

　婚姻を結ぶたる婦のその婚姻の契約書中に書入質の権を得たる者はその夫に商議すること無く又裁判官の允許を受くること無くその書入質の権を簿冊に謄記し又これに管する訴訟を為すことを得べし

第１２１８条　フランス民法第２１２８条に同じ

第１２１９条　書入質の権を行うに付ての証書には書入質と為しある不動産、その種類及び「カダストラル」土地の方域、種種の耕作物、必要の入費、収納額及び賦税を識得する方法の意上の区分に循いその所在の地を別段記するを要とす（フランス民法第２１２９条）

　書入質と為したる不動産に付ての租税及び入額の部分を示すこと能わざる時は証書中に書入質と為したる土地の部分の方域及びその所在の州邑を記するを以て足れりとす

第１２２０条　現在の財産に非ざれば書入質と為すを得ず○将来の財産に付ての書入質はその効なかるべし（フランス民法第２１２９条第２項）

然れども婦の婚姻の契約に因り書入質の権を得たる時又は義務者のその権利者に書入質を為すべき義務ある時はその夫又は義務者はその義務を尽し且つ書入質の契約を結びし後に得たる財産を示すの義務あり

第１２２１条　フランス民法第２１３２条に同じ

第１２２２条　権利者は如何なる場合を問わず書入質を増加せんと要むるを得ず但し法律上これに反する約定又は規則ある時は格別なりとす

第１２２３条　権利者書入質に取りたる財産を己れの所有と為すことを得べき約定はその効なかるべし○然れども第一に書入質の権を得る権利者はその書入質の権を得る証書中にもし義務者のその元資及びが払うべき旨を別段契約することを得べし○この契約は公けの簿冊中に謄記し而してその財産の売却は第１２５条に規定したる方法に循い治安裁判官に臨場を要すること無くこれを為すことを得べし

　　　○第２款　書入質の権の記入及びその方式

第１２２４条　書入質の権はこれがため備えたる公けの簿冊に記入すべし○記入なき時は仮令い私の証書を以て書入質の権を得たる権利者に対すと雖もその効なかるべし（フランス民法第２１３４条）

第１２２５条　もし義務者のその書入質と為したる財産に付き所有権を失いし時は書入質の権の記入を為すどもその効なかるべし

第１２２６条　書入質の権を得たる権利者の順序は記入の時日い因て定むべし左に記したる２箇条の例外は格別なりとす（フランス民法第２１３４条）自余はフランス民法第２１４７条に同じ

第１２２７条　売却したる不動産の代償を保全するための証書に因り得たる書入質の権はその不動産の所有権を移す証書を謄記せし後ち９日の時間に公けの簿冊に謄きすべしこの書入質の権は不動産の買主の同上の時間に得たる書入質の権に優る者とす（フランス民法第２１０８条）

第１２２８条　前条の規則は財産分派を為すべき者の中の１人財産分派の証書に循いその財産を分派すべき時、未だこれを分派せざるに因り他の１人に対し義務者たる時、その財産分派を平等ならしむべき義務の弁償を保全ならしむるため又は分派して受くべき財産の部分を担保するため財産分派の証書に因り得たる書入質の権に適用することを得べし

第１２２９条　フランス民法第２１５０条に同じ

第１２３０条　不動産に管して義務者の権利を制限する特定の条件にして且つ書入質の証書中に保含する諸条件即ち権利者の承諾を得るに非ざらば義務者その不動産を賃貸するの権利を行うこと能わざる事或は賃貸の方法又は時限に管する事或は賃貸の前払いを受けたる価額に管する事は賃貸の契約を結びし双方の者必ずこれを執行すべきの義務有るにみならず尚おその不動産を得たる第三の人に対してもまたこれ等の条件を以て妨碍と為すことを得べし但し権利者のその条件を公けの簿冊に謄記せざる時は格別なりとす

　右の条件は第１３７７条に規則に触るること莫かるべし

第１２３１条　フランス民法第２１４８条を変更すること左の如し

　権利者書入質の権の記入を得んとするには姓名を手署したる箇条書２通を自身又は他の人を以て書入質の管轄者に出すべく但しその１通は証書類の副本に附記することを得べし○箇条書には左の諸件を記すべし

　第１　フランス民法第２１４８条第１項及び第２項追加　死去せし者の書入質の権の記入はその死者の名義を以て為すことを得べし

　第２　義務の証書の日付及び本義、義務の証書を記したる官吏の姓名、第１２１７条第３項に規則に依遵し抵当と為す可●財産を指定めたる裁判官の姓名

　第３　フランス民法第２１４８条第３項及び第４に同じ

　第４　「カダストラール」第１２１９条にこの語に義意あり上の区別に循い且つ十分一の税及び土地に付ての年金に管して第１２１９条第２項に設けたる例外法に触るること無く書入質と為したる財産の種類及びその所在の地

　第５　第１２２３条第２項に原つき権利者との間に取結びたる約束

第１２３２条　書入質の管理者は箇条書を受取りし日にその書入質の権の記入を為すためその１通を保有し他の１通はこれを受取りし日をその書の末に記しその記入を求めし者に直に返還すべし又人の求めに因ては書入質の権を記入したる簿冊の番号を２４時間内に箇条書に附記せざるを得ず○書入質の管轄者は２通の箇条書に姓名を手署すべし（フランス民法第２１５０条）

第１２３３条　第１１５４条に記したるが如き記入を求むる権利者及び贈遺を受くる者は（フランス民法第２１１１条第１項）書入質の管理者に左に記列したるが如き書類を差出すべし

　第１　財産を分派すべき訴求に管する公正の正本

　第２　死者の死去の証書又は財産相続を開始せし日より起算し６箇月以内に記したる財産分派に訴求書の外正確なる証書

　第３　第１２３１条第４の規則に原つき財産を記載したる箇条書２通○第１２３２条の規則はこの箇条に付き適用することを得べし

第１２３４条　フランス民法第２１５２条に同じ

第１２３５条　書入質の権は記入は仮令い前に規定せる法式に脱漏する所ありと雖も権利者の姓名、負債及び書入質と為したる財産を明白に記せざる時に非ざれば取消すことを得ず

第１２３６条　書入質の権は仮令いその記入を改正すること無くどもなお存立すべし（フランス民法第２１５４条、差異）

第１２３７条　書入質の権を記入するに付ての入費は義務者これを担保すべし但し反対の約束ある時は格別なりとす（フランス民法第２１５５条）

第１２３８条　フランス民法第２１５６条に同じ

　　　○第３款　書入質の権の記入を塗抹する事

第１２３９条ないし第１２４１条　フランス民法第２１５７条ないし第２１５９条に同じ

　　　○第４款　義務者の不動産を所有と為したる者に付き書入質の権の効

第１２４２条　フランス民法第２１６６条に同じ

第１２４３条　権利者のその義務者に要決書を送りし後においては義務者より第三の人に書入質と為したる不動産を差押え又は売却せしむることを得べし○これ等の事に管したは訴訟法に規定したる法式即ち権利者その義務者の不動産を抵償として収取する事及び権利者の順序に管する法式を循守すべし（フランス民法第２１６９条）

第１２４４条　フランス民法第２１７０条に同じ

第１２４５条　もし不動産の一部又はその敷部第三の人の手に渡りたる時と雖も権利者はその義務者のその不動産を保有して分つこと能わざる時に於けるが如くその不動産の全部又はその一部に付き自己の権利を行うことを得べし（フランス民法第２１１４条）

第１２４６条　義務者の負債を弁償したる第三の人は当然権利者の権利に代ることを得べし而して書入質の権を行う事の外義務を得べきため他の不動産の全部又はその一部に付き自己の権利を行うことを得べし但しこの権利を行うに付ては己れに得べき書入質の財産の代償を滅尽すべし

第１２４７条　前２箇条に記したる場合においては書入質として記入したる財産に付てのみその書入質の権の記入を塗抹すべし而して書入質と為したる他の財産に付ては義務者に代りその義務を尽したる第三の人又は権利者より義務者の不動産を抵償として収取せられたる第三の人の前条に原たき自己の権利を行いし後ち又は書入質の記入を塗抹すべき旨を承諾せし後に非ざればその記入を塗抹すべからず

第１２４８条　義務者の不動産を保有したる第三の人第１２２９条に循いその書入質の不動産利息及び入費を弁償すべき旨を確証するにおいてはその不動産を糶売する迄その保有権を保持するの権あり

第１２４９条　不動産を糶売したる代価書入質に管する負債及びその入費の価額に超過するにおいてはその過剰金は義務者の不動産を保有したる第三の人に属すべし

第１２５０条　フランス民法第２１７７条第１項に同じ

第１２５１条　フランス民法第２１７５条に同じ

第１２５２条　フランス民法第２１７８条に同じ

　　　○第５款　書入質の権の消滅する事

第１２５３条　書入質の権は左の諸件に因り消滅すべし

　第１　主たる義務の消滅する事

　第２　権利者書入質の権を拠棄する事

　第３　裁判所の命令に因る事（フランス民法第２１８０条）

第１２５４条　権利者のその義務の抵償として義務者より収取すべき不動産を購求したる者は又は流通貨幣を以てのみ確定すべき代価を以て随意に売買することを得べき証書に因り不動産を購求したる者は次の数条に規定したる規則に循いその不動産の売買の代価に超過する書入質の義務を滌除すべき訴を為すことを得べし○然れども書入質を為す時はその双方の者随意に不動産を売却するを得べきことを約定し且つその約定を公けの簿冊に謄記したる時随意にその不動産を売却せし後はその不動産の売買の代価に超過する書入質の義務を滌除すべからず○同上の約定は第一に書入質の権を得たる権利者に非ざればこれを為すことを得ず

第１２５５条　随意に不動産を売却する場合に管してはその土地の習慣に循い検察官の面前及びその不動産の全部又はその過半所在の地の治安裁判官の面前において公けに売却せし時及び書入質の権を記入したる権利者にその不動産の糶売を為すべき時より少なくとも３０日以前その糶売を為すべき地の報知を為したる時に非ざれば書入質の権を滌除すべき訴を為すべからず

第１２５６条　第１２５４条に因り利益を得んと欲する不動産の買主はその不動産を糶売せし月の中に訴訟法に制定したる規則に循い諸権利者のその義務を得べき順序を定めんと求むべし

第１２５７条　前条の順序を定むる時もしその義務を得べき順序中に加わらざる者の得たる書入質の権の記入ある時は裁判所よりこれを塗抹すべき言渡を為すべし○不動産の一部に付き義務を得べき順序中に加わりたる者の書入質の権の記入はその義務の払い期限に至りたると否とを問わず権利者の直に負債の弁償を得んと要むるに至る迄依然としてこれを保持すべし○義務の全部を得べき者の書入質の権の記入もまた無論依然としてこれを保持すべし而してその不動産の買主は従来の義務者に等しき義務を行い又執行の期限及びその猶予を得べき者とす（フランス民法第２１６７条）

第１２５８条　書入質として記入したる不動産の価額を算計する時は無期の年金を以て書入質の証書中に記したる元金と為しこれを算用し又その証書中に元金の記載なき時はその年金に１０倍したる金額にこれを算用又畢生間の年金或は養老金はその年金を得べき者の年齢に等しき年金を合せたる元金として算用し又は畢生間の年金に付ての通常の価額及び評価人の評決せし価額に循いその年金を受くべき者猶受くべき年数に等しき年金を合せたる元金として算用すべし

第１２５９条　幼者及び婚姻を結びたる婦の利益のため後見人、管財人又は夫の財産に付き為したる書入質の権の記入と未必の条件に管する義務より生じその総額不分明なる負債のために為したる書入質の権の記入にしてその一部又は全部に付き義務を得べき順序中に在る書入質の権の記入とはその後見を終り、婚姻を解き、未必の条件の如く成就し義務を尽すべき時に至る迄売却したる財産の部分に付き保存すべし

第１２６０条　書入質の不動産の買主は前条に循い書入質と成りたる不動産の価額に平均するに至る迄の売買の代償を己れに保有することを得べし而して反対の契約なき時はその不動産の買主又はその有権者にその代価の全部を弁償する迄適法の利息を払うべきの義務あり

第１２６１条　買主又はその相続人の怠慢に因りその不動産を破損し有権人の不安心を生ずる時の如きはその有権人その代償を請取るべき求めを為し或は最前に等しき約定を以て他の不動産又は公債証書を抵当と為すべきことを要求することを得べし○又直にその不動産の代価を払うべき旨を言渡したる裁判官はその代価を受取り更に他の不動産を抵当としてこれを貸渡すことを得べき権ある者を任ずべし（フランス民法第２１３１条）

第１２６２条　第１２５９条に記したる場合において未必の条件の如く成就せざるに因り書入質の権の記入を得たる者毫も義務を得ること能わず又は書入質の不動産の価額より少なき義務を得べき順序中の加わらざる権利者或は従来の不動産の所有者又はその他の有権人に引渡すべし

第１２６３条　第１２５９条に記したるが如き書入質の権の記入義務を得べき順序中に加わらざるに因りその記入を塗抹すべき時は裁判所において義務を得べき順序を定むべき裁判所言渡書に因り書入質の管轄者をしてその記入を塗抹せしめたる側らに不動産に付ての権利者はその不動産を売却せし代価を得べき権利を有する由を簿冊に記載せしむべし

第１２６４条　もし糶売を為す時諸種の不動産中その一部は書入質と成り他の一部は書入質と成らざる不動産を混合して売却せし時は裁判官は評価人の報告を得て後ちその不動産の買主又はその財産相続人に属せし時に於けるが如き条件を以てその代価の総額を算計しその書入質と成りたる不動産の代価を確定し書入質の権の記入を得たる各権利者に分派すべし又その不動産の買主又はその財産相続人その代価の払い期限に至り義務を尽さざるにおいては損失の償を為すべし

　　　○第６款　書入質の簿冊を公けにする事及び書入質の管轄者の責任

第１２６５条　フランス民法第２１９６条追加　従前記入したる書入質の権を後に至り塗抹せしこと有る場合においては書入質の管轄者己れより渡すべき書入質の権の記入の写又は証書中にその由を簡易に記載すべし

第１２６６条　書入質の管轄者は左に記したる損害の責に任ずべし

　第１　定期の時間精密に書入質の権を記入し又は記入の求めを受けたる諸件及び限制すべき条件を記入することを怠りたる時

　第２　書入質の証書中に１箇又は数箇の書入質の権の記入ある旨を謄記することを怠りたる時但し書入質の権の記入を求めたる者の申術不充分なるに因り錯誤を生じたる時はその責に任ずること無し（フランス民法第２１９７条）

　第３　第１２４０条に記したる書類を差出さしむること無く書入質の権の記入を塗抹せし時

　第４　前条第２項に制定せし規定を循守せざる時（フランス民法第１２４０条に第２項を加う）

第１２６７条　書入質の管轄者不動産に付ての１箇又は数箇の書入質の権有ることを忘れ書入質の権記入の証書にその由を記せざる時と雖もその不動産を以て書入質の管轄者はその由を記せざる証書を得たる者に対し己れの過失の責に任じ又己れに受くべからざる義務を得たる権利者に対しその義務取戻の訴を為すことを得べし（フランス民法第２１９８条、差異）

第１２６８条　如何なる場合を問わず書入質の管轄者は所有権を移すべき証書の謄記、書入質の権を記入したる簿冊の送致、書入質の証書の交付等を拒み又は遷延することを得ずもし右等の事を拒み又は遷延するにおいては損害の償を為すべし○公証人又は使吏は証人２人の補助を受けその拒絶又は遷延の調書を記すべし（フランス民法第２１９９条）